【モンテール伯】ノビータと恐獣

■ショートシナリオ


担当:冬斗

対応レベル:8〜14lv

難易度:やや易

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月24日〜04月29日

リプレイ公開日:2008年05月24日

●オープニング

「へへーん!」
 冒険者の酒場には世にも珍しい白い狼。
 飼い主はエルフの冒険者、シュネオ。
「おお! フロストウルフじゃねえか!!」
 期待通りに喜んでくれるのはジャイアントのガイアン。
 意外に聞き上手?
「パパが仲間の冒険者から譲り受けたんだ。絆値高いんだぜ!」
 ちなみに絆値とかそういう言葉はこの世界に存在しません。深く突っ込まないでください。いやほんとに。
「怖がらなくていいよ。ボクの言う事はなんでも聞くから」
「綺麗ねぇ‥‥!」
 天界人の静ちゃんもうっとりしてます。
 それが気に障ったのか、

「そんなのうらやましくなんかないやい!!」

 また‥‥。
 余計な事言わなきゃいいのに‥‥。
「なんだよ、ノビータ。ロバにも乗れないくせに」
「その前に買えないよね。お金ないから冒険者街にも住めないんだし。
 あ、今度ボク、パパにウォーホース買ってもらうんだ!」
 なんとうらやましい。
「でもほんとにうらやましくないのかもよ?
 だってほら、ノビータは‥‥」
「ああ、そうそう! シルバーゴーレム持ってるんだったっけな!
 どうしたよ!? 見せてくれるんじゃないのか?
 それとも目からきのこリゾット食べる練習してたか?」
 そんなの持ってないんだから見せられっこありません。
 どうしてこの子は思いつきでものを言うのか。
「シ、シルバーゴーレムは今故障中で見せられないんだよ!
 それよりすごいぞ! 僕なんかこの間の依頼で恐獣のペットを手に入れちゃったんだからな!!」

 ‥‥ああ、もう‥‥。
 一同、当然大爆笑。
 静ちゃんも大爆笑。ちょっと酷い。

「じゃあ見せてくれよ。
 今度は病気中とか言わないよな?」
「ば、ばかにすんな!」
「だめだったらどうするんだ?」
「耳で蛸のマリネ食べてやる!!」


 そして、
「ドラエ〜〜〜!!」
 ノビータは唯一の友達、冒険者ギルドの河童のギルド員にお願いするのです。

 ドラエ・モンテール伯爵。
 天界、ジ・アースという世界から来た河童の冒険者。
 元はジャパンという国の種族だったそうだが、先祖がノルマンに移住。ノルマンでモンテール家を創立したとか。
 ドラエもノルマンで冒険者を営んでいたが、月道を通り、アトランティスへ。
 現在、ドラエは冒険者を引退し、ギルドで冒険者達の面倒をみることにしたらしい。

 といっても、主に面倒をみているのは駄目冒険者ノビータ君。
「恐獣のペット出して〜〜!!」
 またかと、
 泣きながらめちゃくちゃなことを言うノビータの話をなだめながらもなんとか聞きだし、

「きみは
 ほんとに
 ばか
 だなあ」

 優しい顔立ちで結構キツいです、モンテール伯。
「チブール商会に行ったって恐獣なんか売ってないぞ!」
「そこをなんとか〜〜福袋とか買って〜〜〜」
 そういう発言はかみさまがこわいのでやめてください。ほんとに。ありませんから。そんなの。
 大体、買うのもモンテール伯かい! と突っ込みだけ。
「うえ〜〜〜〜ん!!」
 泣いてばかりいるノビータ。
「んもう、しょうがないなあ‥‥」
 そう言って依頼書を出すモンテール伯。
 不思議な冒険者達でノビータの願いを叶えてみようと。
 なんだかんだ言って優しいのです。

●今回の参加者

 ea1856 美芳野 ひなた(26歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea6586 瀬方 三四郎(67歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 eb3114 忌野 貞子(27歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ec4666 水無月 茜(25歳・♀・天界人・人間・天界(地球))

●リプレイ本文

●依頼を受けろ! 指が折れるまで!
 ギルド受付、モンテール伯に対し、瀬方三四郎(ea6586)は渋面を見せていた。
「子供の戯れとは言え、謀りには違いない。
 教育上、余り宜しくはないのだが。
 如何であろうか、モンテール伯殿」
『伯殿』ってヘンじゃね? 『王様』みたいなものだろうか。
 どうでもいいツッコミはさておき、言っている事は尤もだ。
「面目ない‥‥」
 甘い事は自覚しているモンテール伯。
 今回の依頼の御膳立てもほとんど彼一人で仕上げたもののようで。
「――とはいえ、依頼になってしまった以上はやむをえまい。
 年端のいかぬ娘さんたちばかり、この依頼に集まっておりましたからな。
 この老骨、微力ながら助太刀致しましょう」
「本当に助かります。
 そろそろ耳から蛸のマリネを食べさせる為の依頼を募集かけようかと考えていたところです‥‥」
 いやそこまで卑屈にならんでも‥‥。
 愛嬌を感じさせるダミ声がかえって哀愁を誘う。
「して、実行の方ですが、
 つきましては伯爵殿にも水辺に潜み見守って頂ければと思うのですが‥‥いかがでしょう?」
 瀬方の要請を、しかし申し訳なさそうに断るモンテール伯。
「申し訳ない‥‥。
 明日からギルドの仕事で空けられないんです‥‥」
「むう、ならば仕方ありませんな。
 なに、お気になさらず。我々で受けた依頼です」
「ありがとう。
 裁量の程はぜ〜〜んぶお任せしますので」
 これで少しはノビータ君も改心してくれればいい。
 そんな淡い期待にすがるモンテール伯だった。

●ノビータと愉快(?)な仲間達
「ああもう‥‥ほんとうにおばかさんですぅ」
「ウフフ、ノビータ。貴方‥‥本当に、おばかさぁん‥‥ウフフフ」
「あの‥‥あまり見栄を張らないほうがいいですよ、ノビータさん」
 散々な言われようだ。
 まあ、同情の余地は1ミリたりともない訳だが。
 それでも『年端もいかぬ娘さんたち』はそれ以上責めるのをやめた。
 何故かって?
 泣いてしまっちゃ仕方がない。
 忌野貞子(eb3114)が泣いてるノビータ君を慰め、
「それじゃ‥‥一緒に逝きましょ、ウフ」
 いや、なんか‥‥字が違う。


「ええ!? ノビータの冒険者仲間だって!?」
「まあね。この間はちょっとでっかい依頼に出てたんだ」
 ふふんとノビータ。
 また嘘を‥‥。
 瀬方の視線が険しい。
 だがまあ、この場にいる事の辻褄合わせには仕方無いのかもしれない。
 ノビータは瀬方を『共に恐獣を捕まえた仲間』としてガイアン達に紹介をしていた。
「侍の瀬方さん、天界のジャパンって国の騎士なんだって」
「瀬方三四郎と申します」
「くそう、ノビータのくせになまいきな」
 くやしそうなシュネオ。
 そういう事は聞こえないところで言いましょう。
 案の定聞き咎めた瀬方。
「お二人共、御友人をいじめるのは感心しませんな」
 迫力のある瀬方の仲裁に流石に怯む二人。まだ冒険者としては瀬方には遠く及ばない。
「ノビータ少年はこの私にとっても大切な戦友。節度ある付き合いを望みたい」
 どうやらそこは合わせてくださるようで。
「せ、瀬方さん‥‥!」
 こうして頼っている分にはノビータも可愛らしいのだが。

●きっと来る(ノビータ君達が)
「ええっ!? 美好野さんって‥‥私より年上だったんですか!?」
「はうう‥‥どういう意味ですか‥‥」
「あ、いや、ちょっとびっくりしちゃったっていうか‥‥変な意味じゃなく‥‥」
「変な意味‥‥」
 気を遣ったつもりがさらに美芳野ひなた(ea1856)を追い詰めてしまう水無月茜(ec4666)。
 まあ、確かに19歳には見えない訳だが。
 ちなみに横で黒いオーラを出してる人と同じ歳である。
「ああ、日が高い‥‥わ。体が‥‥灰になりそう‥‥呪う、わ」
「だ、誰をですかぁ!?」
 貞子の呟きを流石に聞き咎めるひなた。
「知りたい? ウフフ‥‥」
『結構です』と言わんばかりに首を振る。
 茜が話を本題に戻す。
「と、とにかく私達はノビータさんがその、怪獣‥‥じゃなくって、きょう‥‥じゅう?」
「そう‥‥恐獣を飼っているように見せるの。
 どこかで観たような人たちに‥‥ね」
「どこかで見た? 忌野さん、ノビータさんのお友達とお知り合いだったんですか?」
 首を捻るひなた。
「そういえば私も観たような気が‥‥地球とかで‥‥」

 記録係より報告。
 この話はアトランティスにおける物語であり、地球におけるナニかとは一切関係ありません。
 というか君達漢字自重。

「――今、何か‥‥通り過ぎたというか‥‥」
「霊‥‥ね、きっと呪われてるのよ‥‥」
 アトランティスにアンデッドの概念はない。
 ないから余計に怖いのかもしれない。
 なんとかしてくれこの女。
 ノビータ達を待つ暇つぶしかいたいけな少女らを怪談に巻き込む貞子だった。

●え、肝試し?
 瀬方の先導により、ノビータ達は川辺に着く。
「御足労感謝する。
 ノビータ少年の恐獣は水棲でしてな。普段このあたりに飼っておられるのです」

 一際響く声は川岸の岩壁に隠れている娘達への合図になる。
「わわっ! もう来ちゃった!」
 焦るひなた。
「急がないと――あれ? 忌野さん?」
 気付けば貞子が忽然と姿を消している。

 初めに見つけたのは静。
「あら? なにかしら?
 ――猫ちゃん?」
 そう、それは猫だった。
 川に猫。
 珍しいといえば珍しいが、有り得ない光景な訳ではない。
 ――水面を歩いてさえいなければ。
「お、おい!? ノビータ、あれかよ!?」
 恐獣といって猫を見せようものなら笑われるものだが、川面を歩く不気味な猫を笑える度胸は彼らにはない。

「ウフフ‥‥ばぁーーー!!」
『ぎゃああああああああ!!!』

 水魔法で猫の下に潜っていた貞子が登場。
 もはやノリノリである。
「今ですっ! 闇よ!!」
 茜の月魔法で周囲が闇に閉ざされる。
 パニックに陥る四人。
 四人?
「うわあああああ!! 暗いよ! 怖いよ!!」
 こらこら、ノビータ。打ち合わせをしとったろうに。
 四人の少年少女の悲鳴に紛れ、
「ごお、ちゃっぴい‥‥☆」
 ひなたの秘術の幕が開いた。

●この恐獣はフィクションです
「こ、これ‥‥恐獣‥‥?」
 シュネオが言うのも無理はない。
 粘着質の赤黒い肌、ずんぐりとして尾はなく、楕円に近いフォルム。
 どこからどうみても蛙である。
 けれど、三人は先程の猫と似たような理由から馬鹿に出来ない。
 だって――体長3m、体高約1m半。
 モンスターと言っていいくらい大きかったから。
「ポタモサウルス‥‥川に生息する恐獣よ‥‥」
「‥‥蛙にしか見えないんだけど‥‥」
「ええ‥‥蛙の仲間だという学者が多いらしいわね‥‥」
 もっともらしくのうのうとのたまう貞子。
 勿論でたらめだ。そんな恐獣はいない。
 ひなたの秘術で作りだした大ガマ、ちゃっぴいである。

(「美芳野さん、すごいです‥‥映画みたい‥‥!」)
(「あ、ありがとう。フォローお願いしますね、水無月さん」)

「信じられぬか? 少年達よ。
 良いですかな? このアトランティスの広大な大地にはまだまだ我々の知らぬ神秘が満ちております。
 天界人の我々のみならずです。
 世の中の全てを知ったつもりになるのは冒険者として、いや、人としてあるまじき傲慢ですぞ!!」
 くわっと威圧する瀬方。
 それがとどめとなって、皆、貞子のハッタリを信じてしまう。
 というか、信じざるを得ないというか‥‥。
 瀬方さん、それって力業じゃん。

●貞子の一発芸?
 可愛い名前とは裏腹にあまり愛らしくないちゃっぴい。
 だが元々彼らは愛らしいペットを観にきた訳ではない。
 恐ろしい恐獣と不気味な蛙とどっちが抵抗あるかと聞かれれば大差はなく。
 そして最もきついのは裏方の二人。

(「あ、あと30秒‥‥!」)
 ひなたの秘術の持続時間は地球時間で6分。
 茜の腕時計は術の終刻を告げていた。
(「も、もう駄目‥‥!」)
(「忌野さん――!」)

「眩しい‥‥わ‥‥灰になる‥‥!!」
 周りの人間達を一人残らず呪い殺しそうな勢いで呟く貞子。
 瀬方以外の全員――勿論ノビータも――が怯えたところに、

(「闇よ! もう一度お願いっ!!」)

 ちゃっぴいが消える直前に、
 茜の魔法が再び視界を閉ざす。

「うわあ! また!!」
「貞子さん、やめてぇ!!」
 シュネオも静も皆、貞子の仕業と思い込む。

(「今ですっ!」)
(「はいっ! ごお、ちゃっぴいっ☆」)

 そうして、再び姿を現す――いや、『変わらずそこにいる』ちゃっぴい。
 力業にも程があるが、
 こうしてノビータの恐獣は無事、シュネオ達に御披露目を成功させる事が出来た。

●がんばれひなた
「思ってたのとだいぶ違ってたけど‥‥すげえよノビータ」
 凄いと思ったものは素直に褒めるのが子供達のいいところ。
「本当ね。よく見ると‥‥可愛い‥‥かしら?」
 無理しなくていいよ、静ちゃん。
「そ、そう? えへへ‥‥」
 静に褒められ有頂天のノビータ。
「絆値高いから言う事も聞くんだよ。
 ほら、ちゃっぴい、お手」

(「え゛!?」)
 ぎょっとしつつも反射的に言う事をきかせてしまうひなた。

「危ない! ノビータ少年!!」
 お手を出すちゃっぴいからノビータを庇う瀬方さん。
 ガマには毒があるもの。
 秘術で呼び出したガマに毒があるかはわからないが、少なくともお手は打ち合わせにない。
「ポタモサウルスには‥‥猛毒があるわ‥‥気をつけなさい‥‥こっちに来たくなければね‥‥ウフフ‥‥」
 まあ、確かにこう言っておけばシュネオ達への牽制にもなる。ボロは出さないのがいい。
「ノビータ少年、何度も言っておるでしょう。気をつけるようにと」
 もっともらしく叱れば不審に思う者も出なかった。

(「ああっノビータさん、そんなに無茶しないで〜っ」)
 裏方のひなたは本当に気が気でなかった。
(「ちゃっぴい、もう少しだから我慢してください〜。はうう‥‥」)
 保存食は必要なかったが、胃薬が必要だったのではないかと後に皆は思ったという。

●不思議な冒険者が叶えてくれました
「みんな、どうもありがとう〜」
 お調子者のノビータはやはりお調子者らしく冒険者達に感謝する。

「どういたしましてです。――結構疲れましたけど」
 というか、今回肉体面精神面両方で最も疲れたのは間違いなくひなただろう。
 が、軽く流して、笑顔で返すのだった。

「――とはいえ、宜しいか? ノビータ少年」
 依頼は成功した。
 だが少年の為にも瀬方は敢えて苦言を呈す。
「これに懲りて、日頃の行いを慮る事です。
 重軽を問わず身勝手な嘘は、周囲に無用な禍根を残しますぞ」
 神妙な面持ちで聞いたノビータ。
「――うん、わかりました。
 反省します。
 嘘はいけないって、身に染みたから」

「三日後には忘れてる気がするわ‥‥」
 これこれ、そんな本当の事を言っちゃいけない。

「いいこと? 私からも言っておくわ‥‥。
 これ以上調子に乗ったら‥‥呪殺、よ」
 ニヤリと笑う貞子。
 ノビータは心底怯えている。
 これならば当分忘れる事はないだろう。
 五日くらいは。

「ま、まあ、反省してるならいいじゃないですか」
 と、とりなす冒険者の良心、茜。
 いや、本来このメンバーは良心だらけなのだ。
 約一名の暗黒面が凄まじいだけで。
「私は初めて魔法が使えて嬉しかったです。
 私の魔法、お役に立てました?」
「もっちろん! 助かり――」
「ええ‥‥私の演出に‥‥ピッタリよ‥‥」
「えと‥‥いや‥‥そうじゃなくって‥‥」
 思わぬところから大反響だったようだ。
(「あうう‥‥持ってかれました〜〜」)
 礼を言いそびれてひなたは涙目。

「そ、それじゃまた――。
 私の魔法でよかったらいつでもお力になりますよ」

 初めて覚えた魔法が嬉しいんだろうけれど。
 そういう事は言わない方がいいよ。

 モンテール伯の苦労をまだ、彼女らは知らない。