●リプレイ本文
依頼を受けた冒険者達は、依頼人を護衛しつつ村へと向かう。
「護衛も依頼の内。気を引き締めていきましょう」
彼はファイターのクロヴィス・ガルガリン(ea0682)。
「‥‥」
ナックルを常に装備し、急に備える忍者の双海涼(ea0850)。
「すべては、あの人のために‥‥」
誰にとはなく呟く浪人の高葉龍介(ea1745)。あまり他人の関心がないといった風情だが、周囲に気を配り護衛にあたっている。
だが、情報通りこれと言った危険も無く、
「村が見えてきましたよ!」
村には、綺麗な蝶が舞っていた。
「あら、本当に綺麗ですのね‥‥。でも、人を苦しめると言うのなら、仕方ありませんわね」
パピヨンの美しさに感嘆しつつも、それを退治する決意を固めるウィザードのエリス・ロンドフィート(ea3224)。
「今回は俺の『ハンマー鎖鎌』もお休みか‥‥蝶をハンマーで潰すなんてしたくねぇしな」
そう苦笑し、自称『ハンマー鎖鎌』をバックパックにしまうファイターのアラン・ハリファックス(ea4295)。
「村人が出歩けないとは、相当強力な毒なのですか?」
そう尋ねるクロヴィスに、
「死人が出たりはしていないので、それほど強力な毒ではないのだと思いますが、たくさんいるので、野良仕事などはできない状態になっています‥‥」
村長と挨拶を済ませた冒険者達は、パピヨン退治の準備に取りかかった。
「燐粉対策‥‥しておいて、損、は‥‥ないから‥‥」
布を重ねたマスクのような物を人数分用意してもらえるよう提案する武道家の麗蒼月(ea1137)。
「パピヨン退治に必要なんです。どうか、譲っていただけないでしょうか?」
なるべく目の細かい網、熟しきった果実などを貰えないかと交渉するクレリックのサラ・ディアーナ(ea0285)。
「罠を張るために、村に穴掘ったりするけどいいか?」
そう付け加えるアラン。
「ええ、出来る限り協力しますので宜しくお願いします」
村長は、快く承諾してくれた。
「共生出来る事が最善の手段だと思いますが、棲み分けが出来ないなら、退治する事はやむを得ないですね」
クロヴィスの言葉に、
「ええ。綺麗な蝶を退治してしまうのは忍びないのですが‥‥。この村にパピヨンが大量発生したのは初めてのことで、対応が遅れてしまったのです」
村長が答える。
「パピヨンの発生は突発的なものですか。念のため、村周辺での蝶発生状況についても調べておきます」
「蝶、は、通り道‥‥決まっている、わ‥‥。いつも、何処を‥‥通る、の?」
蒼月がそう尋ねたが、首を傾げる村長。
どうやら自力で観察するしかなさそうである。
毒の燐分対策に口元に布を当てつつ、罠を張る冒険者達。
「数が数ですから、まずは一網打尽を狙った後で討ち漏らしたものを叩きます」
スキルを活かして罠を設置する涼。壷型に口が狭まっている穴を掘り整えるのがポイントである。
「あぁチクショウ‥‥なんか地中から宝でも出ねえか?」
スコップで穴を掘りながら呟くアラン。
残念ながら、こんな所に宝が埋まっていたりはしなかった。
「囲まれないよう気を付けてください」
辺りを舞うパピヨンの動きに注意し、仲間にも注意を促すクロヴィス。罠の仕掛けを見守る傍ら、長い棒にマントを巻きつけて即席の虫取り網を作り、パピヨンを捕まえる。
パピヨンを観察し、通り道と思われる近辺に罠を仕掛けるよう提案する蒼月。
また、その道にある花など、パピヨンが興味を示したと思われるものを熟れきった匂いの強い果実と共に罠に設置する。
「集まった蝶を火で片付けるとの事ですが、火の付いた蝶が死に際飛んで家屋に引火、と言うのも怖いので、私のバキュームフィールドで窒息死させる方法を提案しますわ」
そう提案するエリス。なるほど、とその作戦を取り入れる事に。
そうして罠に集まったパピヨン達を退治する冒険者達。
「お前たちに罪はないが、これも我々の生活のため。許せよ‥‥」
パピヨンの集まった罠に網を投げかけ、そう呟く龍介。
「パピヨンの毒も、本来は外敵より身を守る為の自衛手段でしょう。彼ら自身に罪は無いでしょうが、人里に迷い込んでしまったというなら、運が無かったと諦めて貰うしかありませんわね‥‥バキュームフィールド!」
魔法発動の瞬間、エリスが緑の淡い光に包まれると、発生した真空空間でパピヨンが死滅していく。
全てを死滅させるには及ばず、舞い上がり逃亡するパピヨン達。
風向きに注意し、風上から回り込んで対処する冒険者達。
罠にかかったパピヨンを処理するのを眺めていた蒼月だが、逃亡するパピヨンをナックルで叩き落としている。
「‥‥パピヨンも女と同じだな。キレイならキレイなほど、強い毒を持ってやがる」
苦笑しつつ、適当にナイフで叩き落とすアラン。
「許せよ‥‥」
再び、そう呟くと日本刀を一閃させ、パピヨンを斬る龍介。
「逃がしてあげる訳にも行かないんです」
手裏剣を投擲する涼。
「‥‥ウインドスラッシュ!」
エリスもさらに攻撃魔法を放ち、パピヨンを落としていく。
それを何度か繰り返し、パピヨンを撃墜していく冒険者達。
投擲した手裏剣を毎回しっかり回収する涼。
布で口を覆ってガードしていたとは言え、毒の燐粉を多少は吸い込んでしまったのは仕方がない。
「解毒しますね‥‥アンチドート☆」
念のため、サラがアンチドートを全員に掛ける。
「今日は‥‥よく、喋った、わ‥‥もぅ‥‥疲れた‥‥」
溜息をついて黙り込む蒼月。
夜。
「夜間の見張りは優先して引き受けるぜ」
まだまだ元気なアラン。
頼んでおいた通り、村中の明かりが消える。
大きなかがり火を焚き、パピヨンが一箇所に集まるように仕向けようというのだが。
パピヨンは昼行性なのか、あまり大きな成果は上がらなかった。
翌日も同じ方法で、村に発生していたパピヨンをほとんど退治した冒険者達は、村の周辺を探索する。
そこで、パピヨンの幼虫が巣くう植物を発見するのだった。
村長に断りを入れてから、そこを焼き払うことにしたが、その前に。
「‥‥幼虫なら、毒もなくて美味しく食べられる‥‥なんてこと、ないかしら‥‥?」
そう美食仲間(悪食仲間?)のクロヴィスに持ちかける蒼月。
「面白い。食べてみましょう」
承諾するクロヴィス。回りの全員がひいている。
そんな奇異の視線に動じることもなく、早速家事スキルを活かして、幼虫を炒める蒼月。
彼女は華国で貧乏生活をしていたため食料に異常な執念を燃やしているのだ。
「みんな、も‥‥食べ、る?」
ふるふると首を振る一同。
美味そうに食する二人を横目に、そこの植物を焼き払う冒険者達。
持参した発泡酒の栓を開けるアラン。
「さぁて‥‥お決まりのパターンだ。仕事後の一杯はうまいぞ?」
皆にも発泡酒を勧め、仕事の成功を祝うのだった。
その夜‥‥。
蒼月とクロヴィスががサラのアンチドートの世話になったのは言うまでもない。
サラはその後、解毒剤が足りず未だ毒に苦しむ村人にアンチドートを、衰弱している村人にリカバーを掛けて回っていた。
「もう大丈夫ですよ‥‥リカバー☆」
魔法発動の瞬間、サラが白く淡い光に包まれると、衰弱していた村人の血色が良くなる。
「あとは、しっかり食事をして元気になって下さいね」
「ありがたやありがたや‥‥」
そんなサラを拝む村人。この村で彼女は『慈愛の聖女』と呼ばれるようになる。
また、植物知識スキルを活かして簡単な毒消し草を村人に教えるなど、同じような事態に対処できるよう努めるのだった。
「また蝶が発生しないとも限らないので、村にも虫除けの対策が必要だと思いますよ」
そう注意を促すクロヴィス。
「そうですね。あまりにも無防備すぎました。何か考えておきましょう」
村長はそう答えるのだった。
期日。村でパピヨンを見かけることは無くなった。
パピヨンの死骸の掃除や、罠のために掘った穴を埋めておくなどのアフターケアも冒険者達は忘れてはいなかった。
「ああ、外の空気を胸一杯吸えるって、幸せなことなのですね。本当に有り難う御座いました」
報酬と帰りの食料を渡し、冒険者達を見送る村人達。いつか彼らが英雄と呼ばれる日が来ることを願って。