探偵遊戯〜君が好きだよ〜

■ショートシナリオ


担当:月原みなみ

対応レベル:8〜14lv

難易度:難しい

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:5人

サポート参加人数:1人

冒険期間:02月11日〜02月16日

リプレイ公開日:2008年02月19日

●オープニング

● 恋の季節?

 はぁ‥‥、と。
 辛気臭い溜息が滝日向(たき・ひなた)の耳を打ったのは、良く晴れた日の午前中の事である。
 散歩がてら教会の方まで来ていた彼は、この場所に、こんな青空の下で聞くにはあまりにも不釣合いな響きを怪訝に思いながら周囲を見渡せば、建物の影に座り込んでいる人物を発見した。
 がっくりと肩を落として座り込んでいる男。
 誰かと思えば顔見知り。
 日向と同じく天界からアトランティスに召喚されたのが縁で親しくしている水谷薫(みずたに・かおる)だったのだ。
「何をやってンの、おまえ」
「え‥‥、ぁ、日向‥‥」
 顔を上げた彼の視線が日向のそれと重なったと同時、急に相手の顔が歪む。
「なっ。なんだぁ?」
 ギョッとして思わず大きな声を上げれば、薫は「どうにかしてくれ‥‥」と今にも消え入りそうな声を押し出した。


 ***


「失恋、ですか?」
「そういう訳でもないんだよなぁ」
 ギルド受付のあちらとこちらで、すっかり打ち解けた様子で話すのは係の青年と日向である。
「二人が相思相愛なのは間違いないらしくてさ」
 天界で探偵稼業を営んでいた日向は、既に一通りの情報収集を終えており、その結果として彼はギルドを訪れたのだ。
 要約すれば、こうである。
 天界から召喚された日向の友人、薫は、アトランティス出身の女性・ルエリアと恋に落ちた。
 二人は傍目にも判るほど互いを慕っており、中には既に交際中だと思っていた友人も居た程だ。
 そう、彼らは恋人同士に見えて実は友人同士だったのである。
「いつまでも曖昧にしているのは良くないって事で、男が意を決して告白した」
「すると振られてしまった?」
「そう。理由は男が天界出身だから」
 役目を終えれば故郷に『帰れる』と言われる天界人。
 いつか別れが訪れる相手とは交際出来ないそうだ。
「俺としちゃ考え過ぎだと思うけどな‥‥」
「実際に役目を果たして帰郷した天界人が居るわけでもありませんからね」
 しかし裏を返せば、役目を果たした時点で召喚の時と同様、強制送還される可能性も否めない。
 ルエリアは何事にも直向きな心優しい女性だと聞く。
 彼女は見えない未来に怯えているのだろう。
「――そんなわけだからさ、薫も振られた理由に納得いってないみたいだし、そのへんのコトが得手な冒険者達に双方納得した形のケリを着けさせて欲しいんだ」
「判りました。日向さんはお友達思いですね」
「いやぁ、ゆくゆくは俺も直面するかもしれない問題だしなぁ」
「なるほど」
 あははと笑い合う二人は少々不謹慎?
 それとも‥‥。

 はてさて件の男女はどうなることか――。

●今回の参加者

 ea3486 オラース・カノーヴァ(31歳・♂・鎧騎士・人間・ノルマン王国)
 eb4199 ルエラ・ファールヴァルト(29歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4402 リール・アルシャス(44歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 ec4065 ソフィア・カーレンリース(19歳・♀・ウィザード・エルフ・アトランティス)
 ec4112 レイン・ヴォルフルーラ(25歳・♀・ウィザード・人間・アトランティス)

●サポート参加者

導 蛍石(eb9949

●リプレイ本文

● 初日

 その日、待ち合わせ場所に集合した冒険者達を迎えた依頼人・滝日向は顔見知りが揃っていることに目を瞬かせた。
「これは驚いたな‥‥、また君達に会えるとは嬉しい誤算だ」
 オラース・カノーヴァ(ea3486)、リール・アルシャス(eb4402)、ソフィア・カーレンリース(ec4065)、そしてレイン・ヴォルフルーラ(ec4112)とは前回の依頼で一緒したこともあり既知の間柄。
「日向さん、お久し振りです」
 ソフィアが笑顔で応えると、日向もまた笑みを浮かべて「今回も力を貸してくれてありがとうな」と感謝の言葉を口にする。
 そしてもう二人、今回が初顔合わせとなったルエラ・ファールヴァルト(eb4199)と導蛍石には自己紹介から始めた。
「今回の依頼を出させてもらった滝日向だ、よろしく頼む」
 互いに名乗り合った後は依頼内容の確認。
 彼と同じく天界からこの地に召喚された水谷薫と、アトランティスで生まれ育った女性・ルエリア、想い合いながらもいずれ訪れるであろう「別れ」に怯えて恋人同士にはなれない二人の関係に何らかの決着を導くのが彼らの役目だ。
「――で、君達はどの方向でいくつもりだい?」
 日向の確認に、冒険者達の気持ちは一つ。
「二人が後悔をしない方向に、だ」
 リールの躊躇無い返答に、日向は目元を綻ばせた。


 ***


 冒険者達は、その足で日向の友人である水谷薫の家を訪ねた。
 日向よりも若干小柄であるものの何か武道を嗜んでいるのだろう逞しい身体つきの青年は「やぁようこそ、いらっしゃい」と彼らを迎えた。
 表面上は明るく振舞っているが、その内面では相当に落ち込んでいるのが、隠しきれない目の下の隈などから窺える。
「空いている所に座って。いま、お茶を淹れて来るから」
「どうぞお構いなく」
 レインがそう声を掛けるも「いいから、いいから」と日向に座るよう促される。
「あいつ、何でも良いから動いてないと落ち込むばかりだから、さ。やりたい事をやらせてやって」
「はい‥‥」
 そういう事なら‥‥と、今度は心配そうな顔で薫を見遣るレインに、日向は何を思ったかクスリと笑う。
「しかし意外だな。以前は恋愛事に達者なようには見えなかったが、実は得意分野か?」
「えっ?」
 貝合わせの時の事を言われているのだろう事は判ったが、それは大きな誤解だ。
「そ、そんなんじゃありませんよ! ただ、何となく他人事に思えなかったので‥‥」
「レインも天界出身の相手に片恋中?」
「違いますっ!」
 顔を真っ赤にして言い返してくる少女の反応は何とも弄り甲斐がある。
 日向が「くっくっ」と喉を鳴らし面白がる一方、彼女の友人であるソフィアにも思い当たる事があるようで楽しげに笑んでいた。
 そこに人数分のカップを用意して戻った薫。
「いいね、幸せそうで‥‥」と顔は笑っているが、今にも泣きそうな目をしていた。
「薫さんだって、ルエリアさんと幸せになれますよ」
 そのために自分達が来たのだという思いを込めてソフィアは言うが、薫にとっては返り討ちに遭ったばかりの強固な壁。
「無理だよ‥‥、ルエリアが‥‥あの優しいルエリアがはっきりと断ってきたんだ。もう無理なんだよ」
 大柄な体躯に似合わない弱気な台詞。
 こんな別れ方に納得がいかないと本心では思いながらも、再挑戦する勇気は持てずにいる薫の態度に、ここで痺れを切らしたのはオラースだ。
「見初めたなら力ずくでものにしてみろ! 何十回だって告白しろ!」
 ドンッとテーブルに拳を叩きつけて言い放つ彼に驚く一同。
「‥‥オラース殿、力ずくは如何なものかと思うが」
 リールが落ち着くよう告げ、後をルエラが引き受ける。
 彼女と、そして蛍石の二人は、持ち前の話術を武器に薫の気持ちを落ち着かせ、再びルエリアと話すよう説得するつもりだった。
「誰にでも別れはあります。始まるものには必ず終わりがあるように。――肝心なのは、その時までにどれだけ思い出が作れるか、ですね」
 ゆっくりと、薫の気持ちを受け入れながら交互に語られるルエラと蛍石の言葉に、彼はしんみりとした表情で床を見つめていたが、ふと掠れた声を押し出す。
「‥‥俺にも、まだ可能性はあるかな」
「もちろんですよ」
 ソフィアが、その背を押した。
「薫さんに役目があるとしたら、それはルエリアさんを幸せにしてあげる事です。それが出来るのは、薫さんだけなんですから」
「ソフィアちゃん‥‥」
「そうと決まれば、もう一度お二人でちゃんと話し合うためにも会えるようセッティングしなきゃですね」
 レインにも後押しされて薫の瞳には生気が戻る。
「ん。俺、もう一度ルエリアと、ちゃんと向き合うよ!」
 冒険者達に励まされ、彼は決意も新たに拳を握り締めた。




● 二日目

「って言ったのが昨日で、どうしてまた落ち込んでいるんだ」
 翌日、二人が話し合った結果を聞きに彼を訪れたはずの冒険者達は、ほとんど屍になりつつある男の姿に驚いた。
 オラースが眉根を寄せて問い掛ければ、答えたのは今日も同席している日向。
「誘ったけど断られたんだってさ。もう話す事は何もないって」
 その言葉をどんな思いで彼は聞き入れ、彼女はどんな思いで口にしたのか。
「‥‥やはりルエリア殿にもお会いしよう」
 実を言えば、この展開も既に予想していた冒険者達だ。
 リールが言えば異論を唱える者はない。
 また、話しの内容が恋愛絡みだけに異性は同席しない方が無難だろうということで、オラースと日向は薫の家に残り、女性四人が教えられたルエリアの家へ向かうのだった。


 ルエリアは、何事にも直向な心優しい女性と聞いていた通り、真面目な中にも繊細さが窺える人物だった。
 初対面の冒険者達にも、最初こそ驚きはしたものの邪険に追い返すような事はなく「どうぞ」と部屋に通される。
 とは言え、唐突に薫との関係に話しを持っていくのも憚られ、しばらくは他愛のない言葉を交わしていた。
 そこからさりげなく恋愛事に話題を移すのは話術に長けたルエラだ。
 彼女は、薫の時もそうだったが、決して相手の考えを否定しない。聞き役に徹する事で、相手の気持ちの奥の奥までも話させる話術には、リールも、ソフィア、レインも邪魔をしないよう最低限の相槌のみで応えていた。
 ――その内、ルエリアの言葉尻が涙に震える。
「好きとさえ聞かなければ‥‥まだ一緒に居られたのに‥‥もう少し長い間、一緒に同じ時を過ごせたのに‥‥」
 紡がれた言葉は彼女の本心。
 ルエラはそれを引き出したかった。
「これは、私個人の意見ですが」
 そう前置きして語る。
 天界出身者とアトランティスの民。
 いつか訪れるであろう別れに怯えるのは当たり前の事だと。
「ですが、別れが訪れるのは出身を異にする二人だけではありませんよ」
「‥‥っ」
 はっと顔を上げる相手に、ルエラはそっと微笑んだ。
「互いの寿命、不慮の事故、天災や疫病、魔物の襲来‥‥、そうしたものによる死別など例をあげればキリがありません。世界は不条理に満ちていて、天界の方々との別れには「使命を終えたら元の世界に戻るかもしれない」という項目が一つ多い、それだけのことです」
「でも‥‥」
 怖々と首を振るルエリアに、小さく頷き返す。
「ええ、誰もが不安なのです。私も、そうです」
 ルエラが相手の心に染み入らせるようゆっくりと語り聞かせれば、相手の瞳が僅かに見開かれた。
「でも私は、天界人という異なる世界の人々と出会え、知り合うことの出来るこの世界が好きです」
 そうして仲間を見渡せば、偶然にもアトランティス出身者ばかりの部屋で皆が己を振り返るような表情で頷き返した。
 彼女達もまた、出身地が異なる多くの仲間達と数々の冒険を共にして来た。
 この大地でなければ結ばれなかった縁を幾つも実感している。
「人生は駆け足で過ぎ去ります。私達がこうして出会い、共に居られるのは、その中のほんの一瞬に過ぎません」
 だからこそ、願うのだ。
「大切なのは『どれだけたくさんの思い出を作れるか』ではないでしょうか?」
「皆さん‥‥」
「どうか後悔のない選択を」
 瞳を潤ませる彼女に、リールが言葉を重ねる。
「‥‥もしも後悔する事が、天界出身の彼と恋人として付き合う事であるならば仕方がないが」
 そうではないだろうと、視線に問い掛ける。
 彼女の心が薫に向いている事は、疑う余地が無いのだから。
「ルエリアさん」
 ソフィアも勇気付けようと声を掛ける。
 彼女は、‥‥ただ静かに一粒の涙を落とした。




● 三日目

「で、今日も音沙汰無しか」
 オラースが軽い吐息と共に呟けば、すっかり落ち込んでいる薫と苦笑いの日向が頷き返した。
「どうにもこうにも、だな」
「人の気持ちは、そう簡単に変えられるものじゃないですからね‥‥」
 ソフィアが困ったように相槌を入れれば、リールとルエラが顔を見合わせて、やはり吐息を一つ。
「難しい問題ですね」とレインも声を落とした。
 昨日の女性陣の説得で、ルエリアは「もう一度よく考えてみます」と冒険者達の帰り際に告げたのだが、さすがに一日で彼女の気持ちを変えるには至らない。
 別れが誰にでも訪れること。
 大切なのは共に居られる現在であること。
 頭がそれらの言葉を理解しても、心まで納得させられるかどうかは別問題だ。
「‥‥ルエリアってのは、ごく普通の女なんだろうな」
「ん?」
 呟いたオラースに皆の視線が集まり、その中で日向が聞き返す。
「普通って?」
「普通は、普通だろう。大事なパートナーを失っても平気でいられるような人間はろくな奴じゃない。失えば大半の連中はへこむさ」
 成程その通りだと頷く一同。
「別れの時に怯えているルエリアが特に弱い人間ってことじゃなくてな。‥‥まぁ、それが当たり前なんだと思えれば、怯える必要もなくなるんだろうが」
 オラースの言葉に仲間達がしんと静まり返る。
 その中で立ち上がったのはレインだった。
「私、もう一度ルエリアさんとお話して来ます」
「え?」
「だって‥‥、いつか居なくなられたら‥‥って考えて臆病になるルエリアさんの気持ちもすごく良く判るんです。でも、そんな日が来るかもしれないからこそ、今のお二人には離れて欲しくありません」
「レインちゃん‥‥」
 薫に感動の眼差しで見上げられ、レインは勇気付けるように笑んで見せた。
「もう一度、挑戦しましょう! 本当に好きなら、まだ諦めちゃダメですよ!」
 彼女の言葉に他の仲間達も頷き合う。
「そうだな、‥‥もう一度、話してみよう」
 言い、レインに続くように立ち上がったリール。
 だがしかし、ここでレインが待ったを掛けた。
「ぁ、あの、一人で行っちゃダメですか‥‥?」
「え?」
「三十分だけでもいいんです。ルエリアさんと二人だけでお話しさせて下さい。お願いします」
「??」
 そうして深々と頭を下げる彼女に、仲間達は小首を傾げ――。




● 四日目

 翌日、依頼を受けて四日目の昼過ぎ。
 冒険者達は二人で公園を歩く薫とルエリアの姿を、少し離れた先に設けられたベンチに腰掛けながら見守っていた。
 朝の待ち合わせから、天界のこの時期には「バレンタイン」と呼ばれる行事があり、それは恋する男女のためではなく隣人に感謝を伝えるものであるという本来の意味で説明した日向の提案により「隣人への贈り物」を選ぶために街へ出た。
 最初はぎこちない様子の彼らだったが、風と水のウィザード二人がタイミングを見計らいながらある種の術を発動し、恋人未満の彼らに接近の機会を与えるなどすれば、そこは武術を嗜んでいるという薫だ。
 抜群の反射神経でルエリアが転倒するのを回避させるなど、なかなかの男前っぷりである。
「それにしても、よくルエリア殿を説得出来たな」
 リールに言われて微かに頬を染めたのはレイン。
 彼女が一人でルエリアと話したいと願い出た時には、どうしたものかと思ったが、その後、戻った彼女の隣にはルエリアが居た。
 恋人として交際する決意は、まだ固められていない。
 それでも、互いの気持ちを知った上で、二人で過ごす時間が今後の事を考えるために必要ならばと、彼女は今日のデートをOKしたのである。
「レインさん、一体どんな言葉でルエリアさんを説得したんですか?」
「内緒ですっ」
 ソフィアの問い掛けにも、赤い顔で即答する少女。
 そんな遣り取りを見ていて、日向が意味深に笑んで見せた。
「『好きになってもいいのかどうか判らなくて、悩む事があるんです』って?」
「!?」
「え?」
 その一言で耳まで赤くするレインと、聞き返してくるのは他の女性陣。
「うんうん、あんな話しを聞かされたらルエリアも感情移入するよなぁ」
「日向さん聞いていたんですかっ?」
「盗み聞きは得意分野だ」
 ニッと笑う元探偵。
「好きになるのに許可なんか要らないんだよ、レイン。命短し、恋せよ乙女、ってね」
「何ですか、それ!」
「天界の格言ってやつだ」
「‥‥っ」
 楽しげな日向に、レインは口をパクパクさせるも、それ以上は言い返せずに肩を落とし、ソフィアがすかさず「大丈夫ですよー」とフォローに回る。
 他の皆は失笑した。
 同時に、理解もする。
 判らないと言いながらも、それを語るレインの表情は、恐らくルエリアにとっては鏡の中の自分だった。
 だからこそ声は心に届いたのだろう。
 好きだと言われて嬉しくなかっただろうか。
 傍に居たいと、一度でも思わなかっただろうか。
 そんな自問自答が、前日のルエラの言葉にも強い力を持たせたに違いない。
 日向は微笑む。
 冒険者とは、やはり面白い存在だと。
「リールはいま、恋してないのか?」
「さぁ、どうかな。しかし行く末を見守りたい者はいるな」
「へぇ」
 ルエラは? オラースは?
 語り合う、いまこの瞬間が貴重なのだ。
 見守る二人にも、いずれは一つの結果が出るだろう。
 それでも、共に在れる今を大切にして欲しい、と。
 それが皆の共通の願いだ。




● 最終日

 薫とルエリア、二人は冒険者達の力添えもあり、確かな一歩を踏み出す事が出来た。
 更にはルエラからラブ・スプーンとラブ・ノット。
 ソフィアから愛に生きる者達に希望を与えると言われる小刀を贈られ、はにかんだ笑みを覗かせた。
「なんだか結婚式みたいだな‥‥」と頭を掻きつつ呟く薫に、
「それは‥‥」と口篭るルエリア。
「なに、薫がいなくなった時はオレが面倒みてやるさ」
 オラースが真面目な顔で言うと、最初に広がったのは沈黙。
 次いで笑い声。
「待った、それはないだろう!」
 いなくなった後では勝負の仕様もないと喚く薫の隣で、ルエリアの表情には複雑な色。
 だが、彼女も確かに笑顔だった。