探偵遊戯〜お宝返せ!〜
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■ショートシナリオ
担当:月原みなみ
対応レベル:8〜14lv
難易度:普通
成功報酬:3 G 32 C
参加人数:7人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月11日〜10月16日
リプレイ公開日:2008年10月19日
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●オープニング
「助けてください!」
冒険者ギルドに駆け込んできた四十代も半ばの男性に、受付係はまずは落ち着くよう促した。
「はい、深呼吸をどうぞ。――さぁもう一回。そして、こちらの席にお掛け下さい」
受付係の青年がゆっくりと語りかければ、これから依頼人になるその男性はゆっくりと深呼吸を繰り返し、言われるがまま席に着いた。
「あぁ‥‥すみません、ご迷惑をお掛けして。もうどうしたら良いのか判らず、焦っておりまして‥‥」
「此方にいらっしゃる方々は、皆さん同じです。どうぞ恐縮なさらずに、お話をお聞かせ下さい」
相手を落ち着かせるように笑んで告げる。
そうして聞かされたのは、近頃になって彼の暮らす村を襲った盗賊団の悪行の数々だった。
その構成は大柄な男が十三名。
重々しい大剣や斧、ハンマーなどを担ぎ、身体には鉄製の鎧を身に纏って防備は完璧。
強奪していくものは食料や金品に限らず、とうとう村の娘達にまで手を出し始めた。
「ひどい連中ですね‥‥っ」
怒りに声を震わせる受付係に、依頼人も怒りを思い出したように激昂する。
「食料や金品ならまた幾らでも揃えられる! 稼ぐのだって家族のためだと思えば何の苦にもなりはしない! だがあんなゴロツキ連中に娘を奪われたとあっちゃ、俺達は死んだって死にきれねぇ!」
そこで村の人々は、ギルドに盗賊の討伐を依頼しようと話し合ったが、冒険者が来る前に再び連中が村を襲いに来る事も充分に考えられたため、無事な娘を、急ぎ他所の街の宿に避難させようと決まったのだ。
「夜中にこっそりと村を抜け出すつもりだった、なのに馬車を走らせている途中で急にキノコが叫んだんだ!」
「――キノコ?」
「あの連中、村の回りに不気味なキノコの胞子を撒き散らして叫ぶキノコを育ててやがったんだ!」
朝夜の冷気と、日中の陽射し。
程よい湿気。
この季節にはキノコが良く育つ。
「ひょっとして、それってスクリーマーですか?」
「そんな名前なのか!? いや、名前なんかどうでもいいんだ! とにかく盗賊連中はそれを村の回りに生やして俺達が逃げないように監視していたのさ! おかげで娘達は奪われたっ! 取り返しに連中のアジトに奇襲掛けてやるつもりだったのに、行けばそこにも化物キノコが生えてて俺達の行動なんか筒抜けだ!」
自分達の力では、もはやどうしようもないと訴える依頼人。
「キノコの場所やアジトなんかは判ってる、案内は俺が務めるんで、頼む、娘達を助けてくれ!」
依頼人の訴えは切実だ。
断る理由などあるわけがない。
「もちろんです」
受付係は真っ直ぐに依頼人を見返して告げる。
「その依頼――」
「お引き受けします!」
不意に。
青年の言葉を遮るように横から口を挟んできたのは青年の友人、滝日向。
「盗賊と一緒に、その化物キノコも始末しますよ」
どちらかと言えばキノコの方に重点を置きそうな日向だが、スクリーマーの名が出た時点で受付係も彼に知らせるつもりだった。
これで手間は省けたというもの。
「彼の言う通りです」
青年は気を取り直して告げる。
「この依頼、確かに承りました」
そうして心の中でこっそり、真剣に盗賊退治をしてくれる冒険者が集りますようにと祈るのだった。
●リプレイ本文
「許せませんっ」
依頼を受けて集った冒険者達が、案内を務めてくれる村人に自己紹介する時間も惜しいと早々に出発した道中、問題の経緯を改めて聞く内にそう声を荒げたのは、普段は温厚で決して怒る事など無さそうなイシュカ・エアシールド(eb3839)であった。
「娘さん達の身の安全を考えれば、急ぎませんと」
彼自身にも、血は繋がらずとも可愛い娘がいれば、村人の身に降りかかった災厄を他人事とは思えない。
そしてそれは、同じ年頃の女性陣にとっても同じ事。
「手加減なんかしなくていいのよね?」
「当然ですよ、ぎったんぎったんのめっためたにしてやりましょう!」
怖い笑顔の加藤瑠璃(eb4288)と、こちらも物騒な事など滅多に口にしないレイン・ヴォルフルーラ(ec4112)が拳を握り締めて断言。
「そうだ、よく言った! 何が何でも盗賊なんて悪党共は俺達の手でぶっ倒そう!」
「本当に酷い話ね‥‥、許せないわ」
横から口を挟んで悪党成敗を訴えた日向と、隣から静かな怒りを湛えた言葉を発する華岡紅子(eb4412)の表情も普段とは異なり厳しく。
リール・アルシャス(eb4402)も言葉にこそ出さなかったが、その胸中には娘達を案じる思いと、盗賊連中に対する怒りが渦を巻いて険しい視線を前方へと向けさせていた。
そんな中で、少なからず不思議そうに日向を見遣ったのはソフィア・カーレンリース(ec4065)である。
彼女の知る限り、日向は決して荒事を得意としていないはずなのだが。
「久し振りにお会いしましたけど、日向さん、今日は張り切ってますね? 剣か、弓の修行でもされたのですか〜?」
「ぇ」
無邪気なエルフ娘の問い掛けに、他の仲間達も「そういえば‥‥」と小首傾げ。
「そういえば、こういう戦闘確実の依頼に日向殿と赴くのは初めてだな」
リールは言っている途中でふと気になった。
「ご主人。その盗賊達のアジト‥‥他にも、土地の情報で判っている事があれば教えてもらいたいのだが」
「あぁ、勿論だ」
そうして話が進めば出てくる『お化けキノコ』の名。
正式名称スクリーマー。
前々から日向が「食べたい」「食べたい!」と喚いていた、アレである。
「‥‥日向さん」
「滝さん‥‥?」
「ちょ、待て!」
女性陣から疑いの眼差しで見られて、慌てた日向は必死に弁明。
「盗賊退治の『ついで』には…っ、そりゃ、スクリーマー取れたら良いとは思うがな!」
けれど、その慌て方がかえって怪しいというか。
いや、実際には娘さん達を助ける気持ちも覚悟も多いにあったため、白い目で見られて少々落ち込む元探偵であった。
●
およそ半日を掛けて件の村付近まで辿り着いた一向。
周囲には濃い朝靄が掛かっていた。
しかし、休んでいる暇など無いという全員一致の意見の下、リールが村人の話を聞きつつ地面に周辺の簡易地図を描き、それぞれの行動を確認。
大まかに説明するならば、実は乗馬が趣味だという日向に、馬と共にスクリーマーの菌糸を意図的に踏んで叫ばせてもらい、出てきた盗賊達を他の全員で叩くのだ。
「――アジトが此処で、スクリーマーの生えている箇所は此処と此処、此処、そして此方にも。菌糸はスクリーマーの周囲三メートル程に広がっていて、それこそアジトの周りと、村の周りには足の踏み場がない程で‥‥」
そのため、彼らは村ともアジトともほぼ同じくらい離れた場所で作戦会議をしていた。
「菌糸を踏まないようにアジトの近くまで接近する方法だが‥‥」
「前以て周辺のスクリーマーはさくっと退治しちゃうのが一番でしょ」
瑠璃の提案に皆が同意。
何よりの優先事項は囚われている娘達の救出だ。
「ではその作業は、私が魔法で〜」
遠距離攻撃を可能とするウィザードのソフィアが自分に任せて欲しいと告げれば、火魔法を操る紅子が挙手。
「私も表からの陽動を担当して良いかしら? 滝さん一人じゃ心許ないし」
「そう、だな。日向殿は荒事が不得手だというし」
「‥‥ええ。華岡様がご一緒して下されば‥‥私達も滝様の安否を案じずに済みそうです‥‥」
リール、イシュカが異議無しとしたなら、先刻の件でてっきり皆に呆れられていると考えていた日向があからさまに安堵の表情だ。
「サンキュ、助かった」
「どういたしまして」
日向と紅子の短い遣り取りを最後に、彼らは作戦を開始した。
●
「まずは、あそこ」
視力が高い瑠璃の指示を受けて、ソフィアのウィンドスラッシュ。
「それとあっちにも」
「はい」
盗賊連中はよほど警戒心が強いのか、それともキノコが勝手に繁殖したのか正確な事情は判らないが、アジトに向かう途中には随分と多くのお化けキノコが彼女達の目に留まった。
大きさもそれなりなら、あの派手な傘である。
見落としようもないだろう。
「‥‥一つくらいは無事に残って、日向さんに食べさせてあげられたら良いですね‥‥だって何か必死なんですもの」
何やら感極まって泣きそうになっているレインに、リールも「そうだな」と。
事のきっかけがどうであれ、日向もまた真面目な気持ちでこの依頼に参加した事は彼女達もちゃんと判っている。
「そのためにも非道極まりない盗賊はこの場で確実に仕留めよう」
「はい!」
表情を改めるレイン。
そして、その傍にはフードを被っているイシュカが心の中で数を数えている。
作戦決行は九〇〇秒後と相談して決まったからだ。
敵が男ばかりで、此方が女性ばかりと勘違いさせられれば相手の油断を誘えるだろうという考えから顔を隠す事にしたイシュカだが。
(「‥‥隠さなくても‥‥」)
そう思ったのは、きっと一人二人ではないだろう。多分。
一方、直接攻撃のためにアジトへ接近する五人とは分かれ、馬と共に皆とは別位置のスクリーマー付近に待機している紅子と日向。
大凡の距離と、徒歩でスクリーマーを退治しながらアジトに到着する時間を計算し、九〇〇秒を数えてから菌糸を踏んで此方のそれを叫ばせるのが二人の最初の役目になった。
「あぁ、そうそう。私の魔法でこの辺り一帯の植物は吹き飛ぶかもしれないから、スクリーマーを収穫するなら陽動を仕掛けるついでに一気にやって頂戴ね♪」
スッと麻袋を差し出しながら小声で微笑む紅子に、日向は秒を数えながらも苦笑い。
「そんな余計な事に気を回して盗賊連中に隙見せるわけにはいかないだろ。無事に娘達を救出し終えた後で、まだ収穫出来るなら取るし、取れないなら取れないで、今年は縁が無かったと諦めるさ」
あら、と。
意外な返答に紅子の胸中で悪戯心がうずいたが、ここで秒を数えられなくなっては作戦に支障を来す。
さすがにそれはいけないと、大人しく聞くに留まる紅子だった。
「八八五、八八六‥‥」
イシュカが九百に近付いたため声に出して数えるのを聞きながら、瑠璃、リール、ソフィア、レインも戦闘態勢に入る。
もう少し。
――来る。
『ギャアアアアアアアア!!』
「っ!」
あの日にも聞いた強烈な叫び声は約百メートルの範囲に響き渡り、瑠璃達が見張るアジトも突然に騒がしくなった。
その騒がしさに気を乱す事無く、四人の女性達一人一人にグッドラックの魔法を施すイシュカ。
「あの連中、性懲りも無く逃げる気か!」
「そうとは限らんさ、熊か猪でも引っ掛かったのかもしれん。頭領が確認して来いっつーんだから大人しく従え」
「ちっ、手間掛けさせやがって。一人二人殺っちまえば大人しくなんじゃねーのか?」
ダンッと荒々しい音を立てながら現れたのは、明らかに悪党と判る強面の屈強な大男が三人。
鎧を着込み、武器を携帯。
アジトの裏に休ませていた馬に手を掛けた。
成敗のし甲斐がありそうだとは冒険者達の心の中でのみの呟き。
三人が行けば中に残るは十名。
馬を走らせた男達。
今だ、と腰に帯びた剣に手を掛けて飛び出そうとしたリールと瑠璃、――だが。
「‥‥?」
さっさと遠ざかれば良いのに、三人の内の一人が馬を止めた。
何故か。
「‥‥おまえ、全員起こして来い」
年長者と見られる男が、下っ端と思われる男に言い放つ。
「え? でもまだ朝早いし、頭領たちも寝直すでしょうし、今の悲鳴だって原因を突き止めてからでも‥‥」
「馬鹿野郎! この辺一帯のスクリーマーが全部やられている、相当の手練が入り込んだんだ!」
(「気付かれた!」)
それもそのはず、あるはずのスクリーマーの菌糸が自分達にも反応しなければ異変に気付かないわけがない。
「すぐに起こして来い!」
「は、はい!」
下っ端がアジトに戻ろうとする。
「俺達は近辺を調べるぞ!」
「おぅっ」
冒険者達は互いの目を見合って確認した。
朝方の奇襲であれば盗賊達も寝起き。
娘達への危害も最小限に抑えられると考えていたのだ、全員を起こされてしまっては彼女達への危険が増す。
それだけは避けなければ。
「はあっ!」
飛び出したのはオーラ魔法二種を自身に施し素早さの増した瑠璃。
アジトに戻ろうとしていた下っ端の腹部に、鎧の上からも強烈な一撃を食らわせる!
「行って!」
同時、言い放った言葉はリールやイシュカへ。
「貴様等!」
馬に乗っていた盗賊二人が剣を抜き直進。
その男達に。
「ウィンドスラッシュ!!」
「アイスコフィン!」
風、水の術師が容赦ない一撃を。
レインによって氷の棺に閉じ込められた姿で馬に振り落とされた男、ダメージを負って落馬した男。
その落馬した男にトドメを刺したのはリール。
「ソフィア殿」
「はい!」
続けてソフィアが詠唱したのはヴェントリラキュイ。
紅子と日向を呼ぶためである。
●
「はああっ!!」
ダンッと激しい音を立てて男が吹っ飛ぶ。
険しい表情を欠片も崩さないのはリールだ。
「鉄の鎧だってこの呪文なら!」
自らを奮い立たせるように言い放ち、全身を包む緑系色の輝きはソフィアの手に集中して稲光に。
「ライトニングサンダーボルト!!」
手から放出された波打つ輝きが直線状に並ぶ鎧を着込んだ男達を直撃。
「くたばれ、女の敵っ!」
目の前に現れた男達を問答無用と切り倒すのは瑠璃。
――力の差が歴然としているだとか、相手は盗賊と言えど一般人だとか、そんな事は誰一人頭にない。
手加減など一切無用、それだけの悪行を男達は重ねてきた。
「娘さん達、どこですかー! 返事して下さい!」
「‥‥此処でしょうか‥‥いえ、違うようですね‥‥」
レインとイシュカは、仲間三人が開いてくれる道を駆け足で進み、捕まっている娘達の捜索に専念する。
「クソアマがああっ!」
「邪魔です!」
襲い掛かられれば高速詠唱アイスコフィン、一瞬にして氷の彫像が完成だ。
「罪の無い娘さん達を物みたいに扱うのは絶対に許しません! ご家族の心配している気持ちも判らないようなロクデナシは一冬氷の中で頭を冷やして下さい!」
七人、八人。
ようやく手の空いたソフィアが術を発動、ブレスセンサー。
「! もっと奥です!」
ソフィアが感知した情報に、しかし先を歩いていたイシュカは動揺する。
「‥‥これ以上‥‥奥はありません‥‥」
「隠し扉か?」
不意に後方から上がった声は、日向のもの。
「岩の間に一つだけ色の違う石があるとか、ハリボテの岩があるとか、かしら」
紅子も天界仕様のアイディアを口にしつつ、背後から近付く気配には躊躇無くクイックラスト。
「うわっ!?」
突如錆びた武器に盗賊が驚いて声を上げれば、即座にリールの剣が男を昏倒させるのだった。
「これで十一人、‥‥盗賊の数は十三と聞いていたが」
リールは周囲を見渡すも、自分達の他に人影はない。
「他に呼吸をしている人達がいるのは、その壁の向こうです〜」
ソフィアが困ったように告げれば、冒険者達の思考は一致。
「ってことは‥‥」
壁の前で臨戦態勢を取る冒険者達に代わり、久々に自分の出番が来たと言いたげに壁の周囲を見て回るのは日向。
上下左右、そして少し離れた壁も。
「――あぁコレか」
積まれた石の裏に無意味な空間。
隠れた上方に手を伸ばせば古びたロープが下っていた。
「いくぞ」
合図と共にそれを思い切り引く、同時、前方の岩が動き――。
「うおおおおおおっ!!」
中から剣を振り下ろしてきた盗賊、直後に発動されるイシュカのコアギュレイト。
一人が硬直、一人は驚いて躊躇。
「っ!?」
「成敗!」
リール、瑠璃の強烈な一撃に沈む大男達。
これで十三人全員を討ち取った。
「大丈夫ですか!」
その脇を潜り抜けるようにして中へ飛び込んだレインとソフィアは、すぐに娘達を発見する事になる。
「怖かったですよね、大丈夫ですか? もう心配要りませんからね?」
「皆さん、もう大丈夫ですよ〜」
瑠璃、リール、そして日向は男達を縛り、紅子とイシュカも急いで中へ。
娘達は数人纏めて縛られ身動きが出来ない状態にされていたが、近日中に他国へ売られる予定になっていたらしく、目立った外傷も、それ以外に傷を負うような事にもなってはいなかった。
それは、長く監禁されていた娘達にとって唯一とも言える救いであっただろう。
助かったという安心感から、女性冒険者に縋りつくようにして泣く彼女達を宥め、取り乱している娘にはイシュカがメンタルリカバーを施し、何とか落ち着かせて外へ。
アジトを出ると、途端に視界を彩るのは空の青。
「すっかり朝ですね〜」
呟くソフィアに、日向の一声。
「キノコ狩りには最良だな!」
結局はそれである。
●
要動作戦が失敗に終わった事が幸いし、村の周りに生やされたスクリーマーは全て無傷で残され、村人達にとってのそれらは自分達の動きを盗賊連中に知らせるモンスターでしかなかった。
しかし食べてみれば美味しいのだと聞かされ、今後のためにも取り尽くした方が良いと説得された事もあり村人総出のスクリーマー狩りが行われた。
その間にリール達は官憲に盗賊連中を突き出し、奪われていた宝を回収して元の持ち主に返却するなど大忙し。
事後処理も全て終えた頃にはイシュカ、紅子の用意したスクリーマー料理に皆が一喜一憂だ。
「こ、こんな見た目で‥‥美味いのか」
「‥‥やっぱり最初に日向さんが毒見すべきよね」
瑠璃が言う。
が、それより早く最初の一口を食べていた元探偵。
「‥‥‥‥っ、美味い!!」
本心から感激しているのが如実に伝わる表情に、瑠璃は呆れ、リールは吹き出し、ソフィアとレインは楽しげに笑う。
「‥‥さぁ、皆さまも‥‥」
イシュカが村人一人一人に振舞うのを手伝いながら、紅子もとても嬉しそうな笑顔だ。
「おめでとう、やっと待ち望んだものが手に入ったわね♪」
「ああ、ありがとな!」
かくして盗賊退治は無事に終了、日向の念願も叶って万々歳。
村には久方振りの陽気な笑い声が、いついつまでも響き渡っていた。