不自然な空白
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■ショートシナリオ
担当:紅茶えす
対応レベル:4〜8lv
難易度:やや難
成功報酬:2 G 88 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:04月11日〜04月18日
リプレイ公開日:2005年04月15日
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●オープニング
キャメロットから南西二日ほどの所にギルフォードという街がある。
領主、紅茶男爵本邸の庭に出現した穴は、謎の迷宮へと繋がっていた。
冒険者達へと解放された迷宮では、現在、地下二階の探索が進められている。
すでに地下一階は探索し尽くしたと言っても過言ではないが、それでもなお尽きることなくズゥンビ化したモンスターの出現が報告されており、冒険者達の修業の場にもなっているようだ。
冒険者達の作成した迷宮地図を眺めていた紅茶男爵が、ふと、ある事に気が付いた。
地下一階の地図は、壁や柱、扉や部屋から罠に至るまで、詳細に書かれているのだが、
「ここの部分、部屋一つくらい入りそうだとは思わんか?」
それほど広くはない空白部分を指差して執事に問う紅茶男爵。
「そうで御座いますな。言われてみれば、少々不自然な印象を受けます」
「ふむ、調べてみるか‥‥。そうだな、久しぶりにキャメロットの冒険者ギルドへ依頼として出してみることにしよう」
ここは冒険者ギルド。
冒険者達が仕事の斡旋を求めて集う場所である。
「仕事の斡旋か? 紅茶男爵様からの依頼があるぞ」
いつものように冒険者ギルドのおやっさんが依頼書を見せる。
『これはギルフォード男爵家本邸に発見された地下迷宮探索に関する依頼である。
すでに探索し尽くしたと思われていた地下一階だが、探索地図によると、少し不自然な空白部分があるのだ。
そこで、この部分に的を絞った徹底的な探索を依頼する。
結果的には何も発見できないかもしれないが、その場合も探索に対するある程度の報酬は約束しよう。
地下迷宮で発見された財宝は、発見者である冒険者諸君に所有権を認め、諸君に不要な財宝がある場合は、男爵家が正当な報酬を支払って引き取るものとする。
探索期間は三日間としよう。早期に探索が完了した場合は、迷宮探索を進めるも良し、ギルフォードの街で羽を伸ばすのも良いだろう。
探索期間の三日目には我が輩も時間を作れるようにしておき、共にティータイムを楽しみたいと考えている。良ければ、色々な冒険譚を聞かせてくれると嬉しい。
ギルフォード男爵』
「何も見つからなくても報酬を約束してくれるあたりが太っ腹じゃないか。
ちなみに、キャメロットからギルフォードまでの往復は約四日だから、計七日分の食料が必要になるぞ。言うまでも無い事かもしれんが、地下迷宮って言えば暗いと相場が決まっているから灯りが必要だろうし、いろいろ探索に必要になりそうな物も用意しておいた方がいいぞ!」
こうして、新たな依頼を受けた冒険者達。
ギルフォードの地下迷宮には、何が眠るのだろうか‥‥?
●リプレイ本文
挨拶を交わしていく冒険者達。
「俺はブルー。吟遊詩人だ。『旋律のヴルー』と呼んでくれ」
ナイトのヴルーロウ・ライヴェン(eb0117)。名乗った通り、青ずくめの服装だ。
「地下迷宮、ねぇ‥‥いかにも何かありそうな感じだけど、どうなのかしら?」
依頼書を再確認するレンジャーのユラ・ティアナ(ea8769)。
「遺跡探索なんてはじめてだよ。楽しみだな!」
ピクニック気分なファイターのティズ・ティン(ea7694)。実年齢より更に幼く見える。
「ふみゅ、迷宮の探索なんて初めてだから、ちょっとドキドキするな‥‥」
精一杯頑張ろうと心に誓うナイトのセレス・ハイゼンベルク(ea5884)。
「‥‥迷宮探索ですか。正直狭い所で戦うのは不得手ではありますが‥‥」
と、忍者の霞遙(ea9462)。
「いいか、コロス。この俺の為にもしっかりとお宝を見つけて来るんだぜぇ」
(「特にだ。奴らに先を越されんじゃあねーぞ」)
そう耳打ちする兄のヴァラスに、ファイターのコロス・ロフキシモ(ea9515)が頷き、
「行って来るぞ、兄者」
そう言って、同じ依頼を受けた冒険者達と共に出発したのだった。
ギルフォード男爵邸では、激務の合間を縫って、紅茶男爵が執事を伴って出迎えてくれた。
丁寧に挨拶する冒険者達。迷宮の入り口にある管理小屋で、これまでに作成された地図や出現するモンスターなどの情報を得る。
「吉報をお持ち下さい、男爵様」
そう言って一礼するコロスであった。
隊列を組み、迷宮を進む冒険者達。複数のランタンに火を灯し、確実な灯りの確保をしている。
「こういう場所では戦う事だけではすみませんね。罠とかあるかも知れませんし」
前列を行く遙。拾っておいた棒で前方を探りつつ進んでいる。
同じく、隠密系の技能に優れたユラが並んで進む。
「やっぱり、最下階にはドラゴンとかいるのかな。出てきたらやばいよね」
戦士として前衛を務めるティズ。想像を膨らませている。
「く、まだ先があるのか‥‥」
前後に対応できるよう中列に位置するヴルー。まだ入って間もないが、そんな事を言っている。迷宮は埃っぽく、しきりに衣服が汚れないように気を遣っている。
同じく中列を行くウィザードのエルマ・リジア(ea9311)。ランタンは必要な時にだけ灯すようにして節約しつつ、地図を確認してメモを取っていくのが彼女の担当だ。
同じく中列のセレス。いつでも戦えるように気を張っている。
「ム‥‥」
最後尾を固めるコロス。
(「まったくもって恐れ多い事だ‥‥」)
(「やはり無粋だ‥‥」)
ハーフエルフに対し、冷ややかな態度のコロス。それを感じつつも口には出さないヴルー。だが、それでいがみ合うほど愚かではない。彼らは冒険者であり、仲間なのだから。
途中、出現したズゥンビを蹴散らしつつ、依頼の場所へと到着した冒険者達。
「空白の部分があるのはこの辺りか‥‥」
周辺の壁を調べ始めようとするコロスだが、
「そろそろお弁当にしようよ!」
ギルフォードまでの道中でもそうだったが、得意の家事で用意したお弁当を広げるティズ。
「早く男爵の美味しいお茶が飲みたいところだ」
一緒に和むヴルー。紅茶男爵とのティータイムは冒険者達の間でも少しは知られているようだ。
地下迷宮で食べる弁当もまた格別、なのだろうか。
また、この部分の探索が終わった後の事も話し合っておく。
「そうですね、『余力があれば』空白以外の場所も、とは思います。まずは空白を完璧に埋めていきましょうね」
食べ終わった後片付けを始めるエルマ。
食事も済ませ、万全の状態で探索を始める。
「このギルスワンことユラ・ティアナがばっちり調査してやるわ」
気合いを入れるユラ。正体を秘密にするヒーローが多いが、勿論自慢したって良い。
壁を叩き、反響音を確かめていく遙。何か仕掛けのある所は音も異なる事が多いのだ。
長い時間を掛けて壁を調べていたユラと遙が顔を見合わせる。
ランタンを壁面に近づけ、意を決したように、壁面を構築するブロックのひとつを押し込む。
すると仕掛けが作動し、壁面に扉が出現したのだ!
「職人芸だなあ」
その光景を見て感動しているセレス。
更に、罠や鍵などを入念に調べ上げるユラと遙。
「開かないようなら‥‥」
バックパックからブレーメンアックスを取り出すティズ。彼女は『バーストアタック』を修得している。
「‥‥罠についてなら‥‥任せて下さい」
しかし、壊すという最終手段に出るまでもなく、それらを解除する事に成功。隠し扉の開閉に関する安全は確保できた。そして、遙の『開錠の術』で鍵を開けることもできた。
「もしかしたら強力な敵がいるかもしれないし、充分に注意しないとな」
念のため、剣に『オーラパワー』を掛けておくセレス。仲間達の武器にも掛けていく。そして、『疾走の術』を発動させておく遙。このパーティで出来る最大の戦闘準備をして、彼らは扉に手を掛けた。
意気込んで突入した冒険者達を待っていたのは、割と狭い隠し部屋。
そこには、数体の腐乱した死体に囲まれた宝箱!
拍子抜けしかけたのも束の間、
「「「Wooo‥‥」」」
死体が立ち上がる!
しかも普通の死体ではない。オーガやオーガ戦士がズゥンビ化したものだ!
「あれって、普通に戦って大丈夫?」
両手持ちにしたシールドソードを構えて尋ねるティズ。
「大丈夫です。『オーラパワー』もありますし‥‥」
学問を修めたエルマが答える。広く浅くといったところだが、間違いはないだろう。
「このところ死者ばかりが相手だな‥‥だが、美しくない貴様らにやられる俺ではない!」
『オーラショット』を放つヴルー!
「‥‥いくら狭い場所でも‥‥その程度の動きでは私は捕らえられません」
前衛に躍り出た遙。素早い動きでオーガズゥンビを翻弄する!
「砕けよ‥‥」
ヘビーアックスを振りかぶり、『スマッシュ』を叩き込むコロス! セレスの掛けた『オーラパワー』の相乗効果でその威力は絶大だ!
「ティズ、いっきま〜す!」
同じく『スマッシュ』を仕掛けるティズ。
キューピッドボウによる射撃で援護するユラ。
「「「Wooo‥‥」」」
ダメージを受けつつも、その歩みを止めないオーガズゥンビ達。
「効かんな‥‥」
オーガ戦士ズゥンビの攻撃を盾で受け止め、オーガズゥンビの攻撃は重装備を活かして当たるに任せるコロス。いざとなれば『ガード』もある。
魔法詠唱するエルマを護衛しつつ戦うセレス。
「‥‥アイスコフィン!」
オーガズゥンビとの距離を詰め、氷柱に閉じこめるエルマ!
死んだ訳ではないが(いや、元々死んでいるが)、戦闘後、氷が溶けた所で全員で一気に倒せる事を考えれば有効な手段である。
「ムン!」
動きの遅いオーガズゥンビを次々と『スマッシュ』で叩き切っていくコロス!
オーガズゥンビの数が減ってくると、後方に下がってダーツ投擲で支援する遙。
そして、耐久力の高いオーガズゥンビも、特にアンデットへ絶大な効果を発揮する『オーラパワー』と冒険者達の連携によって、瞬く間に全滅してしまった。
「やはりオーラパワーが今後の課題だな」
その効果を目の当たりにし、呟くヴルーであった。
そして、冒険者達の前には宝箱が残されていた。
「宝箱の中身は、とりあえず山分けでいいかな?」
ユラはそう言うと、遙と共に慎重かつ入念に宝箱とその周囲を調べていく。
やはりと言うか、宝を荒らす者に対する罠が仕掛けられていたが、それを見事に解除し、冒険者達は宝を手に入れることに成功した。
宝物は金品ばかりだったが、紅茶男爵が高値で買い取ってくれるだろう。依頼で保証されていた金額を確実に上回るのは間違いない。
意気揚々と帰還した冒険者達。
その後、残された探索期間を各々、有意義に過ごす事となる。
「未知の場所なんて、楽しそうだね」
ティズをはじめ、セレス、ユラ、エルマ、コロス達は、無茶をせず、確実に帰還することを念頭に置いて迷宮探索を続行した。地下二階の地図作製に少し貢献し、モンスターとの戦闘経験は彼らの血肉となるだろう。
「ギルフォードの観光と言うのも良いですね。ここには、名の売れた彫刻家の方がおられるそうですし‥‥」
遙やヴルーはギルフォードの街で羽を伸ばした。
ガンツという彫刻家の作品が展示された広場なども見ることができた。そう言えば、男爵邸の庭にもモンスターを象った彼の作品があった。
「お茶会、凄く楽しみです‥‥そういうこと、やったことがないもので‥‥」
恥ずかしそうにフードで顔を隠しているエルマ。
ギルフォード滞在の最終日の夕刻、時間の都合をつけた紅茶男爵のティータイムに冒険者達は招待された。
(「美味しいおやつが食べられるといいなあ‥‥」)
そう思いつつも礼儀正しく席に着くセレス。
「見事、隠し部屋を発見したそうだな。諸君の持ち帰った宝物も大変興味深い物だ」
男爵も満足そうに席に着く。
「今度来るときは、もうちょっと深いところを探索してみたいな‥‥。まだまだ謎が多そう、頑張って探索してみたいわね」
男爵自慢の紅茶とお茶菓子に舌鼓を打つユラ。
「男爵様はハーフエルフについてはどうお考えで?」
そう尋ねるコロス。
「ハーフエルフがどうかしたかね? そうか、コロス君はロシア王国出身か。噂程度には聞いているが‥‥」
そこで一口、紅茶をすすり、
「個人的な好き嫌いがあるのは仕方のない事だが、冒険を成功させるには、互いに信頼しあい、協力しあうものではないかね? 今回の成功もそうだろう。
我が輩は様々な冒険者達と出会ってきた。種族も様々だったが、彼らは皆、立派な冒険者達だった。勿論、諸君もな」
全員を見渡す紅茶男爵であった。
その後、冒険者達は、自らの冒険譚を男爵に語った。
「ジャパンのフリソデを着た話や、ドラゴンパピィを抱っこした話なんてのも‥‥」
「なんと、そのような珍しい体験を?」
セレスの話に男爵が様々な質問を返していく。
「ではひとつ、『山より来たる襲撃者』の話を‥‥」
竪琴を奏で、冒険譚を語るヴルー。
「『旋律のヴルー』か。覚えておこう」
そして、感想を述べる男爵に、執事が時間を告げる。
「もう時間か。楽しかったぞ諸君。また次に会えることを楽しみにしている」
「それでは、男爵様‥‥」
一礼するコロス。冒険者達もそれに倣う。
ティズは帰りの食料をギルフォードで調達し、冒険者達はキャメロットへと帰還した。
いずれ彼らが英雄と呼ばれる日が来ることを願っている。