●リプレイ本文
「タチの悪い伝染病、ですか‥‥。これ以上酷くなる前に何とかしたいです」
ウィザードのユーリアス・ウィルド(ea4287)が呟く。幼い頃、流行病で両親と死別したため、今回の件では少しでも力になりたいと思っているようだ。
「早めに、出回るのを防がないと被害が広がるだけなのよね」
「原因になっていると思われるラージバットは全て退治しなければなりません」
「その通りです、お互い頑張りましょう」
ウィザードのエルドリエル・エヴァンス(ea5892)と、クレリックのピノ・ノワール(ea9244)の言葉に、医者のシギが頷く。
「村に病人が出ているとの事、医師の護送は急いだ方が良いでしょう」
レンジャーのラグナス・ランバート(eb1186)が出発を促す。
(「武闘大会とは違う、ルールの存在しない実戦‥‥ね」)
武闘大会の常連ファイター、林高麗(eb0923)。
その旅支度を手伝うクリストフ。そして、
「十分に気をつけて、な」
ルシフェル、フィル、エリス、志乃らに見送られ、出発する冒険者達であった。
村へと向かう道中。
上空からの安全確認を担当するシフールの高麗。
「変なのが出ないといいんだけどね〜。ま、変なのが現れても、きちんと排除しちゃうし」
周囲を警戒しつつも神聖騎士テンペル・タットル(eb0648)は、護衛対象のシギを安心させる。
順調に旅を続け、翌朝には村に着くという所だ。
家事の好きなユーリアスは、率先して食事の用意などを担当している。その一方で、シギに効率よい手当ての仕方などを熱心に教わっている。
「我々が感染してしまっては元も子もないですからね。その点に注意して、手伝って頂ければ助かります」
「そろそろ活動し始める時間帯です。気を引き締めましょう」
同じく、シギの話を熱心に聞いていたピノが空を見上げる。村に近いため、ラージバットが出現する可能性もある。
「油断は禁物だよね」
見張りに立つファイターのシャラ・アティール(ea5034)。何やら意気込みを感じられるが、何かあったのだろうか。
結果的には特にアクシデントも無く村に着いたが、冒険者達は護衛として充分な責務を果たしたと言えるだろう。
「やっと着いたね〜」
「皆さんのおかげで、無事到着する事が出来ました」
テンペルの言葉に、感謝を述べるシギ。
「病を運ぶ蝙蝠か‥‥こりゃ厄介なやつが住み着いたもんだな。これ以上被害を増やさないためにも、残らず倒さないといけねぇな」
早速、蝙蝠の数や飛んでくる方向、時間帯などの情報収集を始めるレンジャーのグイド・トゥルバスティ(eb1224)。
冒険者達は、情報収集組とシギを手伝う組に別れ、行動を開始した。
「はい、このハンカチを見てください。さて、何が出るでしょう〜♪」
流行病のため、沈みがちな村の子供達に得意の手品を披露する高麗。彼女は一躍、村の人気者になったであった。
そして、グイドらが村で得た情報と、モンスターに詳しいピノやエルドリエルの知識を元に、冒険者達は村の周囲を探索し、ラージバットが住み着いている洞窟を探し出す事に成功した。
「昼間なら動きも鈍いと思うから、かなり楽に戦えるよね♪」
「‥‥しっかりきっちり片付けてこないと」
このまま、洞窟へ入ってラージバットを退治しようと提案するシャラに、エルドリエルが頷く。
ランタンに火を灯し、洞窟を探索する冒険者達。
ほどなくして。
「あっ! こーもり発見〜〜!!」
いち早く気付いたテンペルが声を上げる。
「「「KiKeyーッ!!」」」
ランタンの灯りと声に驚いたのか、天井にぶら下がっていた数匹のラージバットが、一斉に飛び掛かってくる!
「まあ、状況は不利だけど頑張るしかないよ♪」
龍叱爪を着けた拳を構えるシャラ。空を飛ぶラージバットを相手にするには、何とか地面に叩き落としたい所である。
「はい、何も無いところから矢がー♪ ‥‥ラージバットが相手では手品の見せがいがありませんねぇ」
少し寂しそうに、しかし的確に矢を射る高麗。
「‥‥アイスブリザード!」
すかさず、攻撃魔法で迎撃するエルドリエル!
更に『SCROLLofアイスブリザード』を使って援護するラグナス!
「よ〜〜〜し。殺っちゃうぞぉ!!」
いきなり狂化してしまったのか、ウォーアックスを振り回すテンペル!
「人を襲うのなら退治するしかありません。‥‥滅せよ!」
自らの扱える最大威力の『ブラックホーリー』を放つピノ!
物陰に見を潜め、射撃するグイド!
「あはははははは〜〜抹殺抹殺〜〜♪」
ブンブンと『スマッシュ』でウォーアックスを振るうテンペル!
なかなか当たらないものの、当たったときのダメージはそれを充分補っている!
「水の精霊よ‥‥我に従え‥‥。汝が力を以って我が敵を撃滅せよ!」
『ウォーターボム』を放つユーリアス!
同じく、エルドリエルも『ウォーターボム』に切り替えての魔法攻撃!
「‥‥私、あんまり蝙蝠って好きじゃないのよね。鼠っぽい顔してるし」
そう言って苦笑するのだった。
冒険者達も無傷では済まなかったが、ラージバットを一匹ずつ確実に仕留めていった。
だが、そこでラージバットが一匹、洞窟の外へ飛び出そうとしている!
「Key〜〜ッ」
ここで逃がすわけにはいかない!
高速詠唱で『ウォーターボム』を放つユーリアス!
「「「逃がさない!」」」
更に、グイドと高麗の『シューティングPA』、ラグナスの長弓「鳴弦の弓」から放たれた矢が、ラージバットに突き刺さる!
「Ki〜〜」
たまらず墜落したラージバットに飛び乗り、龍叱爪による『ストライク』を叩き込むシャラ!
こうして冒険者達は、ラージバットを一匹残らず退治する事に成功した。
「人を襲う事さえしなければ討たれずに済んだものを。襲う相手を間違えたな」
死骸からでも伝染病媒介の可能性があると考え、焼却処分を提案するピノ。
「これで病気の流行が治まってほしいです‥‥」
そう心から祈るユーリアス。そして負傷した仲間達を応急手当てしていく。
「痛〜いよ〜」
正気に戻ったテンペル。狂化して無茶な戦い方をしたせいか、一番傷が深いようだ。
ユーリアスは、快くリカバーポーションを提供し、全員の手当てを終えた。
「準備完了だ」
ラージバットの死骸を集め、同じく集めてきた薪をセットするグイド。
「禍根は‥‥全て潰して置かないと、後で後悔するからな」
その薪に火を点けるラグナス。
これで流行病の元凶を断つ事ができたはずである。
村へ戻った冒険者達は、念のためシギの診察を受けておいた。
「ユーリアスさんの手当てが良かったようですね」
病気には感染していないとシギは太鼓判を押した。
このまま彼は暫く村に逗留するため、用意しておいた食料を渡し、冒険者達を送り出した。
その後、村を襲った流行病は、シギ医師によって完全に撲滅されたそうだ。
病を媒介したラージバットを退治した冒険者達もまた、村では英雄として語られるようになったそうである。