スライムパニック・リターンズ

■ショートシナリオ


担当:紅茶えす

対応レベル:9〜15lv

難易度:やや難

成功報酬:5 G 94 C

参加人数:8人

サポート参加人数:3人

冒険期間:08月29日〜09月04日

リプレイ公開日:2005年09月04日

●オープニング

 キャメロットから南西二日ほどの所にギルフォードという街がある。
 ギルフォード男爵家本邸の庭に、地震によって出現した穴は、謎の地下迷宮へと繋がっていた。

 冒険者達へと解放された迷宮では、現在、地下二階の探索が進められている。
 男爵邸執務室での紅茶男爵ティーズ・ギルフォード(ez1021)と執事の会話。
「地下二階の探索も、そろそろ大詰めのようだな」
「実は、冒険者達から報告がありまして‥‥」
 執事の差し出した報告書に目を通す紅茶男爵。
「何? 通路いっぱいにスライムが詰まっていて通れないだと?」
「そのようで御座います」
「そうか‥‥ならば、また冒険者ギルドに依頼を出さねばなるまいな」
「男爵様?」
 何やら楽しそうな表情の紅茶男爵に尋ねる執事。
「いやなに、また彼らの冒険譚を聞けるかと思ってな」

 ここは冒険者ギルド。
 冒険者達が仕事の斡旋を求めて集う場所である。
「仕事の斡旋か? 紅茶男爵様からの依頼があるぞ」
 いつものように冒険者ギルドのおやっさんが依頼書を見せる。

『これはギルフォード男爵家本邸に発見された地下迷宮探索に関する依頼である。
 地下二階の通路が『ゼラチナスキューブ』なるスライムによって占拠され、探索が進められなくなっているのだ。このゼラチナスキューブを撃破した冒険者パーティには報酬として賞金を出す事を約束しよう。
 地下迷宮で発見された財宝は、発見者である冒険者諸君に所有権を認め、諸君に不要な財宝がある場合は、男爵家が正当な報酬を支払って引き取るものとする。
 依頼達成後、もし良ければ、冒険者達と共にティータイムを楽しみたいと考えている。色々な冒険譚を聞かせてくれると嬉しい。
 ギルフォード男爵』

「地下迷宮の探索に必要になりそうな物はちゃんと用意しておけよ?
 スライムと戦った後は、装備の手入れも忘れずにな」
 こうして、新たな依頼を受けた冒険者達。
 ギルフォードの地下迷宮には、何が眠るのだろうか‥‥?

●今回の参加者

 ea0071 シエラ・クライン(28歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea0424 カシム・ヴォルフィード(30歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea0509 カファール・ナイトレイド(22歳・♀・レンジャー・シフール・フランク王国)
 ea1442 琥龍 蒼羅(28歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea2179 アトス・ラフェール(29歳・♂・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ea2890 イフェリア・アイランズ(22歳・♀・陰陽師・シフール・イギリス王国)
 ea3329 陸奥 勇人(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea9515 コロス・ロフキシモ(32歳・♂・ファイター・ジャイアント・ロシア王国)

●サポート参加者

ミル・ファウ(ea0974)/ アリスティド・ヌーベルリュンヌ(ea3104)/ 近藤 雅臣(ea4298

●リプレイ本文

「まいど〜、よろしゅうな〜」
 独特の挨拶と共に、にぱっと笑うレンジャーのイフェリア・アイランズ(ea2890)。
 一通り、挨拶を交わし、
「以前も迷宮に行ったそうですね。その時の事を教えてもらえませんか?」
 そう迷宮探索経験者に尋ねる神聖騎士アトス・ラフェール(ea2179)。
「‥‥どうやら前回以上に厄介な相手のようだな」
 志士の琥龍蒼羅(ea1442)。以前、レンジャーのカファール・ナイトレイド(ea0509)と共に迷宮地下二階でスライム退治を経験している。
「久しぶりだが、相変わらず色々いるんだな。まぁ挑戦し甲斐もあるってもんだが」
 大胆に笑う浪人の陸奥勇人(ea3329)。
「ゼラチナスキューブ、何処からそのようなものが湧いて出てきたのか」
 ファイターのコロス・ロフキシモ(ea9515)。彼らもそれぞれ迷宮探索を経験している。
「炎で有効な打撃を与えられるモンスターだと楽なのですけど‥‥?」
 火の精霊魔法を得意とするウィザードのシエラ・クライン(ea0071)。残念ながら、ゼラチナスキューブの詳しい知識を持つメンバーはいないようだ。
「私がギルフォードの遺跡探索から遠ざかって早半年以上‥‥なのに、まだまだ先の長そうな展開だよね。みんな、気を付けてね」
 そう言って見送るミル。
「スライムか。ジャパンに似た食べ物があったぞ?」
 同じく、見送りにきたアリスティド。カファールに「機会があったら、買ってきてやろうか?」などと話している。そう例えられると、笑って強敵に立ち向かえそうな気がする冒険者達であった。

 ギルフォードへ到着。
 ここは男爵邸の庭、迷宮入り口の管理小屋。
 地図を受け取り、場所を確認する探索経験者達。
「迷宮について注意点等ありますか?」
 尋ねるアトスに、管理人が色々説明してくれる。
 出発前、管理人に女性と間違われ、
「‥‥男だよ。僕は」
 いつものように訂正を入れるウィザードのカシム・ヴォルフィード(ea0424)であった。

 隊列を組み、迷宮へと入る冒険者達。
「ってことで、きばってくで〜」
 隠密行動に長けたイフェリアやカファールを中心に周囲を警戒、ランタンは複数点灯し、アトスやシエラらと交代で持つ。
 地下一階を最短ルートで抜け、地下二階を暫く進み、小部屋で休息をとる冒険者達。
「順番に見張りしたほうがいいよね。『コロりん、おいら』『アトりん、シエりん』『蒼りん、カシりん』『勇りん、イフェりん』って感じで組めば大丈夫?」
 独特の呼び名で、見張りの組分けを決めるカファールであった。

 そこからの探索は、シエラの『バーニングマップ』で残ったルートを頼りに進む。
「頭から突っ込まないようこんなもん持ってきたが、役に立つかね?」
 箒で先を掃きながら進む勇人。
 他のスライムにも注意し、分担して周囲を警戒する。
 長い通路では、小石を投げて確認するカファール。
 着地音が聞こえない‥‥?
 代わりに何かが這いずる音が聞こえてきた。
 ランタンの灯りに照らされ、出現したのは通路を埋め尽くすスライム、ゼラチナスキューブだ!
「おわっ、ホンマに壁一杯やな〜」
 驚きと感心が同居したような表情で言うイフェリア。
「なるほど通路を塞ぐだけはあるデカさだぜ。そんじゃまあ、退治を始めようか!」
 Gパニッシャーを手に、前衛に躍り出る勇人。
「身の内に渦巻くもの‥‥憤る原初の力よ。燃え盛る炎となりてこの者の力となれ。フレイムエリベイション!」
 自らと、前衛から順に魔法を掛けていくシエラ。
「相手が何者であろうと、負けぬ!」
 魔法を貰って、前に出るコロス。
「大きいヒト頑張って〜〜」
 灯り持ちに専念するカファール。
(「スライムは初めて見るし、どんなものか興味はあるけど‥‥あまり近づくと危ないから近づかないでおこう」)
 興味より安全を優先し、後方支援に徹するカシム。

 冒険者達を呑み込もうと、少しずつ前進してくるゼラチナスキューブ。
「ムウゥ‥‥」
 呑み込まれないよう、攻撃と後退を繰り返しながら戦うコロス。
 前衛はかなり戦いづらそうである。だが、前衛が居なければ、ゼラチナスキューブの前進速度が鈍らず、後衛も満足に魔法を使う事が出来ない所だ。これが冒険者パーティの連携の真価だろう。
「伊達や酔狂で紅の魔女を名乗っているわけではないんです、炎の扱いに絶対の自信があればこそ‥‥ファイヤーコントロール!」
 炎を操り、ゼラチナスキューブを焼くシエラ。焦げた臭いがするが、有毒なガスでは無さそうだ。そこそこ効いている。
 更に、蒼羅とカシムの『ウインドスラッシュ』がゼラチナスキューブを刻む。
 アトスも『ホーリー』で攻撃しつつ、いつでも『リカバー』で負傷者を回復できるよう立ち回る。
「これでも喰らえっちゅ〜ねん!!」
 空中から『SCROLLofライトニングサンダーボルト』で貫くイフェリア!
 攻撃は効いているようだが、ゼラチナスキューブの見た目はダメージの度合いが分かりにくく、前進も完全には止まらない。
「コアギュレイト!」
 そこで、アトスの神聖魔法によって、ゼラチナスキューブの前進が止まった!
「この雷刀ならば‥‥」
 『ライトニングソード』で切り込み、前衛に加わる蒼羅!
「おらおらおらおら、乱れ打ちだっっ!」
 太鼓を叩くようなノリで、連打する勇人。インセクトスレイヤーの効果も効いている!
「ズタズタにしてくれよう! ムンオオオオオオオオッ!」
 気合いの声と共に『スマッシュ』で聖者の槍を突き下ろすコロス!
 冒険者達の猛攻に、通路を完全に塞いでいたゼラチナスキューブの輪郭が崩れ、べちゃっと広がる。それに巻き込まれないよう慌てて退避する冒険者達であった。

「ふう、予想通りのしぶとさだったな‥‥」
 汗を拭う勇人。しばらく様子を見てから、ゼラチナスキューブの残骸を確認する。
「厄介なものだな」
 『鍛冶・武具手入れセット』を出すコロス。各々、手入れは怠らない。
 また、ゼラチナスキューブの体内には、幾つかの品物が溶けずに残っていた。
「最近食べられちゃったヒトの物だったら‥‥家族のヒトに返したほうがいいよね」
 犠牲者の遺品に関してはカファールの意見で一致。
 他に、何かの奉納品と思われる品物が数点。その中に剣が一振りあった。
 無銘だが、魔法が掛かっているようだ。
 すでに、魔法の武器を持つ勇人やコロス、『ライトニングソード』の使える蒼羅、ウィザードのシエラやカシム、シフールのカファールやイフェリアには必要のない物だ。
「本当に私が頂いても良いのですか? 銀製の剣があればと期待していましたが、魔法の剣とは‥‥」
 嬉しそうに聞き返すアトス。貴重な回復魔法を持ち、最後にゼラチナスキューブの動きを止め、トドメのキッカケを与えた彼を誰もが認めているのだ。
 冒険者達は更に、通路の先に地下三階への階段を発見。どうやら、その先は教会施設らしきものと一体化した造りになっているようだが、ここまで探索すれば今回は充分だろう。

 地上に帰還した冒険者達は、紅茶男爵のティータイムに招待された。
「再びお会いできて光栄です、男爵様」
 挨拶するコロス。全員着席し、紅茶を一口すする。
「う〜ん。この香りは落ち着きます。味もしつこく無く、爽やかなのにしっかりとしている。実に素晴らしい!」
「おお、この違いを分かってくれるか! 今日は新しいブレンドなのだ」
 アトスの感想に胸を張る男爵。紅茶好きなシエラも舌鼓を打っている。
 そして、今回の顛末を面白おかしく報告するアトス。
「その剣もアトス君ほどの神聖騎士が持つならば本望だろう。今後の冒険に役立ててくれたまえ」
 そう言って、遺品の返却や他の品物の買い取りを約束する男爵。
「ゼラチナスキューブってね、アリりんから聞いたジャパンの食べ物にも似ていたの。それは、お茶によく合うんだって! 紅茶と一緒に食べても、美味しいかなぁ?」
「ほほう、ジャパンの。紅茶に合うなら是非取り寄せたいものだ」
 カファールの話から想像してみる男爵。ジャパン出身の蒼羅や勇人も加わって盛り上がっている。
「ううう‥‥しばらくスライムは見とぉないわ〜」
 だばーっと涙を流すイフェリア。よく食べ物を想像できるなぁと。

 続いて、聖杯戦争の話題を切り出すコロス。
「先の戦、見事アーサー王の勝利で幕を閉じましたな。あの筋肉騎士団の活躍も華々しいものだったと聞き及んでおります」
「我が輩も諸君と共に戦えた事を誇りに思う。筋肉騎士団もよく働いてくれた」
「戦は我等冒険者の名を上げる絶好の機会。再び起こって欲しい等とも考えてしまうものです‥‥不謹慎でしたかな?」
「戦で苦しむのは民、平和が一番だ。だが、冒険に心躍らせる気持ちもまた真実」
 そう言って、期待の目を向ける男爵。
 竪琴を爪弾き、『夢の竪琴』を取り返した話をする蒼羅に聴き惚れ、
「人間と同じ位のおっきさの蟻と戦ったことが‥‥」
「蟻とは極小さい生き物だと思っていた‥‥世界は広いものだな」
 カシムの話に目を輝かせる男爵。
 続いて、イギリスの別地方での冒険譚を話す勇人。シエラも一緒だったという暗殺計画を阻止した話には聞き覚えのあった男爵だが、その先の話は初耳だったようだ。
「あ、あと女性に良く間違われるので改善案とかあったら‥‥」
 そう訊いてみるカシムに、
「‥‥男性だったのだな、失礼」
 頭を下げる男爵。笑いが起こる。
「あいや、冗談だ。改善案か、やはり男性らしさと言えば筋肉か? 我がギルフォード筋肉騎士団と共に鍛錬‥‥」
「‥‥それは無理です」
 皆で知恵を絞ってみたが、実用的なアイデアは出なかったようだ。
 続いて、悪魔退治の話を語り、
「いずれは異国に赴く身。ですが、もう少しこの国で修練を積む予定です」
 そう締めくくるアトス。ティータイムもそろそろお開きである。
「そう言えばアトス君は筋肉騎士団名誉騎士だとか。ならば我が子も同然だ。だが冒険者は自由、我が輩に引き留める事はできん。旅立ち、名声を高め、そしてまたイギリスに戻った時は、冒険譚を聞かせてくれ」
 いずれ彼らが英雄となる事を願い、眩しそうに見つめる紅茶男爵であった。