【モンテール伯】ノビータと月道
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■ショートシナリオ担当：冬斗 対応レベル：8〜14ｌｖ 難易度：普通 成功報酬：4 G 15 C 参加人数：5人 サポート参加人数：-人 冒険期間：06月26日〜07月01日 リプレイ公開日：2008年07月11日 |
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●オープニング
冒険者の酒場はお酒を飲むだけのところではありません。お酒を飲めない子供達も楽しい話におおはしゃぎ。
「僕のパパ、月道管理の人と友達でさ！」
エルフで貴族のシュネオ。
あまり細かい設定は気にしない。
「こないだもウィルから天界人の女の人が来たんだ。ジ・アースの方ね。冒険者なんだって」
「へえ、すごいわ。シュネオさん」
「遠くの国からあっという間にこっちに来るんだろ？ おれも見てえなあ！」
天界人の静ちゃんもジャイアントのガイアンも聞き入っています。付き合いいいな、おまえら。
「そんなのうらやましくなんかないやい！」
ひとり逆らうＫＹノビータ。
「ぼくの仲間だって月道持ってるんだぞ！」
ゴーレムで恐獣で今度は月道。
段々ホラがでっかくなっているノビータ。
おまえ前回嘘は駄目とか説教されてなかったっけ？
笑われるノビータ。当たり前です。
「おまえ月道がどんだけすごいもんかわかってんのか？」
「ちゃんと国の偉い人が管理してるんだぞ？」
「ノビータさん、嘘はいけないわ」
片想いの相手静ちゃんにまで散々です。
ムキになったノビータ、両手を上げて、
「だからその偉い人がぼくの仲間なんだよ！ 月道って言ったってただの月道じゃないぞ！
天界にいける月道なんだ！！」
おいおいおい、無茶言い過ぎ！
それ、天界人の偉い学者さんが今話題にしてるやつではないですか。しかもそれ見つかってないし。
ゴーレムや恐獣どころのホラではありません。
「ほんとうだい！
うそだったら鼻で牛肉スープ飲んでやる！！」
あとはおやくそくのコース。
「ドラエ〜〜〜！！！」
ああ、もうなんでしょうこの駄目少年。いっぺん死んでみた方がいいんじゃないでしょうか？
ドラエ・モンテール伯爵。
天界、ジ・アースという世界から来た河童の冒険者。
元はジャパンという国の種族だったそうだが、先祖がノルマンに移住。ノルマンでモンテール家を創立したとか。
ドラエもノルマンで冒険者を営んでいたが、月道を通り、アトランティスへ。
現在、ドラエは冒険者を引退し、ギルドで冒険者達の面倒をみることにしたらしい。
といっても、主に面倒をみているのは駄目冒険者ノビータ君。
「天界に月道開いて〜〜〜！！！」
「なんて
ばかな
ことを！！！」
モンテール伯大激怒。
当たり前です。
このままではノビータそのうちステライド王と友達になりたいとか言い出しそうですから。
「新しい月道がどんなに稀少か知ってるのかい？
おまけに天界行きの月道なんて」
そんなものが今見つかっていたら大騒ぎだ。
シュネオ達もこんな妄言聞き流してくれたらいいのに。
「うえ〜〜〜〜ん！！」
泣いてばかりいるノビータ。
「んもう、しょうがないなあ‥‥」
え！？ 出すの？ 依頼。
不思議な冒険者達でノビータの願いを叶えてみようとモンテール伯。
さすがに甘すぎじゃありません？
●今回の参加者
ea0167 巴 渓（31歳・♀・武道家・人間・華仙教大国）ea1856 美芳野 ひなた（26歳・♀・忍者・人間・ジャパン）
ea5989 シャクティ・シッダールタ（29歳・♀・僧侶・ジャイアント・インドゥーラ国）
eb3114 忌野 貞子（27歳・♀・志士・人間・ジャパン）
ec4666 水無月 茜（25歳・♀・天界人・人間・天界（地球））
●リプレイ本文
●地獄腐女子二籠「依頼通ったの！？ やった〜〜！！」
はしゃぐ依頼人、ノビータ。
ちなみに依頼料出しているのは受付のモンテール伯。本当に甘過ぎ。
「さっすがはドラエ！
で？ で？ どんな人達が来てくれるの？
前回は可愛い子もいたけれど、ちょっと怖い人が二人ほど――」
「ノビータ君」
「ん？ 何？」
ＫＹスキル超越のノビータ、背後の暗黒オーラにまるで気付かず、
「ふふふ‥‥」
「―――！！」
背筋をぞわりと撫でる黄泉の声にようやく意識を向ける。
「ノビータ‥‥覚悟は出来てる、わねェ‥‥くーッくく‥‥」
忌野貞子（eb3114）。
前回ノビータ達を暗黒空間に引きずり込んだ地獄女子。
「貞子‥‥さん？ いや、あの‥‥ぼく‥‥」
ノビータの寝言のような言い訳など当然聞く耳持っちゃいない。
「イ ッ ペ ン、シ ン デ ミ ル？」
「ぎゃあああああああああああああああああ！！！」
●結局皆お人好し
「ノビータさん、またなんですか？ いい加減にしてください〜」
怒り心頭の美芳野ひなた（ea1856）は貞子と同じく前回の参加者。ノビータの見栄っぱりに付き合わされ、振り回されていた。
いや、貞子はどちらかといえば振り回していた方かもしれないが。
「お前なあ、嘘つくなたあ言わねえがもう少し穏やかなモンにゃ出来ねえのか？ こりゃ酷過ぎんぜ？」
「‥‥できれば『つくな』と言いたいところなのですけれどね、嘘。わたくしとしましては‥‥」
畳みかけるのは巴渓（ea0167）にシャクティ・シッダールタ（ea5989）。二人ともひなたの頼れる友人だ。
今回もひなたの頼みとあってこの馬鹿げた依頼に参加した訳なのだが――。
「いや、面目ない。ノビータくんにはぼくからもきちんと言っておくから――」
きちんと言えないからこうなったのではあるが、詫びと礼は欠かさないモンテール伯爵。別に依頼人は彼ではないのだが。その癖金は出す。
「うええ〜〜〜〜ん！！」
こらそこ。
みんなお前の事を言ってるんだよ。
「みなさん、言い過ぎですよ」
「あ、茜さん‥‥！」
文字通り四面楚歌のノビータを唯一庇ってくれる水無月茜（ec4666）。
「でもノビータさん、
いくらなんでも月道って、無茶にも程がありますよ？」
やっぱり四面楚歌だったようである。
●貞子語る
シュネオ達三人との待ち合わせの場所。そこにはノビータと、
「ふふ‥‥坊や達‥‥久しぶりね‥‥」
「出たあああああ！！！」
「ぎゃあああああ！！！」
「殺されるううう！！！」
こらこら、静ちゃんまで。
「ふふふ‥‥話は聞いたわ‥‥この子がまた余計な事を話したらしいわね‥‥」
「え‥‥あ‥‥あの‥‥」
「まあ‥‥いいわ‥‥喋ってしまったのなら仕方ない‥‥ついてらっしゃい‥‥」
『どこにつれていくんですか？』
そう聞いてしまいたくなるのを堪え、一行は貞子の案内の元に。
森をかき分け、人気のない所に進む五人。
「ノ、ノビータ‥‥本当に月道なのかよ‥‥こんな人気のないところに‥‥」
いや、人気はあまり関係ない。
「貴方たちも‥‥この世界が精霊で成り立ってるぐらいは‥‥知ってるでしょ？」
先導する貞子が口を開く。
「彼らの存在を‥‥蔑ろにすれば‥‥必ず、彼らは復讐するの、よ。
精霊はピュアな‥‥存在だから、ね」
天界人の彼女に精霊を説かれるとは思わなかったろうが、意外にも真面目な事を言っているようだ。
「それに、月道の重要性は‥‥子供でも、判る事でしょ？
それを調子に乗ってベラベラベラベラベラベラベラベラ‥‥‥」
あの‥‥もしもし？ シュネオ君達怯えているようです。
いや、どうやらそれが狙いのようですが。
「‥‥彼らは、この世界そのもの、なのよ。
常に‥‥私たち人間を‥‥見張ってるの、よ」
『‥‥‥‥』
どうやらここにきてようやく一同も貞子の言いたい事がわかってきたようだ。
そこに、
「おい、お前ら！ そこで何してんだ！？」
●段々と事は大きく
出会ったのは二人の冒険者。
月道探索の依頼を受け、やってきたのは巴渓とシャクティ・シッダールタ。
もちろん貞子の仲間の二人。狂言である。
「前々から月道の噂があったんだけどよ、どこかの小僧が言いふらしたとかで俺らに依頼が来たって訳だ」
シュネオ達三人、一斉に『どこかの小僧』を見る。
「あら‥‥ひょっとして‥‥」
「‥‥おい、そこの小僧、ちょいと話を聞かせて貰おうか‥‥」
「――なるほど、状況は理解した」
「全く、なんという危険な事を。新しい月道というものが気軽に見に行っていいものではないという事はわかるでしょうに‥‥」
呆れながらも事の重要性をさりげなく伝えるシャクティ。
「だってノビータが‥‥」
「なあ‥‥」
「とにかく、こうなったらお前らに案内してもらうぜ、月道」
渓の有無を言わせぬ迫力にノビータ含めた四人は従わざるを得なかったとか。
●ムーンローダー（そんなのないです）・ぱすてるピンク
「ここ‥‥よ‥‥この先‥‥」
貞子が案内した森の奥、人の手も碌に加えられていない場所に月道があるという。
そこに、
「待ちなさ〜〜〜いっ！！」
嫌に透き通る黄色い声が。
振り向くと綺麗な白髪を短く切りそろえたあどけない少女。
「ずっきゅ〜ん☆ ぱすてるピンクにマジカルちぇ〜んじっ♪」
『‥‥‥‥』
一同皆固まっている。
目の前のモノを認識できずに。
（「‥‥ううう、茜さんが似合うって言ってくれたんだもん〜！」）
◆◆
「――前々から思ってたんですよ。ひなたさんって魔法少女っぽいなぁって」
「は？ 魔法しょ――？」
「月道管理者ならそれっぽい格好しなきゃいけませんよね？
ここは私の地球知識に任せてください！」
そういって茜が提案した『月道管理者』のコスチューム。いや、『コスチューム』とか言ってる時点で既に間違えてる気はするのだが。
「ヒラヒラのスカートもいいですけど、最近の流行りはスクール水着っぽいのですからね〜。
ひなたさんってイメージが白だから‥‥白スクとニーソですね！」
「すくー‥‥る‥‥？」
「といっても私も夏の水泳の授業でしか着ないから、細かい部分は適当で。
あとはそれにフリルやセーラー服みたいな襟をつけて‥‥っと」
ノリノリで茜の仕上げたラフデザイン。
「‥‥これ？ 着るんですか？ 私が‥‥」
「大丈夫！ ひなたさんお裁縫得意みたいですし、私も手伝いますから！」
そういう心配をしてるんじゃないと気付け茜。
◆◆
（「ひなたさん、ロリっ子魔法少女バッチリです！」）
（「ひなた‥‥来年２０歳なんだよ‥‥１０歳じゃないんだからね‥‥はうう」）
これは失礼、夢見る少女じゃいられなかったようだ。
だが、とてつもなく似合っていた。皮肉なまでに。
尤も、
これが『月道管理者』として説得力あるのかは別の話だが。
（「なんちゅう格好だよ、ひなた‥‥！」）
変装するとは聞いていたが、ここまでとは。
（「ああ‥‥素晴らしい‥‥可愛らしいですわ、ひなたさん」）
（「いや、何羨ましがってんだ、シャクティ」）
俺達は月道探索の冒険者だろ、と渓は地の出かけるシャクティを押しとどめる。
「ノビータさん！ 貞子さん！ ここに何の用ですか！？ あと後ろの人達はなんですか！？」
しまらない白のスク水で無理矢理締めるひなた――もとい『ぱすてるピンク』。
「ごめんなさい‥‥ノビータが‥‥この子達に‥‥月道の話を‥‥」
「えええっ！？」
素敵なくらいに一切合切ノビータになすりつける貞子。
「それで‥‥ここに来る途中‥‥この人達に見つかったの‥‥月道の祟りかしら‥‥」
いや、そういうのはあまり聞いたことないが。
「お、おう。あんたが月道の管理者か。俺達ゃ国の依頼で――」
「国？ ノビータさん‥‥貴方が言いふらしたんですね〜〜？」
「い、いや、それはその‥‥」
「問答無用です〜〜〜！
マジカルあろ〜〜〜！！」
ぱすてるピンクが一行を指差すと、背後の茂みから光の矢が放たれる。
それは一直線にノビータに。
「ぎゃあああっ！！」
「いけない！ 月道の管理者を怒らせてしまいましたわ！」
あくまでアレを『月道管理者』と言い切るシャクティらの図太さも相当だが。
「シャクティ！ 貞子さん！ そいつら連れて逃げな！」
渓が殿を務め、管理者・ぱすてるピンクと対峙し、
「渓様も無理をなさいませぬよう！」
「ふふ‥‥ありがとう‥‥黄泉路で会いましょう‥‥」
突然の戦闘にパニックの子供達を連れて、渓に任せる振りをして場から離脱するのだった。
●哀れノビータ
「‥‥ふう、ここまでくればもう大丈夫ですわね‥‥」
「はぁ‥‥はぁ‥‥死ぬかと思った‥‥」
「助かったわぁ‥‥」
「いいですか、あなた達」
シャクティは慣れない怒りの表情で子供達を窘める。
「月道を興味本位で覗くという事がどれだけ危険かわかりましたか？
‥‥残念ながら今回の依頼は失敗です。ですが、この事は誰にも言ってはいけませんよ？」
『は‥‥はい‥‥』
しょぼんとうな垂れる三人の子供達。
三人？
「‥‥っと、忘れてました。いいですか、ノビータさん、今回の事はあなたが一番‥‥ノビータさん？」
シャクティが担いできたノビータはぱすてるピンクの――正確にはぱすてるピンクの仕業に見せかけた茜の――ムーンアロー一発でものの見事に昏倒していたようで。
「‥‥ふふ‥‥祟り‥‥ね‥‥」
「‥‥ま、まあ、いいでしょう。これが彼へのお灸だという事で」
●後日譚
「――ってこった。済まねえ。ノビータに怪我させちまった」
一応ノビータは依頼人である。
いきさつを一通り報告し、冒険者としてモンテール伯爵に詫びる渓だったが、
「――いや、問題ないでしょう。これでノビータ君も懲りるよ。うふふふふ」
愛嬌のあるダミ声で笑いかけるモンテール伯。
かくして依頼は大団円を迎えたのだった。
モンテール伯の言うとおりこれでノビータ君も懲りるだろう。
まあ、何週間かくらいは――。
「――それにしても」
妄想に耽るシャクティ。
「すくーる水着‥‥わたくしも着てみたかったですわ‥‥。
ひなたさん、水無月さん、今度わたくしも――」
