●リプレイ本文
村につくと、メンバーはすぐさまに問題となっている動物たちの詳細、良く現れる場所を聞きだした。それは対応する方法を考えるためだ。村人たちは協力的ではあるが、ほとんどが女性であるということに若干とはいえ不安の色があるようであった。それは仕事を成功させて納得させるしかない。
だいたいの聞き込みが終わったあと、八人は集まった。
「まぁ厄介なものよね・・・・」
リディア・レノン(ec3660)はため息をついた。ヨーコ・オールビー(ec4989)も眉を顰めている。動物たちに悪意がないことはわかっているが、村人が生きるためは死活問題となっている。
「季節によっては雀なんかは益獣でもある。完全に駆除はしたくないところだね」
ヒンメル・ブラウ(ea1644)が苦笑い交じりに言う。出来るだけ殺さず、追い払うという作戦だ。ただし、動物たちの行動範囲を村人たちから聞いて把握したとはいえ、生き物は予想外の行動も起こすこともある。
「うちはリクオと太鼓鳴らして巡回しようかと思うんや」
「動物たちを音が驚かせるのね。それでいつもの場所以外には近づけさせないようにすれば、対応がしやすいわ。ただ、問題はどうするかよね」
「動物は利口だから、防衛体制さえしっかり整えて維持できればいいんだよ」
「うーん、撒き餌で田んぼから離れたところに誘導して、ボスわんこを見切って殴りこみじゃじゃ。体で覚えさせるじゃ」
鳳令明(eb3759)が言う。多少乱暴であるが、雀と違い野良犬ともなれば、危険性もあるのでほっておくことは出来ない。
「私は流浪の民で作物はよくわからないけど、ここがいい餌場とは思えないようにするのね!」
ネフティス・ネト・アメン(ea2834)が頷く。
「雀も追い払っても来るってことは人里が怖いって思ってないんだろうね。鞍馬を放つよ。剣を振りながら追いかけるよりも効果がある」
「そうですね。ただ村の人にも罠なんかを覚えていただいたほうがいいんではないんですか? 私達が村にいられる期限は長くありません、継続的に行える対策を教えたほうがいいと思います」
雀の対策を口にする伏見鎮葉(ec5421)のあとシャロン・シェフィールド(ec4984)が言う。
「確かに、対策を知っておくことは大切だね。設置のときは村人にも手伝って貰おう。そのとき罠の場所をヨーコはちゃんと知っておいてね」
「わかっとる」
「けど、撒き餌をしてもこれといって来ないこともあるかもしれないから、それに罠だけっていうのは、少し危険かもしれないわね」
「これも又大いなる父が与えた試練なのでしょう・・・・餌に喰いつかなかったはぐれさんは私が相手します。私でも戦えるハズです」
心配しているリディアに対してゼノヴィア・オレアリス(eb4800)が柔らかく微笑んで言う。
「よし、それぞれに出来ることをしよう」
それぞれが立ち上がり、自分たちがすべきことを開始した。
ヒンメル、リディア、シャロンが罠を作りはじめた。犬は行動範囲が広い。だいたいわかった箇所は二箇所だ。その片方に落とし穴を作り、穴の中には強烈な香りのするものをいれて置くのだ。そのとき村人たちにも手伝いをしてもらい、罠の設置方法などの説明をすることを忘れない。
野良犬の撒き餌は凰の担当だ。もう一つの犬が集まるところに餌を置き、人里から離していく。それにゼノヴィアがこっそりと隠れて、餌に食いつかないはぐれを待ち受ける。
そうして対野良犬対策をしている間、ヨーコ、伏見、ネフティスは雀の対策だ。まずヨーコはリクオに乗り太鼓を叩いていく。そうしていると、村の子供たちが好奇心に負けてそろそろと現れた。ヨーコは子供たちに笑いかけて手招いた。子供たちはヨーコの優しい笑みにつられて近づいていく。
「太鼓叩くの手伝ってや。それ叩いて、ここらへんを周るんや」
ヨーコは自分の持っている太鼓を渡すと子供たちはそれが気に入ったのかはしゃいでいる。
「安易に貸していいのかしら?」
「壊さへんやろう、多分」
てんてんと叩いて楽しそうな子供たちを見てヨーコは苦笑いした。
「うん。そろそろ、放ってもいいな。いけ」
空を見て伏見は雀たちが宙にいるのを見ると鞍馬を放った。
「私も、セウマ、好きに暴れていいわ。行って!」
今まで天敵らしいものもいなかった雀たちは、音に驚き、空を飛び回っていたが、続いて自分たちを捕食する敵の出現に慌てて逃げ回る。
「怖がってますね」
「そやなぁ。・・・・よし、メロディー歌って刷り込み作戦や」
ヨーコが軽く咳払いした。
「人は恐ろし、お山は恋し。追われながら食う麦よりも、山の木の実がなんぼかマシだ♪」
ヨーコの歌声に空で天敵に追われていた雀は山へと方向を変えた。
「こんなものでいいだろう。戻れ」
「かえっておいで、セウマ」
伏見とネフティスがそれぞれに呼びかけると、山まで雀を追っていたが戻ってきた。
「さて、次は犬のほうに行くかな。そろそろ犬たちもかかっているはずだ」
伏見は空を見上げて言う。
犬たちは、ヨーコの太鼓の音のために村に近づけず、それで村の周りをうろついていたが、用意されていた落とし穴にかかり、きつい匂いに大変な目にあう犬もいたが、数匹ほどであった。
鳳の撒き餌に犬の群れが寄ってきた。餌に誘われて村から離れた山に進むが、数匹はついていかないものがいたが、それは隠れていたゼノヴィアが高速ディストロイで撃退していく。
群れが餌の最終ポイントで群れの中にいる一番大きな犬が真っ先にくいつた。他の犬たちもそのあとに食べていく。
食べ終わると犬たちは満足したらしいのに犬たちの前に鳳が飛び出した。
「おしおきじゃじゃ」
いきなりのことに犬たちが慌てて後ろに引き返そうとするのに、後ろには他の仲間たちが待ち構えていた。
「あの大きいのです。太陽神さまがそういってます!」
「餌も、あいつが真っ先にたべてたんじゃじゃ」
「よし、それ以外の犬をボスから引き離そう。ボスのことは、ネフティスと鳳に仕留めて貰おう」伏見が唸っている犬にソニックブームで威嚇した。
「・・・・やむをえないわね・・・・」
リディアは言うと当てないように注意しながらグラビティーキャノンを放った。そうして群れが乱れでボス犬だけが孤立したのをチャンスとばかりにネフティスのサンレーザー、鳳のストライクを放った。ボス犬がきゃんと叫び、倒れるのに他の犬たちは威嚇され怯えている。明らかにボスがいなくなったことと、今までにない恐怖を感じているのだ。
「ヨーコ、今だ、メロディーだよ」
「任せとき……お山に帰ろう、巣に帰ろう。喧嘩するのも痛いのも、人に追われるのもこりごりだ」
ヨーコのメロディーに犬たちはくぅんと鳴いて山へと走り去っていった。手加減されたボスがなんとか起き上がったところをリディアがサイコキネシスで捕えた。
「この一匹を村から離れたところに連れていけば、お引越し・・・・してくれないかしら? 村人に、ここら周辺のことを聞いてみて、ここから少し離れた山のところがいいと思うの」
リディアは言いながらネフティスを見た。
「いい場所を占ってもらえないかしら」
「喜んで」
にこりとネフティスが微笑んだ。
占いから犬たちのいい餌場を見つけ出し、そこにボス犬を運び込んだ。これで犬たちが引越しをしてくれることを願うばかりだ。それに村人たちには簡単な罠を教えているので被害はぐっと抑えられるはずだ。
そうした結果を携えてみんなが依頼人である村娘に報告するために家に訪れた。報告に彼女は嬉しそうに頬を染めて喜んだ。
「ありがとうございます。では、お礼に、今宵はパーティです。あと、私の髪飾りを」
村娘が差し出してきたのになんとも、そのメンバーは困った顔をした。
「いらないよ」
ヒンメルがそっけなく言うのに村娘は困ったようだ。
「私たちは招待客ではなく、参加者としてのお手伝いをしたのです。気になさらないように、こういう思い出も立派な報酬ですから」
シャロンが微笑んで言う。
「ですが」
「じゃあ、私が買い受けるわ。そうしたいくらいにこの髪飾りが気に入ったの。・・・・ずっと持っているから、お金が出来たら買い戻しにいらっしゃいよ」
「そうね。それがいいと思うわ」
ネフティスとリディアが微笑むと村娘は、ほっとした笑みを浮かべた。それがけじめだからだ。伏見もそうしたけじめとしての考えを持っていたが、どうもうまく口に出来ないので、ネフティスとリディアに任せておいたのだ。
村娘の家から出ると、すでにパーティの支度は整えられていた。たくさんの食べ物に飲み物が振るわれている。
「さぁ、歌い手もいますし、踊り手もいるし、楽しみましょうか」
ネフティスが村娘の手をとった。
「踊りましょう」
「え、あ……ええ」
ネフティスに手を引かれて村娘がかけていく。それにヨーコも続いて歌を披露する。
リディア、伏見、ヒンメルたちは振舞われている酒を手に取りゆったりと過ごす。
鳳はぺこぺこにすいた腹を満たすために料理にがっついた。
楽しそうにお祝いしている村人たちの中にゼノウィアとシャロンは穏やかな笑みを浮かべて歩き出した。
彼らは人と人の出会いに感謝し、この実りの季節が来たこと喜びを分かち合った。