【聖杯戦争】紅茶男爵と筋肉騎士団

■ショートシナリオ


担当:紅茶えす

対応レベル:6〜10lv

難易度:やや難

成功報酬:4 G 9 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:07月19日〜07月25日

リプレイ公開日:2005年07月20日

●オープニング

 先の聖杯探索の折り、ゴルロイスの出現によりウーサー・ペンドラゴンの不実が明らかにされ、その不穏につけこむように、有力な諸侯であるロット・オークニーがイギリスの各貴族に揺さぶりを掛けている。
 これに応じて、オクスフォード侯爵を始めとするキャメロット近くの領主達が反乱の動きを見せ、冒険者ギルドはアーサー王に協力する一翼として、この戦いに参加する事になる。

 キャメロットから南西二日ほどの所にギルフォードという街がある。
 ギルフォード男爵邸。紅茶男爵と執事の会話。
「大変なことが起こりつつあるようだな。我が輩も意志を示さねばなるまい」
「我々は男爵様の決定に従います」
「忠誠心、有り難く思うぞ。さて、ギルフォードに利をもたらすのは、アーサー王か、それともオクスフォード侯爵か‥‥。我が輩の決断にこの街の命運がかかっておるのだな‥‥」
 紅茶男爵はバルコニーへ出ると、空を、そして愛する街並みを見渡した。
「だが、我がギルフォードは参戦するにしても戦力に乏しい。そこで、この機に在野から騎士団を登用したいと考えておるのだ」
「在野の騎士団で御座いますか?」
「以前、『タイガースープ』なる珍味を味合わせて貰ったレックス亭の店主から、ある騎士団の推薦を受けてな。キャメロットを中心に、仕官を夢見て、護衛任務やモンスターの退治などをしておったそうなのだが、縁あって、現在ギルフォードの街の付近で野営しているらしいのだ」

 所変わって、筋肉騎士団野営地。
 なぜか旗持ちの掲げる軍旗にはジャパン語で『天手力男神』と力強く書かれている。
 今日も、照りつける太陽の下、筋肉騎士達が鍛錬に励んでいた。
「諸君、朗報だ! かの筋肉料理人レックス殿が、我ら筋肉騎士団をギルフォード領主様へと推薦してくれたそうだ!」
「「「おおっ!」」」
「我らの悲願であった仕官のチャンスが巡ってくるかもしれん! より一層、筋肉鍛錬に励むように!」
 汗を滴らせ、気合いの入ったポージングを交えた会話。これが彼らの日常であった。

 そして、ここは冒険者ギルド。
 冒険者達が仕事の斡旋を求めて集う場所である。
「仕事の斡旋か? キミ達ならば信用できそうだな。重要な依頼があるんだ」
 真剣な面持ちで冒険者ギルドのおやっさんが依頼書のひとつを見せる。

『ギルフォードの街へ赴き、領主ギルフォード男爵に、アーサー王の味方として参戦するよう交渉するのが諸君の任務である』

 わずか一文であったが、それが重要任務である事は伝わった事だろう。

●今回の参加者

 ea0123 ライラック・ラウドラーク(33歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea0187 空魔 玲璽(34歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea0734 狂闇 沙耶(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea3285 ガゼルフ・ファーゴット(25歳・♂・ファイター・エルフ・ノルマン王国)
 ea5034 シャラ・アティール(26歳・♀・ファイター・人間・インドゥーラ国)
 ea5153 ネイラ・ドルゴース(34歳・♀・ファイター・ジャイアント・モンゴル王国)
 ea7694 ティズ・ティン(21歳・♀・ナイト・人間・ロシア王国)
 ea9515 コロス・ロフキシモ(32歳・♂・ファイター・ジャイアント・ロシア王国)

●サポート参加者

ガフガート・スペラニアス(ea1254)/ クラム・イルト(ea5147

●リプレイ本文

 ギルフォードへと出発する冒険者達。
 ファイターのガゼルフ・ファーゴット(ea3285)を見送りに現れたクラムは、調べてきた筋肉騎士団の情報を話す。概ね評判は良く、隊長の実力もなかなかだという。少々暑苦しい連中らしいが‥‥。

 道中、ファイターのネイラ・ドルゴース(ea5153)が食料を準備し忘れていた事に気付くが、余分に用意していた仲間達によって救われる。
 そんな事もありつつ、ギルフォード男爵邸。
 冒険者ギルドからの依頼とあって、滞り無く会見となった。
「おひさしぶりだね!」
 元気に挨拶するファイターのティズ・ティン(ea7694)。
「お久しぶりです、男爵様。この度はとても重要な依頼で訪れました」
 続いて、ファイターのコロス・ロフキシモ(ea9515)。紅茶男爵に、アーサー王の味方として参戦するよう説く。
「ふむ、冒険者ギルドがアーサー王側についたか。我が輩も常々、冒険者達とは良好な関係を築いていきたいと思っている。よろしい、ギルフォードは全面的にアーサー王を支援し、決して裏切りはないと誓おう」
 その返答に、少し拍子抜けしつつも任務達成に喜ぶ冒険者達。
 しかし、そこまで事は甘くは無かった。
「だが、我がギルフォードは戦力に乏しく、軍を派遣する余裕はないのだ。そこで‥‥」
 男爵は参戦の条件として、在野の筋肉騎士団を登用する書状を冒険者達へと託す。
「諸君の目で、筋肉騎士団の実力と忠誠心を見極めてくれたまえ」
「どうして、筋肉騎士団なんかがいいの? だって、あれは騎士じゃないよ。どちらかというと山賊ってかんじだよ。やっぱり騎士って云ったら、顔がよくないとね」
 筋肉騎士団とも面識あるティズの少し勘違いな意見に、苦笑する男爵。
「顔で騎士が務まるかどうかを判断するものではないぞ。それに、ティズ君も知っているレックス亭主人の推薦もあってな」
「実力と忠誠心を見極めるって‥‥結構難しい依頼だよね」
 そう呟くファイターのシャラ・アティール(ea5034)であった。

 こうして、筋肉騎士団野営地へとやってきた冒険者達。
「随分とご無沙汰になったが、今回は仕官話を持ってきたぞ。隊長」
 筋肉隊長と引き分けた漢、武道家の空魔玲璽(ea0187)。
「レックス殿から話は聞いていたが、使者がキミ達とは思わなかったぞ」
「また会ったな」
 そう言う隊長に挨拶するコロス。
「紅茶男爵が騎士にって言ってるんだけど、その格好じゃ、紅茶男爵が見たら幻滅しちゃうよ」
 ティズの言葉に、騎士の嗜みと用意していた礼服に着替える筋肉騎士達。
 仕官の夢が叶うと喜んでいるが、溢れる筋肉に礼服がはち切れそうだ‥‥。
「これを男爵の居る屋敷で待っているガゼルフ殿の所に運んでくれ。くれぐれも荷物の中身は見ないように‥‥何があってもな」
「試験みたいなものだ」
 鷹の入った箱を渡す忍者の狂闇沙耶(ea0734)に、空魔が付け加える。
「承知した」
「絶対に中身を見てはいけない、たとえ途中で何があっても紅茶男爵を信じる事」
 出発する筋肉騎士団に念を押すシャラであった。

「最近は暑い日が続くってのに‥‥また暑苦しい依頼を受けちまったなぁ」
 眼帯やバンダナで賊っぽい服装をし、筋肉騎士団の様子を見るファイターのライラック・ラウドラーク(ea0123)。
 筋肉騎士団と別行動をとったシャラや沙耶と合流し、頃合いを見計らって躍り出る!
「おい、その荷物を渡してもらおうか?」
 黒子頭巾、ブラックローブの黒ずくめで、声色を変えている沙耶。
「むっ、賊か!? 我ら筋肉騎士団の前に現れたが運の尽きだ!」
 隊長以下、全員でポージング威嚇!
「我等はラヴクラフトという盗賊団さ。我はリーダーのナイアルラトホテップだ。ある御方がその荷物を欲しがっていてな。なに、ただとは言わない。お前等の望みの物を渡してやる。例えば‥‥金や権力とかをな」
「そんな事で依頼を反故にしては、筋肉騎士団の信用に関わる!」
 毅然と答える隊長。
「お前達は知らないだろうが‥‥その荷物を届けると大変な事になる」
 フェイスガードで顔を隠したシャラ。
「これは信頼できる人物から預かった物だ」
 そう言って、同行する冒険者達を見る隊長。
「あの男爵はお前達を捨て駒として使うつもりだ。荷物の中身を確かめるが良い」
「あの男がどんな男か知ってるのか? お前等の思う様な人間ではないぞ」
 更に揺さぶりをかけるシャラと沙耶。そう、これは忠誠心を試すため仕組んだ事だ。
「何故、事情を知っている‥‥? さては男爵を陥れ、我らを引き抜こうとしているのだろうが、その手には乗らんぞ! 成敗してくれる!」
 筋肉騎士団の方も紅茶男爵が仕官に値する人物かは調べていたのであろう。彼らの心は揺らぐことなく、戦闘に突入!
「蝶の様に舞い、ハエの様に回避!」
 実力を見ようと『オフシフト』で回避に専念するライラック。筋肉騎士の攻撃を華麗に避ける。
 筋肉騎士団は、陣形も技量も荒削りのようだが、有り余るパワーで賊に扮した冒険者達を追い詰めていく。
 たまらず、『微塵隠れ』で逃亡する沙耶。
「ちょ、タンマ! ストップ! ブレイクタイム!」
 ライラックも数人に囲まれ、正体を明かすのだった。

「なるほど、我らの忠義と誠意を試していたのだな‥‥むっ、何者だ!?」
 男爵邸の前で待っていたのは、頭に大きな葉を二つ付け、緑地に下手なジャパン語で『茶』と書いた服装のガゼルフ。
「ご苦労だった。我が名は『緑茶剣士』。さあ、荷物を頂こう」
 敢えて受取人として相応しく無い恰好をしているのだ。
「どうした? 私が怪しい人物に見えるのか?」
 どう見ても怪しい。
「これも試験の一環か‥‥? 偽者ではなかろうな!」
 ポージングで迫る隊長。
「‥‥だから受取人は俺なんだって〜。だから荷物ちょーだい」
 少し引きつりながら言うガゼルフ。
 筋肉騎士団のポージングに囲まれ、耐え難い尋問の末、信用されたガゼルフに箱を渡して第一試験無事クリア!
 箱の鷹を解放してやり、次なる試験の説明をする沙耶。
 森の中を逃走する冒険者達を捕縛するというものだ。
 ライラックとシャラは第一試験で実力を認めたらしく、見守っている。
「森なら任せとけ〜っ!」
 気を取り直したガゼルフが、ヤル気満々で走り出す。
「沙耶、ついてくるなら遅れるなよ」
 沙耶を伴って移動する空魔。
 汚れないよう礼服を脱いだ筋肉騎士団は、山狩りの要領で捜索を開始した。

「あたいは吟遊詩人じゃないからね、拳で試させてもらうよ」
 逃げずにいたネイラと、
「肉体だけが強靭でも意味がない! 最も大切な事は! 『精神の強靭さ』なのだ!! 見極めてやろう、それがおぬしらにあるかッ!!」
 ウォーホースに騎乗したコロス、そして、ティズがが現れ、闘いを挑む!
「出会ってしまった筋肉同士、戦う場所も理由も問題はないだろう。野試合だから別に素手じゃなくとも構わないよ」
 素手で隊長に向かっていくネイラ!
 心意気を汲んだ隊長が素手で応じる!
「見事この俺を捕らえてみせよ! ムオオオオオッ!!」
 馬上から攻撃を仕掛けるコロス!
 筋肉騎士に勝るとも劣らない勢いでラージクレイモアを振るうティズ!
「投げ技はこういうやり方もあるんだ!」
 『スープレックス』で樹木に叩きつけるネイラ!
「やるな、女性ながら筋肉騎士団に欲しいところだ!」

 暫しの戦闘の後。
「怯まず、この俺に反撃してきたか‥‥見事だ」
 『精神の強靭さ』を認めたコロスが下馬し、ティズも投降する。
「試合では無いからと言い、磨いた五体の以外のものに頼みをおく、そんな性根が技をくもらせる、があんたはそれをせず肉体だけで闘った。それだけで十分合格さ」
 全力を尽くし、隊長の心意気を認めるネイラ。しかし、頷きながらも目を閉じている隊長に気付く。
「すまぬ、本気の決着をつけたいだろうと思ってな‥‥」
 どうやら、途中でネイラの衣服が破れてしまい、その時から目を閉じていたらしい。
「馬鹿! そういうことは早く言うんだよ!」
 慌てて胸を隠し、顔を赤らめるネイラであった。

 頑丈そうな枝を選んで上に隠れた空魔と沙耶。
 予め拾っておいた石を遠くへ投げて音を立て、筋肉騎士団を撹乱している。
「さ〜て。見つけられるかな〜?」
 同じく、高い木の上で、緑色の布を被って隠れているガゼルフ。
 彼らの発見は困難を極めたが、全ての木を体当たりで揺らしていくという筋肉騎士団らしい山狩りによって、ついに発見された。
「ははは。見つかっちまったか〜。俺の負けだな」
 そう認めるガゼルフ。
 発見後も逃走を続けた空魔と沙耶を筋肉騎士団全員で包囲を狭めていき、ついに第二試験もクリア!
「ギルフォード男爵がアーサー王側に付こうがオクスフォード侯爵側に付こうが、お前達はそれに従わなければならない! それがたとえ自らの意に反していようと負け戦であってもだ! その『覚悟』と『忠誠心』がおぬし等にはあるかッ!?」
「紅茶男爵は間違った決断などされぬだろう。そう信じることができる人物だからこそ、我らは忠誠を誓うのだ!」
 最終確認するコロスに、ポージングで答える隊長。
「尊敬しちゃうな☆」
 騎士に憧れるシャラが感銘を受けている。
「俺は初めから推薦に文句は無いから、問題無い」
 そう言って紅茶男爵からの書状を渡す空魔。
 書状にはギルフォード領主として、筋肉騎士団を登用したいとの旨が記されていた。

 冒険者達と共に、紅茶男爵に会見する筋肉騎士団。
「彼らは見た限り十分と判断した為、書状を渡したよ。極力、悪い様にはしないでくれるとありがたい」
 そう口添える空魔。
 紅茶男爵に対し、臣下の礼をとる筋肉騎士団。彼らはギルフォード男爵の名の下、イギリス王国のため、アーサー王の味方軍として奮戦する事だろう。
「この戦、どう転びますかな‥‥それでは」
(「此度の戦、派手になりそうで楽しみだ‥‥」)
 一礼するコロス。戦は冒険者にとっても名をあげるチャンスとなるだろう。
 紅茶男爵は、ギルフォード筋肉騎士団を率いてアーサー王に味方する旨をしたため、冒険者達へと託したのだった。

 キャメロットへの帰路。
「やっぱり、かっこいい騎士様の所に仕えたいな‥‥☆」
 理想の騎士を夢見るティズ。
「もう筋肉は勘弁だな‥‥細くて可愛い美少年見ないと死にそうだ‥‥」
 ライラックがぼやく。
 最後の最後で、帰りの食料が足りないことに気付いたライラックと空魔。ネイラの事ばかり笑ってはいられない。そういった準備を怠らない事も冒険者としては大切だ。
 いずれ彼らが英雄と呼ばれる日が来る事を願っている。