●リプレイ本文
「ほーい☆ 『堅牢なる戦乙女』ピアレーチェ・ヴィヴァーチェ(ea7050)だよっ。ピアって呼んでね?」
元気良く自己紹介する神聖騎士ピア。挨拶を交わす冒険者達。
「ふむ、ガンツの顔を見るのも久しぶりだな」
以前、彼の護衛依頼を請け負っていた冒険者の一人、ナイトのシュナイアス・ハーミル(ea1131)。
「ガアアアッ! ガーゴイルとやらとは、まだ戦ったことがない。迷宮の最後の番人か。楽しみだ!」
強敵との戦いを求めて世界中を放浪している志士、風雲寺雷音丸(eb0921)が吼える。
「何かの手助けになればよいのですが」
それほど詳しくはないが、ガーゴイルの基本的な特徴を伝えるレジー。
「前の時もガーゴイル退治だったね、そういえば。今度のは何を守ってるんだろう?」
ピアは以前、迷宮地下二階の通路を塞ぐガーゴイルを倒し、賞金を得た冒険者の一人である。
「ガーゴイルがいるってことは、宝物があるかもしれないね!」
好奇心旺盛なファイターのティズ・ティン(ea7694)が、胸の内のわくわくを言葉にする。実年齢より、更に幼く見える少女だが、もちろん冒険者としての実力は他のメンバーに引けを取らない。
「そいつがギルフォード迷宮のメインのお宝だったりしてな。『聖壁』もある迷宮だ、一体何があるんだ? 異世界への扉とか‥‥、まさかな」
期待を膨らませるナイトのウォル・レヴィン(ea3827)。冒険者としては当然とも言える期待である。
「ガアアアッ! 迷宮の最深部となれば、まさかガーゴイル一匹ってことはないだろう。なかなか楽しめそうだ!」
再び吼える雷音丸。彼の言うとおり、ガーゴイル以外のモンスターが出現する可能性も充分考えられる。
「しばらく闘技場にしか出てなかった。ここいらで実戦を経験する頃合かな」
そう呟いたのは、闘技場の常連、浪人の武藤蒼威(ea6202)。
久しぶりのせいか、保存食を用意し忘れている事に気付いたのは、彼の出発準備を手伝っていた石洲である。石洲は得意の家事で弁当を用意し、蒼威に持たせるのだった。
ギルフォード男爵邸へとやってきた冒険者達。
地下迷宮入り口の管理小屋へと案内される。
「ここが噂のギルフォード迷宮か‥‥完全踏破に立ち会えるとは嬉しいねえ」
「名にし負うギルフォード迷宮も、遂に完全踏破ですか‥‥この場に御一緒できて嬉しく思いますよ」
ナイトのガイン・ハイリロード(ea7487)、レンジャーのアレクセイ・スフィエトロフ(ea8745)が、迷宮の入り口を見つめる。
「いよいよギルフォードの迷宮完全踏破か! ギルフォードの地を守ってる冒険者の一員としてその輝かしい瞬間に立ち会えるってな、嬉しい限りだぜ。おーし、やるぞ!」
気合いを入れるウォル。迷宮の地図を見て最短距離を確認しておく。
そうしていると、
「よく来てくれたな、冒険者諸君」
執事とガンツを伴って現れた紅茶男爵が、そう声を掛ける。
「迷宮探索の総仕上げといったところですか。お任せ下さい、男爵様」
「うむ、成果を期待しているぞ」
そう挨拶するファイターのコロス・ロフキシモ(ea9515)に頷き返す紅茶男爵。
「デビルが出現したとか。油断出来ませんね」
他の迷宮探索経験者や紅茶男爵から情報を得ておく神聖騎士アトス・ラフェール(ea2179)。情報によると、デビルは『聖壁』を狙って迷宮外部から侵入してきたらしく、その一件以来、他のデビルの出現は確認されていないようだ。
シュナイアスは、その時デビルと戦った冒険者達の一人である。
「おう、シュナイアスじゃないか! 久しぶりだなぁ。またアンタ達が護衛してくれるなら安心だ」
旧友との再会を喜ぶガンツ。
「で‥‥ガーゴイルの彫刻ね。相変わらずの趣味だな。まぁ、こうでなければ会いに来た甲斐もないがな」
苦笑するシュナイアス。
「おぬしの護衛も依頼の内だ。俺が護衛するからには安心してお前のやるべきことに専念するがいい」
「そう言って貰えると助かる、よろしく頼むぜ」
コロスの言葉に、頼もしそうに見上げるガンツ。
「馬は‥‥預けていけるよな?」
そう管理人に尋ねるガイン。
「ええ、御安心下さい。皆様が迷宮へと赴いている間は、責任を持ってお預かりいたします」
ガインに倣って、迷宮へは連れていけない馬などを預けていく冒険者達。
「さて、準備はできたようだな。‥‥と、こっちも荷物が来たな。こっちだー!」
そう言って手を振るガンツの視線の先からは、岩の積まれた荷車がやってきた。食料なども一緒に積まれているようだ。
「まさか‥‥今回も直接その場で彫刻する気か?」
「勿論だ。でないと魂の籠もった彫刻は出来ないからな!」
シュナイアスの言葉に胸を張るガンツ。
「「「ええっ!?」」」
驚きを隠せない冒険者達。てっきり、彫刻のためのスケッチでもするのだろうと思っていたのだ。
とは言え、何を言ってもガンツの気が変わるとは思えなかった。
想定外の荷物を抱えて、地下迷宮へと挑む事となった冒険者達。
荷車は、これまでの迷宮情報から、そこそこ余裕を持って通行可能な大きさだということである。
幸い、体力に秀でたメンバーも多く、普通に移動する分にはそれほど苦労はなさそうだ。
しかし、迷宮には階段が付き物。入り口から、いきなり全力で荷車を支えながら降りることとなり、小休止を取ってから進むことになった。
「これも鍛錬の一環だ」
「そう思えば、楽しいよね。よっし、がんばるぞぉ!」
汗を拭う蒼威、ピア。どうやら体を鍛えるのが好きらしい。
「良い心がけです。きっと、ここの騎士団に気に入られますよ」
意味深に言うアトス。そして、その意味はすぐに分かる事となる。
地下迷宮では、要所要所をギルフォード筋肉騎士団が警備していた。
冒険者達に気付いた筋肉騎士が、ポージングをキメながら挨拶してくる。
「お久しぶりです。お元気そうで!」
「ブラザーも元気そうで何よりだ!」
挨拶と抱擁を交わすアトス。
「なかなか屈強そうな漢達を連れているな。もしや、入団希望者か?」
シュナイアス、蒼威、コロス、雷音丸らに、スマイル付きのポージングでアピールする筋肉騎士。
「今回は別の依頼で来たのですが、彼らにその気があれば、隊長に紹介したい所です」
などと、暫し再会を喜び合うアトスと筋肉騎士。
まあ、コロス、ティズ、ガインあたりは紹介されるまでもなく面識があるのだが。
「隊長は、迷宮の安全が完全に確保されるまで、地下三階に詰められているはずだ」
筋肉騎士に見送られ、先へ進む。
アトスは、警備の筋肉騎士と出会うたびに、抱擁を交わしていった。
地下三階。
探索の結果、迷宮最下層である事が分かっている。
教会施設と一体化したような造りになっており、発見された『聖壁』の守護が、現在のギルフォード筋肉騎士団の主な任務となっている。聖職者も派遣されており、一応教会としての機能も果たしている。今の所、礼拝に立ち寄るのは冒険者だけだが。
指揮を執る隊長と面会。
「流石ですネルソン隊長。おめでとうございます」
正式なギルフォード騎士団就任を我が事の様に喜ぶアトス。
「有り難う。我らが仕官できたのも筋肉騎士団名誉団員たる冒険者達の活躍あったればこそだ!」
熱い抱擁で返す隊長。
「この地にとどまる事に決めました。鍛錬も欠かさずしていますよ」
「うむ、アトスの筋肉の躍動が、我が筋肉に伝わってくるぞ」
そうして、ひとしきり抱擁を済ませてから、本題に入る。
現在の地下三階で安全域として確保されてる部分、まだ、モンスターが潜んでいる可能性のある部分を説明する隊長。
ガンツの本命であるガーゴイルの居場所だが、それらしき石像は複数箇所にあり、ガーゴイルか石像かの確認は、まだ完全には済んでいないそうだ。
「じゃあ、それらしい場所を順に回ってみるか」
「安全域を確保したら、付近の筋肉騎士に連絡を取ってくれ。健闘を祈る!」
ここからは、念のためアレクセイが先頭に立ち、罠や足場を調査しながら進む。
通路の曲がり角では、銅鏡を使って行き先にモンスターが居ないか確認し、扉の先に気配を感じれば、『SCROLLofエックスレイビジョン』を使って調べるというように、不意打ちなどを受けないよう細心の注意を払っている。
ランタンを持ち、通路を照らすアトスも、要所要所で『デティクトアンデット』を使用して協力している。
「既に一通りの探索は済んでいるのだし、罠や仕掛けはそれ程残ってないだろう」
目と耳に注意を集中し、モンスターの発見に努めるシュナイアス。
同じく、雷音丸も五感を総動員して周囲を警戒している。
何度かモンスターと遭遇し、これを撃退しつつ安全域を広げていく。
「雑魚の掃討は俺の腕程度で大丈夫だろ。なんで、任せてくれな」
そう申し出たのはウォル。地下一階によく出現したというゴブリンズゥンビなどは、彼らにとっては雑魚と呼んで差し支えない。
「これも修行、っと」
おそらく、掃討作戦によって地下一階から追い込まれたのであろうズゥンビを小太刀で切り伏せるウォル。
「問題はガーゴイルだ。彫像に化けているそうだから、そういうのには不用意に近づかない様にすれば奇襲は避けられるだろう」
シュナイアスの言葉に頷く冒険者達。
とは言え、すべての雑魚モンスターをウォル一人に任せていては、退屈してしまうのだろう。ガンツを護衛するメンバーを確実に残しつつ、冒険者達は交代でモンスターと戦っていく。
「敵が来る、下がられよ」
防御姿勢になり、ガンツを守るコロス。
忍者刀とエスキスエルウィンの牙による『ダブルアタック』で戦うアレクセイ。多量の血を見ると狂化を起こしてしまうため、相手次第では『スタンアタック』を使用。状況次第では、攻撃魔法のスクロールを使用するなど、多彩な戦法を駆使している。
「ナイトってのは本来こういう所じゃ、前に出るもんなんだろうが‥‥な」
ガンツを守れる位置から、高速詠唱を交えた『オーラショット』で援護するガイン。
アトスは『オフシフト』で回避を重視しつつ、魔法のノーマルソードで攻撃と、うまく立ち回っている。
シュナイアスやティズは、『デッドorアライブ』で防御しつつ、一気に『スマッシュ』や『スマッシュEX』でモンスターを蹴散らしている。またシュナイアスは、アンデッドに有効な『オーラパワー』も必要に応じて使用している。
「手間取ってガンツさんが怪我すると大変だしね」
「往生せいや!!」
ピアや蒼威は、盾での防御からの『スマッシュ』を中心にモンスターを倒している。
「ガアアアァァァッ!!」
名剣「ワイナーズ・ティール」での『スマッシュ+ポイントアタックEX』によって、一撃必殺を決め、雷音丸が吼える。
何度かモンスターと遭遇し、無傷というわけにもいかなかった。
「ちょっと待ってね」
重装備のため、手持ちの装備を置いてから『リカバー』を使うピア。休憩時の回復魔法は、もっぱら彼女が担当する事となった。
「お互い、商売道具の手入れはしっかりしとかないとな」
彫刻道具の手入れをするガンツ。
遭遇したモンスターの中には、ビリジアンスライムなどの粘体生物もおり、冒険者達も装備の手入れをしている。
また、魔法をかなり使ったため、一度野営をして、体調を万全にしておく冒険者達。
「問題のガーゴイルってのは即倒しちゃいけねえんだっけ? ‥‥難儀な事だなあ‥‥あんまり数が多くなきゃ良いんだが」
「ガーゴイルはガンツさんが彫刻するんだから、すぐ倒す訳にはいかないんだよな」
そう言ったのはガインとウォル。
そろそろ、ガーゴイルらしき石像があるという地点に着く。すでに何度かはタダの石像で、空振りに終わっている。
「やっぱり本物じゃないと創作意欲が刺激されないんだよな」
なんてガンツは笑っている。
その通路には、複数のガーゴイルらしき石像が並んでいるらしく、全部が本物である可能性を考慮して後回しになるようにしていたのだ。
接近する前に、オーラで自身を強化しておくシュナイアス。
そして、警戒を強め、じりじりと近づいていく冒険者達。
その中の二体が冒険者達の接近を感知し、動き出した!
「きたきたきたきた! よし、彫刻にかかるぞ!」
喜々とした表情で、彫刻を始めるガンツ。
「‥‥ホーリーフィールド!」
ガンツに結界を張るアトス。
「一匹残しておけば十分だろう?」
そう尋ねる雷音丸。
「ああ、モデルはこっちだ。気を付けてくれよ!」
ガンツが指差す。
嬉しそうに、モデルに選ばれなかった方のガーゴイルへと向かう雷音丸。
「散れ」
『フェイントアタック』を仕掛けるコロス。
体勢を崩したガーゴイルを、左手のニードルホイップで絡め取り、引きずり下ろす雷音丸。
「石だから、バーストアタック効くよね!」
『バーストアタック+スマッシュ』で攻撃してみるティズ。
「あっれ〜?」
どうやら効果が無いらしい。
「ガアアアァァッ!」
右手の剣で『スマッシュ』を叩き込む雷音丸!
そうして、まず一体を速攻で倒した冒険者達。
「いろいろ考えてみたけど、襲われないような安全な位置で彫刻ってのは無理そうだね」
ガンツを守るように立つティズ。いざとなれば、『デッドorアライブ』を使ってでも攻撃を受け止める覚悟だ。
「ムウウ‥‥おぬし、怪我はないな?」
ガーゴイルの爪を『ガード+デッドorアライブ』で防ぎ、ガンツに確認するコロス。
「ありがとよ、安心して彫刻に集中させてもらうぜ!」
ハンマーを振るうガンツ。
ガンツには指一本触れさせまいと、連携する冒険者達。
(「魔力保つかなあ?」)
ペース配分を考えつつ、『オーラショット』をガーゴイルに当てないように撃ち、牽制するガイン。ガーゴイルがガンツから付かず離れずの最適距離になるようにしている。
「ガンツさんの邪魔はさせないぜ!」
同じく、ウォルも『オーラショット』で牽制。二人で連携し、うまく、ガーゴイルを誘導している。
「それまでの分まで反撃するから待ってろよ〜」
シールドソードとペンタグラムシールドによる受けと、『ガード』でひたすら防御に徹するピア。
「おらよ、まだか。まだかよ、ガンツ。早くしやがれ」
ヘビーシールドでガーゴイルを押し返し、『フェイントアタック』で軽く牽制しつつ時間を稼ぐ蒼威。
「焦ったって魂は入らねぇんだ。信頼してるからよ、もう暫く時間を稼いでくれ」
少し、思案顔で手を休めるガンツ。だが、すぐにまたハンマーを振るい始める。
「グルルル‥‥。こういうのは性に合わん」
手加減をしながら牽制する雷音丸。
シュナイアスも、わざと隙を見せるなどしてガーゴイルを引きつけている。そして『デッドorアライブ』で凌ぎ、ダメージを最小限に抑えている。
アトスは『オフシフト』で回避に専念しつつ、頃合を見て負傷者に『リカバー』を掛けていく。
「‥‥おーい、破壊許可はまだかい?」
そう尋ねてみるガイン。
だが、鬼気迫る表情で彫刻に打ち込むガンツからの返事は無かった。
一心不乱にハンマーを振るうガンツ。
「‥‥目の前の敵に、ただ襲い掛かるだけの頭しか無い相手の攻撃‥‥ちゃんと見ていさえすれば食らいません!」
囮となって回避に専念するアレクセイ。
ここからは、長丁場になるだろう。ガンツの護衛とガーゴイルの相手を交代で努め、少しは休息を入れていかなければ保たない。
ガーゴイルと戦い始めて、どれくらい過ぎただろうか。
「今だ、頼む!」
突然ガンツが叫んだ。何か閃く物があったのだろう。
「‥‥コアギュレイト!」
アトスの魔法で硬直するガーゴイル。
「ナイスポーズだ!」
親指をビッと立てるガンツ。そして再び、ハンマーを振るい始める。
それからもう暫くして、『コアギュレイト』の効果が解け、再びガーゴイルが動き始めた。そこで。
「ありがとよ、みんな! 完全にイメージが固まったぜ!」
ついにガンツのゴーサインが出た!
「出来たか。もういいな。いくぜ」
重装備の強固な守りを信じて一気に踏み込む蒼威。
「これが本気の一撃だ!」
それまでセーブしていた『オーラショット』を最大威力で撃ち込むガイン!
「砕けよ」
そこへコロスの『フェイントアタック+スマッシュ』!
わざと隙を見せて攻撃を誘うシュナイアス。
「用済みの役者は‥‥舞台から去れ!」
襲いかかるガーゴイルに『デッドorアライブ+カウンターアタック+スマッシュ』を叩き込む!
墜落したガーゴイルへ、更に、蒼威がハンマーofクラッシュを振り上げ『スマッシュ』を叩き込む!
「お返しだよ!」
更にピアの『スマッシュEX』!
冒険者達の一斉攻撃に、ガーゴイルは粉々に粉砕されたのだった。
この地点を制圧して連絡を取ったところ、残る地点もギルフォード筋肉騎士団によって、モンスターは掃討されていた。
残念ながら、財宝らしき物が新たに発見される事はなかった。やはり迷宮最大の宝は『聖壁』だったのだろう。
「終わりましたねぇ‥‥早く地上に上がって、アリョーシカ(馬)とリョーニャ(鷹)を安心させてあげないと」
そう言って微笑むアレクセイ。
まだ荒削りながらも、迫力のあるガーゴイル像を大切に運び出す冒険者達。
その後、この迷宮の入り口には、随分と躍動的なガーゴイル像が魔除けとして飾られることとなるのだ。
「仕事が終わればのんびりお茶会だ‥‥あれ? ディナーだったっけ?」
「両方だ。俺も同席する事になってる」
そんなガインに、笑って言うガンツであった。
見事、依頼を達成し、紅茶男爵のティータイムへ招待された冒険者達。
「一緒にお茶か、光栄だ。紅茶は滅多に飲めないから楽しみだな」
用意された席に着くウォル。紅茶は輸入品のため、イギリスではとても高級なのだ。
少しして、男爵がやってくる。
「迷宮から完全にモンスターを掃討したと報告を受けた。冒険者諸君、御苦労だったな。ティータイムにしよう。ゆっくり、くつろいでくれたまえ」
男爵が着席し、紅茶が運ばれてる。
まずは紅茶を一口。
「香りがじわじわと奥に広がり味わいがいつまでも残る。今回は更に奮発しましたね」
そう誉め讃えるアトス。
「今日はギルフォードの歴史に残る日だからな。我が輩に出来る最高の紅茶を用意したのだ」
満足そうに言って、自らも紅茶を楽しむ男爵。
「して、ガンツ君の彫刻の方はどうかね?」
「イメージは固まりました。あとは、じっくり仕上げるだけです。完成を楽しみにしてて下さい」
自信ありげに答えるガンツ。
そして、報告を兼ねて、今回の迷宮での事を男爵に話す冒険者達。
「先頃の依頼で御譲り頂いた剣は業物です。今回の活躍がその事を物語っています」
鞘に収めた魔法のノーマルソードを掲げて見せながら話すアトス。
「うむ、アトス君にその剣を持たせるよう勧めた冒険者達の目に狂いはなかったようだな。我が輩も嬉しく思う」
「そうだ、迷宮踏破までの道のりを歌にしてみてら、きっと面白い物語になる」
そう提案したのはガイン。歌は得意分野である。
「それは良いな。ガイン君といったか、是非とも後世に残る歌を頼むぞ。そのための情報提供は惜しまぬよ」
その後は暫く、ギルフォード採石場で起こっている事件に関する話題に盛り上がる。
「これまで何度も襲撃されているという報告は受けている。だが、騎士団を動かすまでもなく、『ギルフォード戦隊』なる冒険者達が解決してくれているそうだな。頼もしい限りだ」
「今度は変な宗教団体がいるようだが、紅茶男爵は何か噂を聞いてるか? 魔法使いの一団のようなんだけどさ」
友人のように話すウォルに、執事が咳払いをして睨むが、当の男爵は友として話せることを喜んでいるようだ。
「教祖はアルパという男だったな」
そう付け加えたシュナイアス、ガインもウォルと同じく、ギルフォード戦隊の一員である。
「いや、これといった噂は聞いていない。アルパという人物にも心当たりは無いな。‥‥しかし、正体は気になるところだな。ただ者では無さそうだ」
それからも暫く、男爵は冒険者達の冒険譚に聞き入っていた。
「キャメロットも随分と落ち着いてきました。そろそろこの地を離れて新天地を求めてみるのもよいかと考えております」
そう切り出したのはコロス。
「そうか、少し残念だな。しかし、冒険者とは自由なものだ。新天地に冒険を求めるのも良かろう。世界を巡り、そしてまたイギリスに戻る事があれば、是非とも立ち寄ってくれたまえ」
日も傾き始め、ティータイムもお開きにする時間だ。
「男爵様、そろそろ‥‥」
「うむ。‥‥ディナーまでは、まだ少し時間があるが、多忙の身なのでな。また後ほど会おう」
執事を伴い、先に退室する男爵。
「折角だし最近の作品とかも見てみたいものだ」
と、ガンツに言ったのはシュナイアスだ。
「今は男爵邸の一室をアトリエにさせてもらってるんだ。案内するぜ」
そう言って冒険者達を案内する。
「最近の作品だと、筋肉騎士団のネルソン隊長の彫刻があるぞ。あの男は、モンスターじみた筋肉してるからな。俺も何だか気合いが入って‥‥」
などと言いながら、作品を見せて回るガンツであった。
そして、ディナーはスープ専門店『レックス亭』へと場所を移す。
迷宮完全踏破祝いを兼ねた、ギルフォード筋肉騎士団主催の慰安会でもあり、冒険者達と共に紅茶男爵も出席している。
「レックス亭に来るのは久しぶりだなあ、あの時の客だった筋肉騎士団の人たちも一緒とはまた感慨深い。‥‥あの時やりあった騎士さんは元気かな?」
当時を思い出すガイン。ティズやコロスも、一緒にレックスの依頼を受けた仲間である。
「メイドの本領発揮だよ!」
ティズの言うメイドは、彼女の出身であるロシア王国での事だろうか。イギリスにおけるメイドは貴族令嬢の他家での花嫁修業や、貴族女性の他家での家事手伝いの事を言う。
「おお、ティズか。手伝ってくれるとは助かる! だが、今日はキミもお客さんなのだから、ゆっくりしてくれていいんだぞ?」
スープを煮込んでいたレックスが、『裸エプロン(?)』でポージングする。
テキパキと仕事を始めるティズに「ありがとう」と声を掛けるレックスであった。
店内の舞台では、ウェイター兼闘士の男達が、注文を受ける度に美しい筋肉と『スープレックス』を披露している。これが、この店独特のパフォーマンスなのだ。
「これが噂のレックス亭のスープか。意外にあっさりしてて美味いぜ」
「出汁の旨みはしっかり、なのにしつこく無い。絶品だ!」
舌鼓を打つアトス、ウォル。この『ハーフネルソンスープ』は、ネルソン隊長の持ち込んだ材料で考案したスープに、レックスがアレンジを加えたものである。
そうして、スープを堪能した後。
「ねえ、腕相撲で勝負してみたいな」
そうピアが筋肉騎士に声を掛ける。
「お嬢さんが私と?」
一瞬、気を抜き掛けたが、彼女の実力に気付き、真剣な表情になる筋肉騎士。
オーガパワーリングを外し、テーブルに肘を乗せるピア。
がっちり手を握り‥‥。
「レディGO!」
掛け声と同時に力を込める二人!
「「「負けるな、ブラザー!」」」
ポージングをしながら周囲を固め、応援する筋肉騎士団。
一進一退の攻防!
「ぬはっ!?」
筋肉をテカらせるために油を塗っていたせいか、汗と混ざって滑り、敗北する筋肉騎士。
しかし、これも勝負。言い訳はできない。
「少し休憩してからで良いので、私とも手合わせ願えますかな?」
あくまで紳士的に挑戦する筋肉騎士。
「私と勝負する人いる?」
なんてティズも言いだし、いつの間にか腕相撲大会に発展してしまう。
「コロスくんなんかには及びもつかないし、まだまだなんだけどねぇ」
などと、ピアに話を振られてはコロスも参加するしかない。
「すっかりと騎士の面構えだな。どれ、手合わせ願おうか」
テーブルに肘を置くコロス。
ここぞとばかりに、シュナイアス、アトス、蒼威、雷音丸といった筋肉質な男達にも対戦希望が殺到する。
そして、注目の一戦。コロスvsネルソン隊長。
「「ぬぅぅぅっ!!」」
盛り上がる筋肉!
盛り上がる店内!
そして決着は‥‥!
「「なにぃっ!?」」
テーブルが圧力に耐えきれず、壊れてしまったのだ。
「こら、テーブルを壊すな!」
などと言いながら、腕まくりをしてレックスまで入ってくる。
(「‥‥俺も鍛えてればいつかは」)
筋肉騎士団や筋肉料理人レックスの筋肉美を眺めて思うウォル。しかし、エルフは体質的に筋肉がつかない。
「‥‥その分、技を磨くぜ」
そう心に決めるウォルであった。
宴会は夜中まで続き、ようやくお開きとなった。
「男爵様、再び会える日を楽しみにしております‥‥それでは。筋肉騎士団、レックスも達者でな‥‥」
そう別れの挨拶をするコロス。
「良い経験を積めました。有事の際は何時でもお呼び下さい」
ギルフォード筋肉騎士団・名誉騎士アトスとして、礼をする。
いずれ彼らが英雄となる事を願い、眩しそうに見つめる紅茶男爵であった。
冒険者達の未来に栄光あれ!