【冒険者】君が君になった理由
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■ショートシナリオ
担当:月原みなみ
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:2 G 49 C
参加人数:6人
サポート参加人数:2人
冒険期間:09月02日〜09月05日
リプレイ公開日:2009年09月11日
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●オープニング
● そして、再び
その日、ギルド職員のアスティ・タイラーは、冒険者ギルドというよりも自身を訪ねて来た人物に目を瞬かせた。
「貴方は‥‥!」
ふわり、柔らかな髪の向こうに見え隠れするのはエルフ特有の耳。儚げな雰囲気を醸し出す美しい女性は、名をリュミエージュという。
彼女が、負傷して森に倒れていた某人物を助けた為に盗賊に狙われ、村中の人々を人質に取られてしまったから助けて欲しい訴えて来たのはつい先日の話しだ。
「あの時は随分とやつれて見えましたけど‥‥、今日は、お元気そうですね」
アスティが微笑むと、リュミエージュは穏やかに微笑う。
「はい、おかげさまで‥‥あの時は本当にありがとうございました」
そうして深々と頭を下げた彼女は、あれからの村の様子を語った。
最初こそ怯えて口も利けなくなっていた人々は、村を襲った盗賊は、全員が冒険者達によって官憲に引き渡され、もう二度とこの村が教われる事はないのだという説明を繰り返し受けながら自身を納得させることで、じょじょに平常心を取り戻していったという。
今では、あの騒ぎ以前の光景が土地には戻った。
もう、何も心配は要りませんと。
「そうでしたか‥‥それは本当に良かった」
ほっと胸を撫で下ろすアスティに、リュミエージュは再び微笑む。
「それもこれも、私の依頼を受諾して下ったアスティさんと、力を貸して下さった冒険者の皆さんのお陰です‥‥本当にありがとうございました。どうしても、もう一度、お礼を言いたくて‥‥」
深々と頭を下げるリュミエージュにアスティは慌てて両手を振る。
「いえいえっ、そんな私に頭を下げられなくても‥‥っ、って言うかまさか、そのお礼を仰るためだけにわざわざ!?」
「ぁ、いえ‥‥」
今度はリュミエージュが両手を胸の前で振り、慌てて言葉を繋ぐ。
「実は、あの騒動の時に、盗賊達が連れて来いと言っていたディーンの件で‥‥」
「ディーンの‥‥」
その名を、アスティは噛み締めるように呟く。そもそも彼女の村が盗賊に狙われたのは、盗賊が手に入れた宝の持ち逃げを画策、制裁に合いながらもソレを奪って逃げ出したディーンと名乗る男がリュミエージュに手当てされて村で保護された事に端を発している。
「その男がどうかしたんですか? ぁ‥‥それとも、まさか彼が村に戻って来たとか‥‥!」
「いえっ、そうではなくて‥‥実は、その‥‥うちによく出入りしている子供が、ディーンの荷物の中に、奇妙な物があったのを思い出したと言い出して‥‥」
「奇妙なもの?」
「ええ。こんな‥‥硬い台‥‥石や鉄でもなくて‥‥奇妙な‥‥」
「??」
的を射ない説明にアスティが頭を捻ると、リュミエージュは慌てて詫びる。自分も子供の言う事をよく理解出来なくて説明し難いのだと。
「それで、台の上に、このくらいの丸い、真っ黒な不思議な球体がついていたらしくて‥‥」
「このくらいの‥‥」
直径二十センチくらいの円を両手で作りながら、リュミエージュは不意に声を潜めた。
「‥‥子供が、これは何かとディーンに尋ねたら‥‥詳しい事は言えないけれど、これには無数の月の精霊達が宿っていると教えられたらしいんです」
「無数の月の精霊が‥‥?」
理解に苦しむと言いたげに眉を顰めて聞き返すアスティ、――と、その時だった。
「そりゃあ凄かったんだぜ、その兄ちゃんがちょいと呪文を唱えるとな、部屋中に月精霊の輝きが溢れたんだ!」
隣の席から聞こえて来る豪快な男の声。
アスティとリュミエージュは顔を見合わせ、しばし男の話に耳を傾けた。
「おかげでふさぎがちだったうちの娘も元気になってなぁ、俺達ぁそのディーンって兄ちゃんにえらく感謝したもんだ。なのに隣の悪ガキが、兄ちゃんの荷物、持ち出しちまってな! よりにもよって崖の下に、月精霊を召喚するための道具の欠片を落っことしちまった!! これじゃあまるで恩を仇で返すってなもんじゃねぇか。だからな、頼むよ。冒険者の兄ちゃん姉ちゃんに、崖の下からその貴重な道具を拾って来てくんねぇか? 崖の下にゃモンスターがいるってんで、村のモンじゃ手が出せねぇんだよ」
「あの‥‥」
「ん?」
思わず声を上げたのはアスティ。
「そのディーン‥‥さんという男性は、まだ貴方の村に居られるのですか?」
「ああ、もちろんだ。崖の下から、落ちた欠片を取り戻さんと月精霊は召喚出来ねぇって言うし‥‥」
「その依頼、受け付けましょう!」
アスティの目が輝く。
リュミエージュもこくこくと大きく頷く。
「お、おう‥‥? ありがとよ‥‥?」
二人の勢いに圧されるように、依頼主。
こうして彼の村――馬車で四時間程度掛かる村へ、崖の下に落ちたディーン青年の貴重品を取りに行くと言う依頼がギルドに張り出された。
そして依頼書の片隅にはリュミエージュからの依頼も。
どうか、彼を確保してもう一度会わせて欲しい、と。
● 擦れ違う機会
村の男がギルドに依頼を提出してのと同じ頃。
男の村では新たな騒ぎが起きていた。
「ディーンさんは!?」
「まさか一人で崖の下に行っちまったのかい!?」
崖の下に落ちた道具の欠片は、彼が持つアイテムで月精霊を召喚するためにとても大切なもの。いつまでもモンスターがいる崖下に放ったまま助けを待っているのも我慢の限界だったのだろう。
「何てことだい、崖の下にはガヴィッドウッドだっているってのに‥‥!」
村人達は慌てふためく。
しかしモンスターに対抗する手段がない村人達は、ギルドからの救援を待つ他、術は無かった。
●リプレイ本文
●
「では、君が落としたという欠片の事を、もう少し詳しく教えてくれるだろうか」
膝を折り、子供と目線の高さを合わせて問うリール・アルシャス(eb4402)に、子供は緊張した面持ちながらも素直に頷いた。リールが持つ筆の動きを目で追い、こんな形で、大きさはこのくらいでと、記憶の中に残るそれを思い出しながら説明を続けていった。
そんな二人の遣り取りを端で見ていた長渡泰斗(ea1984)は軽い吐息を一つ。
「しかし、先の一件でとっ捕まえた連中が仮にも仲間であった奴の事を知らんとなると、奴さんはハナから『物』が目当てで賊に潜り込んだって事か」
「いえ‥‥そうとばかりも限らないのではないでしょうか」
シルバー・ストーム(ea3651)は口元に手を添えて応じる。
「物が目当てとなれば、彼は賊に潜り込む以前から『それ』が賊の手元にあると言う事を知っていなければなりません。だとすれば彼の身元は、宝が盗まれた村や、其処から賊が立ち寄った地域などを追跡する事で手掛かりを得る事は出来るでしょうが‥‥」
「そうであれば、先に捕まえた連中から改めて話を聞いて来るというのも一つの手か」
さすがに今回は時間の関係もあって其方を回ってくる余裕は無かったのだが、この依頼が無事に終わった後でギルド職員のアスティにその旨を伝えておく事は可能なはず。
「物も魔法の心得が無ければただの飾りか何かだろうから、持ち出された賊連中が価値を理解していたかは判断しかねるが‥‥ま、これも確認してみない事には推測の域を出んわな」
「ええ‥‥」
二人は、今回の依頼に絡む『ディーン』の名前を声に出さないよう気遣いながら、更には声を潜めて語り合った。彼らはこの依頼を受ける以前から『ディーン』の名に聞き覚えがあり、それに絡んでリュミエージュとの縁もある。彼を捕まえる事については異論など毛頭ない。ただ、この村での彼は『恩人』になっているらしいから、疑惑で彼の悪評を立てれば冒険者こそが悪者にされかねないし、ましてや当の本人が村に帰って来辛い環境を作ってしまう事は、再び彼を取り逃がす危険に繋がる。
「しかしまぁ‥‥無茶するっつうか、余程それを人の目に晒したくないのか‥‥手間を増やしてくれる」
まさか村に来て見れば既にディーン本人が崖下まで失くし物を探しに行った後だったとは。
冒険者達は村を訪ねてからの、村人達から受けた説明を思い返しながら溜息一つ。それにしても『月の精霊が宿る珠』か‥‥と難しい表情を浮かべた。
特にオルステッド・ブライオン(ea2449)は、その仰々しいフレーズに一抹の不安を感じていた。
(「‥‥月精霊の力を封印した宝‥‥一介の村の男が持つには大それたものだ‥‥エレメンタラーオーブかもしれんし、調査しておくに越した事はないだろう‥‥」)
以前にセレの地で『地』のエレメンタラーオーブ――地精霊の強い力が封印された宝玉と対面しているオルステッドは、それ一つを守る為に幾重もの防御が施されていた事を知っている。であればこそ賊とも疑われる男に所持させておくのは、と。
(「‥‥しかし、宝を取り戻して再び村に戻って来るつもりならば、自分の荷物をすべて持って出る必要はなかったはず‥‥」)
落ちた貴重品は勿論のこと、ディーンの安全を確保するためにも、同伴した犬達に彼の匂いを覚えさせて追いたいから彼の匂いがする物を貸して欲しいと申し出たところ、村人達も彼がすべての荷物を持って出て行った事に初めて気付いた。
(「‥‥村人がギルドに救援を頼んだと聞いて‥‥逃げ出したか‥‥」)
だとすれば、それはディーンが真っ当な人間ではない証にもなる。冒険者達が村に着いてしまえば逃げ出す機会はほぼゼロに等しくなるからだ。
「‥‥追いつく事が出来るでしょうか‥‥」
不安そうに語るイシュカ・エアシールド(eb3839)に仲間は無言の視線を交わし合う。それはもはや運任せ――。
「ありがとう、よく判ったよ」
リールから上がった声に、一同が視線を其方に向けると、彼女が話を聞いていた子供の頭を撫でている。
「私達が必ず探し出してくるから、心配するな」
「うん‥‥!」
「ご面倒をお掛けしますが、どうかよろしくお願いします」
「ディーンさんを助けてあげてください!」
周りで見守っていた大人達も口々に言う。
そんな人々に見送られて出発しながら、リールは子供から話を聞いて描いた絵を仲間に見せた。
「どうやら手の平に乗るくらいの‥‥長さは五センチ程度、直径は一センチあるかないかくらい。上には小さな凸があって、円柱だったようだ」
「ふむ‥‥?」
「あの子は、そっくりだと。そのまんまだと私の描いた絵を見て言ってくれたのだが‥‥」
リールは困ったように小首を傾げた。
「それは、なんだ?」
羊皮紙に描かれた絵。
子供が正にそれだと語った形状は、しかし冒険者達が見たことのない不可解なものだった。
●
冒険者達は件の崖上に立ち、下方を見つめる。
リールは模造品を作ってどこに落ちるか試してみるつもりだったが、風向きや落ちた方向など子供の話しが曖昧だった点と、実際に落ちたそれが風に流されるほど軽くは無かった事、必ずしも同じ場所に落ちるとは限らないそれを目印にしてはかえって捜索時間を長引かせるという懸念から、この案は実行されない事になった。
代わりに、イシュカが同伴した月人のスノウと、シルバーのスクロール魔法エックスレイビジョンとリヴィールマジックの合わせ技で探索を開始。その間に泰斗は、村人から聞いた、崖上、崖下、双方から別の土地へ行く道順を確認していた。
「道はいずれ何処かへ繋がるもの人の匂いでも追えればあるいは、だが」
難しそうかと首を捻る泰斗に、リールも難しい表情。
「落とした道具の欠片がどのようなものか、子供に話を聞きながら絵を描いている間、ディーン殿と他にどのような話をしたか尋ねたのだが、収穫と言えるような物は何もなかったな‥‥村の方々が月精霊の宿るなんて貴重なものをどうして所持しているのかと訪ねれば『極秘に主様のもとへ運ぶ途中だ』と答えたそうだが」
「‥‥それも何処までが本当か、か‥‥」
オルステッドが息を吐いた。
同時、イシュカもスノウと目配せして切なげな吐息。
「‥‥残念ながら、月精霊の反応はこの下からはしないようです‥‥」
「そうか‥‥ありがとう、スノウ殿」
手掛かりが掴めなかったのは残念だが、精霊の子が力を貸してくれた事にリールが心からの感謝の言葉を告げると、月人の娘は嬉しそうにはにかんで見せ、イシュカの背後に隠れた。子供らしい態度にリールとイシュカは小さく笑む。そして、最後の砦でもあるスクロール魔法を使用中のシルバーに全員の視線が集まった。
崖の高さは二十メートル前後というところか。
鬱蒼と生い茂る緑は下方を覆い隠していたけれど、透視能力を得た彼にはその先が見えている。更には魔法看破の術も重ねてマジックアイテムの反応を探すけれど。
「‥‥魔法の反応はまるでありません」
最初の六分が過ぎ、シルバーは低く呟いた。
「やはり実際に下へ下りてみなければ判らんか」
「‥‥では、少々お待ち下さい‥‥村の外に繋いだトリオを連れてまいります‥‥」
泰斗の言に、イシュカが乞う。村人達を驚かせないために村の外で待たせていたフロストウルフは人の匂いを追うには強力な助っ人になる。そんな相棒を迎えに行くというイシュカを待つこと数十分。この崖近辺も村の領内である事を考えれば人目は常に控えており、懸念する程に時間は経過する。
冒険者達がギルドを出発して、此処まで。
――「ディーン」が逃げ出すには充分な時間だった。
●
崖を魔法の絨毯やクライミングブーツを使用して下りたオルステッドとシルバー。
途中でディーンに遭遇しないかと淡い期待を抱きつつ回り道をして下に降りた泰斗とイシュカ、リール。
上方の人里とは異なり、モンスターが生息すると予め聞いていた土地には何やら陰鬱とした雰囲気が漂っていた。
先に下へ到着したエルフ二人は辺りを見渡して緊張感を高めた。
「‥‥来る」
エルフの耳が捉えた獣の足音にオルステッドは剣を構え、シルバーはダガーを抜く。
迫り来る足音と荒い息遣い――飢えたモンスター。
「!」
茂みから飛び掛ってきた獣に、しかし二人は動じる事はなかった。
オオカミだろうが野犬だろうが、ゴブリンだろうが、射程距離内に入って来さえすればたった一撃。
「‥‥私達の行く手を阻むならば死を覚悟して来い‥‥」
淡々とした口調に反したオルステッドの迅速な剣。
左から薙いだゲイボルグが二頭の獣を両断し地に叩き伏せれば、シルバーは間近まで寄せ付けた獣の腹をダガーで切り裂く。
『ギャンツ!』
大地に落ちた獣が息絶えるのを待つことなく二人の標的は次へ。そうして彼らの回りにはモンスターの死体だけが残り、道を通って崖下から下りて来た泰斗達と合流した時には周囲に静かな気配が漂うだけ。
「お、さすがだな」
泰斗が暢気に二人の活躍を讃えても、もともと表情豊かではないエルフ二人組みの反応は薄い。
「‥‥行くぞ」
オルステッドが皆を促し、森の奥へと歩き始めた。
●
それから何度か獣達との戦闘を経て、彼らは次第にガヴィッドウッドがいると聞いていた地点に近付いていた。幸いと言うべきか村人達も熊がいるという話は聞いた事が無いと言うし、この辺りを仕切っているのがガヴィッドウッドであればそれほど大きな獣は居ないだろうと言うのか地元の人間の見解だった。
「しかしまぁ‥‥これだけモンスターの数が多いのも人が踏み込まない故か」
泰斗がぽつりと零す。
「これだけモンスターが多いと、先に入ったディーン殿は無事なのだろうか‥‥無事だとすれば、彼は余程の手練という事になるが‥‥」
それも、実際にディーンと名乗る男が此処に来ていればの話。
実際、オルステッドのアヌビノフォビアも、イシュカのトリオも自分達以外の人間の匂いを捉えたような反応は一切見せないし、シルバーが同伴した精霊のブレスセンサーに引っ掛かるのもモンスターを始めとする獣ばかり。地面に足跡が残っているということもなく、自分達より以前に誰かが此処に来ている形跡というものがまるで無いのだ。
子供がこの崖下へ落とした物が紛れも無い月精霊の力を宿したものであれば先ほどのシルバーの術に反応を示さないはずがなく、言い換えれば反応が無いのは魔力を得ていないということだ。
それは単なる何かの道具。
月精霊を宿していると言うのは、嘘。
ならばわざわざ危険を冒してまで崖下に来る必要はなく、ともすれば失くした欠片は代えが利くのかもしれない‥‥?
「‥‥ですが、一概に嘘と言ってしまって良いものかとも‥‥村のお子さんが、月精霊の輝きを見て元気を出したと言うのは、本当の事ですし‥‥」
「そうなんだよな」
イシュカの言葉にリールが頷く。
「この奇妙な物体が何か判るだけでも違うんだが‥‥」
言いながら、自分が描いた絵を眺める。
せめて、これの正体が判ればと――。
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それから更に森を進んでも手掛かりらしき物は一向に掴めなかった。
相変わらず人が踏み込んだ形跡は無いし、ディーンの落し物と見られる欠片も見つからない。逆に、足元から伝わる妙な振動を冒険者達の五感は捉えていた。
「‥‥ガヴィッドウッドだな」
「ま、此処まで来て手ぶらで帰るのもなんだしな‥‥親玉退治くらいはしていくとするか」
泰斗が太刀を抜くと同時に、仲間へグッドラックを掛けていくイシュカ。シルバーもスクロールを紐解き、フレイムエリベイションなどで仲間を援護する。
地面を疾走する蔦に足を囚われないよう注意しながら大地を駆け、時に姿を現し胴に巻き付いてこようとするものにはシルバーのファイヤーバードが炎を纏わせて灰と化す。
いずれ見えてくる巨大な老木。
悪しき姿。
太刀の射程圏内に入ったところで泰斗が強烈な一太刀を浴びせ、オルステッド、リールの追撃。
声にはならぬ大樹の悲鳴が大気を震わせ、次第にその余波を弱めていった。
いまこの場に揃った冒険者達の連携に勝てるモンスターなどそうはいない。
抵抗出来た時間など極僅か。
辺りを支配していたガヴィッドウッドは、静かに息絶えたのだった。
●
「‥‥これ、は‥‥」
ガヴィッドウッドの最後を確認していた仲間達の中、不意にリールが声を上げたのは、これまで蔦が蔓延っていた地面に見覚えのある小さな物体が転がっていたのだ。
リールが描いた絵。
それが。
「‥‥蔦に運ばれたのだろうか‥‥」
オルステッドの言葉は、あるいは。
ともあれば冒険者達は、この小さな手掛かりを持ってギルドへの途に着くのだった。