●リプレイ本文
●それぞれの参加理由
ギルドに依頼を張り出したは良いけれど、果たしてこんな内容に人が集まるのかと危惧‥‥いや、呆れていたギルド職員のアスティ・タイラーの反応に、今回に限って言えば「かえでに相談を持ちかけた」という意味の共犯者・滝日向は腹を括った。
「グウ、おまえも連帯責任だ!」
「何で!?」
これは完全なとばっちりだったが、もはや参加は避けられず。
「うんうん、いい感じにイジラレ属性も揃ってきたね♪」と大喜びのかえで。
「お父様、パパ、いまギルドでかえでさん企画のお祭をやるってあったんですの!」
ジ・アースから遊びに来た義娘エヴァーグリーン・シーウィンド(ea1493)の、顔を見るなり言って来た内容に、基本的に宴が好きな精霊の娘も超乗り気。
「参加しましょうよ! それに、スノウが輪の中に入っても良いか聞いてみようねー」
『ねー♪』
二人の娘の満面の笑顔にはお父様ことソード・エアシールド(eb3838)も、パパことイシュカ・エアシールド(eb3839)も逆らえやしない。
もはや強制的に参加する事になりそうなソードは、義娘から詳細を聞いて軽い溜息を一つ。
「‥‥かえで殿、また珍妙な事を‥‥」
イシュカは苦笑。
「‥‥行きましょうか」
二人は肩を竦めて覚悟を決める。
「かえでの考えた遊戯か‥‥」
こちら依頼書を真剣な顔で眺めていた飛天龍(eb0010)は、たまたまギルドで遭遇したリラ・レデューファンと共に次の依頼を検討していたのだが、かえでとは知らぬ仲ではないし、遊戯と聞けば脳裏に浮かぶのはまだ幼いユアンの姿。
「連れて行けば喜ぶだろうか?」
「さて‥‥企画者がかえで殿では不安の方が大きいが‥‥」
聞かれたリラは難しい顔。
しかしどんな内容であれ、親しい面々が揃った遊戯ならばきっと楽しいものになるだろうと二人。セレの地にいる月姫セレネも誘っての参加には、ユアンは勿論のこと石動兄妹も一緒である。
企画者の名に不安を覚えるのは、何も彼らだけではない。
だが、企画当日には思った以上の人数が集まってしまい。
(「リラ殿‥‥やはり参加なのだな‥‥しかし誘ったのが天龍殿では責めるに責められない‥‥!!」)
内心で強烈な葛藤に苛まされて拳を握るリール・アルシャス(eb4402)の参加理由はもしもリラがこれに参加し、かえでの策略に嵌って誰とも知らない相手とあんな事やこんな事をされては堪らないと、そんな展開を阻止するため。一方で姉が参加するならばと自分も参加を決めたモディリヤーノ・アルシャス(ec6278)は、広場でかえでの姿を見かけると挨拶代わりにこんな一言。
「何か、かえで殿って、ある意味‥‥女王様? 結局は皆、乗せられているし」
他意無く微笑むモディリヤーノに、目を瞬かせたかえで本人と、日向と、グウェイン。
しかし数秒後にはグウが頭を抱え、日向はふらつき、かえでは高笑い。
「ふっふっふっ‥‥ふふふっふ‥‥判ってるじゃないのモディ君!! 良いよね、良いよねっ、皆で楽しむ、最高だよねっ! むふふふふふ!!」
「‥‥」
肩をぽむ。
ソードが日向を労った。
●
「アトランティスって本当にお祭とかイベントが多いんだね」
かえでが用意した箱に手を入れながらミフティア・カレンズ(ea0214)が楽しそうに言うのを聞いて、クリス・ラインハルト(ea2004)も笑顔で頷く。
「アトランでの初依頼、楽しくなりそうです♪」
その手には、先ほど箱の中から引いた手の平サイズの石が握られており、書かれた文字は「10」。これは最初の円を組むための位置番号だ。ミフティアが引いたのは「12」番。
「あ、僕達近そうです」
「よろしくお願いします、私はミフティア・カレンズ。ミフって読んでね!」
「こちらこそですよ」
ジ・アースからの参加組にはもう一人。こちらは何というか‥‥何というか。
「なんであんたみたいなお嬢さんが‥‥」
呆気に取られた様子で言う日向に、箱の中の見えない石を選びながらフィニィ・フォルテン(ea9114)。
「たまたま此方の様子を見に来たら、賑やかな集まりが目に入ったもので‥‥、あ、私は三番です」
「‥‥って事は俺の隣だ」
「まあ、奇遇ですね」
無邪気に微笑む歌姫に、何だか申し訳なくなって来る日向だ。
ユラヴィカ・クドゥス(ea1704)やディアッカ・ディアボロス(ea5597)も石を引き終えて円陣の中へ。その中央に居るのは石動良哉。
「なんで俺が最初の鬼なんだよ!!」
「鬼じゃなくて王様だよ、王様っ。心置きなく楽しめば良いんだよ、理性とかすっ飛ばせばきっと楽しいから!」
「それが危ねぇっつってんだろうが!」
良哉とかえでの言葉の応酬がある傍らでは青い顔の石動香代。もちろん彼女も強制参加。
「‥‥一体、どのような遊びになるのか気になりますね」
ジャクリーン・ジーン・オーカー(eb4270)が最後の石を引き終えると、これで全員の順番が決まった。
「グウ、おまえは此処」
「‥‥俺には石を引く権利もないのか‥‥」
「諦めろ、俺達には命令を書く権利もない」
所謂しもべ分の命令権はかえでに没収されてしまい、どんな命令が彼女の持つ箱に増えているのかは、もはやかえでにしか判らないのだ。
「日向殿‥‥何となく、くじを引くかえで殿がずっと王様のような気がするのだが‥‥内容によっては真ん中の方にとっても罰になる可能性があるし」
此処が引き、円陣を組んだ彼らの石を集めて回っていた日向は、息を吐く。
更には。
「リール殿‥‥今頃そこに気付いてはいけない」
「え‥‥」
スッと隣に立つのは、リラ。どうやらリールの隣が、彼の最初の位置らしい。
「これは王様ゲームじゃなくて『かえでdeドン!』だ」
かくして円陣は完成。
中央に王様という名の犠牲者・良哉を配し、その真後ろから順番に香代、ジャクリーン、イシュカ、日向、フィニィ、天龍、リラ、リール。ユラヴィカ、グウェイン、モディリヤーノ、エヴァーグリーン、ユアン、ソード、クリス、ディアッカ、ミフティア、セレネ、そして面白そうだと付いてきた天使のレヴィシュナまで加わって。
「さぁ、かえでdeドン! 開始だよ!!」
悪魔のスタートが掛かった。
●後悔先に立たず‥‥?
かーえで かーえで
きょぉの たのしみ なぁにかな
歌いながら良哉の周りを回る面々、その間にかえでは先刻の数字が書かれた石の入った箱とは別の箱に手を入れて、にやにや。
ごそごそ。
「今日の命令! 肩揉み二十分!」
その命令を聞いた途端に良哉がほっと安堵の息を吐き、歌が終わる。
「担当するのはクリスさんー!」
「僕ですか」
随分と普通の命令に一同の間には安堵と、微妙な緊張感が漂う。
「では失礼しますね」
「ぉ、おう、よろしくな!」
肩を揉むクリスは自然体で「どうですか?」なんて聞いているけれど、揉まれる良哉は不安を拭えない。
(「こんな普通の命令ばかりであるはずがない‥‥っ」)
そう。
そんな内容ばかりであるはずがない。
「ふっふっふっ‥‥」
怪しく笑うかえでの歌は、二十分の肩揉み時間を終え、中央にクリスを。彼女の入っていた場所に良哉を入れて再開。
次に止まったのはジャクリーン。
命令は「王様の長所を三つ言う」だった。
「そう、ですね‥‥」
これまであまり接点のないクリスとジャクリーン。二人は互いに見合ってしばし沈黙。
「‥‥笑顔が愛らしく、物怖じされず‥‥とても前向きな思考の持ち主‥‥だと思います」
僅かしか同じ時を過ごしていない二人だが、それでもジャクリーンはウィルの国が誇る鎧騎士の一人。人を見る目は長けている。
「うわぁ‥‥何だか面と向かって言われると照れてしまいますね」
頬を押さえて赤くなるクリスは、けれど嬉しそうで。
女性二人が場所を交換してゲームは三度再開。
三つ目の命令はリールが「全員分のご飯と飲み物を購入して来る」こと。
四つ目の命令はミフティアが「ペット相手に楽しくお酒が飲める・未成年者はご飯でOK」となり、リールが購入して来たご飯や飲み物を自身が連れて来た柴犬のあんず、火のフェアリーさくらんぼと一緒に食べる。
「嬉しいなっ。食べ物系の指示があたると良いなって思ってたんだよ」
『よ♪』
フェアリーと一緒に、大きな果物を頬張るミフティア。
かえでdeドン!
‥‥なにやら妙に平和で、拍子抜け?
だからかえでもちょっとばかり退屈そう。
「はい、もー次行くよ、次!」
そして五回目。
中央にミフティアを配して始まった歌は、良哉が真後ろで止まった。
命令は「部屋の掃除」。
つまり良哉はミフティアと一緒に月道を渡って部屋の掃除をして来る事になり、良哉が真ん中に戻っての次の指令は、天龍が良哉の「似顔絵を描く」になった。
「‥‥俺が良哉を描くのか」
リールから羊皮紙と筆を受け取り、良哉の正面に胡坐をかいて座ると相手をしばし観察。
「師匠、頑張って!」
ユアンの声援を受けながら羊皮紙に筆を置き、まずは髪型。
(「あぁっ天龍殿、まずは顔の輪郭から始めた方が‥‥!」)
内心で慌てるのはその命令を箱に入れたリールだが、声に出す前に自制。邪魔をしてはいけない。
「ふむ‥‥こんな感じか?」
最後にちょん、ちょん、ちょん、と目、口を描いたら完成。
「良哉だ」
天龍が言えば皆が彼の手元の羊皮紙を覗き込んで、――しばし沈黙。
「‥‥うん、天龍殿は武術を究められれば良いと思うんだ」
モディリヤーノ、軽く自爆。
「これはこれで‥‥味のある、素敵な絵だと思いますが‥‥」
イシュカが口を挟めばソードが肩を引き無言で左右に首を振る。
「おかしいか?」
「いや‥‥別段おかしくは‥‥」
リラが言葉を濁す横からユアン。
「師匠! これ、俺に下さい!」
天龍の腕を掴んでお願いする幼子。
「師匠の絵を家に飾ったら、何だかいつも見守られているように思えるし!」
満面の笑顔で言うユアンに、大人数人が口元を抑えて体をぐるり。
一方の女王様。
(「何でこんなに平和なの!?」)
どうやら後悔先に立たずだったのは、今回はかえでの方だったかもしれない‥‥?
●気付いたこと
次の指令はユアンが天龍の家の「壊れた箇所を修繕する」。
その次の指令は「一曲、唄を歌う」で、王様の背後に立ったのは天使レヴィシュナだった。
「そんな指令で良いのか?」
意味深な視線と笑みをかえでに向ける天使は、その後、参加者ばかりか広場で冒険者達の奇妙な遊戯を見物していた人々までも酔い痴れさせる歌声を披露した。
「はい、次、次」
何だかもう投げやりな雰囲気で次の指令を箱から引いたかえでは、しかし次の瞬間に目が光った。
「来た来た来たーーっ!!」
「っ!?」
かえでの叫びに一同、驚き。
「次の命令! かえでちゃんのセーラー服に着替えること!!」
げっ、と男性陣の顔色が変わり、中央、レヴィシュナの後ろに立ったのは――ソード。
「――」
いや、待て。
それはあれだ、いろいろと。
しかし此処までストレスを溜めて来たかえでは止まらない。
「さぁソードさん着替えてっ! さぁ着替えよう!」
「ちょっ、待っ‥‥」
「拒否るならイシュカさんに着せるよっ」
抵抗するソードに声を潜めて脅したつもりのかえでだが、言った直後に二人して黙る。
「‥‥イシュカさんに着せたら似合うよね、きっと」
「‥‥だろうな」
「それじゃ罰ゲームにならないじゃんっ」
「俺のせいかっ」
って言うか、いつからこれは罰ゲームに。
ともあれ問答無用、こうして女子高生ソードが戻れば途端に参加者達の空気が強張る。ギャラリーも減った。
(「そうだよねっ、最初に無難な命令が出ちゃったら後はカオスが残るよね!」)
かえで、ようやくそれに気付いて復活。
一方のソードは。
「‥‥意外に‥‥その、似合いますね‥‥」
イシュカ本人は慰めたつもりだろうが、そんな事を言われた当人は心に深い傷を負ったとか負わないとか‥‥。
ゲーム再開はセーラー服を着たソードを真ん中に輪が動く。
かーえで かーえで
きょぉの たのしみ なぁにかな
命令は「王様のためにオムレツを作る」こと。
当たったのはリラ。
「リラは料理をした事があるのか? もし良ければ手解きくらいは教えるが‥‥」
「ああ‥‥まぁ、出来ない事は無いんだが‥‥」
天龍が申し出るも、その王様がセーラー服姿のソードでは‥‥なんだ、その。それはともかくこれに安堵したのはリールである。
しばらくして戻って来たリラは、ソードにほっかほかのオムレツを差し出した。
「どうだろうか」
「‥‥美味い」
「それは良かった」
雰囲気はほのぼのだが、各所から起きる咳払い。
(「これだよ、これ! あたしが待っていたのはこの混沌とした空気っ!!」)
だからゲームの再開。
「さぁさぁ次行くよーー!」
リラとソードが場所をチェンジし始まる歌。
回る輪。
「ほーほほほほっ」
命令を引いたかえでが笑うと一同の間に走る緊迫感。
リラの真後ろに立ったモディリヤーノはまさかと顔面蒼白。
「リラさんはモディ君とキス!!」
「――」
これにはリールが絶句した。
「ちょっと待ってかえで殿! 公序良俗に反するものは却下って‥‥!」
「チューくらいで四の五の言わない!」
デーモンかえで降臨中。
「くらいって‥‥っ」
動揺するモディリヤーノは、その時、不意に背後から感じる痛い視線にハッとした。無論、その先に立っていたのは親愛なる姉上――。
「‥‥っ、そ、そうだよ! リラ殿だって僕ときっ、ききき‥‥っ、キスなんて嫌だよね!?」
二人が一緒に嫌がれば、さすがのかえでも諦めるかと思いきや、リラの返答は意外にも。
「私は別に構わないが」
「構わないの!?」
「‥‥そういうルールなのだろう?」
参加した以上はルールに従う、そんなリラは任務を達成すべき情報収集のためなら花街にだっげふんげふん。
いや、ともかくリラはそういう男。
「モディ君が断るならリールさんが餌食になるよー、こんな公衆の面前で「ルールだから」なんて理由でお姉さんにキスさせちゃって良いのかなぁ」
「‥‥っ」
それはダメだと、モディリヤーノだけでなくリールの胸中にも荒れ狂う葛藤。そんな姉弟を見ていて、リラ。
このままでは先に進まない。
引いてはこの遊戯がいつまて経っても終わらないのだと合理的に考える。
「痛くはしないよ」
「えっ‥‥」
リラさん、そこ台詞が違うと突っ込む相手が居なかったのは幸か不幸か。彼に腕を引かれたモディリヤーノは、瞼に掛かった柔らかな金髪に思わず瞳を閉じてしまい。
「――‥‥‥‥っ!」
くいっと顎を持ち上げられ、重ねられた唇。
「‥‥っ!!」
リールからは声にならない叫びが上がり。
「んっ‥‥」
晩生なモディリヤーノには少々刺激が強過ぎたのかもしれない。温もりが離れると同時にふらりと揺れたモディリヤーノの身体は後方に倒れて、それきり。
「‥‥おまえ、どんだけの技持ちだよ」
失神したモディリヤーノを気の毒そうに見遣りながら、日向がリラの後頭部をどついた。
●そうしてゲームはカオスへと?
失神したモディリヤーノと、彼の介抱をするため(?)にリールがふらりと輪を抜けた後は十八人でゲーム再開。
クジを引き、モディリヤーノの代わりにフィニィが中央に入っての十二度目。
出た命令は「ペットを連れて冒険者街を一周」。
王様の真後ろに立ったのはミフティアだった。
「また私?」
小首を傾げながらもペットと一緒の命令ばかり当たるのは、ある意味、幸運なのかもしれない。
ジ・アースからアトランティスに来たミフティアは、相棒達と一緒に観光気分でウィルの国の冒険者街を歩いてくる。
「冒険者街って何処の国でも似たような感じだって思っていたけど、ウィルの冒険者街はちょっと違うんだね!」
竜や精霊達、巨大な生物が多いのは他の国も変わらないだろうけれど、地球というもう一つの異世界と繋がる此処には、ジ・アースでは決して目にしない素材で出来た物品が少なくない。
故に冒険者街には、そういった物も所々で目にする事が出来たのだ。
「とっても有意義な時間だったよ♪」
「それは良かったですね!」
すっかり意気投合しているクリスがミフティアと一緒に笑い、そして十三度目。
ミフティアを真ん中に、真後ろに立つ人物に下った命令は「食事を奢る」。対象は天使レヴィシュナ。
「うわぁミフさん、今度は天使様とお食事ですよ!」
「すごいすごい!」
「ふむ、ではいつが良いかな?」
此方も乗り気の天使と話は盛り上がった。
次の命令は「3分間踊る」。中央、天使の真後ろに付いたのはユラヴィカ。
「踊りならば任せろなのじゃ」
それこそお手の物と言う様に広場の中央でユラヴィカが舞えば、せっかくだからのディアッカの楽の音が添えられる。
シフール達の競演に人々は目を奪われ、三分などあっと言う間。
まだ続けて欲しいという声を聞きながらも十五度目のゲームが始まる。ユラヴィカが「今後怪我をした場合にはその手当てをする」という指令を受けたのはディアッカ。それはもちろんと友は頷き、十六度目、中央のディアッカに「花を捧げる」という指令を受けたのはフィニィだった。
「まぁ‥‥ではディアッカさんには、このお花を」
近くの店から一輪の紫色の花を購入したフィニィは、精霊達と共にディアッカへ花を。
「先ほどの楽の音は素晴らしかったです。いつか、私もディアッカさんの楽の音で歌わせて下さいね」
「‥‥ええ。機会があれば」
花を受け取ったディアッカは、それを伴っていた月人・銀華の髪に挿してやり、それを見たフィニィは嬉しそうに笑う。
「とてもよくお似合いです」
『す♪』
陽霊のリュミィも微笑んだ。
「さぁて、そろそろまたカオスが欲しいよねー」
そんな事を言いながらかえでが引いたのは「広場の真ん中で『はい、あなた。あーんして☆』」という指令。フィニィの後方に立ったのは、イシュカ。
「『はい、あなた。あーんして☆』‥‥ですか‥‥?」
きょとんとイシュカを見つめているフィニィと、戸惑い気味のイシュカ。
そんな二人を見ながら、これくらいは許容範囲だと己を律するソードは、もちろんセーラー服姿。
終わるまでそのまんま。
「‥‥では、失礼して‥‥」
先ほど、リールが全員分を買ってきてくれた食事の中から一品を選んでフィニィの口元に。
「‥‥は、はい、ぁなた‥‥あーん‥‥して?」
「はい♪」
緊張気味にお願いするイシュカと、反して楽しげなフィニィ。
一見平和な、その光景に、一部では花が飛んで見えたとか何とか。
十八番目の指令ではエヴァーグリーンがイシュカの「ちま人形」を作る事になり、十九番目の指令ではグウェインがエヴァーグリーンの翌日の食事を作る事になった。
そして最後、二十番目の指令でグウェインがされる事になったのは、‥‥日向からのプロポーズ。
「「何でだよ!?」」
二人揃って反論するが、かえでは揺るがず。
「日向君がプロポーズしたらゲーム終了だよ? それで解放されるんだから、ほら」
「‥‥っ」
かえで、どこまでも非道。
日向は髪を掻き乱して意を決する。
「誰がだ!? 寝言は寝て言え、っつーか殺す!」
ちーん。
みもふたもない答えで、ゲーム終了。
しかしまぁ、受諾されても困るわけで。
「いっそOKしたグウさんが火達磨になるのとか見たかったんだけどねー」
呟くかえでは若干物足りなそうだったけれど、第一回かえでdeドン! はセーラー服姿の黒騎士と、心に傷を負ったアルシャス姉弟を残して幕を閉じる。
この第二回があるかどうかは、‥‥たぶん誰にも判らない。