オーグラの花嫁

■ショートシナリオ


担当:紅茶えす

対応レベル:9〜15lv

難易度:普通

成功報酬:5 G 85 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:08月07日〜08月15日

リプレイ公開日:2005年08月10日

●オープニング

 キャメロットから南西二日ほどの所にギルフォードという街がある。
 街の周辺には農耕や狩猟を中心とした小さな村が点在しており、森林地帯が多い。
 最近、この地方ではモンスターによる被害が頻発していた。

 ここは冒険者ギルド。
 冒険者達が仕事の斡旋を求めて集う場所である。
「仕事の斡旋か? この依頼を引き受けてくれないか?」
 いつものように冒険者ギルドのおやっさんが依頼書を見せる。

『近頃、村の猟場が何者かに荒らされて困っていたのですが、怖ろしい事に、村の猟師の一人が巨大なオーガを見たと言うのです。
 村の言い伝えに『巨大なオーガには花嫁を捧げて村を守るべし』というのがありまして‥‥私の娘が自ら立候補してしまったのです。
 娘は責任感が強く、私が村長を務めている事もあり、そう言い出したのでしょう。
 ですが私は‥‥親バカと言われようとも娘を助けたいのです。
 どうか、オーガを退治し、娘と村を救ってください』

「希にあるんだよな、こういう迷信めいた事を本当にやっちまうよう閉鎖的な村が‥‥。花嫁なんて与えたって、村が守れるとは到底思えない。
 それと、依頼内容を見てると普通のオーガじゃなさそうだ。もしかすると、オーガの中でもとびきり凶悪なオーグラってヤツじゃないかと思うんだ。気を付けてな」
 こうして新たな依頼を受けた冒険者達であった。

●今回の参加者

 ea0123 ライラック・ラウドラーク(33歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea0780 アーウィン・ラグレス(30歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea0827 シャルグ・ザーン(52歳・♂・ナイト・ジャイアント・イギリス王国)
 ea3486 オラース・カノーヴァ(31歳・♂・鎧騎士・人間・ノルマン王国)
 ea3731 ジェームス・モンド(56歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea3827 ウォル・レヴィン(19歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 ea3970 ボルジャー・タックワイズ(37歳・♂・ファイター・パラ・ビザンチン帝国)
 ea4868 マグナ・アドミラル(69歳・♂・ファイター・ジャイアント・ビザンチン帝国)

●サポート参加者

ヴァージニア・レヴィン(ea2765)/ 逢莉笛 舞(ea6780

●リプレイ本文

「親と村を救いたい娘さんと、そんな娘さんを救いたい村長。互いを思いあう、いい親子だよな」
 必ずオーグラを倒し、二人と村を救ってみせると誓うナイトのウォル・レヴィン(ea3827)。
 彼に、険しいと言う村までの道など、ギルドで分かる範囲の情報を伝える舞。
「村を苦しめる悪いモンスターをやっつけろ♪」
 弟のウォルをよろしくねと頼み、明るく歌って見送るヴァージニアであった。

 険しい山道を行く冒険者達。
「こんどのあいてはオーグラ〜。でっかいオーガだ手ごわいぞ〜。
 パラの戦士がやっつける〜、花嫁さんは渡さない〜♪」
 鼻歌を口ずさむファイターのボルジャー・タックワイズ(ea3970)。
 予め道のりを調べておいたおかげか、迷うことは無かった。

 村に到着した冒険者達は、オーグラの目撃情報を集めると共に、村長親子の説得を試みた。
「この村は、他の村や街との交流も少なく、余所者の力を借りず、古くからの言い伝えを守ってきたのです。今回の件も本来ならば、そうすべきなのですが‥‥」
 そう言って、『巨大なオーガには花嫁を捧げて村を守る』という言い伝えを話し始める村長。昔、同じ様なことがあったらしいが、真偽は定かではないようだ。
「なるほどね‥‥要はバカげた迷信ってコトか」
 ファイターのアーウィン・ラグレス(ea0780)が呟く。
「言い伝えは、所詮言い伝え、鬼には鬼の論理が有る、鬼に言われたのでは無いのに生贄を捧げても効果は無いぞ」
 そう説得するファイターのマグナ・アドミラル(ea4868)。
「‥‥だが、村長という立場上、言い伝えを無碍にも出来ない。いや、なにね、嫁いでいってしまってるとはいえ、うちにも娘がいまして‥‥お気持ちは良く。ご安心ください、人食い鬼は俺達で退治しますよ」
 にかっと笑う神聖騎士ジェームス・モンド(ea3731)。
「宜しくお願いします」
 頭を下げる村長。
 続いて村長の娘の説得だ。すでに花嫁衣装を着込み、落ち着いたように振る舞っているが、内心は恐怖でいっぱいだろう。
 オーグラの恐ろしさを説き、自分が替え玉になると名乗り出るファイターのライラック・ラウドラーク(ea0123)。正直な所、一介の村娘では戦闘の邪魔になるのは間違いない。
「お父さんを思う気持ちは分かるけど、もっと自分を大切にしなよ。俺達に任せておきなって! 必ずオーグラをやっつけてみせるからさ!」
 安心させるよう、明るく微笑むウォル。
「村を護りたいという気持ちは良くわかる、でも、ご両親の事を考えてちょっと待っては貰えませんかね、両親にとって君は何物にも代えられない宝なんだから‥‥」
 優しい眼差しで説くジェームス。
 娘の方も冒険者達の説得により、彼らにすべてを任せる事にした。
 そして、村長親子を伴い、村人達を説得するアーウィン。言い伝えが迷信であること、村長の娘が生贄になる必要性が無いことを身振り手振りも交えてアピールする。
「花嫁と見せかけた囮を出して、やっつけるって寸法だ」
 続いて、ウォルがオーグラ退治の作戦を説明する。
 最初、余所者など信用できないと思っていた村人達も、やはり生贄にする娘が気がかりだったのか、協力を拒みはしなかった。
「生贄の祭壇には食料と酒を多めに用意しておく必要があろう」
 そう呼びかけるナイトのシャルグ・ザーン(ea0827)。
 こうして、オーグラを誘き寄せるための準備を進めていったのである。

「くれぐれも無茶はするなよ」
「どこぞの村娘なんかより、あたしが行った方がオーグラも喜ぶってもんよ」
 心配するウォルに、自信たっぷりに答えるライラック。得意の家事で手直しした花嫁衣装に身を包み、供物の備えられた急造の祭壇へと上っていく。
 物陰に隠れ、いつでも矢を番えられるよう待機するファイターのオラース・カノーヴァ(ea3486)。木の上にはウォル。そう、仲間達は皆、周辺に隠れているのだ。
 待つこと暫し。
 やがて、花嫁や供物の匂いを嗅ぎつけたのか、オーグラが姿を現した。幸い、一匹だけのようだ。
 冒険者達に緊張が走る。
 少し、警戒したように、祭壇へと近づくオーグラ。
「不束者ですが、よろしくお願いしますぅ‥‥」
 そう言って、酒を差し出すライラック。
「UGaッ!」
 乱暴に酒をひったくるオーグラ。一口飲んで、ニヤリと笑ったのだろうか。ライラックを捕まえようと手を伸ばす。
 それを避けるライラックだが、予想以上の鋭い動きに、花嫁衣装が裂けるが怪我は無さそうだ。
 そのまま、邪魔になる花嫁衣装を脱ぎ捨てるライラック。オーグラも今度は棒を使って叩き伏せようと攻撃を仕掛けてきた!
「やぁーん、積極的なアピールの仕方ね!」
 余裕の言葉とは裏腹に、紙一重でオーグラの攻撃を避けるライラック。彼女の回避術と『オフシフト』を駆使してなお、捌き続ける事は難しいだろう。
「UGa‥‥?」
 だが、酒を飲み干したオーグラの動きが、目に見えて鈍った。
 それは、ウォル提供の神酒『鬼毒酒』だったのだ。その名の通り、オーガが飲めば毒となるのだ。

 勿論、周辺に隠れていた仲間達も、すでに行動を起こしていた。
「んじゃ、作戦通りに‥‥皆の衆、デカブツ狩りの時間だぜ!」
 アーウィンが飛び出す!
 それを追い越すように、オラースの第一射が、オーグラに飛来する!
 彼の射撃術では命中はしなかったが、一瞬、気を逸らす事は出来ただろう。
「行け行け行け!!」
 仲間達を囃し立て、第二射!
 更に、腕が伸びてきたかと思うと、オーグラにチェーンホイップが絡みつく!
「仲間には指一本触れさせんよ‥‥自慢の怪力も、近づかねば生かせまい」
 にかっと笑ったのは、『ミミクリー』で腕を伸ばしたジェームスだ!
「暗殺剣士推参、静かなる暴風の斬撃を土産とするが良い」
「オーグラが強いか、パラの戦士が強いか、勝負だ!!」
 すでに忍び足で、かなり接近していたマグナが斬馬刀を、ボルジャーが日本刀を抜き放つ!
 驚いたように、たたらを踏むオーグラ。だが、そちらにも、
「貴様などに人の命をやるわけにはいかぬ。代わりにこの刃、ぞんぶんに喰らうがよい」
 『オーラエリベイション』を始め、四種のオーラを纏ったシャルグが立っている!
 そして、木から降り、近くに隠していた長弓「鳴弦の弓」を構えるウォル!
「この音色を聞きやがれ!」
 弦を掻き鳴らすと、更にオーグラの動きが鈍る!
 すでにオーグラは、冒険者達によって完全に包囲されていた。
「UGaッ!」
 絡みついたチェーンホイップを引き剥がし、闇雲に棒を振り回すオーグラ!
 だが、誰かの方を向けば、誰かに背後をとられる。
 正面に立つ者が防御し、側面や背後の者が攻撃を仕掛けるのだ。
「回復役がおらぬゆえ慎重に戦わねばならぬな」
 オーグラが背を見せた所に、シャルグが『スマッシュEX』を叩き込む!
「『荒れ狂う旋風』の刃‥‥受けてみるかい?」
 仲間の攻撃の間を埋めるように仕掛け、スキを見せないよう突きを喰らわせるアーウィン!
「おいらにまかせろ!」
 続いて、三連斬りを決めるボルジャー!
「ウィ! 行くぜ、ライラック」
 オラースも接近して、オーグラをそのままヘビーボウで殴りつける。元より格闘術の方が得意なのだ。
 一旦、安全域に離脱したライラックも隠し持っていた『エスキスエルウィンの牙』を構え、攻撃に加わる。
「お前さんに恨みはないが、これも一つの家庭の平和を守る為だ」
 包囲の輪を縮めていくジェームス。最早、オーグラに逃げ道はない。
「UGaaッ!」
「マグナ! 今だ、殺れ!」
 オーグラの『スマッシュ』を受け止めたオラースが叫ぶ!
 オーグラが体勢を立て直そうと、一歩下がった所には、マグナが回り込んでいる!
 トドメの『スマッシュEX』二連斬りにオーグラは倒れた。
「先頃の戦争を生き延びたギルドの精鋭に掛かれば鬼の一匹なぞ、袋の物と取るようなものだ」
 共に戦った仲間達を見渡すマグナに、皆が頷く。
 多少、返り血などで汚れてはいるが、大怪我を負わされた者はいないようだ。
「ひでぇツラしてるぜ」
 ライラックの顔についた返り血を『刺繍入りハンカチーフ』で拭うオラース。
 イイ雰囲気なのだが、残念な事にライラックの守備範囲ではないらしい‥‥。

 こうして冒険者達は、オーグラを倒し、村へと報告に戻った。
「この供物、勿体ねぇな‥‥せっかくだし祝勝会でもやっちまうか?」
 回収した供物を広げるアーウィンに、村長が頷く。
 村の平和を告げる宴会が始まった。
「パッラッパパッパ! おいらはパラっさ!!
 パラッパパラッパ! おいらはファイター!!」
 歌って踊るボルジャー。へたっぴぃだが愛嬌がある。
「旦那にするなら小さくて可愛い年下にしておけ」
「あはは、怖い鬼より、断然イイですね☆」
 何やら、ライラックに染められている村長の娘。
「村長、今度から言い伝えを『困った時はギルドに手紙』‥‥にはなりませんかね?」
 にかっと微笑むジェームス。
「それは名案ですな。そう言い伝える事に致しましょう」
 あっさり言い伝えを変えてしまう村長。良い傾向である。
「また何かあったら冒険者ギルドへ宜しくな!」
 明るく笑うウォル。キャメロットへと帰っていく冒険者達を笑顔で見送る村人達。
 心の中で彼らを英雄と讃えながら。