●リプレイ本文
「僕はギルス。小さき者達の伝道師、ギルスです」
仲間達に挨拶するクレリックのギルス・シャハウ(ea5876)。
「マナちゃんを護衛だとばれないように護衛か〜。とりあえず依頼はさておき、マナちゃんとお友達になれるといいな♪」
ウィザードのチカ・ニシムラ(ea1128)。依頼はさておかないで欲しい所だ。
「初めてのお使いとは微笑ましいな」
必ず成功させねばと考えている志士の七刻双武(ea3866)。
「しかし、護衛対象と同行できないってのは厳しい」
ナイトのシュナイアス・ハーミル(ea1131)。そう、この依頼には特殊な条件が付いていたのだ。
「がんばれ、がんばれ女の子〜、一人でお使いがんばって〜♪
パラの戦士は見守るぞ〜、こっそりこっそり見守るぞ〜♪」
ファイターのボルジャー・タックワイズ(ea3970)の陽気な鼻歌を合図に、依頼の村へと出発する冒険者達であった。
依頼人から娘のマナの特徴を聞くと、分散して護衛に当たる冒険者達。
最初にマナと接触したのはナイトのレーヴェ・フェァリーレン(ea3519)だった。
馬を駆り、先回りしていた彼は、旅の騎士が一休みしているよう装っている。
そこへ通りかかるマナ。それを尾行していた冒険者達が、レーヴェの登場にギョッとしつつも見守る。
軽く会釈して通り過ぎようとするマナに声を掛けるレーヴェ。
「この先へ行くのか?」
「隣村へお使いに行くの。一人で行くのは初めてだけど、何度か行った事があるから大丈夫☆」
「今この森は女が一人歩きするには危険だ。そこの村まで送ってやるから引き返すんだ」
「でも‥‥」
「どうしても行くのなら隣村まで送ろう」
引き返させようとする事で親の雇った護衛ではないと思わせつつ、同行することに成功したレーヴェであった。
暫くして。
「あっ、精霊さん発見☆」
木陰を飛ぶエレメンタラーフェアリーを見つけたマナ。慌てて飛び去るのを追って森へと入ってしまう。
「待つんだ!」
制止も届かず、仕方なく後を追うレーヴェ。
「あや‥‥道外れちゃったよ‥‥。とりあえず、あたしはそろそろ行動開始かな」
「‥‥まさかこうなるとはな。マナに見つかると厄介だが、ここで見失うと拙い」
チカやシュナイアスを初め、尾行していた冒険者達も慌てて追いかけていく。
結局、精霊を見失ったマナ。気付けばレーヴェともはぐれ、自分がどちらから来たのかも分からなくなっていた。
「精霊さ〜ん、騎士さ〜ん‥‥」
不安そうに見回すと、森のざわめきが怖ろしくなってくる。
「こんなところで何をしているんだ? 道からはだいぶ外れているぞ」
知らない声を掛けられ、ビクッと振り向いたそこに居たのはレンジャーのアリオス・エルスリード(ea0439)。
「‥‥誰?」
「俺か? 俺は通りすがりの狩人だ。森が騒がしかったのでな。様子を見に来たのだよ」
涙目で尋ねるマナにそう答えると、道を教えるアリオス。
冒険者達もそこでマナを発見するが、少し打ち合わせをすると、その場での接触は控える事にした。
教えられた通り森を歩くマナは、チカと出会う。
「あたしはチカ・ニシムラって言うの♪ えっと‥‥あなたは名前はなんていうの?」
「私はマナ。お使いの途中なんだけど、迷っちゃって‥‥でも道を教えて貰ったから大丈夫☆」
「ふに、あたしも道に迷っちゃったんだよ。近くの村に行くなら一緒に付いて行っちゃだめかな? 一人より二人の方が楽しいしさ♪」
「うん、いいよ☆」
更に進むチカとマナは、ファイターのフォン・クレイドル(ea0504)と出会う。
「ちょっとそこ行くお嬢ちゃん達。お助けください、この複雑怪奇摩訶不思議にいりくんだ森のヤローが、あたいを閉じ込めて出してくれないのです」
ボロボロ涙やら鼻水やらを流し、助けを求めるフォン。道に迷った旅人を演出するつもりが、マナを追う間に本当に迷ったようだ。
「任せてっ☆ 私が案内してあげる」
自信満々に言うマナ。先ほどまでは自分がそうだった事など気にしていないようだ。
更に進むと、今度はシクシクと泣き声が聞こえてきた。
怖々近づいていくマナ達はギルスと出会う。
「あっちの村に行く途中、大きな鳥に襲われて、森に逃げ込んだら迷っちゃったんです〜」
泣きつくギルス。
「あれ、さっきの精霊さん? あ、シフールさんかぁ」
「僕はギルス。僧侶の修行中で、村々を巡って怪我人を治したり、神様の教えを広めているんです〜」
次々に同行者の増えていく不思議な森。まるで童話の主人公のような気持ちのマナであった。
しかし、まだ気は抜けない。
いつの間にか、マナの案内は道の方角から外れそうになっていた。
それを救ったのは、ボルジャーが目印に結んでおいたロープの切れ端だった。同行者達が、それを頼りにさり気なくマナを誘導し、無事道へと戻ることが出来たのだった。
「あ、騎士さ〜ん☆」
「いきなり森に駆け込んで‥‥心配したぞ」
道で待っていたレーヴェに手を振って駆け寄るマナであった。
こうして、再び隣村を目指すマナ達。随分遅くなったが、夜半過ぎには隣村へと到着することができた。
「にゃ、無事村に着いたね〜。迷った時はどうしようかと思っちゃったけど‥‥よかったね」
「うん。あ、みんなも一緒に泊めてもらえるよう、お祖母ちゃんに聞いてみるね☆」
歳も近いせいか、すっかり仲良くなったチカとマナ。
不思議な同行者達に驚きを隠せない祖母だったが、こっそり事情を話し、安心させるギルス。その後、歩き疲れたマナが眠るまでのわずかな間だが、神様のお話をしてあげるなど『小さき者達の伝道師』の名に恥じない。
翌朝。お使い事を済ませ、帰路に着く。
「マナさんの村にも行った事がないので、一緒に行ってもいいですか?」
「うん、一緒に行こう☆」
ギルスの提案をすんなり受け入れたマナであった。
道中、様子を見守る冒険者達以外に、悪意の視線が発生していた。
行く手を阻むように現れたのは人相の悪い男達だった。軽装ではあるが武装している。
「女子供に騎士が一人じゃ、この道は危ないぜ?」
ナイフをちらつかせる男。
「あーっ、さてはお父さんに言われて私を迎えに来たのね!」
そう叫んだマナに暫し絶句する一同。
「え‥‥? あ、そうそう。そうなんだ。さあ、お兄さん達と一緒に行こう」
一番最初に話を合わせたのはゴロツキの一人だった。
「もう、一人で大丈夫って言ったのにぃ」
「一人じゃねーし‥‥」
勘違いしているマナにツッコむゴロツキ。
「この人達はお友達だもん☆」
「ああもう、知るか! いいからこっちへ来い! 抵抗すると痛い目に遭わせるぞ!」
マナ理論に着いていけず、武器を構えるゴロツキ達。
「我が恩人であるマナさまを狙うなど、バカなアホどもめ! 痛い目を見させてピーピー泣かしてやる!」
素手のまま、マナの前に立つフォン。
刀と盾を構えるレーヴェ。
「マナさんには指一本触れさせませんよ〜」
後ろに隠れつつ、『ホーリーフィールド』でガードするギルス。
「うぎゃっ!?」
突然、ゴロツキの一人に矢が刺さる。
「こんないたいけな子に手を出そうとするとはな‥‥恥を忘れたら人間おしまいだぞ?」
森から現れたのはアリオス。
「あ、昨日の狩人さん☆」
手を振るマナ。
「バカにしやがって! やっちまえ!」
襲いかかってくるゴロツキ達。
「わ〜、こっち来るな〜」
そう言いつつも『コアギュレイト』を唱えているギルス。
そこへ、ボルジャーが駆けつける!
「さぁ、こい! パラの戦士が相手になるぞ!!」
ゴロツキを引きつけると、見事な回避からの日本刀3連斬りを見舞う!
更に、いつの間にか居なくなっていたチカが『魔法少女のローブ』を着て木の上から再登場!
「魔法少女『まじかる♪チカ』参上♪ 悪い人にはお仕置きだよ♪」
ポーズをとって『ライトニングサンダーボルト』を放つ!
更に逆サイドからも『ライトニングサンダーボルト』が!
「怪盗かと思うたが、ゴロツキとはな。覚悟せいよ」
刀と盾を構え、怯んだゴロツキに一気に接近してきたのは双武! 『ポイントアタック』で腕を狙う!
「な、なんだ次々と!?」
腕を負傷し、武器を落とすゴロツキ。浮き足立ってくる。
「女子供に手を出すチンピラ、か。分かり易い状況で結構な話だ」
皮肉っぽく笑って登場したのはシュナイアス。クイクイと指で挑発して攻撃を誘い、『デッドorアライブ+カウンターアタック』でゴロツキに重傷を負わせる!
「この愚鈍なるカスどもめ!」
『スープレックス』で叩きつけ、『ホールド』で締め上げるフォン。
「ここまでだ! 得物を捨てて降伏するなら、命だけは保障する。否と言うなら‥‥剣の錆になる覚悟を決めろ」
駄目押しの降伏勧告するシュナイアス。
「ちっ。チクショウ! 覚えてろ!」
月並みな台詞を残して逃走するゴロツキ達。
「忘れろ。犬に噛まれたと思って‥‥」
あっさりそう言うレーヴェ。
「『まじかる♪チカ』がいる限り、この世に悪ははびこらせないよ♪」
そして『フラインブルーム』に乗って飛び去るチカであった。
「えっと、何だか助けて貰ったみたい‥‥ありがとう☆」
現れた助っ人達に礼を言うマナ。
「最近、この辺りで怪盗マスカレードを見たと言う者がおってな、その調査に来たのじゃが、当てが外れたようじゃ」
そう話す双武。
「おいらは近くを探検していたパラの探検家なのさ!」
などと言い訳するボルジャー。へたっぴぃな歌と踊りで誤魔化す。
「パッラッパパッパ! おいらはパラっさ!!
パラッパパラッパ! おいらはファイター!!」
「そなたの旅路に幸運を」
そんなボルジャーや双武、助っ人達と別れたマナ達。
「あや、あたしが隠れてるうちにゴロツキは倒されちゃったんだね」
着替えたチカが再登場。バレバレだと思うが、
「うん、みんな凄かったよ〜」
楽しそうに話すマナであった。
そして、マナの住む村へと無事帰還を果たす。
「神様はあなたの事をじ〜っと見守っていますからね、じ〜っと」
(「そしてお父様もね」)
ニッコリ笑うギルス。
「いつか私も冒険者になって世界を旅しようかな☆」
手を振るマナ。その言葉に複雑な表情で顔を見合わせる冒険者達。
「かくて少女は、家路に着く、良きかな、良きかな」
呟く双武。戦闘後、別れていた面々も陰ながらマナの無事を喜ぶのだった。
いずれ彼らが英雄と呼ばれる日が来ることを願っている。