選ぶ道

■ショートシナリオ


担当:冬斗

対応レベル:8〜14lv

難易度:やや難

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月02日〜07月07日

リプレイ公開日:2008年07月30日

●オープニング

 初めての冒険はまるで役に立てなかった。
 わかっていたことだ。自分には圧倒的に経験が足りない。
 駆け出しの冒険者でさえある程度の下積みを持っている。自分は剣を持ったことすらない。
 いや、それさえも言い訳だ。
 チキュウから来た天界人達の中には戦闘の訓練すら受けていない者も少なくない。
 自分とどこが違うというのか。

『ゴーレムがあれば即戦力だからな』
『『守る』心の強いステラさんは騎士向きなのでは――』
『ベテランの人達とも仕事をする事も――』
『そうねー。多少無茶しても大丈夫だし』
『自分にあった方法を――』

『その時が――楽しみですね』

「‥‥よし‥‥!」
 そうして、
 彼女は決めた。
 冒険者としての道程を。

 ◆◆

「あら、ステラお久しぶり。どうかしら、冒険の方は?
 え? 依頼?」
 冒険者からの依頼が珍しいとは言わないが、同じ依頼人から今年で二度、しかも相手は駆け出しだ。
「すみません‥‥非常に心苦しくはあるのですが‥‥」
 別にそのような事はない。ギルド員にとっては報酬さえ出せるのであれば御客様だ。一般人も冒険者もない。
「相談に乗って欲しくて――」


 事の起こりはステラが鎧騎士を目指したところから始まった。
 鎧騎士は――当たり前だが――騎士である。
 最低限、身元が保証されなければ位につく事は出来ない。
 保証のないステラには後見人が必要である。
 それが騎士だけでなく、ゴーレムに通じているような人物であれば尚良い。

「メリエル・マーロック。メイディア国のゴーレムニストの方です」
 ゴーレムニストは数が少ない。自然と名も覚えられやすい。
 何度かギルドも彼女の依頼を受けた事があった。
「ああ、結構面倒見の良さそうな人よね。彼女に弟子入りしたのかしら?」
「はい‥‥それが‥‥」

 ◆◆

「――成程。ステラ、君の身元、状況はわかった。――目的もな」
 ステラはいち冒険者としてメリエルに面会を求め、そこで己の身元を話した。
 あまり話したくない事ではあったが、身元を伏せたままで後見人は頼めない。
 目的は――メリエルの方が察してくれたらしい。
 そこにメリエルは何の感情も――少なくとも表向きには――映す事なく、
「手段としてゴーレムを欲するか。いいだろう。ただし、条件がある」
「条件?」
「ある若者を鎧騎士にして貰いたい」
「鎧騎士に? ええと、ということは――」
「誘ってくれという事だ。つまり、君と共に入門する扱いだな。方法は任せる」
「どなたでしょうか?」
「騎士だ。名をパヴェル・カーター」


『条件』というからにはその若者は今のままでは鎧騎士になる事はないのだろう。
 兵舎を尋ねるとパヴェルにはあっさりと会えた。
 真面目そうな若者。年はステラとそう変わらないだろう。
 ひょろっとした優男、騎士を名乗るにはやや精悍さが足りないか。
「申し訳ありませんが――。ぼ――私は鎧騎士になるつもりはありません」
 メリエル同様すんなりとステラを通してくれた若者だったが、用件を聞くと済まなさそうに、だがきっぱりと申し出を拒絶した。
「御引き取りを」
 馴れない慇懃な口調で拒絶する。どことなくやつれたような表情と相俟って痛々しかった。

 ◆◆

「ああ、パヴェル・カーターね」
「御存知なのですか?」
 一通りのいきさつを話し、ギルド員は納得した。
「彼よりは彼の兄さんね。
 ディレオ・カーター。地方の領主であまり家柄は大きいとは言えないんだけれど、結構やり手で上の覚えはいいみたい。
 けれど、それが気に入らない連中もいるみたいでね。
 弟さん、嫌がらせ受けているみたいなのよ」
「‥‥らしいですね」

 断られた後、メリエルに改めて事情を聞いた。
 パヴェルへの嫌がらせはトラブルにまで発展し、一時決闘騒ぎになったらしい。
 ディレオはこれを水面下で止めようと画策、ギルドにあまり全うとはいえない依頼を出した。
 依頼は不成立。そうなると今度はディレオは決闘を強引に潰してしまった。
 所詮見習いに毛が生えた程度の騎士達の決闘。本来、騎士の決闘を止める事は許されないが、この場合そんなものは建前にしか過ぎない。
「本来は清廉潔白な方みたいだからね。周りも驚いてたみたいよ?
 ――弟想い、なんでしょうね」
 だが、その結果はパヴェルを余計に追い込むものになった。
『兄の力に助けられる卑怯者』
 そうして彼は立場を失くしていった。

「ちょっと待った。ならなんでパヴェルは鎧騎士断るの?
 むしろ誘いあるなら丁度いいじゃない?」
 メリエルが言うにはパヴェルには鎧騎士の適性があるとか。
 あの体格では騎士として実力は出せないだろう。頭でやっていくつもりでないのなら、この誘いは渡りに船ではないか。
「それが――」

『逃げたくないんです。
 私はディレオ・カーターの弟ですから』

「――なんともまあ‥‥」
 不器用にも程がある。
 自身の為にも兄の為にもどちらにしろ悪い話ではない筈だ。
 だが、それは彼の誇りが許さないらしい。
 おそらくは卑怯者呼ばわりされた事より、
 兄の手を煩わせてしまった事の方が彼にとっては苦痛だったのかもしれない。


「ええと、で?
 つまりはパヴェルの説得を手伝って欲しいと。そういう依頼?」
「いいえ」
 ステラの表情は――迷い。
「わからないんです。
 パヴェルさんには鎧騎士になって欲しい。
 それは私の為でもありますし、彼の為にもその方がいいとは思います。
 けれどやっぱり私の都合なんです。
 その為に彼の人生に口を挟んでいいのでしょうか?」
「ん‥‥さあ、ね‥‥」
 いいとも言えないし、悪いとも言えない。それは彼女自身が決める事だ。
 けれど迷うのも無理はない。年齢的にも経験的にも、それを選択するのは少女にはやや辛い。

「それじゃあどういう――?」
「ですから――純粋に相談です。
 こんな事でギルドに依頼するのは申し訳ないんですけれど‥‥」
 一人で悩み、答えが出なかったのだろう。
「了解、相談の依頼ね!」

 傍から見てて、潰れそうなくらいに何かを抱え込んだ少女。
 それが周りを頼ろうとしていたのがギルド員には他人事ながらも嬉しかった。

●今回の参加者

 ea0439 アリオス・エルスリード(35歳・♂・レンジャー・人間・ノルマン王国)
 ea1587 風 烈(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea6382 イェーガー・ラタイン(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb7880 スレイン・イルーザ(44歳・♂・鎧騎士・人間・メイの国)
 ec4205 アルトリア・ペンドラゴン(23歳・♀・天界人・人間・天界(地球))

●リプレイ本文

●三度目の依頼
「いよっ、ステラさん、お久し振り」
「烈さん――」
 風烈(ea1587)がステラの世話をするのはこれで三度目だ。
 心なしかステラの表情も柔らかなものに。
「俺だけじゃないぜ」
 そう言って烈が紹介したのは、
「やあ、ステラ」
「俺の事、覚えてますか?」
「また会えて嬉しいです」
「アリオスさん、イェーガーさん、アルトリアさん!
 みなさんお変わりなく」
 アリオス・エルスリード(ea0439)、イェーガー・ラタイン(ea6382)、アルトリア・ペンドラゴン(ec4205)――。
 皆、ステラと寝食を共にした冒険者達だ。
「――そういうそちらも変わってはいないみたいだな」
 アリオスが苦笑する。
『変わっていない』
 そう、それが今回の彼女の依頼でもあるのだ。

●迷い
「――説得してみてはいかがでしょうか?」
 アルトリアが言う。
 事情を聞いた冒険者達の意見は皆が同じものだった。
「ですが、私は一度断られて――」
「言うだけの事は言ったのか? 形式を伝えるだけのものは勧誘とは言わないぞ、伝言だ。
 まだあんたは勧誘すらしていない」
 ステラの迷いを見抜いたか、アリオスが強く、優しく問いかける。
「で、でもこれは私の事情で――」
「ステラさん、依頼を受けるのなんて皆、各々の事情ですよ」
 イェーガーがにっこりと笑う。
「俺が依頼を受ける理由、それは次代を担ってくれる人達を見届けたいからです。
 いつかこの世界での役目を終える前に、俺達の代わりを探したいから」
「――そんな立派な理由、私には」
「ステラさん、動機に立派か不純かなんてありますか? あったとして必要ですか?
 ステラさんの鎧騎士を目指す理由がどのようなものかは知りません。
 ですが、それは俺の目的よりも下らないものですか?」
「―――」
「俺はステラさんにも――そのパヴェルさんという方にも後悔しないより良い未来を進んで欲しいと思っています。
 俺の都合です。
 ですからステラさんだって自分の都合でパヴェルさんを説得しても何もおかしくはないと思いますよ」
「あんたが余計な遠慮をする必要などないって事だ。
 人生について口出することは、相手が納得をすればいい
 誰かの意見を取り入れるかはその人自身の問題で、選んだのならそれはその人の意思だから」
 イェーガーの言葉は迷うステラに本分を思い起こさせ、アリオスの厳しい言葉はステラの背中を押して、
「最終的に決断するのはパヴェルだ。君はただ思う所や願いをぶつければいい。嫌ならまた断られるだけさ。
 そうと決まれば――」
 烈が立ち上がる。
「まずは相手の事をもっと知らないとな。メリエルさんだっけ? 彼女はパヴェルには詳しいのかい?」

●馴れ染め
「まあ、ほんの少し、な」
 メリエルが言うのは謙遜でなくほんの少しらしく。
「知ったのはついこの間。ゴーレムの稼働テストに人手が足りなくてな、若い騎士達を数人借りたんだ」
 国がゴーレム開発に力を入れているとはいえ、鎧騎士の数はまだ多くはない。稀に門外から人手を頼む事もあるという。
「まあ、素人でも可能な簡単な操作のみ教えてな。ちょっと歩かす程度でいいんだ。
 それでも馴れないときついものだから――たまに見かけるんだ。センスのある人間。
 精霊力とか器用さとか色々あるけれどね、一言で言うなら『スジがいい』というところか」
 勧誘したが断られたらしい。繰り返すが鎧騎士の数は多くない。
「じゃあ本気で?」
「当たり前だろう? その気もないのにわざわざ人使ってまで勧誘せんよ」
 当然のように返すメリエルに烈は安心し、
「良かった。ステラさんを断る為に無理難題をふっかけたって訳じゃなさそうだな。
 ひょっとしてパヴェルの事――」
 心配しているんじゃないか、と問う烈に、
「まさか、そこまでお人好しじゃない。先程も言ったが、この間知ったばかりだ。人間的な関心などないし、第一本人がそれを望んでない。
 純粋な能力での勧誘だよ。人手不足でね。
 私では頷いては貰えないようだから年も立場も近い者を寄越してみたまでさ。
 お前達の言うとおり、最後に決めるのは本人だ。やる気がないなら仕方ない」
 あくまで職務としての勧誘だとメリエルは答えるが、
(「――やっぱりそれって、『心配してる』んじゃないのかな」)
『同情ではない』と、
 おそらくそれを嫌うであろう若者にそう断言した。
 たとえ付き合いが短くとも、それは誠意のある対応で、だとすればやはりそれは『心配』なのではなかろうか、と。
「――ん? 『立場』?」
 烈とメリエルの会話からアリオスは別の事実に気付き、
「――チ、」
 メリエルは口を滑らせたと毒づいた。

●動機
「済みませんが、何度、誰に来られても――」
 再度、兵舎を訪ねパヴェルを勧誘する。
 冒険者達を引き連れてくるも、それは若者の反応を硬化させこそすれ、鎧騎士への関心を寄せさせる事にはならない。
 だが、
「話は聞かせて貰った。お節介を承知で口出しさせて貰う。あんた、勘違いしてないか?」
「―――ッ」
 その中でアリオスは一人厳しい態度でパヴェルに臨んだ。
「騎士とは何だ?
 民衆を護るための剣であり、盾だ。
 だから、民衆を護れない弱い騎士には存在価値がない」
 アリオスの言葉が若い騎士に突き刺さる。
「今、鎧騎士の養成がどれほどの急務かわかっているのか?
 逃げたくないだと?
 いいや、あんたは逃げている。
 民衆を護る義務から
 強大な敵と戦うことから
 ――騎士としての責務から」
「アリオスさん!」
 言い過ぎだ、と止めようとするステラを烈が抑える。
 必要だと。
 彼にはアリオスの言葉が必要だと。
「見誤るな。騎士にも鎧騎士にも差異などない。
 ならば己の力の少しでも及ぶ道を――」

「わかってる!」

 弾けたような少年の叫び。
 いや、実際に弾けたのだろう。
「わかってます‥‥僕のこの気持ちがただの我儘でしかないなんて――」
 少年の内に潜んでいた本音が。
「立派な騎士になりたい訳じゃない‥‥。兄さんの役に立ちたい訳でもない‥‥。
 ただ僕は‥‥兄さんの様になりたいだけなんだ‥‥!」
 誰の為でもなく、ただ自分の為に。
 それは愚かで純粋な子供の憧れ。
 褒められるものではない。騎士とは他者の為に力を振るうものだ。
 パヴェルのそれは自己満足にしか過ぎない。
「それでも‥‥我儘でも‥‥!」
 それを誰が責められようか。
 騎士道とは誇りだ。だが彼にはそれがない。
 いや、持てなかった。
 弱かった少年には他者を守る誇りなど育める筈もなく。
「――気持ちは、わかった」
 同情の念を抑える烈。それは侮辱だと。
 ただ、
「それで、なれそうなのか?」
「―――」
「兄さんの様に、君はなれそうなのか?」

●騎士道
「――俺はステラさんが説得する事には賛成です」
 先程も言いましたが、とイェーガーが繰り返す。
「ですが、」
 メリエルに事情を聞き、ひっかかるもの。
『立場』
 ステラとパヴェル、二人は似ていると彼女は言った。
『年』も『立場』も。
 鎧騎士志望――という理由ではもちろんない。パヴェルはその気がないのだから。
 ならば、
「ステラさん、あなたは何故鎧騎士に――冒険者になろうとしたのですか?」
 似ているのは動機。
「それは――」
「無理して聞く事ではありません。話したくないのでしたら聞かないつもりでした。今でもそれは変わりありません。
 ――が、ステラさんがどうしてもパヴェルさんに鎧騎士になって欲しいのでしたら、それを話す事も誠意かもしれませんよ」
「―――」
「決めるのは君だ。ステラさん。鎧騎士の道を選ぶのがパヴェルであるようにな」
「私、は――」

 ◆◆

「僕は――」
(『お前は騎士になるな。向いていない』)
 わかっていた。騎士になる事を報告したその日、兄に言われた言葉。
 その日初めて兄と喧嘩した。
 だからアリオスの言葉は誰よりも自分自身がわかっていた。
 自分は義務も責務も負っていない。
 あるのはただの愚かな憧れと意地。要するに、

 格好つけたいだけなのだ。
 けれど、
 格好つけないとこの先何があっても乗り越えられない、そんな気がして。

「あの、私――、
 ――兄を‥‥探してるんです」
「ステラさん‥‥!」
 驚くアルトリア。それも当然。
 無鉄砲で前しか見ない危なっかしい少女。
 無口という訳ではない筈なのに、その行動の『動機』だけは決して語らなかった。
 その少女が、

「兄は――カオスの魔物に取り憑かれ、姿を消しました」
『!!』

 カオスの魔物。
 恐獣やバの国のゴーレムと並び、メイディアに災いをもたらす人外の力。
 バの国がその力を利用しているとも言われるが、勢力は不明、目的は個体によって異なり――。
「私の家は曽祖父が封じたカオスの魔物を管理していました。
 ある日、その封が破られたのです。
 何故かはわかりません。
 しかし、結果私の両親は兄に殺され、兄はそのまま失踪しました」
「お兄さんを探しているのですか? 仇を討ちたいと――」
「違います!
 確かに兄のした事は許されない事です。ですが、聞きたいんです。事情を。
 ――私はあの日、何があったかも知らない。
 気がつけば家の人間は殺されて、カオスの魔物の封印が解けていて――。
 会って――話がしたいんです。兄様と――」
(「ああ」)
 納得する。
 それが動機。
 ステラもパヴェルも共に兄に抱えきれない想いを抱いている。
 だが、それなら――、

「パヴェルさんの気持ちはわかりました。
 自分の為に兄に会いたい私が、自分の為にお兄様に近づきたいパヴェルさんの道を変える事は出来ませんよね」
「いいのか? それで」
「はい。話したらスッキリしました。烈さんも仰りましたよね? 決めるのは自分自身だって。
 私、別の条件をメリエルさんに頼んでみます。協力――して貰えますか?」
「ああ、勿論だ」
「イェーガーさんもありがとう。何か吹っ切れた気がします」
「――そうですか」
 イェーガーは気付いていた。ステラの手が僅かに震えている事に。
 話してスッキリする筈がない。世間体を何より気にする貴族にとって、カオスの魔物も兄が家族を殺した事も言語を絶する醜聞だ。
 彼女が家族を愛しているのならばこんな話を好んで出来る訳がない。
 けれどそれでも、彼女が『吹っ切れた』と言うのなら、信じよう、その言葉を。
 だからイェーガーも気付かぬフリをした。

「―――」
 パヴェルは喋らない。
 兄のようになりたい。
 その想いを軽くするつもりはない。
 けれど、
「依頼人はステラだ。その彼女がいいというのなら俺がやる事もなにもない。
 あんたにしてもどうしても騎士でなければ気が済まないのなら構わんさ」
 アリオスの口調に先程の糾弾はなく、穏やかに告げる。

「だが、いいのか?
 あんた、今初めて騎士としてやれる事が出来たんじゃあないのか?」
「――え?」
「騎士ってのは、弱者を助けるものだろう?」
「――!」

 強制ではない。これはただの口実。
 あとは本人にその気があるかどうかだけ。
 アリオスは気付いていた。
 彼は鎧騎士をやりたくないのではない。
 ただ――幼き頃からの憧れを手放す事が出来ないだけ。
 苦しいだけだった騎士への道。
 だが、初めて認めて貰えたのだ。『お前が必要だ』と。
 それが嬉しくない人間がいるだろうか。
 そう、彼も本当は――。

「アリオスさんも言いました。『差異はない』と。
 貴方が鎧騎士になったとしても、
 騎士を目指してきた今までが否定される訳じゃないって思いますよ」
 アルトリアも優しく、彼の背中を押すように。

「――ずるいですよ」
 拗ねたようにパヴェル。アリオスは笑みを浮かべ、
「俺達は騎士様じゃないからな。方便も使うし、騙したりすかしたりもする。
 タチの悪い連中に絡まれたと諦めろ」
 その悪態も彼に力を与えるには充分で。

「ステラさん」
 そう、嬉しかったのだ、本当は。
 必要とされた事が。
(「面倒くさいものだな。騎士というものも」)
 思いながらも自分の付き合いの良さにも呆れてしまうアリオス。

「メリエルさんに会わせてください。
 鎧騎士の件、話を聞きたい」

「パヴェルさん――」

「よかったですね。鎧騎士の修行、応援させて貰いますよ」
「俺もだ。鎧騎士は今まで何度も見てきた。
 まずは目標をどこに定めるかをな――」
 イェーガーも烈もあえて兄の事には触れない。
 今はただ、その気遣いが嬉しかった。