【聖夜祭】手に手を置いて ××に手を
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■ショートシナリオ
担当:月原みなみ
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:4
参加人数:6人
サポート参加人数:1人
冒険期間:12月11日〜12月16日
リプレイ公開日:2008年12月19日
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●オープニング
● ある日の教会で
「し〜ん〜ぷ〜さ〜〜〜〜〜ん」
語調は朗らか。
しかし急激な底冷えを感じずにはいられない少女の呼び掛けに、教会で祈りを捧げていた神父ヨアヒム・リールはびくぅっと戦慄。
まさかという不安に駆られながら振り返れば、案の定、絶品の笑みを浮かべた彩鈴かえでが間近に居た。
「こ、これはかえでさん‥‥、お元気ですか?」
あえて笑みを浮かべながら返せば、少女は更に笑みを強めて接近。
「うん、とっても元気だよ〜♪ 神父さんも元気そうで何より〜、てっきりどこかで炭になっているかと思ってたんだけどね♪」
「‥‥っ」
冷や汗ダラダラ。
その笑顔が恐ろしい。
「かえでさん、その‥‥出来ましたら怒る時には怒って頂いた方が‥‥気を悪くされている理由は承知しておりますので」
「へぇ」
言った直後の音域変化。
「判ってて、どーして会場が悪名高き珍獣屋敷になったかな?」
地の底から響きそうな声音なのにやっぱり顔は笑顔で。
次の瞬間に教会の外まで響いた叫びは、まるで夕立前の雷のようだったとか。
しばらくして場は落ち着き。
かえでと神父ヨアヒムは向かい合ってハーブティーを一口。そもそもクリスマスのパーティー会場を神父にお願いしたのはかえでであるし、伝手など縦横無尽に広がっているものではない。
こちらが提示した条件を見事に叶えてくれたのは事実。
悪いのは館の主人の人格まで指定しなかったかえでだ。
「それも冒険者のみんなのおかげで解決したみたいだけどね?」
「ええ。皆さん、見事なご活躍だったとか」
「ね♪」
ギルドで聞いた話を改めて話題にしながら、次第に内容は本題へと移り変わる。
「あとは飾りつけや当日の料理に、催し‥‥あっちこっちに声を掛けて、たくさんの人に奔走して貰っているんだけどね、ほら、やっぱりクリスマスって言ったら『ラヴ』イベントは欠かせないでしょ?」
「ええ。隣人を愛せよと主も仰せです」
同じ天界と呼ばれる世界からの来訪者でも、地球とジ・アースではクリスマスの認識も微妙に違い、二人が語る『ラヴ』と『愛』にも若干の差異はあるものの、それはこの際おいておく。
「それではかえでさんは、何かそういったイベントをお考えなのですか?」
「もっちろん♪」
かえでは嬉々として語る。
実は故郷で海外留学の経験を持つ少女、意外な特技があったりした。
●そういうわけで
「ダンスの練習したい人、寄っておいで見ておいで〜〜♪」
ギルドの只中で声を上げるかえでに、冒険者達の視線が集まる。
今月の下旬に天界人主催で行われるクリスマスパーティー、そこでダンスを催す。それに先立ち練習したい人は一緒にやろう、と。
端的に言えばそういうことだ。
(「手に手を置いて、女の子の手は相手の肩、男の子の手は相手の腰。密着、接近、ドキドキだね〜♪」)
‥‥そんな娘の思惑など知らぬが仏――。
●リプレイ本文
「かえでってさぁ‥‥結構墓穴掘る事多いよねえ。まあ、こっちとしては問題ないけど」
「はい?」
自覚皆無のかえでに、にっこりと意味深な笑みを浮かべているのはアシュレー・ウォルサム(ea0244)。
「どういう意味だと思う?」
心の底から不思議そうな彼女が教えてと訴えた相手はアルジャン・クロウリィ(eb5814)とレイン・ヴォルフルーラ(ec4112)だ。
「あたし、何かおかしな事を言ったかな?」
「さ、さぁ‥‥」
レインが返答を濁す横で、アルジャンは知られないよう息を付いた。
(「君の貴い犠牲は無駄にしない」)
そんな胸中の呟きが本人に届く事は決して無く、謎は謎のまま。
処は珍獣屋敷、外は陽精霊の力がまだ強い時間帯。
いまだ集まらぬ他の参加者達は今頃どうしているだろうか?
ギルドで依頼を確認していた華岡紅子(eb4412)は、掲示板の片隅に貼られていた、依頼書とは趣の異なる羊皮紙に目を止めていた。
「クリスマスのパーティーでダンス‥‥」
概要を一部始終読んでみれば、発起人の彩鈴かえでと同郷の紅子である、心惹かれないわけがない。
「その話、乗ったわ♪」
思わず声にしてしまった後で、しかしダンスパーティーには相手が必要だと気付いた。
「あら‥‥」
気付くと同時に脳裏に浮かんだ面影に、我知らずうっすらと朱に染まる頬。
「やだ私ったら‥‥」
けれどパートナーが必要なのは確かで、誘うならば「彼」の姿が真っ先に浮かんで、胸中にアレコレと口実になりそうな台詞を考えていた、その時だ。
「華岡サン?」
よりによって思っていた本人・滝日向に声を掛けられ、平静を装うも内心はどきどきだった。
「あら滝さん、こんにちは」
「よ。イイ依頼でもあったか? ‥‥って」
そうして彼も掲示板に貼られているその羊皮紙を視認。
「あの女子高生、最初は無茶な事を考えるもんだと思ったが、やってくれるよなぁ」
無茶と誰の口が言うのやら。
それはともかくアトランティスというこの世界で行われるクリスマスパーティーに、やはり同郷の日向も心惹かれないわけがなく、彼のそんな心境は隣に立つ紅子にも伝わる。
「‥‥というわけで、どうかしら? 滝さんの方は」
「喜んで」
多少芝居がかってはいたものの、紳士らしく手を差し出した日向の手に、紅子は笑みを浮かべて手を置いた。
どちらも表情は余裕の笑みだが、果たしてその胸中は‥‥?
「――‥‥リール殿に、キース殿?」
二人の来訪に驚いた声を上げたのはリラ・レデューファン。
「今日はどうして‥‥、まさか月姫から何か」
「いや、今日は‥‥っ」
咄嗟に表情を硬くした彼に、急いで否定したのはリール・アルシャス(eb4402)で、次いでキース・ファラン(eb4324)が後を繋ぐ。
「天界の、チキュウって方から来た子がさ、二四日の夜にクリスマスとかいうダンスパーティーを開くって言うんだ」
「パーティー‥‥」
そこまで聞いて、ふと以前に酒場でリールと交わした約束を思い出すリラ。
「で、ダンスと言ったら相手が必要だろ? もし良かったら俺は香代を誘おうと思ったんだけど」
キースにそこまで言われれば大凡の事情も察せようというもの。
「香代なら中だよ、きっと喜ぶ」
「ありがと」
リラに屋内を示されたキースは朗らかに礼を告げて颯爽と中に。そんな彼を見送ったリラは、リールに向き直って口を切る。
「以前に酒場で話していた聖夜祭の事、かな」
「そ、そうなんだ‥‥」
リールは思わず俯きそうになるも、女は度胸とでも言うように必死に前を向く。
「時間、空いてて、もし良かったら」
「勿論だよ」
リラの、即答。
「そう約束をした、‥‥楽しみにしているよ」
「ぁ‥‥ありがとう」
そうして、これからダンスの練習があるのだが一緒にどうだろうと誘えば答えはやはり応。リールは泣きそうな顔で笑むのだった。
一方、難儀しているのはキースだ。
香代こと石動香代をダンスに誘うも「ダメっ」と即答。しかしこれで引き下がるキースではない。
「俺としてはさ、香代としか踊る気がしないんだよ。同じような身長の相手がいなくてさ」
「――身長、なの?」
冗談めかしたキースの理由に、思わず反応してしまう香代。
「やっと顔見せてくれた」
「っ」
そんな事を言うから再び顔を背けられて。
また、冗談めかした台詞で気を引いて。
「リラもリールさんと一緒に参加すると思うし、ユアンだってパーティーに参加するって良い経験だと思わないか?」
時間を掛けて根気強く誘ってくる相手には流石に香代も折れる他無く、この根競べ、キースの勝利であった。
●
いよいよダンスの練習開始。
「先ずは基本、ダンスは足で三角を描くようにステップを踏むんだよ」
男女でペアを組むには、先ず足の動きをマスターする事が重要。そのため男女がそれぞれ一列に並んで一、二、三。手と手を繋ぐのはその後だ。
「女の子が後ろに右足一歩下がる時には男の子が左足を前に一歩。彼女の肩幅に合わせて逆足を置いて、三で揃える。ほい、一、二、三。一、二、三!」
かえでの手拍子に合わせて皆が動く。まだ男女で手と手を重ねる前だというのに足元が覚束無くなって転びそうになる少女も。
「レインちゃん落ち着いてねー」
「は、はいっ」
「んーさすが騎士の皆さんはお上手だね〜、はい日向君は足元ばっかり見てないで前見てね〜」
「くっ‥‥おまえさん意外とスパルタだな‥‥」
「無駄口叩かな〜い♪」
ベシンと背中を叩くのはどこから持って来たのか血染めのハリセンだ。
「それじゃ少しテンポ早めるよ〜」
言うと、次第に手を打つ速度が上がる。それに合わせて皆がステップを踏む速度を速め、だんだんと付いていけなくなる者も。
「待て、それくらいで止めろ!」
「わっ」
「きゃっ」
ヒールを履いて練習していた女性陣が転びそうになって前方にいた男性陣に受け止められたなら、かえでは一人「うひゃひゃひゃ」と怪しい笑いを発する。
「まだまだだねぇ」
「あのなっ!」
「だっ」
ベコンッとかえでに直撃したのは日向の靴だった。
●
「あたたっ‥‥」
ふくらはぎの辺りを押えて痛そうに顔を歪める日向に「大丈夫?」と声を掛けるのは紅子だ。
「ダンスなんて慣れない事をしたから筋肉痛かしら」
「ご名答」
些か情けないと自嘲めいた笑みを零す彼は、しかしすぐに普段の彼らしい笑みを取り戻した。
「だが歩くのに支障はないし買い物には付き合うぞ」
「あら」
的外れな事を言う日向に紅子は優しく微笑う。
「今日は滝さんの衣装を探しに行くのよ?」
「俺の?」
「ええ。オーダーメイドにする? それとも貸衣装にする?」
彼の衣装が決まってから、それに合わせた衣装を彼女自身も選ぶつもりなのだ。
「そりゃまた‥‥手間掛けるな‥‥」
「気にしないで」
そうして二人、並んで街へと歩き出す。
その頃、珍獣屋敷にいたのはアシュレーだ。
ミニスカサンタの衣装その他諸々、聖夜祭本番に向けた準備の進み具合を確認していたのである。パーティーそのものの発起人はかえでだが、実質、宴の準備を取り仕切っているのは彼だと言っても過言ではないだろう。
女性発案のゆったり型、基本のミニスカサンタに、セパレート。トナカイガールにも通常とセパレートを用意しつつ、他のメンバーも揃ったところで再び改良に改良を重ね完全完成を目指す。これが現状で七割方達成している事に満足したアシュレーは、安心してダンスホールに向かった。今頃、買い物組以外のメンバーが衣装合わせをしているはずだからだ。
「おー、キレー、キレー」
かえでの声がした方向を見遣ると、リールが一着のドレスをお披露目していた。彼女が当日に着る予定のバタフライドレスだ。
そのすぐ傍にはキース、香代の姿も。
「今回、どうしてもこのドレスが着たくて」
「ええ‥‥きっとケイトも喜ぶわ」
香代が答えればリールははにかんだ笑みを浮かべて見せた。
「そういう香代は、どんな衣装を予定しているんだ?」
「えっ」
キースに尋ねられた香代はあからさまに動揺。
「わ、私は、別に‥‥っ」
「天界のクリスマスって宴の時には、どんな衣装を着るものなんだろう。香代に似合う衣装だと、どんなのがあるかな」
「ちょっ、あの‥‥っ」
「そうだね〜」
動揺している香代を、半ば無視する形で衣装選びに入るキースとかえで、その他全員。
「香代ちゃん、いつも和服着てるから‥‥和洋折衷な感じが良いかな。あ、クリスマスに決まった格好なんてないから、普段よりオシャレするってくらいの感覚でいいんだよ」
「そうなのか」
「じゃあこんなのはどう?」
ずずいっとアシュレーが差し出したのは、いつの間に持って来たのか、まだ試作段階の女の子用サンタ衣装。パラの香代ならば踝まで届くだろうロング丈のドレスである。
「赤過ぎないか?」
「絶対可愛いよ!」
キースが驚くも、かえでが強引に着替えるよう促せばアシュレーの達人級理美容の腕が鳴る。
しばらくして彼らの前に帰ってきた香代は赤を基調にしたふわふわのサンタドレスに身を包み、普段は耳の下で揃えただけの黒髪も、今はアシュレーの技術によって花を飾られ、とても柔らかな印象を抱かせた。
「すごく可愛いよ!」
キースは満面の笑みで絶賛する。
「アシュレーさんの腕も流石なんだろうけど、本当に可愛いっ!」
無邪気に心から褒め称えたキースは、勢いに任せて思わず香代を抱き上げてしまった。
直後、当然の如く上がった悲鳴。
「キースのバカっ!」
顔を真っ赤に、とにかく手足をばたつかせて彼から逃げた香代は、そのままホールを飛び出してしまった。
「か、香代殿‥‥」
「うーん強敵」
呆然としているキースに、リールとかえでが些か複雑な表情で呟く傍らでは、アシュレーがこっそりとパシャリ。
同時刻の街の中。
二人で仲良く買い物中だったのはアルジャンとレインだ。パーティーで着用する互いの衣装を選ぶため、専門の店で店員も交えながらの相談中である。
「そうだな、‥‥レインにはやはり薄青のロングドレスなどが似合うだろうか?」
「そうですね。肌が白くて首筋も細いですから、その辺りは少し大胆に開いた衣装の方が映えて良いと思いますよ」
店員に勧められた衣装を一着、二着と試着しながら、当のレインは少なからず気圧され気味。
「あ、あの‥‥綺麗なドレスをいっぱい着れるのはすごく嬉しいんですけど‥‥」
このお店って結構高級そうな気が‥‥アルジャンにそんな事をぽつりと零すレインに、彼は微笑った。
「大切な記念となる宴だ、多少は贅沢をしても清貧を良しとしている癒しの大精霊の罰は当たるまい」
「えと、でも‥‥」
「あぁ予算も気にしないでいい。僕が持つ」
「えっ」
これにレインは目を丸くし、それは幾ら何でもと慌てふためいた。しかし男、アルジャンとしては何のその。
「その‥‥なんだ、少し見栄を張りたいんだよ。気にしないで良い」
そうして愛しい人に微笑まれてしまってはレインに拒否権などあるはずもなく、今度は二人の遣り取りを聞いていた店員が驚き顔だ。
「あの‥‥てっきりご夫婦かと思っていたんですけれど‥‥違うんですか?」
「えっ」
この質問には二人揃って顔が赤く。
「いや、何というか‥‥婚約者、だ」
「‥‥っ」
公言する事で大きく跳ねる鼓動にレインの目頭が熱くなった。
「でしたらこの衣装はダメですよ! 未婚の女性にはもっと清楚さを強調したデザインの方が‥‥!」
店員が慌てて新しい衣装を揃えるため場を離れる。
二人は顔を見合わせ、恥ずかしそうに笑い合った。
「あら、あそこにいるのはレインちゃん」
たまたま通りかかった店の前で、店内にいるレイン達に気付いた紅子が声を上げると、隣で「相変わらずか?」と苦笑するのは日向。
「お邪魔虫になってみる?」
「いーや、馬に蹴られるのはゴメンだ」
くすくすと笑いを零し、向かうは珍獣屋敷である。
「それより今日は助かったよ、ありがとな」
「どういたしまして。男の人の衣装選びも意外に楽しかったもの」
着せ替えごっこの如く無数の衣装を着せて脱がして店員と意見を出し合って。そんな数刻前の状況を思い出して笑う紅子に、日向もつられるようにして笑う。
「ま、当日は衣装負けしないようダンス練習にも身を入れるとするか」
言った後で、彼は鼻の頭を掻きつつ確認。
「当日も、‥‥俺が相手でいいのか?」
「――」
一瞬とはいえ、流石の紅子も目を瞬かせ。
だが、すぐに微笑む。
「ええ‥‥こちらこそ、よろしくね」
●
「アシュレー君っ、あたしは君に抗議する!」
「えー何でさ、可愛いよ?」
再び全員が珍獣屋敷に集まってのダンス練習。正装は当日までのお楽しみというメンバーがほとんどの中、何故か見事に着飾っていたのがかえでだ。‥‥否、正確にはアシュレーに着飾らされたのだが。
特徴のツインテールまで弄られて傷心なのに、
「一曲お願い出来ますか? お嬢さん」と手を差し出されると真面目に応えたくなるダンス講師。他のメンバーのお手本とまで言われると、後はもう陥落である。
ステップに合わせて波打つロイヤルホワイトの裾。
「ん、よく似合ってるよ、そのドレス。もとがいいからね」
「くぅっ‥‥」
なんというか、口説く相手を間違ってはいないだろうか??
そんな二人をぼぅと見ているキースが持つのはアシュレーに頼まれたデジカメなのだが、本人は気付いているのかどうか。香代を怒らせたと気に病む彼の隣にはリールとリラが並ぶ。
「なかなか時間が取れなくてすまない」
「いや、それは気にしなくても、‥‥けれど、もし明日、時間が出来たら買い物に付き合ってもらってもいいかな。ケイト殿に頂いたドレスに合う靴が欲しいし、‥‥出来たら、リラ殿に選んで頂きたいな、と」
「私に‥‥?」
少なからず驚いた様子の彼に、リールは緊張する。
「迷惑だろうか?」
「いや、そんな事はないが‥‥」
言葉を濁していたリラは、しかし最後には頷く。
「あぁ。では、明日は必ず」
そう約束した後で、急に香代を探してくるとホールを出て行く。
「ぁ、リラ殿‥‥」
何となく追ってはならない雰囲気にリールは切ない吐息を漏らした。
そんな彼女をホールに残し、リラが向かったのは外だ。
「参った、な‥‥」
ぽつりと呟く、その頬の熱は夜闇に紛れ人に知れる事は無かったが聞く者は在た。
香代だ。
「‥‥何が参ったの」
「――‥‥そんなところにいたのか」
思いがけず見つけてしまった友人に驚くも、その様子がおかしいことに気付き、近付く。
「どうした」
そう問えば、彼女もまたしばし悩んで呟く。
「‥‥私も参ってるの‥‥」
その言葉の意味を正しく読み取れるのは、きっとお互いだけだ。
だからリラは苦笑する。
「確かに参るが、‥‥嬉しいものだ」
「‥‥だから、なおさら参るんでしょ‥‥っ」
今にも泣きそうな声は相手の好意が嬉しいからで。
難しい気持ちを他所に、聖夜はもう間もなく――‥‥。