届け物

■ショートシナリオ


担当:槙皇旋律

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月23日〜09月28日

リプレイ公開日:2008年09月25日

●オープニング

 息を切らせてギルドに男が駆け込んできた。
 恰幅いい肉体、はげ頭には大粒の汗が浮かび、目はきょろきょろと助けてくれる人を探してせわしく動いている。男は冒険者のほうに歩み寄った。
「助けてくれないか」
 ぜぇぜぇという苦しげな息遣いに掠れた声が漏れる。
「実は、ここから二つ山を越えた村人たちが次々に病にかかっているそうなんだ。なに、病はたいしたことはない。・・・・医者がいればね」
 含みのある言い方をして、男は自分の片手に持つ鞄を軽く叩いた。
「薬は、ここにある。薬を飲めば、命にかかわることはないんだが、長く放置していると、危険なんだ・・・・そう、その村には医者と呼べる人がいないんだ。私は、この連絡を受けたあと、すぐに知り合いの医者に村に行ってもらうように頼んだ。そのとき、たまたま私は別の患者を診ていたんだ」
 そういうと男は悲しげに俯いた。
「村にはすぐにつくはずだった。・・・・私は診ていた患者の治療が終わったあとに聞いたんだが、村に行くために通る山道でゴブリン集団に襲われたそうだ。それも、その村に行くためのルートは、そこしかないんだ。・・・・村の前には川があって、橋を渡らなくてはいけないんだが、その橋のふきんで待ち伏せしているらしい。調べると、その山道では旅人が何人もゴブリンの集団に襲われているらしい。村は病人ばかりで、必要な品が届かないためにとても困っているだろうし、救えるはずの命がこのままでは・・・・私は、なんとしても病人を救いたい。危険なことは承知している。どうか、私を村まで連れていってほしい」

●今回の参加者

 ec4647 サラ・クリストファ(26歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・イギリス王国)
 ec5257 イム・アオイ(27歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ec5614 リリカ(17歳・♀・チュプオンカミクル・パラ・蝦夷)
 ec5615 ルア・クアルフ(24歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

「騎士のサラ・クリストファ(ec4647)。よろしくね」
 困り果てている医者に微笑みかけたのは、サラ。
医者のために集まってくれたのは、サラ、そしてイム・アオイ(ec5257)、リリカ(ec5614)であった。女性だけというので医者は一瞬顔を不安げにさせたが、ここで迷っている暇は医者にはなかった。なによりも、彼女たちは危険ということを承知の上で、今回の任を引き受けてくれたのだ。
「危険を承知でゴブリンのいる場所をすり抜けて、病人を助けたいなんてすごいわ。あたしも騎士の端くれ。その心意気は買うわ。しっかり護衛しましょ」
 サラが微笑みかけると医者も頷いた。
「では、お願いをする。危険を承知にそちらも声をかけてくれたんだ。本当にありがとう。勇敢な方々。それでは、すぐに出てほしい」
「その前に準備をしたいわ、村の場所を教えてほしいわ」
「わかった」
 サラの言葉に医者は頷いて村の正確な場所について話した。
場所を知るとサラは自分は愛馬に乗り先行するという。あともう一頭は食料とテントを積んで貸し出してくれた。
 イムとリリカが、医者の左右を壁のように守りいつ襲われても医者を守れるようにするのだ。
 準備が整うと、一行は早速出発した。
 村までの道は決してラクなものではない。
「がんばりまするぞー!」
 イムがテンション高く声をあげる。情に厚いイムが今回の危険な依頼を受けたのも、人助けになってほしいという気持ちからだった。
「ほら、貴殿も」
 イムがリリカに笑いかける。
「え、えっ」
「がんばりまするぞー!」
 イムのテンションの高さにつられてリリカは顔を真っ赤にして口を開いた。
「一生懸命がんばります!」
「では、私が先に行くから。二人ともしっかりとガードをお願いね」
 サラは二人に微笑むと馬にのって行く。
 そのサラを見送り、イムとリリカはサラの貸し出してくれた馬を連れて医者の周囲を守りながら進んでいく。
 山道は決して厳しくはないが、緩やかな坂道。
 鍛えているわけではない医者が息を荒くする。
「大丈夫ですか」
 リリカが心配げに見つめると、医者は微笑んで首を横に振った。そして弱音を吐くこともなく歩いていく。
「もうすぐ村につくはずだ・・・・ゴブリンがいる」
「あんしんしてください! あなたは、私が守ります」
 リリカが気丈に言うと医者は安心したように微笑んだ。
「よろしく頼むよ」
「あ、サラだ」
 イムが声をあげる。
 先に行っていたサラが居た。先に行きサラは地形の確認をおこたらずにいた。更には村の橋から少し離れたところでゴブリンの影を見かけると気配を消して、その様子をじっと見ていた。ゴブリンの数は決して多くはないことを確認して仲間たちを待っていたのだ。
「今回はゴブリン退治ではなくて、村に無事につくことなんだから、出来るだけ戦いは回避するようにしましょう」
「うん」
 サラの提案にはイムも頷いた。
 ゴブリンのこともあるが、この依頼の第一は村につくことだ。
 無理に戦闘をして村につけなくなっては元も子もない。
 村の近くにくると、警戒はぐっとあがった。ここまでくると、いつ襲われたとしても不思議ではない。
 村につく橋の前まで無事についた。
「あとは、ここを渡れば・・・・苦しんでいる人たちが救える」
 医者が小さく呟き、ほっと気を緩めた。
 そのとき、一匹のゴブリンが襲い掛かってきた。
「危ない」
 サラが前に出て医者を間一髪のところで守る。
「あなたは下がって、イム、リリカ、しっかりと守るのよ」
「わかってるわ!」
「は、はい」
 サラが前に出るのに、イムとリリカが医者の周囲を壁として守る。そうしていると、ゴブリンたちがぞろぞろと出てきた。
 ゴブリンがまずサラに向かって攻撃をしかけてくる。
 サラは、自分の重装備を頼みの綱としてゴブリンたちの攻撃を流しつつ、大きく立ち回る。一匹のゴブリンをなぎ払うなどする派手な動きにゴブリンたちの目がサラに向く。それがサラの作戦だった。自分に少しでも敵の目を向けておく。
「ほらほら! かかってきなさいよ!」
 サラが大立ち回る。
 ゴブリンたちがサラに集中しはじめる。
「危ない、サラ」
 サラの後ろにいたゴブリンをイムが倒す。
「ありがとう。イム」
「どういたしまして。思ったよりも少なくなってきたわ」
「そうね」
 サラとイムは後ずさるゴブリンを見て、これだったらいけると確信した。
「こ、こないで」
 リリカが声をあげた。
 リリカは自分が戦力としてはあまり役に立たないと思い、医者の横にぴったりと寄り添っていた。サラとイムが戦っている横をついてゴブリンが近づいてきたのだ。リリカは短剣を持って必死で抵抗する。
「私のことはいい、リリカ、後ろに」
「た、たくさんの命がかかってるんだ。こんなところで諦めちゃだめです」
 心配する医者に対してリリカが必死で言い返す。
「リリカ、大丈夫」
 イムがリリカの前にいるゴブリンを倒して二人に駆け寄った。
 ゴブリンが倒され、リリカはほっと息をついた。駆け寄ったイムはリリカに笑いかけた。
「がんばったじゃない」
「え、えへへ」
 褒められてリリカは真っ赤になって照れた。
「残っていたゴブリンたちが引いていったわ」
 サラが言った。
 この中で一番戦ったサラは息を荒くさせながら、振り返った。
「さぁはやく村に行きましょう。もう目の前よ」
「あ、ああ」
 医者は大きく頷いた。
 ゴブリンを退けたとはいえ橋を渡り終えるまでは安心は出来ない。みなで警戒しつつ橋を渡る。橋を渡ると、もう目の前に目的の村が見えていた。
 多くの助けを求めている、救うべき命がある場所。
 そこまで無事にたどり着くことが出来たのだ。
「みなさん、ありがとう。みなさんに頼んで、よかったよ。これからは私の仕事だ」