リグ、彼の国はいま――

■ショートシナリオ


担当:月原みなみ

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:6 G 22 C

参加人数:10人

サポート参加人数:1人

冒険期間:07月12日〜07月22日

リプレイ公開日:2009年07月29日

●オープニング

 ● まだ見ぬ、あの土地は

 リグの国における『死淵の王』との戦いは終わった。
 人々の未来と、想いのために戦った冒険者達は全員が酷い傷を負い、回復薬も尽きた状態で、戦の終わりを知らせに走った騎士達によって救出された時にはほとんどの者が意識の混濁状態で、気付けばウィルに帰って来ていたと後に語る者も少なくなかっただろう。
 だから彼らは知らないのだ。
 いま、あの国がどのような状態にあるのか。
 戦の後に誰がどのような明日を選んだのか。

「‥‥あいつら、全員どうしてんのかな」

 だからこそ、戦を終えた数日後に石動良哉が口にしたその呟きに、リラ・レデューファンは行ってみるかと提案した。あの戦の経緯を考えればセレからリグの国に入る事は容易だろうし、多少頭を捻ればセレの重鎮達から様子を見てきて欲しいという言葉を引き出す事も出来るはず。
「‥‥行くか」
「行く!」
「ええ‥‥」
 良哉、ユアン、香代と続く応えにリラは微笑う。
「カインの様子も気になるし‥‥、そうだな。ギルドにも声を掛けてみよう」
 あの国のその後を気にしているのが自分達だけとは限らない。
 そう思い立った彼は、早速とギルドに足を運ぶのだった。




 ● 戦の傷痕、癒す者達

 ウィルの一分国セレの国には、近頃各所で目にする旗があった。軍旗などとは違う、険しい山の頂を見事な翼で乗り越えようとする鳥の姿。頂きの向こうは朝焼けに似た色のグラデーションになっており、セレの人々はこれを『暁の翼』と呼ぶ。
 元は冒険者達が国境を越えて人々の暮らしを支援する組織の名だったが、気付けば人々を元気付ける合言葉になっていた。
「いやぁ‥‥良い傾向だね」
 ヨウテイ領の領主アベル・クトシュナスは暢気に笑う。
 その視界に映るのは、セレとリグ、異なる国の人々が支え合いながら畑を世話し、家を建て、皆で共に食すための食材を調理する姿。数日前の戦がまるで嘘のように、此処には穏やかな時間が流れていた。
「‥‥ま、そう暢気に構えてばかりもいられないんだが」
 呟きながら、アベルの表情が微妙に変化する。
 リグ国内で起きた魔物との戦が終わって以降、あちらに帰る民も決して少なくはなかったが、その一件以来両国の行き来が容易になっている事もあり、セレにはリグの情報が多く持ち込まれるようになった。
 玉座を空にしたリグの国は、現在、王位を誰が就くかで揉めている。
 候補者は国内における二大領地クロムサルタとホルクハンデの両領主と、ホルクハンデ領主の嫡男であり黒騎士と呼ばれるフェリオール・ホルクハンデという僅か三名。そしてこの三名ともが王になる事を拒んでいるのだからどうしようもないと、これはリグの騎士の言である。
 ウィルは六分国で一つの国。
 対してリグは、かつてはクロムサルタ、ホルクハンデ、リグハリオスの三分国から成る国だったが、今は国があっての二大領地。領土的にはウィルとそれほど変わらないリグの土地は、その全てを王が統べる事になる。
 ホルクハンデの領主はかつての三分国制度に戻し分国王の地位を奪還、フェリオールは跡継ぎにすべく自分の元に戻れと我儘を言い放題。
 フェリオールはしばらく諸国漫遊の旅にでも出ると、国の復興に力を入れるつもりは無いと言いたげな態度を崩さないし、クロムサルタのエガルド伯は「自分はもう歳、国の未来は若い者に」と、こうである。
「あの国には、誰か王になりたいって奴はいないのかね」
 まったく、と溜息一つ。
 そうしてアベルの脳裏に浮かぶのは毎度お馴染みの冒険者達の顔。
「あぁそうか、彼らに良案でも出してもらうか」
 何せ国を一つ動かした彼らだ。
 両領主はもちろん、黒騎士からの信も厚いのだがら、余所から誰かが口を出すよりもよほど効果的に彼らから結論を導き出せそうだ。
「王が決まれば今度は四方八方に根回しして手回しして戴冠式に‥‥誰が王になるかによっちゃ嫁取りか? いやぁ、忙しくなりそうだ。ついでに『暁の翼』にはリグの国の復興支援でも手伝って貰うか」
 そんな事を随分と面白そうに言いながら、アベルは早速とウィルの冒険者ギルドに便りを出すのだった。




 ● だからギルド職員のアスティは

 こちらと、あちらの依頼が微妙に合致しているのを見つけて、ギルド職員のアスティ・タイラーは失笑する。
「まったく、これだから‥‥」
 苦笑交じりに呟いた彼はリラからの依頼とアベルからの依頼を重ね合わせてサラサラと依頼書を作成。これを掲示板に。
 一つ、セレ分国からリグの国への偵察依頼。
 一つ、セレ分国からリグの国への復興支援依頼。

 加えて二つ目の依頼には「自分も同伴するんで頼むな」と茶目っ気たっぷりの走り書きがされており、まったくあの人はと此方でも溜息が一つ零れていた。

●今回の参加者

 ea0244 アシュレー・ウォルサム(33歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea2449 オルステッド・ブライオン(23歳・♂・ファイター・エルフ・フランク王国)
 ea3329 陸奥 勇人(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb0010 飛 天龍(26歳・♂・武道家・シフール・華仙教大国)
 eb3839 イシュカ・エアシールド(45歳・♂・クレリック・人間・神聖ローマ帝国)
 eb4219 シャルロット・プラン(28歳・♀・鎧騎士・エルフ・アトランティス)
 eb4324 キース・ファラン(37歳・♂・鎧騎士・パラ・アトランティス)
 eb4402 リール・アルシャス(44歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4856 リィム・タイランツ(35歳・♀・鎧騎士・パラ・アトランティス)
 eb7871 物見 昴(33歳・♀・忍者・人間・ジャパン)

●サポート参加者

エヴァーグリーン・シーウィンド(ea1493

●リプレイ本文


 ウィルからセレへ。そして、セレからリグへと向かう出発の、朝。グリフォンの鳳華に騎乗し、単身各方面に寄り道しながらリグのクロムサルタを目指す事にした陸奥勇人(ea3329)の周りに仲間達が集まる。
「ご一緒出来ないのは心苦しいが‥‥宿のご夫婦や、あの時の商人の方にお会いする事があればよろしく伝えて欲しい」
「ああ」
 リール・アルシャス(eb4402)の頼みを勇人は快く受け入れ、続くリィム・タイランツ(eb4856)の言葉にも。
「事情があったのは確かだけど、色々と騙してたのも事実だしね。出来れば直接お会いして謝りたかったけど」
「ま、それは状況を見てだな」
 心から謝罪するためには真実を話さなければならず、話せない秘密を抱えたままの謝罪は嘘の上塗りになりかねないし、自己満足と変わらない。謝るのなら、本当に全てを終えた後で、だ。
「そろそろ行くぞー」
 先に船に乗っていた滝日向が操縦者達からの言葉を未だ船外の彼らに伝える。飛天龍(eb0010)、キース・ファラン(eb4324)、物見昴(eb7871)はユアンやリラ、カイン、良哉、香代と共に、オルステッド・ブライオン(ea2449)も妻と共に既に船内。
「気を付けてな」
「勇人殿こそ」
 リールとの会話を最後に、真っ直ぐにクロムサルタへ向かう船では立ち寄れない箇所を回るため、勇人は一足早く空を駆ける。そんな彼を見送り、自分達も船内へと歩を進め始めた彼女達の背後から、不意に聞こえてくるのはアシュレー・ウォルサム(ea0244)の声だ。
「大丈夫? 重そうだし、持つよ?」
「いえ、ご心配には及びません」
 見た目にもずっしりとした重みを感じさせる布袋を抱えてシャルロット・プラン(eb4219)。
「それに、この重みは自らの手でリグの地に運びたいのです」
「そう?」
 必要な時には力は貸すからとアシュレーが見つめる袋の中身は、セレに避難してきたリグの民が、シャルロットの発案、指導の元で作り続けてきた十字架のネックレスである。セレ分国内では銀が採掘され難い事、金属を加工する技術が一朝一夕で身に付くはずがないという事情もあって、そのほとんどが樹の枝を麻紐で組んだものだったが、だからこそ、民の想いがより深く感じられる気がする。
「行きましょう」
 行こう。
 魔物の去った、彼の国へ――。





 リグの国は、かつて三つの分国から成り立っていた。しかしリグハリオス家の侵略によってホルクハンデ、クロムサルタは分国から一領地へと格下げされて王の支配を受けるに至った。これに対し、いつか分国としての地位を取り戻すべく躍起になっていたホルクハンデと、これも世の流れと諦め新たな争いを起こす事こそを危惧し王都とホルクハンデの間に立ち続けてきたクロムサルタだが、今こうして明らかに変わってしまった国の姿に思うのは――。
 少なくともクロムサルタの領主エガルドは、決して喜べぬ己の心を偽るつもりはない。ただ、冒険者達の来訪は素直に嬉しいと思えた。
「お久し振りです!」
「よく来てくれた」
 しっかりと手を握り、再会を喜び合う伯とリィム。
「ご健勝そうで何よりです」
「貴殿もな‥‥と、勇人殿は不在か」
「いや、船は一緒ではなかったが、後に自力で到着する予定だ」
 残念そうな伯には天龍が応じ、次いで遠慮がちに口を切るイシュカ。
「‥‥私達も伯にお聞きしたい事が‥‥」
「何かな」
「伯は此方にお出ででしたが‥‥セディ卿や、フェリオール様‥‥黒鉄の三連隊の皆様、クレーシェル様は‥‥どちらに‥‥?」
「セディはホルクハンデにいるだろうし、騎士達は王都にいるだろう。フェリオールは判らんがな」
「判らない?」
 聞き返した昴に、彼は肩を竦めた。
「親父の顔は見飽きたと言って以来、誰も姿を見ておらんからな」
 それはまた、何と言おうか。冒険者達の反応に苦笑する伯。そうして皆が邸内に消える頃、ふと人数が足りない事に気付いたのはオルステッドだ。
「‥‥アシュレー?」
 そういえばリグに到着した後は単身地方を回ると言っていた事を思い出す。リグの重鎮達と接するよりも実際のリグの国の今を見に行きたいのだと。
「‥‥そちらは任せた‥‥」
 虚空に微笑んで呟く言葉が、本人に届くとは思わない。
 ただ、伝えたかった。


 通された広間で、冒険者達が最初に口にした言葉は詫びだった。
「結局、死淵の王を倒せなかった‥‥力及ばず、申し訳ない」
 代表して伯に謝罪の言葉を述べるリールに、しかし当人は笑む。
「あれもカオスを統べる八王の一人なれば討伐も容易な事ではなかったのだろう‥‥? それでも誰一人欠ける事無く戻り、更にはこの国から奴を退かせた。その事が我々にとっては何よりも大きい。――詫びてもらう必要など無い。私達は、君達に救われた」
「しかし‥‥」
「無論、死淵の王が生きている限りはこの世界の危機が去ったわけではない。しかし、君達とてこのまま引き下がるつもりなどないのだろう?」
 まだ、戦うのだろう?
 そう問うてくる伯に対し、一瞬にして冒険者達の表情が変わる。それこそ論じる必要など皆無の決意。彼らは、次こそ死淵の王を倒すべく固い決意をその胸に抱いているのだから。
「ならば、私は君達の無事を祈る。この世界の未来を、頼む」
「――はい」
 各々が握った拳を胸に誓い、しんみりとしてしまった室内で。
 こほんと咳払いを一つ、空気を変えたのはシャルロットだった。
「ところで、エガルド卿もさることながら国のトップが決まらないという話を小耳に挟んだのですが」
「ああ」
「この混乱したリグの状況下では、例え王は不在のままであろうとも、王に代われる統率者が必要なのではありませんか?」
「だろうな」
 シャルロットの意見に、伯はあっさりと頷く。
 その、思っていたのとは若干異なる反応にリールが困惑の表情を見せた。
「代表者や有力者‥‥リグの国の場合にはエガルド卿、セディ卿‥‥それにフェリオール殿達がそうなのだろうが‥‥皆の話し合いで王を選ぶ事が現実的なのでは?」
 先日までの王グシタ・リグハリオスには子がいない。
 他に後継者候補はいないのかという質問には、彼自身が先代の唯一の子であった事からも他の血縁者は皆遠く、また、王が狂い始めて間もなく王に代われる血筋の者は悉く首を刎ねられたと伯は答える。
「ならばやはり‥‥伯や、セディ卿が、一時的にでも王の座に就かれるのが望ましいのではないだろうか」
「それは出来ぬ」
 リールの続く言葉には躊躇無く首を振った。
「私はもう老いた。セディも、分国の王ならばいざ知らずリグという国の名を背負うには器が足りぬし、それを本人も自覚しておるから三分国制に戻せと息巻いている」
「けど、今は個人の感情で四の五の言っている場合じゃないんじゃないのかな」
 眉を顰めて、キース。
「自分には相応しくないなんて言って国を背負う重責から逃げていられる状況だとは、俺にはとても思えない。今は非常時だ」
 これまでの経緯から、その座には相応しくないと考えてしまうだけの負い目を彼らが感じている事は理解出来る。しかし、だからこそ責務を果たすことで克服すべきではないのかと。
「周りからの色々な面倒事に対しても王位という権威や箔は必要な気がするしね」
 昴も言葉を重ねれば、箔は苦く微笑った。
 そんな反応にシャルロットが更に言い募る。
「話し合う面子が不足しているというならば、他の権力者、有力者を集め代表者選出のための『円卓会議』を行なってみては」
「円卓?」
「身分による席順を決めずに行なう会議のことです」
「ふむ‥‥」
 伯はしばし考え、それも一案だとは思う。だが――。
「‥‥この国に王が必要だと思うか」
 そうして紡がれた問い掛けは。
「リグで狂っていたのが王だけとは言わぬ。魔物が撒き散らした瘴気のせいで数多の騎士達も精神を病み、今尚その影響に苦しんでいる。だがな‥‥王一人が魔物に誑かされただけでこの国は壊れたのだ。そのような国に新たな王を据えたところで、民が受け入れられれると思うか」
「‥‥確かに、再び王を立てるのならば‥‥リグの騎士達には意識の面で生まれ変わってもらわねばならないだろう‥‥」
 オルステッドが言う。あのような状況下にあっても誰一人王を諌める事が出来なかったのは異常でしかない。それすらも瘴気によって狂わされていたにしろ、あのような惨状を再現しないためにも努めなければならない事項は多い。
「‥‥まずは三分国‥‥有力者の合議制にした上で王を選出する事にしては‥‥? 自らの意志で国を造り、守る事も、意識改革には重要だろう‥‥」
 ひたすら王の命令に従うという思考停止状態にも効果があるはずと彼が語れば、キースも。
「分国制の下での国王の互選には賛成だ。ウィルでもうまくいっているからには、リグでも一定の成果は得られると思う」
「皆が王にはなりたくないと仰られるなら期間を設けて順番にというのは如何だろう? エガルド卿、セディ卿、そしてフェリオール殿‥‥このような順番であればフェリオール殿が他国を回って戻られ、その期間に上に立つ者としての学を身に付けて来られれば、将来的にはきっとリグの民のためになると思う」
 だからどうか、民のために。
 そう訴えるリールに、伯は息を吐いた。
「これからホルクハンデ領や、王都にも行くのだろう? 其処で皆に会って来ると良い‥‥恐らく、判るだろう」
 謎掛けのような言葉に、しかし元より他の面々にも会いに行く気だった冒険者達に異論はなく、船は再び起動、一路王都リグリーンを目指す。
 その出発間際、シャルロットは伯に冒険者ギルド普及によるリグの治安回復、直下騎士団の再編成などを提案した書面を差し出し、そこに一つの十字架を添えた。この国を離れた民が、復興の支えになるよう願いを込めて作った、それを。
「そうだっ」
 不意に声を上げたのはリィム。
「一つ確認させて頂きたい事が‥‥モニカさんとフェリオールさんって、どういう関係なのか伯はご存知ですか?」
「二人が?」
 伯は目を丸くするも、しばし考えた末に失笑する。
「そうだな‥‥言い表すとするならば『対』か」
「つい?」
「どちらがどうではなく、な。時々によって異なる対なのだろう‥‥今という時も、な」
「??」
 あまりにも抽象的な表現でリィムは理解に苦しんだけれど、船の出発が迫っていた為に急かされて船に乗り、そして。
「‥‥申し訳ありませんが、最後に一つだけ‥‥」
「何かな」
 イシュカ・エアシールド(eb3839)の問いを彼は聞き入れる。
「伯はもう歳と言う事ですが‥‥卿の後継となる方は何方なのですか? ‥‥ホルクハンデにはフェリオール様がいらっしゃいますが‥‥グシタ王に後継がいないという話を聞いてから、セディ卿よりお歳を召されている伯の後継者の話が出ないのが不思議で‥‥」
 彼の後継がいれば、その人物もまた王の候補に上がる筈と考えるイシュカの問い掛けに伯は静かに微笑む。
「私の妻が、グシタ王の縁者にあたってな」
 その血を引いた子は、言わば王の候補にも上がり。
「もう一年になるか‥‥狂い始めた王を諌め、その場で殺された」
「――」
「私は、もう誰も死なずに済む国を取り戻したかった‥‥そしてその願いはまだ叶ってはおらぬ」
 だからこそ、彼は。
「‥‥何れにせよ私は玉座には就けぬよ。あの子の血を浴びたそこに『責任』の一言で座れるほど強くはない‥‥王が就くと言うのなら、その王が二度と道を誤らぬよう補佐するのが精一杯だ。クロムサルタの民を守るためには、私が生きている間に後を任せられる者を見つけねばならぬしな」
「伯‥‥」
「さぁ、行きなさい。皆が待っている」
 促されたイシュカを乗せ、船は行く。その姿を伯は静かな微笑みと共に見送るのだった。





 その頃、単身セブンリーグブーツでリグの国内を歩いて見て回っていたアシュレーは、しかしリグ国内の土地勘にそれほど明るいわけではなく、道行は主に思いつくまま気の向くまま。自分がどちらに向かっているのかもいま一つ不明ながら、鼻歌交じりの足取りは軽やかだ。運が良ければ町や村――時にはその成れの果てに辿り着き、自前のデジタルカメラで撮影。人に声を掛ける事が出来れば彼らの現状を訴える声をメモリーオーディオで録音するなど、彼は、実際にこの場には居ない者達へ民の言葉を伝えるべく、この依頼期間を過ごす事に決めたのだ。
「困っている事ばかりだろうけど、特に、今すぐ必要なものは何?」
 アシュレーがそう声を掛けたのは、比較的被害が少なかったのか田畑で農作業を進める人の姿も少なくない山間の村の川沿いに休んでいた老夫婦だ。見た目には怪我を負っている様子もなく、魔物の襲撃を受けた名残なども見られない。それがアシュレーの興味を引いた所以でもあっただろう。
「必要なもの‥‥」
 聞かれた老夫婦は顔を見合わせた。食べ物が豊富とは決して言えないけれど、それでもリグの地には広大な森と山が広がっており、そこに入れば必要最低限の食料は手に入る。飲料も川の水が普通に飲めるのでありがたい。誰しもが困窮している今、欲しい物は何かと問われても。
「‥‥国は、どうなっておりますか‥‥」
 不意に女性の方が口を切る。
「この国に一体何があったのですか‥‥突然、騎士の方々が村の若い男達を全員連れて行ってしまって、それきり‥‥その後はホルクハンデとクロムサルタが内戦を起こすと聞きましたが、それきり‥‥いつだったか、通りかかった騎士の方がたくさんの食べ物を下さりながら、もう大丈夫だと声を掛けて下さりましたけれど‥‥王様はご無事なのですか‥‥?」
 リグを護る騎士達は。
 この土地から連れ去られた若者達は、どうしているのでしょうか?
 此処が王都からどの程度離れた土地なのかは判らない。しかし、リグは広い。中心から離れるほどに情報は正確さを欠き、此処の人々は連れ去られた若者達が帰るのを今か今かと待っているのだ。そんな人々に、アシュレーが何を言えただろう。
「‥‥早く帰って来るといいね」
 それが精一杯だ。
 しかし、この一言が予想外の返答を引き出す。
「ええ‥‥きっと、もうすぐですよ‥‥隣のアトケ村にも、昨日、男達が帰って来たと言いますからね‥‥」
「アトケ村?」
 男性の言葉を聞き返す。
 其処は、この村から一キロほど離れた先にあった。


 アシュレーがアトケ村に入ると、村はひどく慌しかった。
 水を溜めた甕を抱えた女が急ぎ足で向かうのと同じ方向へ、大量の布を抱えて走る女、薬になるのだろう草を抱えて走る女。
「怪我人、かな」
 気になった彼は気付かれぬよう女達の後をつけ、一件の小屋に辿り着いた。直後に聞こえてきたのは、‥‥悲鳴。
「いやあああっ」
「目を開けてディラン!」
「やっと帰って来てくれたと思ったのに‥‥!」
 あまりにも悲痛な声に、そっと中を覗き見れば騎士と見られる男の遺体を囲み何人もの女達が嘆き悲しんでいた。彼が帰ってきたのなら、いつかは自分の夫も。恋人も、帰って来ると信じられたのに。
「王都で何があったの‥‥!?」
「何故ディランが‥‥っ、夫達が、この村から連れて行かれなければならなかったの!?」
 女達に詰め寄られるのは傍に座した男で、姿は騎士。
(「おや‥‥?」)
 その顔に、見覚えがあった。
「お願いです、答えて!!」
「この国に何があったのですか!」
 必死の形相で腕を掴み、答えを欲してくる彼女達に、騎士は口元を固く結んだまま何も語らない。
 ――語れない。
「答えて!!」
 その光景に軽い息を吐いたアシュレーは、荷から妖精の竪琴を取り出し、爪弾く。
「え‥‥」
 小屋に集まっていた人々の意識は外から聞こえてくる旋律に次第に傾き、一人、また一人と頬に涙を零す。
「ぅっ‥‥」
「ディラン‥‥っ」
 優しく温かな旋律に慰められて、女達は息絶えた騎士に泣き、座していた騎士は静かに立ち上がると握り締めた拳を胸に置き一礼。それきりで小屋を出ると、竪琴の音色が聞こえる方へと歩を向けて来た。
「――‥‥ああ、やはりウィルの冒険者か」
「まさかこっちで黒騎士に会えるとはね」
 アシュレーは言う。小声で黒騎士ことフェリオール・ホルクハンデに「少し待て」と。
 せめて、この哀歌が終わるまで。





 アシュレーが予想外の場所で黒騎士と遭遇していた頃、王都に到着していた一行はごく自然な成り行きで復興作業を手伝う事になる。
「いいか! 引っ張れーー!!」
 片や折り重なった丸太の一つを持ち上げるべく力を合わせ、片や丸太に括りつけた縄を近くの城壁の杭に引っ掛けた向こう側から数人で引く。
「そぉ、ぉぅれっ!」
「はああっ!!」
 天龍が気合と共にリグの騎士達と巨大な丸太を担ぎ上げれば、縄を引くオルステッド達は息を詰めて全力牽引。
「‥‥くっ‥‥」
「もう少し! もう少し!」
「くぁ‥‥っ!」
「いけーー!」
 上下から加えられる力によって起き上がった一本に。
「待て、止まれ!!」
 それ以上引いたら逆側に倒れるぞ、と。慌てて上空に飛んだ天龍は城壁に向けて丸太に蹴りを。
「!」
 ゴォォゥン‥‥と地響きのような音と共に城壁に立て掛けられたそれは、長さ約五メートルの、王城と城下町を繋ぐ跳ね橋の一部分だったものである。
「天龍殿、素晴らしい判断だな」
 そう声を掛けたのは、壁が崩れた末の巨大な石の塊を、バガンに搭乗して取り除いていたリール。
「さぁ次行くよー♪」
 同じくバガンで石塊を運んでいたリィムが陽気に皆を促せば、地上で呼吸を弾ませている良哉が待てと訴えた。
「ちょっとは休ませてくれても‥‥っ」
「情けない事を言うな」
 ペシン、と叩く掌は優しくも、言葉は厳しい昴の突っ込み。一方、立てかけられた丸太を目的地まで運ぶのはキールが起動させているバガンだ。
「あと三本、急ぎで頼むよ」
「! 待てキース、こっちは人力でやってんだぞ!?」
 良哉が声を荒げれば、リィムは苦笑。
「ドラグーンやキャペルスがほぼ無傷だったから安心してたけど、バガンやデクは結構破損していたんだね」
 工房の職員達が寝る時間も削って修繕作業を続け、機体は数日ごとに復帰しているものの半壊した都の復興にはとても足りない。そのため、ゴーレムに搭乗していない騎士達はこうして力を合わせ、人力での復興作業に従事しているのだ。
「貴方は休んでいて下さい、代わりに私が入ります」
 そう言いながら縄を引く男たちの列に加わったのは、それまで地面に散らばっていたゴーレム部品と思われるものを拾い集めていた人物。腕を捲り、表情険しく。
「さぁ、やりましょう!」
「‥‥心強いな‥‥」
「では行くか」
 オルステッド、天龍が揃って言えば良哉も決まりが悪い。
「わぁったよ、俺に任せろ! 俺がやる!」
 ムキになる彼に、人々の間からは実に楽しげな笑い声が広がった。
 キースも笑い。
 向かう先は王都を流れる巨大な川。国民の動線となる場所に、これらの木材を用いて即席の橋を掛けるのだ。
 そして其処にいるのは改造型のキャペルスが一機、バガンが一機。
 起動させているのは。
「団長! 新しい丸太が来ました!」
 キースが運ぶ木材を見て騎士の一人が声を上げるのとほぼ同時、改造型のキャペルスが腕を上げて応じる。その動作にバガンも呼応するように移動し、それらを地上で訳し周りに指示を出すのは――ダラエ・バクドゥーエル。黒鉄の三連隊と呼ばれた騎士の一人であり、バガンを起動させるドッパ・グザハリオルも、キャペルスを動かすガラ・ティスホムも、そうだ。
「新しいのを右端に合わせて縄を! 今までと同じだ、決して緩ませるな!」
「はいっ!!」
 その声に、騎士達の応えは真っ直ぐだ。キースから丸太を受け取ったドッパは、それをドッパが支える橋の骨組みに添わせて固定、騎士達が数人で縄を持ち、走り回る。そんな光景がキースにはひどく嬉しかった。もちろん彼だけではなく、冒険者皆が同じ気持ちだ。あんな事があって、各自が責任を感じて自宅に自ら蟄居していたり、放って置いてほしいと考えているかもしれないなど様々な懸念はあったが、彼らはとうに動き出していたのだ、国の復興のため。
 これが己の罪滅ぼしだと。
「‥‥要らない心配だったかな」
 真剣に復興作業に取り組む彼らの姿にキースはそう呟くが、それは違う。あの戦の中で冒険者達が告げた言葉があってこそ彼らは動いている。
 本当に民のためを思うならば生きて償え。
 そのためならば躊躇う時間すら惜しく、騎士達のその姿に民も奮起した。王都の人々は確かな未来を掴む為に動き出したのだ。


「‥‥強いな‥‥」
 ぽつりと呟いたのは皆で休憩に入った後のオルステッドだ。
「‥‥もう民は復興の準備を進めている‥‥実は、最も逞しいのは民なのだな‥‥」
 あの戦の中で騎士達は既に未来など無いような事を言い、魔物に誑かされた王は自分が消えれば国も終わると思い込んでいた。だが、現実はどうだろう。民は生き、未来を紡ごうとしている。
「‥‥自分達騎士と言うのは、国という大きな生命力を持った存在の、表面的な衣に過ぎないのかもしれない、な‥‥我々は民を生かして、守るのではなく、民に生かされている‥‥」
「ああ」
 応じたのは、ガラ。
「それに気付けたのも、貴殿らのおかげだ。わしらはこの命ある限り民のために生きる‥‥そう、誓ったんだ」
 その言葉を無言の笑みで受け止めた天龍は、続ける。
「後は王、か」
 グシタ王が姿を消して以来、空位が続くその場所に。
「俺には政治の事は良く判らんが、民にとってより良い者が王になってくれれば良いと思う」
「‥‥一昔前ならば、冒険者が君主、領主に推挙されていたが‥‥さすがに異国の地でそれはないか‥‥」
「そう、だな‥‥ウィルに所属する者を据える事は民も納得しないだろう‥‥ただ、復興のための助言は、受けられればと思う」
 ダラエの言葉にはドッパも頷いた。
「より良い国を民に返すため、我等は力を尽くす‥‥どうか、知恵を貸して欲しい」
 そうして黒鉄の三連隊と呼ばれる者達が頭を下げれば、傍の騎士達も。
「もちろん、私らも手伝える事は手伝うさ」
 昴の応えには、しかしそれ以上の事は――自分の国の事を決めるのは国の民だという思いが込められる。それは、空位の玉座に関しても然り。
「‥‥国を民に返す、ですか‥‥」
 不意に、ぽつりと呟いたのはイシュカ。
「‥‥此方に来るまでの間‥‥もう一つの天界からいらした滝様にお話を伺ったのですが‥‥あちらでは一人一人の民が国の代表を決めるための決議権があって‥‥最も信任を集めた方が国の代表になるそうです‥‥今は、理想論でしかありませんが‥‥」
 そもそも民には、何が間違ってこのような状況に陥ってしまったのか正確に知る由は無い。
 抱くのは国が民を見捨てたのではないかという疑念と、命を奪いゆく魔物達への恐怖と、‥‥始まった復興に見出した微かな希望。王都を離れるほどに民の意識は王や国の政から離れ、目に見える生活が生きることの全てになる。それこそ王都での出来事など雲の上と同じ、自分達にはどうする事も出来ないのならせめて穏やかな日々を送れるよう祈るだけだ。そんな民に、自分も国の一員だという意識を抱かせるのは非常に難しいだろう。
「王、か‥‥」
 低く呟くガラに、天龍。
「‥‥そういえばモニカはどうしているんだ?」
「――ああ、彼女なら‥‥」
 城の地下にいる、と。
 その言葉に動いたのはシャルロットだった。


 城の地下。
 ‥‥地下牢。
 モニカ・クレーシェルは其処で一人、黙々と無惨な跡を残す地面から何かを拾い集めていた。それは髪の毛であったり、食い千切られた指先であったり、衣服の切れ端であったり。
「‥‥すまなかった」
 元は人であったそれらを手にする都度、謝罪の言葉を告げ、数が集まるとそれらを陽精霊の世界に連れ帰り、埋葬する。
 もう、何処の誰とも判らないけれど。
 それでも、せめて欠片でもいい、精霊界に辿り着けるよう祈りながら。
 復興に人手が必要な事は承知している、自ら動き出すべきであるという事も。だが、これからを生きようという民のための暮らしを取り戻す作業に参加するには、彼女自身がある種の答えを必要としていたのだ。
 その答えを求めて、地下牢で死んだ民を弔う彼女の姿に、シャルロットは歩み寄る。
「貴女にも、これを」
「――‥‥十字架‥‥?」
 差し出された木製のそれに眉を顰める彼女へ、シャルロットは続けた。
「リグの民が、セレの地で作ったものです」
「民が‥‥」
 そう返す相手にシャルロットは言葉を重ねる。
「‥‥たとえ泥をすすり、地に涙したとしても貫き通した信念に偽りはない」
 戦の中、一人でも多くの民を生かそうと足掻いていた事は紛れも無い事実。
「それでも己を許せないと言うならば、この十字架が罪人の咎を示す鎖となるでしょう」
 しゃらりとモニカの手に握られる十字。
 そうして、届けられる声は様子を伺っていた天龍。十字架を握るモニカの表情を見て、聞くならば今しかないと判断した。
「俺達は死淵の王との決着を付ける為に地獄へ向かうつもりだが、おまえはどうする?」
「‥‥地獄へ」
「行けぬと言うのなら、その思いは俺達が背負わせてもらう」
「‥‥私は‥‥」
 自分は。
 そう呟いたきり口を閉ざしてしまった彼女は、しかし瞳が揺らぐ事は無く。
「‥‥では、またお会いしましょう」
 シャルロットはそれだけを告げて踵を返し、天龍もまた行く。振り返る事はない。答えはきっと、既に彼女の中にあるから。
「今度こそ、討つ」
「もちろんです」
 だから二人は断言した。





 同時刻、勇人は仲間達から遅れてエガルド伯の邸に到着していた。さすがに旅の商人を道中で見つける事は叶わなかったが、宿屋の夫婦は今もあそこで宿を経営しており、いつか皆で遊びにおいでと、あの日と変わらぬ笑顔でクロムサルタに向かう彼を見送ってくれた。
 また、共に空を行く陽霊の悠陽がカオスの魔物の気配に怯える事もほとんど無く、むしろあれほど蔓延っていた魔物達が一斉にこの地を去っているという実状にこそ不審感を抱かずにはいられなかった。
 地獄で何かが起きている。
 そういう事なのだろう。
 だからこそ気になるのはリグの今後。
「王の後釜はどんな感じになってるんだ?」
 当たり障りのない世間話から、そう切り出した勇人へ、伯は苦笑を零した後で数時間前に他の冒険者達に語ったのと同じ事を勇人にも告げた。
 同時に、誰一人、王になる事が嫌なわけではないのだとも。
「民を導くために必要な存在なれば最終的には玉座に相応しい者が就くだろう。ただ‥‥今はまだ、無理なのだよ」
「代行を立てるってのもか?」
 アシュレーと同じく、単身リグ国内を通ってきた勇人には見えて来たものがある。主にセレへ避難した民が暮らしていた村は廃墟と化しているものがほとんどで、此方には根本的な復興作業が必要だ。また、王都に近い村や街にはゴーレムを含め救援部隊が出されているが、こちらとて人手が充分なわけではなく、中央から離れるほどに援助どころか正確な情報が伝わっていない事すら珍しくない。
「連れ去られた男達は、もうすぐ戻ってくると‥‥今尚そう信じている民もいた」
「‥‥そうか」
「騎士の数も、戦後間も無いならゴーレムの数も充分と言えないだろう事は判る。だが、唯一絶対の言葉を持つ王がいなければ民に共通の情報すら伝わらない」
 国の仕切り方を大きく変えれば、弊害がそれを上回る事も予測出来る。
 焦る必要は無い。
 だが、せめて今度こそ民が信じられる言葉を語れる誰かが、其処に居れば――。
「リグの戦は、まだ終わってはおらぬ」
 伯は語る。
 その、危惧を。
「民を想い、民のための政を為す者は地獄に赴き次こそ死淵の王を討とうとするだろう。そうなれば‥‥万が一の時‥‥我々は、民に二度も国を失わせる事になるかもしれぬ」
 それは、果たして。
 何も終わってはいない今、民にとっての救いになるだろうか‥‥?





「なんというかさ‥‥乱れている元凶をどうにかするだけで、あとは知らないって、無責任にもほどがあると思うのだよねえ」
 アシュレーに言われたフェリオールは失笑。
「元凶なら、どうにかすら出来ていないだろう」
 リグの国から退かせたからと言って、それが何だと言うのか。
 死淵の王の存在はいまだ世界を脅かしている。ましてやリグ国内の死者は後を絶たない。特にあの戦が原因で精神を病んだ者達は、食事も摂れなくなり衰弱していくのだ。フェリオールは、そんな騎士達を故郷に連れ帰っていたのだ。
 一人、また一人と看取る内に、強くなる決意。
「皆、俺に王になれと言うがな。俺は地獄へ死淵の王を討ちに行くつもりだ。この命と引き換えにしても、次こそ必ず。玉座になぞ縛られたら地獄へ行けなくなるだろう」
 ふむ‥‥とアシュレーは考える。
「と言う事は、生きて戻れたら?」
 その時には?
 問い掛けにフェリオールは意味深に笑む。
 言葉はない。
 ただ、微笑んだ。





「‥‥みんな、強いよな‥‥」
 目の前で生きる人々の強さに、静かに呟くリールの隣にはリラがいた。
「きっと心身共に傷付いた方は大勢いるだろうに‥‥それなのに、こんなに生き生きと」
「ああ‥‥」
 返す、その眼差しは彼女へ。
「皆の想い、強さと共に、‥‥次は必ず」
 真摯なその言葉が語るところは地獄へ向かう決意。
 死淵の王と、今一度戦おうという意志。
 だから、リラは。
「っ」
 不意に、手先に触れた温もりにリールは驚いて相手の顔を見上げた。
「‥‥ああ、必ず」
「――リラ殿‥‥」
 触れ合った掌から伝わる鼓動に。
 重みに。
「‥‥必ず」
 返す言葉は、誓い。
 それだけがいま語れる真実。


 月姫セレネから地獄へ向かう事を告げられるのは、それから間もなくのことだった。