●リプレイ本文
「エルザの故郷を見るだけのつもりだったけど、放っておけないよね」
支度を調えるファイターのリュオン・リグナート(ea2203)。
「応援するくらいしか出来ないけど。無茶はしないでな」
手を振るクリスやユイス、ユウらに見送られ、依頼の村へと向かう冒険者達。
村へ着くなり、
「ここは。以前コボルトを退治した村では‥‥。まさか重傷を負った村長って‥‥」
神聖騎士アトス・ラフェール(ea2179)が呟く。
村長宅へと立ち寄った冒険者達。
「大蟻に単身で立ち向かうなんて、村長さんの勇気には脱帽ですね‥‥」
モンスターの被害を受ける村を少しでも無くしたいと願うウィザードのユリアル・カートライト(ea1249)。
豊かな植物知識を活かし、ある程度、薬草治療をするバードのルフィスリーザ・カティア(ea2843)。
(「命に別状は無いとはいえ絶対安静の傷か‥‥無茶をする。村の為を思っての行為だったのだろうが‥‥それでも無謀は誉められるべきではない、な‥‥」)
寡黙なレンジャーのオイル・ツァーン(ea0018)。
「もし良かったらこれを使ってください」
看病する村人にヒーリングポーションを渡すウィザードのカシム・ヴォルフィード(ea0424)。
「こんな高価な物を‥‥有り難う御座います、綺麗なお嬢さん」
「‥‥男だよ僕は」
余計なことを言ってしまったと気まずそうな村人。
「‥‥。あれだけ言ったのに懲りていないようだ。治すとまた着いて来るんだろうな」
やっぱりと思いつつ、仲間達へと釘を刺すアトス。彼は以前にも、村長の冷や水に付き合わされた事がある。
(「年寄りの冷や水、か‥‥困った物だな。村長として、責任感が強いのはいいが‥‥さて」)
浪人の名無野如月(ea1003)も同意見のようだ。
「うう‥‥蟻どもめ‥‥」
「村長は村の人を導くのが仕事だよ。だから、ここは俺達に任せて」
「村に被害を出すようなことはしません、安心して怪我の回復に努めてくださいね」
「しっかり養生して元気になって下さいませ」
苦しそうに寝言を唸る村長へと声を掛けるリュオン、ユリアル、ルフィスリーザ。
自分達が行った後にヒーリングポーションを使うよう、村人へ言い含めておく。
一応、戦場へは近づかないよう言い含めておくナイトのメロディ・ブルー(ea8936)。戦闘で狂化の不安を抱える彼女は、念のため耳を隠している。
村人から、判る範囲で大蟻の情報を聞き、ルフィスリーザの『イギリス王国博物誌』と照らし合わせ、冒険者達は罠を張る事にした。
(「‥‥いずれにせよ確実に仕留めねばなるまい」)
罠設置の中心人物はオイルである。
「力仕事ですか。私も協力します」
「蟻ごとき、これから相手にしていくドラゴンに比べればまさに虫ケラだよね♪」
穴掘りを手伝うアトス、リュオン。
スコップを持っていた如月のおかげで、作業もはかどる。
その他、村人への協力を仰ぐなど、手分けして罠に設置する餌集めをし、後は出現を待つばかりである。
(「ラージアント、どれくらいおっきいのかな‥‥これ以上村が荒らされないためにも退治しないとね」)
そう心に誓うカシム。『ブレスセンサー』を発動させ、大蟻の出現に備える。
同じく『バイブレーションセンサー』を発動させるユリアル。
「危ないから‥‥戦いの時、僕に近づいちゃ駄目だよ。ルフィスのこと、傷つけたりしちゃったら‥‥僕‥‥」
「シンさんの為にも、ご無理なさらないで下さいませ‥‥」
涙ぐむメロディに優しく言うルフィスリーザ。
「うん、気をつけるね。心配してくれて、ありがとう」
ぎゅっと抱きつくメロディ。
そこで、カシムとユリアルの探知魔法に、ほぼ同時に反応があった。
「うわぁ‥‥本当に人間くらいおっきい」
探知したのは四体分。大きさは人間並。真っ直ぐ村へと向かってきている事を仲間達へと伝える二人。
更に、『ストーンアーマー』を発動させておくユリアル。
「僕に気をつけてね。みんなを傷つけたくなんかないから」
クレイモアを地面に突き立て、『オーラパワー』『オーラボディ』を発動させておくメロディ。
「GiGiGi‥‥」
そして、出現したラージアントは、冒険者達の仕掛けた餌へと群がり‥‥!
その重みで落とし穴へとはまる!
落とし穴には水が張ってあるのだ。このスキに攻撃を仕掛ける!
「南無八幡大菩薩‥‥神仏もご照覧あれ‥‥!!」
刀とライトシールドを構え、先陣を切る如月!
しかし、大蟻は落とし穴をそれほど苦にしない様子で餌をくわえて這い上がってくる!
「ちぇすとぉぉぉ!!」
真っ先に這い上がってきた大蟻に対し、示現流『スマッシュ』を叩き込む如月!
同じく、メロディも『スマッシュ』でクレイモアを叩き込む!
「‥‥アグラベイション!」
更に、敵の動きを鈍らせる魔法で援護するユリアル!
そこへ、ナイフ二刀流『ダブルアタック+シュライク』で斬りつけるオイル!
「触覚に攻撃を受ければまともに動けないでしょう」
クルスソードで一撃加えては、『オフシフト』による回避で間合いを計りつつ戦うアトス!
しかし、大蟻も易々と触覚を傷つけさせてはくれない!
先制攻撃でダメージを与えたものの、すぐに這い出してくる大蟻を防ぎ切れず、地上に出してしまう!
ライトソードとパリーイングダガーで戦いつつ、常に後方へと大蟻が行かないよう注意を払うリュオン。彼ら前衛を信じて、後衛も心おきなく詠唱に集中できるというもの!
「‥‥ストーム!」
暴風を巻き起こし、這い出した大蟻を後方へ吹き飛ばすカシム!
「‥‥グラビティーキャノン!」
同じく、射線を確保し、這い出た大蟻へ攻撃しつつ、転倒させるユリアル!
「ごめんなさい。生きる為だったのでしょうけれど‥‥でも、人を襲うのを許すことはできませんっ!」
何とか大蟻の特徴を掴み、特定しつつ『ムーンアロー』を撃ち込むルフィスリーザ!
「蟻ごときが‥‥いくら殻で身を固めようとも無駄だ!!」
転倒し、腹を向けた大蟻に『スマッシュEX』を叩き込む如月!
ひとつの目標に向かって一斉に襲いかかる習性のラージアントだが、連携ならば冒険者達の方が一枚上手だ!
「‥‥ウインドスラッシュ!」
体制を立て直し向かってくる所へ、真空刃で攻撃するカシム!
「ちぇりゃあぁぁ!!」
大蟻の牙を辛うじて盾で防ぎつつ、『カウンターアタック』で斬りつける如月!
「Giッ!」
「うわああああっ!!」
迫る大蟻の牙に叫び声をあげて、『デッドorアライブ+カウンターアタック+スマッシュEX』でクレイモアを振り回すメロディ!
戦闘の緊迫感に、狂化を起こしてしまったのだ!
危険な状態の彼女へと率先して近づくのはリュオン!
「お気をつけて」
「メロディに何かあったら、シンが心配するものね」
そう声を掛けるルフィスリーザに微笑むと、真剣な面持ちになるリュオン。
勿論、大蟻も待ってはくれないが、すでに数を減らしている敵を残りのメンバーで押さえ込む事は可能だった。
そして。
「あとは止めを刺すだけです」
見事、『コアギュレイト』で最後の一匹の動きを止めたアトスが告げる。
残る問題は狂化したメロディだけである。なおもクレイモアを振り回していて、容易には近づけない!
「さあ、剣を収めて〜戦いはもう終わり〜貴女の敵は地に伏した〜両の手に平和が訪れ〜心には光が溢れますように♪」
気持ちを静めるよう魔法の『メロディー』を奏でるルフィスリーザ。
更にユリアルの『アグラベイション』で動きが鈍った所へ、意を決してリュオンが飛び込む!
体を張ってクレイモアを受け止めたリュオンは、メロディへ『スタンアタック』を撃ち込み、気絶させる事に成功した。これならば、彼女には傷一つ残らない。
だが、リュオンの方の傷は、決して浅くは無かった。
慌てて、アトスが掛けより、『リカバー』の詠唱を始める。
そこへ現れたのは剣を杖代わりにした村長!
「す、助太刀に。ま、参ったぞー‥‥!」
どうやらヒーリングポーションで意識を取り戻し、村人の制止を振り切って加勢に来てしまったようである。
顔を見合わせる冒険者達。事が終わった後だったためか、少しホッとしている。
「ぬっ! キミ、その酷い怪我はどうしたんじゃ!」
リュオンの負傷に気付いた村長。
「ハハハ、名誉の負傷ってところかな」
「むぅ、ワシがもっと早く駆けつけておれば‥‥!」
勿論、負傷の経緯は伏せておく。もしも、もっと早く村長が駆けつけていたら、より大変な事態になっただろうと冒険者達は苦笑した。
「‥‥はぐぅっ!?」
安心したのか、今度は村長がうずくまった。まだ傷は完治していないのだ。
「村の為にも自重するように言ったのに、またやってしまいましたね。今度こそ無謀な事は控えるんですよ」
村長にも『リカバー』を掛け、そう言うアトスであった。
こうして、見事ラージアントの一団を退治した冒険者達。
ある程度、周囲を探索してみたものの巣のような物は発見できなかった。
だが、幸いにも村へとやってきていたのはこれだけのようだ。後は、再び村が襲われないよう祈るばかりである。
「蟻殺し‥‥では、あまりサマにならんな‥‥」
『熊殺し』の称号を持つ如月が呟く。
「またやるんだろうなぁ」
そして、村を後にしたアトスの第一声はこれだった。
同感だと、顔を見合わせ苦笑する冒険者達。
どんなに忠告しても無駄なことは、すでに実証されてしまったのだから‥‥。
そして、翌日にはキャメロットへ着くという所で。
「‥‥あれ? 保存食が足りない‥‥」
涙ぐむメロディに、保存食を差し出すルフィスリーザ。「ありがとう〜!」と抱きつかれ、照れて赤くなっている。
「‥‥のんびりとした生活も、いいものだ」
そう言ってクスリと笑うオイル。
「それもいいかな♪」
相槌を打つリュオン。
よく晴れた空を眺めつつ、カシムが頷く。
同じく、食後のひなたぼっこをしていたユリアルが微笑む。
いずれ彼らが英雄と呼ばれる日が来ることを願っている。