選んだ道

■ショートシナリオ


担当:冬斗

対応レベル:8〜14lv

難易度:難しい

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:3人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月29日〜01月03日

リプレイ公開日:2009年01月11日

●オープニング

 ゴーレムニストの工房に勢いよく駆け込む若い鎧騎士見習い。
「お師匠様っ!」
 声音は上品過ぎて迫力には些か欠ける。
 当然、声をかけられた相手、メリエル・マーロックも眉一つ動かさず、
「どうした? カオス共との戦いなら認めないと言ったぞ。お前には早過ぎる」
「そんなんじゃありません!」
 メイの町に来た頃は線の細い令嬢的な印象が強かったが、むしろ彼女はこっちが地なのではないだろうか。
 少なくとも弟子にとって以来、幾度も顔を合わせているメリエルはそう思う。

「なんで言ってくれなかったんですか!?
 パヴェルさんのお兄さんが反ゴーレム派だって!」

 メイディアは現在ゴーレム作成を推奨している。
 だが、どんなものにも反対派は存在する。
 曰く、ゴーレムは予算の無駄だとか、
 曰く、ゴーレムは人間本来の能力を貶めるだとか、
 曰く、強力すぎる兵器は身を滅ぼす結果に繋がるだとか、
 意見は様々、動機も様々だが、共通している事は一つ。
 ゴーレムの使用を中止せよ、だ。

 そして、
 パヴェル・カーターの兄、ディレオ・カーターは反ゴーレム派の若手の先鋭だった。

「まあ、私から言わせりゃあれはやっかみ以外の何物でもないがね。連中の大半はゴーレム派の仲間入りが出来ずに派閥に乗り遅れた者達だ。
 ゴーレムに反対しているのではなく、ゴーレム派に敵対する事によって自分らの地位を確保しようとしてるんだ」
 メイディアに、いや、アトランティスにゴーレムがなくてはならないものなのは周知の事実である。
 だが、かねてよりゴーレムを推進してきた連中と相容れなかった貴族達はゴーレムに反対をする事でしか彼らに対抗出来ない。

「そんなことはどうでもいいんです! 問題なのは――」
 問題なのはディレオがパヴェルの鎧騎士入りを認めてくれないこと。
 両親亡き現在、ディレオはカーター家の家長を務めている。
 メリエル自身はパヴェルに後見人を必要とはしていないが、だからといって家を出て独りでやっていく事を単純に立派と誇れる感性は正直貴族には薄い。
 家長が認めない事に誇りは持てない。
 パヴェルもそういう普遍的な貴族の感性くらいは持っている。
 なのに――、

「要はおぼっちゃんという事だろう? 兄貴一人説得出来ずに何が鎧騎士なんだか」
 それを知り、なおパヴェルを貶める師に、
「ッ‥‥なんで‥‥!? パヴェルさんを鎧騎士に誘ったのはお師匠様じゃないですかっ!!
 知ってたんでしょう!? お兄さんの事、だったら――」
「――ああ、そうだそうだ、私が悪いな。
 だったら責任を取ってパヴェル君のお兄さんを説得してあげるか。一から十まで面倒見ないといけないのは煩わしいが拾ったのは私だからな。パヴェル君は何もしなくても鎧騎士になれるように計らってやるよ」

「――――」
 なにかが切れた。
「結構です!!!
 私とパヴェルさんでなんとかしますから!!」



「あんな人だとは思いませんでした!」
 パヴェルから事情を聞き、すっとんでいったと思えば、より勢いを増して帰ってきたステラ。
 お節介は彼女の性分なのか、まるで自分の事のように怒っている。
 それが少しパヴェルには嬉しかった。
「――でも、それはメリエル様の言うとおりですよ。これは我が家の問題ですし、勧誘されたからってみなまで頼るのは違う気がします」
 メリエルを庇うというよりも、事実と、そして『後から自分のせいで二人の仲がこじれてしまうのは嬉しくないな』という僅かな思いやりから口にするパヴェル。
「それに――判ってましたから、鎧騎士を目指すという事はどういう事か」
「あ――」
 聞いて、一番初めに言わなければならないと思っていたことを思い出す。
「――ごめんなさい、私、それを知らずにパヴェルさんを鎧騎士に――」
 それを首を振って否定する。
「決めたのは僕です。決めた時から既に覚悟はしています。ステラさんは関係ありません」
 きっかけをくれたのは彼女達だ。だからこそこれ以上頼るわけにはいかない。
 思えばきっとメリエルはそれを察してくれたのだろう。
 彼女が動いてはそれこそ立つ瀬がなくなる。
 自分のささやかな自尊心を守ってくれた事に少年は感謝する。

「じゃあ、せめてお手伝いさせてください! 私と――そうだ! 冒険者さん達に!」
「え、でも――」
「大丈夫、最近は冒険者もギルドに依頼をする時代なんですよ!」
 強引に押し切られる形に。
 これも計算の上で焚きつけたのだろうか、彼女は。
 改めて、感謝の気持ちを胸にした。



『しばらく会わない内に冗談を覚えたのだな、残念ながら面白くはなかったが』
『兄上、ぼ――私は――』
『お前に認めたのは騎士になる事だけだ。反対する私にお前は言ったな。『絶対に投げ出さない』と。ここまで諦めが早いといっそ清々しいが――』
『聞いてください、私は――』
『私が『それ』を認めるかどうか、世間を少しでも学んだその頭で考えてみろ』

 ディレオ・カーターは反ゴーレム派の若手の先鋭だった。
 だが彼はゴーレムの実用性を認めていないわけではない。
 むしろその立場上からゴーレムについての知識は並の鎧騎士をも凌ぐものがあった。尤もその立場上から実際に騎乗をした事は当然ないが。
 あれはメイディアに必要なものだ。
 だが、貴族というものは理屈だけでは動けない。
 ゴーレムがメイの主戦力を占めていく事で、ワリを食らう者達も確かに存在する。
 例えば騎馬部隊。
 なくなる訳ではないが、経費削減の対象になる部隊もある。
 例えばゴーレム政策の主幹に携わる派閥と敵対している者達は立場が厳しくなるだろう。
 彼はそういう者達の為に反ゴーレム派に属していた。
 勝ち目はないと思っている。
 やがて鎧騎士やゴーレムニストの数は今以上に増え、反ゴーレム派は敗れる事となるだろう。
 だが、それでいいと思っている。
 自分の役目はその時に敗者となり、後に禍根を残さない事だ。
 自分を倒す事でゴーレム派は面目を保ち、反ゴーレム派は諦めをつける事が出来る。
 それは覚悟している。

 今、案じているのは弟の事。
 騎士になりたいという弟の願いを受け入れた。
 受け入れ、ゴーレム問題とは出来るだけ関係のない騎士団へと派遣した。
 自分の飛び火が弟に及ばないよう。

 その弟が今度は鎧騎士になりたいと言っている。
 弟に素質があるのなら嬉しくないはずはない。
 だが、鎧騎士は駄目だ。
 自分の立場が、ではない。
 弟の立場が拙い。
 ディレオ・カーターの弟が鎧騎士達に受け入れられるか。
 だから彼は反対する。
 心配が過ぎるのはわかっている。
 それでも――たった一人の家族だったから。

●今回の参加者

 eb4257 龍堂 光太(28歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb8378 布津 香哉(30歳・♂・ゴーレムニスト・人間・天界(地球))
 ec5006 イクス・グランデール(27歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

●選んだ道
「龍堂さんお久し振りです」
「ああ、そちらも元気そうで何より。鎧騎士の修行を始めたんだって? 困った事があればいつでも――って、今が困っている時なんだよね」
 龍堂光太(eb4257)はステラと一度冒険を共にした仲。鎧騎士を勧めた一人でもある。
「で、なんだっけ?
 君の兄さんがゴーレム乗りになる事を反対してるんだったか?」
「あ、いえ、私ではなく――」
 布津香哉(eb8378)に対して訂正する依頼人、ステラ。
 彼女の傍にはもう一人、どことなく華奢な印象のある少年がいた。
「ぼ――私の兄が私が鎧騎士になる事に反対しているんです」
『僕』と言いかけて慌てて言い直す。背伸びをしていると笑い伏す事は出来ない。一人前に少しでも近付こうと必死な事が見て取れた。
「‥‥本来は私一人で説得に当たる事が当然なのですが――」
「駄目ッ!!」
 はっきりと咎めるようにステラ。
「一人では説得できなかったからこうなってるんでしょう? 自分に出来ない事をお願いするのは恥ずかしい事じゃないんですよ?」
 それを聞いて苦笑する光太。
 彼女自身、以前光太と共に戦った依頼では散々無理をしようとしていたものだ。無茶ぶりは見事にお互い様だろう。
「――で、お話中済まないが」
 割って入るイクス・グランデール(ec5006)。

「その『鎧騎士』なるはどういったモノなのだろうか?」

「‥‥おい、イクス」
「‥‥イクスさん」
 二人の仲間の『空気読め』とか言わんばかりの視線が向かうが、
「ん? い、いや、そういう意味ではない。確かに『鎧騎士』とやらを知らなかった事は事実だが」
 少し慌てて咳払いを一つ。
「オレが聞きたいのはパヴェル殿に、だ」
「なんでしょう?」
 問われ、少しだけ構えるパヴェル。
「不躾な質問を許して欲しい。キミは鎧騎士になりたいのか?」
「――それは」
「聞き方を変えよう。その鎧騎士という職はキミにとってそこまでの価値のあるモノなのか? 兄君と争う事になっても譲れぬほどに」
「――イクスさんっ!?」
 咎めようとするステラを光太が手で制する。
「オレとて英国貴族に名を連ねる者。親族の重みは理解しているつもりだ。
 家長である兄に逆らい立場まで違えて、そこまでしてもならねばならないか?」
 ならねば――と言われるなら間違いなくそうであろう。
 ゴーレムとその乗り手の増強・育成はメイの――いや、アトランティスの急務だ。
 そう答えるか? イクス自身もそう思った。
 が、
「‥‥どうでしょうか。その質問には答えられません。
 何故ならぼ――私はそれを語れるほどゴーレムについて詳しくはないからです」
 当然だろう。
 彼の兄が反ゴーレム派なのならゴーレムの知識に触れる機会などまずないだろう。
 光太も香哉も一流のゴーレム乗りである。
 ステラも工房で見習い生活をしている事から考えれば、おそらくは鎧騎士についての知識のなさはイクスに次ぐ。
「でも、そんな私を必要としてくれる人がいたんです。自分で選んだ道じゃないかもしれません。けれど自分で決めた道なんです」
 その目には迷いはない。
「――だから‥‥私にとっては価値があるモノです。兄上と争う事になろうと、鎧騎士を選んだという――私の意志が」

●明るく優しく
 道中、食料を忘れた香哉にステラが余分を振る舞い、
「初めて冒険で役に立ちましたっ!」
「‥‥いや、そんなに胸を張られても‥‥」
 そういえば『保存食は忘れないように』とかアドバイスをしたこともあったか、仲間達と。感慨にふける光太。
「ん、助かったよ。後で俺の方も何か礼をしないとな」
「わぁ、嬉しいです」
 香哉と談笑するステラ。
 ここまではしゃぐ娘だったかと光太は思い、
 以前より少しだけ冒険者として慣れてきたのかもしれない、それもあるだろう。
 だが、それだけではないと察した。
 ステラは兄を探している。聞いた話ではカオスの魔物と関わり、行方知れずとか。
 これから会いに行くパヴェルの兄に自らの兄を思い出しているのか、それとも兄弟の争いに兄を持つ身として平静ではいられないのか。
 おそらくは両方だろう。
 空元気も悪くはないと光太は優しく見守るのだった。

●反ゴーレム派
「――で?
 一人では説得も出来ずに頼ったのは冒険者か? 大した決意だ」
「兄上! 私は――!」
 開口一番に辛辣な言葉を浴びせる兄、ディレオ・カーターは冒険者たちの目から見てもなるほど難物だと言わざるをえない。
「そりゃ、ちょっと言い過ぎなんじゃねえかな?
 そもそもあんたが頷かねえから弟さんは必死にこっちを頼ってきた訳だろう。それだって努力の内だろ? 特に貴族は」
 貴族なら人を使う事も大事だろう、と香哉。
「‥‥ふむ、少しは口の回る人間を連れてきたか。それで、どうやって言いくるめようというのかな? 貴殿達は」
「聞こえ悪い言い方するな。話し合いたいだけだ。まずはディレオさん、あんたの属する反ゴーレム派とやらの主張を聞かせて欲しい」
 依頼内容はパヴェルが鎧騎士の道を選べるようにとの説得ではあったが、香哉や光太達ゴーレム乗りとしては無関係な相手ではない。
(「メイが一丸とならなきゃいけないって時に‥‥めんどくさい連中もいるもんだぜ」)

 ディレオの主張するところの主幹は『ゴーレム建造は予算の無駄』との事だった。
 それに香哉が反論する。
「じゃああんたはゴーレム建造を中止したとして敵国のゴーレムや恐獣、それにカオスの魔物達とどう立ち向かっていくつもりだ?」
 ゴーレムの建造は軍備の強化。それを止めるという事は武装の放棄にも等しい。
「まさか、我が国はゴーレムを使用しませんので、騎士同士の戦いで決着をつけましょうといわんだろうな」
 だとすればあまりに馬鹿げた意見だ。
 だが、
「別にゴーレムを放棄しろとも建造を中止しろとも言うつもりはない。反ゴーレム派だからといって誤解をされては困る。我らもゴーレムの重要性は認めている」
「ほう?」
 意外というか、やはりというか、ただ声高に喚いているだけの男ではないようだ。
「我らが言いたいのは『作り過ぎが良くない』という点だけだ。今計画中のゴーレム、それら全てが果たして今のメイに必要なものなのか?
 過ぎた武力は同盟国の不信も招く。貴殿の言うとおり、敵の多い今のメイディアに更なる敵を招く結果にはならないと?」
「作り過ぎ? むしろ足りないくらいだろう。
 俺もゴーレムは決して万能ではないと思っている。例えば稼働時間と使用者が限られているのが問題点だ。
 だがそこを規模の調った騎馬隊で補えればメイの軍力はこれまで以上の結束と力を手に入れる事が可能なんじゃないか?」
「――世辞は結構だ」
「世辞なんかじゃない! あんたがゴーレムそのものに反対をしていないように、俺達ゴーレム乗りも軍備はゴーレムにさえ力を割けばいいと思ってる訳じゃないさ」
「‥‥確かに、貴殿ら冒険者はそうだろうな」
「どういう意味だ?」
「先程も言ったとおりだ。ゴーレムには金がかかる。そこに投資をするということは資金の横領、癒着、派閥の独占、それらがないと保証が出来るのか? 冒険者に」
「――――」
 それを言われると弱い。
 そもそも冒険者の仕事は前線にある。
 制作に協力をしたとしても予算を管理するわけではない。当たり前だが。
 だがだからといって、
「今、新型制作と量産に力を入れないでどうするんだ?
 話を逸らすな。カオスやバが攻め込んでくるこの御時世に、呑気な事言って首を差し出す気か?」
 流石に貴族だけあって口は回る。内心舌打ちする香哉。
「逸らしてなどいない。敵国や魔物達というが、軍勢の規模は? 数字がわかるのか?」
 そんなものが全てわかるのであればどれほど戦が有利になるか。冒険者達が調べた情報でさえ一部でしかなく、しかもそれを纏めているのは他ならぬ国の方だ。
 香哉は確信する。この男はわかった上であえて難題をふっかけている。

「なるほど、貴方の意見には頷けるところもある」
 そう、光太が割って入る。彼もゴーレム乗りとして意見は香哉と同じだ。依頼抜きにしても黙ってはいられない。
「つまりはゴーレムの起用自体には反対はしないという事ですね?
 そういう事でしたら俺達の意見も同じです。ゴーレムが必要だからといって騎兵や歩兵を軽んじてる訳じゃない」
 どちらかの派閥がどちらかを圧倒するのは害にしかならない。
 必要なのは相互の協力。どちらが欠けても国防は成り立たないのだから。
 しかし、
「ならどうする? ゴーレムの増強をストップするか?」
 そういうわけにもいかない。今、ゴーレムの増強は必要な政策だ。
 確かに自分達は政治家ではないが、そこを譲るつもりはない。
「‥‥それは出来ません。貴方は本気で今、ゴーレム生産の手を緩めていいとお思いで?
 敵を甘く見過ぎてやしませんか? バの国の脅威は我々もよく知っています。カオスに至ってはその規模が全くわからないといっていい。わからないのなら最悪を想定するのが国防でしょう」
 民を守るのが貴族の役目だと光太は主張。
 それに対し、ディレオは同じく民で返す。
「国の安全を憂いる貴殿の心情は評価に値する。ならばこういうわけか? 『戦に勝てば民が飢えても構わない』と」
 詭弁だ。
 ディレオ自身民が飢える事を危惧しての言葉とは考えにくい。
 汚職がないと保証はできないが、今のところゴーレムへの資金を止めなければならない程、国が貧しくなっているとも彼には思えない。
 世情への見識なら冒険者は貴族達にも劣っていないつもりだ。
 だが、どうせそれを言ったところで『数字を見せてみろ』と来るだろう。
 つまりは初めから納得する気はないのだ。

 尤もそれはやむを得ぬ事でもある。
 相互の協力を主張する光太は間違ってはいない。しかし、その為には相手側の意思が不可欠である。
 ましてや勢力としてはゴーレム派の側が圧倒的に強い。そのゴーレム派が反ゴーレム派を潰そうとしている以上、反ゴーレム派としても徹底抗戦しかない。
 何より、ディレオ自身がそれを望んでいる。光太達は察する。彼はあえて敗者となることで国策のバランスを保とうとしているのだと。
 ゴーレム派の暗部を削り落とした上で派閥として敗れれば、より理想のゴーレム政策を進めることが出来る。それが彼の望みなのだろう。
「反ゴーレム派としての言い分は理解した。だが俺達は元々ゴーレム派として交渉に来た訳ではない。弟君の将来を貴方に認めて貰う為に来ている」
 ゴーレムの知識には疎いイクスだったが、だからこそとあえて流れを切る。
「同じ事だ。我が家は反ゴーレムの姿勢を貫いている。その家の人間が鎧騎士になる事を認められるのか? 貴殿の国では」
「‥‥ッ」
 そういわれると弱い。確かにイクスの祖国でもこの事態は反対されてしかるべきだ。
 だが、イクス自身そのしきたりに諸手を挙げて賛成する気にはなれなかった。
「弟君――いや、パヴェル殿の決意は確たるものだ。そして、筋を通さなければいけないと判断したからこそ、こうして家長である貴方の許しを戴きにきた。
 ならば貴方も道理を立てるべきではないか? 一度は賛成したのだろう? 彼の道を」
「私が認めたのは騎士の道だ。鎧騎士ではない」
「兄上!」
 たまらず叫ぶパヴェル。
「兄上に逆らうのは申し訳なく思っています! でも私はこの力を国の為に役立てたいのです! 私を認めて下さった方の為にも‥‥!」
「自惚れるな!」
 一喝するディレオ。
「お前の力だと? お前にどれほどの力がある? 騎士として一人前になれなかったお前が鎧騎士になれば役立てるとでもいうのか!?」
「‥‥‥‥!!」
「ディレオ殿! それは言い過ぎだ!」
 止めるイクスを一瞥する。
「お帰り願おう。これは我が家の問題だ。そして私の返答も決まっている」
「―――!」
「行きましょう、イクスさん。今は無理だ」
 これ以上の説得は無意味と光太は判断し、一行は引き上げた。

 客人の去った応接間にて、残された男は独り呟く。
「‥‥お前には‥‥無理だ、パヴェル‥‥」

●諦めずにいこう
「駄目だったんですか?」
 待たされていたステラが沈痛な面持ちで尋ねる。
「私も協力出来ていれば‥‥」
「いや、それはない」
「ひ、ひどい! ご飯分けてあげたのに!」
 和ませようと陽気に言い合う香哉とステラの声もパヴェルには届いていないようだ。
「ゴーレムの話に入りすぎたのが良くなかったかもしれませんね」
「確かに。あそこまで言うって事は逆にゴーレムについての理解もしてるって印象があるな。その上で反対派の立場にいるってんじゃあ説得しようがない」
「立場上からも弟の道を認めないのも仕方ない‥‥か」
「心配‥‥なのかも」
 何気なく漏らしたステラの言葉に注意が向く。
「あ、いえ、私の兄様もそうだったので。私のやる事にいちいち口を挟むんですけれど、それって心配だからなんですよね
 大丈夫だって言っても信じてくれなくて――」
「心配――か」
 納得するイクス。
 パヴェルは騎士見習いとしてかなり肩身の狭い思いをしていたらしい。
 これから行こうとしている鎧騎士の道はその比ではないだろう。
 兄は反ゴーレム派。心証を悪くする事こそあれ、その逆はおそらくない。
「心配だから手元に置いておきたい‥‥か」
 思うところはあれど、それを間違っていると断ずる事は出来ない。パヴェルの道の険しさを最も知っているのは兄なのかもしれない。
「どうするのだ、パヴェル殿は」
 諦めるとしても責められない。
 けれど、
「諦めませんよ。許してもらうまで兄上と話し続けます」
 その顔は、明るくはないが、決断をした男の顔だった。
「私を必要として下さった方がいます。私に力がないのならばそれを身につけてでも役に立ちたい、そう思ったんです」
「そうか、済まないな、役に立てず」
「いえ、皆さんのお陰で私には話してさえ貰えなかった兄の意見を聞く事が出来ました。それは決して無駄じゃないと思います」
「それはこちらこそです。彼のような人間がいるのなら知っておかなければならない。むしろこの機会を与えてくれたキミに感謝したい」
 ゴーレム乗りとして光太は言う。
 説得には失敗したが、今回の面会は無駄ではないと。
「ま、そういうこったな。一緒にあの頑固兄貴の首を縦に振らせてやろうぜ」
 香哉も追従する。
「私も。次は私も加わらせてくださいね!」
 意気込むステラ。
「いや、あんたが加わると余計ややこしくなりそうでなあ‥‥」
「ま、また言ったーーー!!」

 諦めなければ次がある。
 案外、その『次』とはもうすぐそこなのかもしれない。