●リプレイ本文
「こんどのあいてはコボルトだ〜。敵はいっぱい手ごわいぞ〜。どんなに数が多くても〜、パラの戦士はやっつける〜♪」
村の入り口から陽気な鼻歌が聞こえてくる。ファイターのボルジャー・タックワイズ(ea3970)だ。
村へとやってきた冒険者達に気付いた村人が村長宅へと案内する。
『経験を積むことを意識する余り会話も出来ない状態だったとは‥‥。申し訳ない』
ノルマンから渡ってきたばかりの神聖騎士アトス・ラフェール(ea2179)。ゲルマン語で話す彼だが、幸いにも、
「出来る限り助け合いましょう」
神聖騎士クウェル・グッドウェザー(ea0447)をはじめ通訳できる仲間に恵まれ、不自由は少ない。ちなみに『まるごとメリーさん』を着ている彼を可愛いと形容するのは失礼だろうか‥‥?
寝込んでいる村長に鉱物毒を指定した『アンチドート』と『リカバー』を掛ける神聖騎士エリス・ローエル(ea3468)。
「おお‥‥ここは天国か‥‥?」
「熊退治以来ですね村長さん。相変わらずの様ですが無理は禁物ですよ」
ほどなくして、目を覚ました村長にそう声を掛ける。
「ばーさんや、会いたかったぞ!」
ガバッと半身を起こすと、いきなりエリスに抱きつこうとする!
「しかもこんなに若返っ‥‥へぶっ!」
冷静に対処されてしまった。
「おや、アンタは熊退治の時の‥‥?」
「真剣な話です。今回は一緒に来ますか? それとも残りますか?」
目をこする村長に、真顔で尋ねるエリス。
「も、勿論行きますぞ! 村の代表が行かずして何とします!」
元気になった村長の返事は予想通りのものだった。
『今回も何かやりそうだな。困ったものだ』
アトスの呟きは、村長に通訳されることはなかった‥‥。
早速、コボルトが住み着いたという洞窟へ向かう冒険者達と村長。
「ああ、今日も仕事が始まるぜー」
村長の脚色されまくっていそうなコボルトの話を話半分に聞きつつ、ファイターのオラース・カノーヴァ(ea3486)。一応、アトスにも通訳する。
『皆さんに伝えて下さい。コボルトの特徴はこんな感じになります』
村長の話と自分のオーガ知識を照らし合わせ、説明するアトス。
そうして暫くすると、すぐに洞窟が見えた。村からかなり近い。
洞窟の前には見張りのコボルトが二匹いるようだ。退屈そうに欠伸したりしている。
(「我慢我慢‥‥」)
ワクワクして歌いたくなる自分を抑えるボルジャー。
気付かれないよう少し離れると、作戦の打ち合わせをする冒険者達。
『まるごとメリーさん』を脱いで旅装束姿になったクウェルは、まず自らに『グットラック』を掛け、
「皆さんにも掛けておきます」
仲間達にも順に掛けていく。
そして、『オーラエリベイション』『オーラパワー』『オーラボディ』を発動させておくナイトのクリオ・スパリュダース(ea5678)。
接近戦を仕掛ける班は、現在位置で待機。射撃班は洞窟側面に回り込むのだ。
射撃班を先導する忍者の風霧健武(ea0403)。
どうやら、気付かれることなく移動できたようだ。相変わらず見張りは欠伸をしている。
スリング用の石と道中拾い集めておいた手頃な石を足元に置いておくレンジャーのゼファー・ハノーヴァー(ea0664)。
各自、接近戦用の武器を置いておくなどして準備完了。
ミドルボウの風霧、手裏剣のクウェル、ショートボウのエリス、スリングのゼファー、ヘビーボウのオラース‥‥そして、剣の柄に手を掛けた村長が息を呑む。
なぜ射撃班に剣を持った村長が居るのかと言うと、彼の暴走を監視する役がエリスだからである。そうとは悟られないよう、うまく言い含めてあるが。
風霧の合図と同時に見張りへ一斉射撃!
「「コボーッ!?」」
いきなり襲撃を受けた見張りが叫ぶ!
ある程度まで忍び足で接近していたボルジャーが一気に距離を詰め、ショートソードで見張りを倒す!
アトス、クリオが続いて洞窟入り口に駆け寄る。
しかし、見張りのあげた叫びに気付いたのか、洞窟内がにわかに騒がしくなる!
「出てこいコボルトども! もう二度と村に手出しできんようにしてやるぞ!」
そう叫んで剣を構え、自分も洞窟入り口へ行こうとする村長をエリスが取り押さえる。
「やれやれ、全く困ったものだな。この様子では、村長殿が最大の敵となりそうだ」
スリングに石をセットしつつ、呆れ口調のゼファー。
「ああいう人柄には好感が持てる」
右手には刀を構え、なぜか左手に火をつけたランタンを持っているクリオ。
そのままランタンを投げ込む。ランタンが壊れ、漏れた油が燃え出す。コボルトが一気に出て来ないようにするためだ。
「コボッコボッ!」
族長と思しき、偉そうなコボルトが数匹に命令して消火に当たらせる。多少の知恵はあるようだが、板きれをバタバタする程度の稚拙な消火作業だ。
「それでも族長の号令一下、雪崩打って殺到ってのが、絵だと思うけどね」
他人事ぽく言いつつ、更に油を投げ込むクリオ。消火に当たっていたコボルト達は大騒ぎである。
「「「コボーッ!」」」
族長の命令で、わらわらと入り口まで出てきたコボルト達が冒険者達に襲いかかる!
入り口正面の冒険者達に気を取られ、迂闊に飛び出してきた所へ風霧、オラース、エリス、ゼファーが側面から一斉射撃!
「これだけ多くのモンスターを相手にするというのは初めての経験だな」
牽制を旨とした援護射撃をするゼファー。
「援護は任せて皆さんは思う存分戦ってください」
『援護と回復は任せて思う存分暴れて下さい』
エリスとアトスの激励が重なる。
「僕も行ってきます。村長は念のため射撃班の護衛を。重要な役割です」
シールドソードとリュートベイルを装備し、入り口へと向かうクウェル。着いてこようとする村長に釘を刺す。
「む? うむ、任せておけぃ!」
胸を叩く村長。‥‥むせ返っている。ある意味、暫く安心か?
「毒を塗ってるからって、おいらに勝てると思うなよ!!」
ショートソードを見事に操り、コボルトに攻撃していくボルジャー。
刀でダメージを与えつつ、拳や柄頭での『スタンアタック』を交えてコボルトの相手をするクリオ。
『轟け! ホーリー!』
聖なる力で援護攻撃するアトス。負傷者をすぐに『リカバー』で回復できる位置取りだ。
「後ろには行かせません」
それぞれ盾として機能する両手の装備を活かして、防御を優先しながらシールドソードで攻撃していくクウェル。
「やはり、決定打に欠けるのがツライところだな。だが、今は技よりも基本を押さえる段階、もうしばらくは辛抱が必要か」
スリングの威力不足を感じているゼファー。しかし、冒険者パーティは役割分担することで、それぞれの長所を生かし、短所を補い合うものである。そして、彼女は自分の役割をしっかり果たしている。
「コボーッ!」
混乱していたコボルト達が、背後に控える族長の命令によって徐々に統制が取れ始めてくる。しかし、それまでの冒険者達の攻撃で多くのコボルトが戦闘不能になっていた。
普通のコボルトならば、彼らにとってはザコと言っても差し支えないが、数が多く、カスリ傷を受けただけでも毒が塗られている上、コボルト戦士も混ざっている。予想以上に苦戦し始める冒険者達。
「俺の名は『風斬り』の健武‥‥推して参る」
負傷した前衛と交代すべく、忍者刀に持ち替える風霧。
足元に置いておいたジャイアントソードとライトシールドへと持ち替えたオラースも続く。
「ぶった切ってやるぜ!」
大振りすると入り口の天井に届くジャイアントソードを、『バーストアタックEX』を組み合わせてそのまま振り抜く!
「「「コボッ!?」」」
それを見て、コボルト達に動揺が走る。
「コボッ!!」
示しをつけようと思ったのか、ついに族長が最前列へお出ましだ!
「コボルトの族長が強いかパラの戦士が強いか勝負だ!!」
ショートソード三連切りで確実にダメージを与えるボルジャー。
「コボーッ!」
返す族長の攻撃を見事に回避している。
「ヤる気いっぱいだし、男の子は」
族長の相手は他の仲間に任せ、普通のコボルトを確実に倒していくクリオ。
「コボルトの族長が強いか村長が強いか勝負じゃっ!!」
ボルジャーに触発されたのか、村長も突撃しようとするが、
「皆さんあと一息です」
またもエリスが取り押さえる。彼女も射程距離の短い魔法を使うため、接近して仲間達を援護したいところだが、村長を野放しには出来なかった。
冒険者達は連携して、コボルト族長に深手を負わせた。そして、
「トドメだぜ!」
オラースが『スマッシュEX』を叩き込む!
「コボ‥‥ッ」
族長を失って戦意喪失気味のコボルト残党を掃討するのに、それほどの時間はかからなかった。
クウェル、アトス、エリスらが協力して仲間全員を完全回復させる。
その後、風霧を先頭に洞窟内を隈無く探索する冒険者達。
村から奪われた略奪品や生き残っていた家畜をある程度回収する事が出来た。
『解毒剤は必要になる。もらっておくか』
コボルトの持っていた解毒剤を戦利品として分配するアトス。
冒険者達は隊列を組んで警戒を怠らなかったが、結局、戦闘能力を持ったコボルトは残っていなかった。
「生かしておくのは不謹慎だよ」
他人事のように呟き、全てのコボルトにトドメを刺していくクリオ。誰かがやらねばならないのだ。
「神よ、どうか彼等の魂が迷わぬようお導きください」
ジーザス教の祈りを捧げるエリス。
「また得体の知れねーのが住み着いたらいけねぇよな? 洞窟の出入り口、ブッ壊すぜ」
村長の了承を得て、『バーストアタック』で洞窟の入り口を壊して塞ぐオラース。
「パッラッパパッパ! おいらはパラっさ!!
パラッパパラッパ! おいらはファイター!!」
勝利を祝って、歌って踊るボルジャー。手拍子する村長。お互いに調子っぱずれな気もする。
『程々にしないと村の人が困りますよ。村長あっての村なんですから』
村長を諫めるアトスだが、
「村長あっての村、か‥‥。これからもより一層、村長として頑張らねばなるまいな!」
通訳を聞いて何をどう解釈したのか、村長の冷や水は治りそうもない。
「最大の敵は己自身。油断、慢心は死を招く‥‥」
ゼファーの言葉も村長の耳には届いていないようだ。
何はともあれ、この村が平和にやっていける事を祈りつつ、帰路に着く冒険者達であった。
いずれ彼らが英雄と呼ばれる日が来ることを願っている。