●リプレイ本文
ギルフォードの未来を護る為、集結した冒険者達。
「にゅぅ、偽者が現れるのは有名人の常ですけれど、それがあんな方々とは‥‥」
溜息混じりに、志士の神薙理雄(ea0263)。
「今度は偽者か、次から次へとまあ色んなのが湧いて出るなあ、あそこ」
ギルフォード採石場を思い浮かべ、志士の閃我絶狼(ea3991)が呟く。
「前にも冒険者を騙る人達を相手にしましたが、無くならないものなんですね‥‥」
「ニセモノか‥‥。まぁ、ギルフォード戦隊は名乗った者勝ちなところがあるからな」
忍者の大隈えれーな(ea2929)の言葉に、ちょっと遠い目で呟く神聖騎士セオフィラス・ディラック(ea7528)。
「しかし名乗りをあげた以上、正義のために尽くすのがギルフォード戦隊の使命。それを果たさぬ不届き者には相応の裁きが必要だろう」
「ギルフォード戦隊を名乗って恥ずかしく無い様に、きっちり鍛え直してあげますのね」
続けて、そう決意表明するセオフィラス、理雄。
「ギルフォード戦隊は、正義を成す者に冠される名、それを悪用されたと有っては放っておけません」
集まった仲間達を見渡して、志士の沖田光(ea0029)。
「正義のヒーローが見返りを強要するなんて‥‥美学が無いわ!」
ぐっと拳握りしめ、ウィザードのレヴィ・ネコノミロクン(ea4164)。
「正義の味方の偽者かぁ‥‥そんな事は許せない! この私が正してやる!」
気合い充分、ファイターのミリランシェル・ガブリエル(ea1782)。
「ギルセピア‥‥お父様が守った場所を、不埒な偽者達が荒らすなど許せませんわ。歴代ギルフォード戦隊の意志を継ぐわたくし達が、アルファベットを名乗る者達を必ず追い払って見せましょう」
二代に渡り、ギルフォードを護るべく立ち上がった正義のナイト、セレナ・ザーン(ea9951)。
そう、今回は歴代のギルフォード戦隊に加え、正義の志しを持つ新メンバーも集まっているのだ。
「キャラかぶりな偽者は許しておけません! ‥‥もとい正義を名乗って無法を働こうという輩を見逃す訳にはいきません」
こほんと咳払いをするウィザードのアクテ・シュラウヴェル(ea4137)。
「正義の心を持つ者なのかどうかは、直接拳を交わせば分かる筈。しかし‥‥」
考えを巡らせているウィザードのユウン・ワルプルギス(ea9420)。
「彼らも偽者とはいえ、正義を語っている以上は正義同士で戦いたくないな‥‥」
そう言ったのは、僧兵の黄安成(ea2253)。どうやら、冒険者達は何か『作戦』を立てたようである。
「ギルフォード戦隊の偽者‥‥。とにかく相応のコトはさせてもらおう」
そうニヤリと笑ったのは、ナイトのアリアス・サーレク(ea2699)。
「まあロックのオッサンには予め事情を話しておいた方が良いだろうな」
そう指摘する絶狼。どうやら『作戦』がまとまったようである。
「‥‥の心得は常に堂々とひるまず、相手を見下す事、かねぇ」
何やら、そんなアドバイスをしているヴァルフェル。買ってきた小道具らしきものを配ったりしているが、果たして何なのだろうか‥‥?
出発前、秋の味覚満載の手作り弁当を妹に渡すルクス。
姉の見送りを受け勇気百倍で旅立つアクテ。
(「しかし、重要な採石場を守る依頼と聞いているが‥‥そこはかとなくノリがおかしいと感じるのはは気のせいだろうか‥‥? 妹もこのノリに染まってるような‥‥」)
ルクスは、そう首をかしげるのだった。
何はともあれ、真のギルフォード戦隊出動! ‥‥なのだろうか?
道中、セレナが保存食不足に陥るというアクシデントもあったが、そこは多めに保存食を用意していた仲間達によって救われていた。
そして、採石場避難所。今、ここにはアルファベットの姿はない。
「お久し‥‥でもないな。実は今回は‥‥」
秘密裏にロックと接触したのは、忍者の森里霧子(ea2889)である。
「わかった、何があっても黙って見守る事にする」
ロックの了承を得て、冒険者達は『作戦』を開始した。
舞台は採石場。たむろするアルファベット。
そこへ、二人の村娘と、護衛らしき男が駆けてくる。
その背後には『まるごとウサギさん』を着用し、追いかけてくる怪人の影!
「この『御奉仕怪人マイメイド』から逃げられると思って?」
そう名乗ったのは、えれーなである。念のため記しておくが、イギリスにおけるメイドは貴族令嬢の他家での花嫁修業や、貴族女性の他家での家事手伝いの事を言う。勿論、この場で怪人に対して、そんな冷静なことを言うヤツはいない。
「キー」
ジャパン語で『てしたー』と書かれた黒子頭巾の男も一緒だ。残念ながら、軽業は出来ないらしい。
中身はファイターのヲーク・シン(ea5984)のようだ。ジャパン語はそれほど達者ではないため、文字は蒼羅に書いて貰ったものだ。
更に、黒ずくめの旅装束で、同じくテシターに扮するユウンが続く。
「何で私まで追いかけられるの〜〜?」
追われているのは、ローブにエプロンを着けた村娘、どうやら理雄のようだ。因みに、えれーなに頼んでメイクアップもバッチリだ。
『なんだなんだ‥‥?』
すでに、ならず者としての本性がバレているアルファベットの面々が、けだるそうに立ち上がる。
「悪い人に追われているんです。どうか助けてください!」
そんな中、エースの胸に飛び込んで、瞳をウルウルさせたのは、もう一人の村娘に扮するレヴィ。
「奴等は俺一人では荷が重い‥‥。ギルフォード戦隊の噂は聞いている、力を貸してほしい」
彼女達の護衛役を担当する志士の琥龍蒼羅(ea1442)が、アルファベットに助けを求める。
「あの人達はこの指輪を狙っているの。たった一つだけ残った、母様の形見を‥‥」
そう言って、レヴィの見せたのは『マジックパワーリング』である。
(「これは値打ち物だな‥‥」)
エイチスが、そう目配せすると、アルファベットの表情にヤル気が感じられるようになった。明らかに動機は不純だが。
念のため、怪人達の方を見遣り、人数的にも勝てそうだと判断したのだろう。
「私達、ギルフォード戦隊アルファベットに任せなさい!」
エースが宣言し、陣形を組んでマイメイド=えれーな達と対峙する!
だが、そこで採石場の高台に、影が現れる!
「ふふふ、愚かなる人間達よ、これよりこの場は、皇帝ダーククリスタル率いる『悪の秘密結社ギルティ』が占拠する。我らを今までの先兵達と同じとは考えぬ方が良いぞ‥‥」
黒衣に身を包み、マスカレードで顔を隠している男。どうやら、光らしい。
「出よ、深き罪に彩られた、我が軍団長達」
ダーククリスタル=光が手を振りかざすと、次々と影が現れる!
「ほーっほっほっほ、わたくしは『ブラック・ドール』。これより、この採石場は我らギルティのものですわ。ギルフォード戦隊、居るなら出てらっしゃい」
黒いドレス姿で高笑いを上げたのは、セレナのようだ。
「私は『悪の秘密結社ギルティ』のエクセレントブラッククイーン! この採石場は今から私達が貰います」
同じく、高笑いで登場したのは、アクテのようだ。
その背後に控える般若面の男は、セオフィラスらしい。この役所がちょっと幸せなのか、こっそりガッツポーズしている。
「我が名は阿玖羅、遥か東方より参った破戒僧。おぬしらの正義とやらで我を倒してみせい!」
続いて登場したのは、安成のようだ。
「オルァ! 貴様ら何モンだ? ここはウチの組織のアジト候補だ!」
独特のポーズでガンを飛ばしているのは、霧子のようだ。
「この採石場は我々『秘密結社ギルティ』の野望成就のために利用させて貰おう、斬魔剣死デス・ブレーダー見参!」
更に、エクセレントマスカレードで顔を隠し、現れた怪人は絶狼のようである。
(「げ、本当に悪の組織が出てきたぞ!?」)
(「どうすんだよ、ヤバイって」)
(「でも今更逃げるなんて勿体ないだろ、こんな美味しい所‥‥」)
驚きを隠せず、ひそひそと顔を見合わせているアルファベット。
「こ、この採石場は、私達のモノ‥‥いや、ギルフォード戦隊アルファベットが護るんだ!」
リーダーのエースが宣言する!
(「い、言ってしまった‥‥!」)
内心、少し後悔しつつも、正義のヒーロー気取りで次々に名乗り、
『我ら、ギルフォード戦隊アルファベット!』
と、キメポーズ!
すると、更に別方向から、
「私は自然保護団体『ガイア・ジャッジ』の行動隊長ソードガイア。街を路を、麗しく緑なす森林に還すのが我らの使命! 採石などと言う愚行を止め植林する為に、この採石場は支配させてもらう!」
こちらは、派手に刺繍の施された服装に野薔薇が似合うキザな騎士、どうやらアリアスのようである。
(「なんか、また別のが出てきたぞ!?」)
再び、顔を見合わせるアルファベット。
更に、今度こそ真ヒーローの影!
「力と力のぶつかり合う狭間に己が醜い欲望を満たさんとする者よ、その行いを恥じと知れ! 人それを『邪道』という!」
ド派手に口上をキメたのはミリランシェルだ!
『こ、今度は誰だ!?』
ついに、声を揃えて叫んでしまうアルファベット。
「腐女子だ!」
などと啖呵を切り、そのまま崖を駆け下りてくるミリランシェル!
「わ、わけがわからん‥‥シーナ、撃ち落とせ」
「そ、そうね‥‥!」
目頭を押さえて言うエースに、慌てて弓を引き絞り、狙いを定めるシーナであった。
歴代のギルフォード戦隊の面々が、最初から正体を明かし近付いたとしたらどうなるか?
おそらく性根の曲がった者なら、その場だけ取り繕うような態度に出るのではないか。
それでは彼等の真の姿を見ることはできない。
そう考えたユウンを始め、真のギルフォード戦隊の面々は、この作戦を決行したのである。
アルファベットの態度は煮え切らない部分があるものの、結果的には、悪の組織に対し、力を合わせて立ち向かう気になったようだ。
ウィザードのエフカ、ジータ、エイチス、弓を持つシーナ、そして、村娘二人(理雄、レヴィ)を守るように陣形を組むアルファベット。ちなみに蒼羅は前衛扱いである。
さあ、戦闘開始だ!
「帰るべき家も頼るべき人もない、私にできるお礼と言えば‥‥いえ、お礼は何年掛かってもきっと致します!」
エイチスの方を見て、意味ありげに頬を赤らめ俯くレヴィ。
(「この展開は‥‥貰った!」)
などと思い、カッコイイ台詞でも言ってやろうとしたエイチスだが、
「喰らえ、弧顎蹴!」
いつの間にか『ライトニングアーマー』を発動させた理雄が、エイチスに回し蹴りを見舞う!
「うおっ、いきなり何を!?」
「あたしは、ダークネス・ウィッチ♪」
狼狽えるエイチスにウィンクしながら、正体を明かすレヴィ。密かに『アグラベイション』を掛けていたため、エイチスの動きは鈍っている。
「私は雷撃闘女・ヴァイオレントだ!」
村娘の変装を解き、理雄が名乗る。更に、発泡酒を被って衣装が透ける様にすると、豊かな胸部が、より強調される。
そこで蒼羅は刀を捨て、身軽になった事で『ストーム』を発動!
しかし、その暴風はアルファベットを吹き飛ばす!
「何をするんだ!」
陣形を崩され、散開してしまうアルファベット。
「残念だったな。俺の名は、風紡奏者・ノクターン。『悪の秘密結社ギルティ』のメンバーだ」
そう正体を明かす! 見事な奇襲だ!
「キー」
まだ本能の赴くまま、ちょっかいを出していたテシター=ヲークに、
「いつまでやっている!」
と、叱責するヴァイオレント=理雄。少し『ライトニングアーマー』が感電しているが、スキンシップのひとつ‥‥だろう。
偉そうに、後方に構えたダーククリスタル=光は、高速詠唱『ファイヤーボム』二連射で援護し、更に戦闘を有利に導いていく。
「忍び寄る黒曜の霧・ステルスボム。愉快なお茶会の始まりだ! セット! ギル・ティーブレイク!」
まず、『分身の術』を発動させた霧子。投網などを利用したトラップを愛犬と連携して発動させ、アルファベットを撹乱していく。
「ははは! イテぇぞ! コラァ!」
ザクザクと矢が刺さりながらも『デッドorアライブ』で急所を外して走りつづけるミリランシェル。それを援護するよう『微塵隠れ』でシーナの前に現れ、射撃の邪魔をするステルスボム=霧子。
「くくく‥‥噂のギルフォード戦隊がこの程度か、片腹痛いわ」
『クリスタルソード』を発動させたデス・ブレーダー=絶狼もシーナへと向かう。
「そら、貴殿の真のお相手が来たぞ」
再び『微塵隠れ』でステルスボム=霧子が消えると、
「当たるとイテぇぞ!」
走り込んできた、ミリランシェルが思い切りブン殴る!
「砕け! デス・ソードブレイザード!!」
続いて、接近してきたデス・ブレーダー=絶狼が、『クリスタルソード』による『バーストアタック+スマッシュ』でシーナの弓を破壊する!
「ちょっ、タンマ‥‥」
「食らえ! ミリーバスター・サドンインパクト!!」
更に、ミリランシェルが『スープレックス』を決める!
「こ、降参‥‥ギブアップ‥‥」
泣きながら倒れ込むシーナであった。
一方、アックスマスター・ビークと対峙するのはテシター=ヲークである。
「キー」
どうやら『正当派ドワーフなんて古いんだよ!』という挑発らしい。
「貴様もドワーフだろうが! 誇りを持てぃ!」
「キィー」
言い返すビークに、今度は『美髭にアックスってダサダサ』と言いたいらしい。
「ぬぬぬっ、このスタイルが理解できんとは、貴様それでも‥‥!」
「キーッ」
トドメの『オラオラ、掛かってこいやオッサン!』という挑発にブチ切れるビーク。
端から聞いても意味不明な会話が成立し、バトルに突入する二人!
「キー」
ザコっぽい見た目とは裏腹に、かなり腕の立つテシター=ヲークは、盾でビークの攻撃を受け止める。
ならばと『バーストアタック』で盾を破壊するビーク。しかし、予備の盾を用意していたテシター=ヲークの方が一枚上手か。
「ぐうっ、動けん!?」
そして、見事、チェーンホイップでビークを捕縛する事に成功したテシター=ヲークであった。
その頃、『アースダイブ』で地面に潜っていたテシター=ユウンは、地中を移動し、エイチスの背後に出現した。
更に、ヴァイオレント=理雄と、ダークネス・ウィッチ=レヴィのお色気攻撃に、
「美女が三人も集まってくれるとは、罪なことをしてしまったな。さあ、我が風によって全ての真実を晒してごらん?」
などと宣うエイチス。
「その曇った瞳じゃ真実は見抜けず、ただただ戸惑うのみ、だよ。ちょうど今みたいにね」
続いて『レビテーション』で浮き上がるテシター=ユウン。
どうやら、眩惑させる事が目的のようだ。そしてそれは、見事に功を奏しているらしく、エイチスは仲間を魔法で援護する事をすっかり忘れ去っていた。
こちらは、ファイヤーマスター・エフカと戦うブラッククイーン=アクテ&般若=セオフィラス。
「貴女、その程度でファイヤーマスターを名乗ろうなんておこがましい。私の炎を受けてからになさい!」
そうエフカを挑発しつつ、『SCROLLofレジストファイヤー』を掛けるブラッククイーン=アクテ。
「うわ、卑怯っ!」
などと言うエフカに対し、
「火は完全に私の支配下にありますわ。‥‥まだやる気ですか?」
すかさず、たいまつを投げての高速詠唱『ファイヤーコントロール』で炎の主導権を握るブラッククイーン=アクテ。炎でエフカを取り巻いて視界を奪い、般若=セオフィラスに『フレイムエリベイション』を掛ける。
こうなると、最早エフカに成す術は無い。
「ファイヤーマスターの名は、エクセレントブラッククイーンにこそ相応しいようだな」
ライトハルバードを突きつける般若=セオフィラス。
「降参‥‥名前も返上するわ‥‥」
観念して座り込むエフカであった。
ハンマーマスター・ディーンと対峙しているのは、阿玖羅=安成だ。
「いつまで逃げ回るつもりだ?」
回避重視のヒット&アウェイ戦法で、ちょこまかと動き回る阿玖羅=安成に、苛ついてきたのか、だんだん大振りな攻撃が多くなってきたディーン。
「こうなれば一撃で仕留めてやる!」
ディーンの『スマッシュEX』、命中すれば重傷間違いなしの一撃!
しかし、振り下ろされたハンマーは地面を抉っただけだ。
「さすがは噂に聞くギルフォード戦隊。だが、ならば我々の真の力を見るがよい」
めり込んだハンマーを踏み台にする阿玖羅=安成!
同時に、『微塵隠れ』で背後にステルスボム=霧子が出現!
「阿玖羅殿の慈悲に感謝しろ」
「食らえ! 必殺、ギル・ティーブレイク!!」
ステルスボム=霧子の『スタンアタック』と、阿玖羅=安成の膝蹴りによって、ディーンは昏倒したのだった。
グラビティーマスター・ジータもまた、ノクターン=蒼羅とマイメイド=えれーなの連携によって追い詰められていた。
『疾走の術』によって加速し、撹乱するマイメイド=えれーな。
「詠唱の隙は与えん‥‥」
高速詠唱の『トルネード』でジータの詠唱の邪魔をするノクターン=蒼羅。
その隙に、ジータへと急速接近するマイメイド=えれーな!
「受けよ‥‥、疾風・迅雷」
高速詠唱『ウインドスラッシュ』から、『ライトニングソード』による薙ぎ払いへと繋ぐノクターン=蒼羅!
「はうっ‥‥」
更に、マイメイド=えれーなの『スタンアタック』を受けたジータは、敢え無く昏倒したのだった。
完全に美女三人に眩惑されたエイチス。
だが、調子に乗っていたヴァイオレント=理雄の豊かな膨らみが、いつの間にか左右ずれている‥‥?
「はっ、ニセモノかよ〜!」
それに気付いたエイチスが、落胆し、我に返る。その言葉に『おまえがニセモノとか言うな!』と心のツッコミをいれつつ、すでに目前の相手を倒した仲間達が援護に集結。
ほどなくして、エイチスは倒れたのだった。
フレイルマスター・イールと対峙しているのは、ブラック・ドール=セレナである。
「やりづらい相手だね‥‥」
隙を窺うイールだが、お互い、なかなか動けずにいた。
また、ソードマスター・エースと睨み合っているのはソードガイア=アリアスだ。
「フッ、私を他のメンバーと同じと思わない事だ」
強気に剣を構えるエース。内心は、次々と仲間を倒されてビビッているのだが、そこはアルファベットのリーダーを務める男、演技力はなかなかのものだ。
先に仕掛けた方が負ける‥‥そんな雰囲気が支配する中。
イールと、ブラック・ドール=セレナの戦いに変化が起こった。
「困ったな、ボクから行くしかないか」
そう言って放たれたイールのフレイルが、完全にブラック・ドール=セレナを捉えようとしている!
咄嗟に名剣「デル」を投げて援護するソードガイア=アリアス!
「あっ、邪魔が‥‥っ」
「甘い‥‥ですわっ! ギルカウンター!」
そして、『デッドorアライブ』でダメージを最小限に食い止めたブラック・ドール=セレナの『カウンターアタック』が交錯する!
「貰ったぁっ!」
そのスキを逃さず、剣を振り上げ、ソードガイア=アリアスへと突進するエース!
「こんなフェイントもあるわけだ☆」
ステルスボム=霧子が『微塵隠れ』で出現し、その突進力を鈍らせる!
そして、その時すでに、
「‥‥バーニングソード!」
ダーククリスタル=光の『クリスタルソード』が、ブラッククイーン=アクテによって更に魔法の炎を帯び、
「ソードガイア、これを!」
それを投げていたのだ!
「見ろ、これが真のチームワークの力!」
見事キャッチし、更に『オーラパワー』を掛けるソードガイア=アリアス!
「このまま行くっ!」
ワンテンポ遅れたタイミングのまま、『スマッシュ』で剣を振り下ろすエース!
「トリニティ・ギルブレイド‥‥斬!!」
それをソードガイア=アリアスは『オーラシールド』で受け止めつつ、『カウンターアタック+バーストアタック』でエースの剣を叩き折る!
そこへ飛び込んできたのはミリランシェル!
「この馬鹿モノ! 馬鹿モノ!」
取っ組み合いに持ち込み、ボッコボコに殴り続ける!
「ひええっ、もう許じでぐだざい‥‥」
情けない声を出すエース。
「その程度で正義の味方を名乗ろうなんておこがましい」
意味ありげに言うブラッククイーン=アクテ。
「直伝‥‥ギルスマッシャー!」
続いて、ブラック・ドール=セレナもまた、『スマッシュ』でイールを倒す。そして、この掛け声は‥‥。
「真の姿をお見せしましょう。セピアの光を受け継ぐもの‥‥ギル・ドーター参上、ですわ」
黒いドレスを脱ぎ捨て、真の姿を現すセレナ。
「「「げげっ、もしかしてホンモノ!?」」」
なんて言ってしまうあたり、やはり付け焼き刃だったのだろう。すでにアルファベットは、ほぼ全員戦闘不能。偽りの正義の心では長続きはしなかった。
「正体を現したな、偽者め‥‥!」
ダーククリスタル=光が黒衣を払うと、白き衣に身を包んだ正義の姿を見せる。
「言い忘れたよ。我が真称号は、東洋の神秘ギルジルコンofクリア」
そう微笑む霧子。何度もギルフォード戦隊として活躍した彼女は、その名を融合させ、
「偽者よ、輝き放つ真の正義と装った紛い者の違い、とくと見るが良い! 夜闇より、人々を守る月光の盾。銀の月盾ギルフェンリル!」
『月の銀龍ギルムーン』でもあるアリアスは、かつての名を選んだ。勿論、剣を一回転させて地面に突き立て、オーラを纏うポーズは健在である。
「かつてこの地を守った真のギルフォード戦隊が、新たな正義と共に現れたんだよ。僕はその一人、悠久の探求者・ギルトパーズ」
真の正体を名乗り、アルファベットを叱責すると同時に反省を促すユウン。
さあ、真の正義の名乗り口上を聞かせてやれ!
「僕達が、この街をお前達の勝手にはさせない。正しき光の結晶ギルクリスタル!」
光が!
「神と正義と愛のために、ギルオニキス!!」
セオフィラスが!
「私は伝説のギルレンジャー、戦場に咲く一輪の花・ギルガーネット!」
アクテが!
「ま、偽者なんぞこんなものだろうな‥‥魔斬の閃剣ギルパンサー、偽者退治に参上だ‥‥お前らみたいなのは俺らにも迷惑なんでな」
絶狼が!
「奉仕の心は正義の心、お願いするよりされましょう! 黒きウサギのギルジェット、願いによりて只今参上!!」
えれーなが!
「返り咲きの紫電華ギルバイオレット、後輩の教育の為に此度も咲き誇らん!」
理雄が!
「黒翼の風ギルレイヴン!」
蒼羅が!
「希望の光ギルキャッツアイ!」
レヴィが!
「人呼んで、業を断つ拳を持つ龍、名はギルドラゴン」
安成が!
次々に真の正体を明かしていき、
『我ら、ギルフォード戦隊! ギルレンジャー・レジェンド!』
ビシッと全員のポーズが決まった!
‥‥誰か足りない?
「あれ?」
コソコソと『駿馬の被り物』を頭に被っている間に、全員でのキメポーズになってしまい、名乗り損ねたヲーク。
「‥‥愛戦士ギルスタリオン」
申し訳程度にボソっと名乗っておく。
そして、もう一人。
「私は『腐女子』ですから!」
ビッと親指を立てるミリランシェル。‥‥それでいいのだろうか。
「美形なら見る分には構わないけど。やっぱり看板ににあった美学は持っていて欲しいもの。極上品と思って飲んだのが気の抜けたエールだった時の哀しみを思い出すわ」
偽者達への感想をそう例えるギルキャッツアイ=レヴィ。
『どうかお許しを〜〜』
完全に戦意喪失したアルファベットのメンバーは、ひたすら平謝り。
全ての悪を滅ぼすだけが正義ではない。時には、悪に走った者を戒め、改心させることもギルフォード戦隊は忘れてはいない。
「ギルフォード戦隊は、どんなことがあっても負けちゃいけない。君達はまだ、正義、という言葉の重さを分かってないみたいだね」
諭すように言うギルトパーズ=ユウン。
「この戦いは、未熟な後輩の為の試練だったんですの」
「私達を後輩と呼んでくれるのか‥‥?」
ギルバイオレット=理雄の言葉に、沈んでいたたアルファベットのメンバーが顔を上げる。
「しかしまあ、それなりに実力もあるのに何でそんなにセコイ真似するかな? 正義ってのはお前らが思ってるほど安い物じゃないぞ」
「正義に与する私達の実力を思い知ったなら、二度と人真似せず更正し、自分を磨きなさい!」
ギルパンサー=絶狼、ギルガーネット=アクテも心構えを説く。
「正義の味方たる者、常に品行方正でなくてはな」
続いて説教するギルスタリオン=ヲーク。一瞬『お前が言うな』という視線が集まったのは言うまでもない。
「滝の流れは全てを清く洗い流す。たとえ悪に生きた貴方達でも。流れで身を清めれば素晴らしい未来があるだろう」
本当のヒーロー道を説くミリランシェル。
「ギルフォード戦隊を名乗れば美味しい思いができるなんて考えた私達が浅はかだった。これからは心を入れ替えて、本当の正義の味方になれるよう努力する! なっ、みんな!」
そう宣言したエースに、アルファベット全員が力強く頷いた。
そして、ロックや人足達に謝罪すると、彼らは『本当の正義の味方』を目指し、旅立ったのである。
「アルファベットの皆さんにも正義に目覚めてもらえると嬉しいですね」
彼らを見送り、呟くギルジェット=えれーな。
「襟巻に細工が必要かなぁ?」
再び、偽者が現れないよう、ギルフォード戦隊を象徴するアイテムのひとつ、エチゴヤマフラーを弄っているギルジルコンofクリア=霧子。
「ああ、簡単に見分けられるようになれば、こんな事件も起こらずに済むなぁ」
しみじみと言うロック。
「ところで、こんなややこしい作戦にしなくても良かったんじゃあ‥‥?」
ふと、疑問に思っていた事を口にするロック。
「かっこいいからです! 誰にも迷惑かけないなら、一度やってみたかったんですよ」
無邪気に微笑むギルクリスタル=光。
「迷惑かけない悪役って‥‥まあ、いいか! 有り難うギルレンジャー・レジェンド!」
そう言って、ロックと人足達は、いつものように冒険者達に労いの食事を振る舞ったのである。
こうして、採石場に平和が戻った。
頑張れ負けるなギルレンジャー・レジェンド!
ギルフォード戦隊に永久の栄光あれ!!