美女と野獣
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:月乃麻里子
対応レベル:8〜14lv
難易度:難しい
成功報酬:2 G 98 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月15日〜11月18日
リプレイ公開日:2006年11月23日
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●オープニング
●ゴーレムグライダーとは
風の精霊力を制御して垂直離着陸飛行を可能にした航空機。
攻撃手段はランスチャージや同乗者の弓等しかなく攻撃力には乏しいが、伝令や偵察等に重宝されている。
騎士団以外で所有できるのは数の限られた上級の貴族のみです。
●美女と野獣
うららかに‥‥まどろむような陽光が差し込む庭で、侯爵は何度も自慢の顎鬚を撫でる。
「‥‥素晴らしい‥‥実に、素晴らしい!」
「全く仰せの通りにございます、旦那様!」
「ええ、本当に!」
侯爵とその家臣たちが、先ほどから庭先にて繁々と眺め入っているのは、今朝届いたばかりの『ゴーレムグライダー』である。
「半年も待たせおって‥‥。発注してからたったの2ヶ月で届いた領主もおると聞くに、何故当家では半年も掛かるのか! 馬鹿にするにも程がある!」
常に周りの諸侯にライバル意識を燃やしている侯爵としては、いささか不満も隠し切れないようではあるが、そこは家臣が上手くなだめる。
「まあまあ‥‥旦那様。デブっちょの田舎貴族たちに、このスマートな機体は似合いませぬ。旦那様のように凛々しく気高いお姿にこそ、この機体の美しさも映えようというものです!」
「まあ、それは当然の理ではあるな。ホッホッホ!」
おだてに弱い上司を持つと部下は楽である。
そこへやにわ唐突に弾むようなソプラノの美声が響き渡る‥‥。
「まあ! まあ! まあ! ようやく当家にもゴーレムグライダーが来たのですねっ!」
「おお、我が愛するマロン姫よ。今お目覚めかな?」
「ええ、このグライダーの事を考えると昨夜はさっぱり眠れませんでしたわ!」
マロン姫は、その長いドレスの裾をさっと持ち上げると、軽々と機体の搭乗席に乗り込んだ。
それから、ブロンドに輝くクルクル巻き毛を後ろに束ね、真っ白な手袋をはめた右手を上げて、さながら天使のごとく可憐にキュートに、侯爵に微笑みかけた。
「それではお父様、行って参ります!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥え?」
「‥‥‥‥ランチタイムまでには、戻ってまいりますわあぁぁぁ」
その美しい声が、侯爵の頭の上からどんどん遠退いてゆく。
マロン姫と白い機体の姿がすっかり見えなくなった頃、一同はようやく事の次第を理解した。
***
「そして、姫様はそれきり丸一昼夜、邸に戻られないのですね」
ギルドの職員は、しっかりと現状を確認する。
「はい」
「当然‥‥ゴーレムグライダーも、戻らないと」
「はい。‥‥その通りでございます」
侯爵から使わされた初老の執事が、がっくりとうな垂れた。
「ちなみに‥‥失礼を承知でお尋ねしますが、マロン姫はゴーレムの操縦に関しては‥‥」
「勿論! 姫様は当年できっかり20歳を迎えられ、鎧騎士としての訓練も十分に受けております!」
(なるほど‥‥相当なおてんば姫なので美人でも嫁の貰い手が無いわけか)
貴族の娘であれば、早ければ15歳でも嫁ぐものだ。が、余計な事は言わぬが花。肩を落としている執事を見据えて、ギルド職員は努めて淡々と話を続けた。
「うーん。では、もう一度依頼内容の細かい部分を確認致しましょう」
ギルド職員の言葉に応じて、執事はその白髪混じりの頭を再び持ち上げる。
「お姫様がゴーレムグライダーに乗って飛んで行った方角は‥‥西の森の方角ですね」
「はい、当家の領内近辺ではゴーレムグライダーは大変珍しいものなので、好奇心旺盛の例のシフールたちが、姫様とグライダーの後を付けて行ったらしいのです。昨日森を探索しておりました我々に、シフールたちは詳しい情報をあれこれ提供してくれました」
「なるほど‥‥それは不幸中の幸いでしたね」
「彼らの話によると、西の森の奥深くにある『遺跡』の入り口にグライダーが乗り捨てられていたのです」
「姫は遺跡に興味がお有りなのですか?」
「いえいえ! ただ、姫の好奇心の強さはシフールにも勝るところがごさいまして‥‥」
執事は、やや言葉を濁しながら答えた。
「それにしても‥‥確か、遺跡には守護獣が‥‥」
「そうなのです! あれがいるのです!」
あれ‥‥とはつまり恐獣のことだ。古くから森に住んでいる巨大で獰猛な森の住人であった。
そして、彼らのおかげで遺跡の調査も現状難航を極めていた。
「我々は、守護獣が眠る夜を待って、姫の救助に向かいました。でも‥‥我々を待っていたのは、恐獣だけではなかったのです!」
「武装したカオスの兵隊たちが、遺跡の前で野営していたのですね」
「はいっ‥‥そして、私たちは、その陣の中央にある古木に縛り付けられたマロン姫様を確かに見たのです!」
「武装した兵が相手では、撤退は止むを得ません。あなた方はよく頑張られたと思いますよ」
ギルド職員は慰めるように、執事に言葉をかけた。だが彼はそれには答えず、
「あろうことか、我らが領内にカオス兵たちが侵入して来ようとは‥‥ああ‥‥っ!」
老人はその時味わった恐怖を思い出したかのように、その場にへなへなとへたり込んでしまった。
「お気の毒です」
年若いギルド職員は執事をゆったりしたソファに掛けさせると、自分はさらさらと依頼文をまとめ始めた。
「あっ‥‥そうそう。『姫を無事助け出した者は、その身分に関係なく姫の花婿候補に加える』も書いておかないとね」
●リプレイ本文
●森の入り口〜作戦会議
「とにかく、姫様を早く助けてあげないと‥‥」
と切り出したのはリィム・タイランツ(eb4856)。今回の依頼で真っ先にフロートチャリオットの操縦を買って出た。そこそこ腕に自信があるのだろう。
「ええ、まずは姫を救出することを考えた方がいいわよね。確か‥‥情報によると、姫の位置は陣の中央にある古木ですよね」
と、冷静に状況を確認するシルビア・オルテーンシア(eb8174) 。彼女の言葉を受けて、その場に集った一同がこぞって資料を見渡す。
ここは、姫が囚われている遺跡の森の入り口付近。大型馬車ですでに、バガンも到着済みである。遺跡までの道や森の様子の情報をもとに綿密な作戦を立てている最中だ。資料の中には美しい姫の絵姿もある。
作戦の概要はこうだ。バガンが敵の注意を引いている間に、チャリオットで急襲。その間に別部隊がグライダーを奪還、複数の方向からの襲撃で敵が混乱する中、姫を無事確保し、戦線を離脱する 。
方針が決まったところで、スレイン・イルーザ(eb7880)が口を開く。
「では俺がバガンの操縦者を担当して陽動に回ろう。俺一人では長時間の操縦はできないので、森の奥深くまでは入っていけないが‥‥」
「撤退しやすい場所に留まって大丈夫だ。カオス兵を混乱させ、その隙を突くのが目的だからな」
と、しっかりした口調でトア・ル(ea1923)が返答する。
「姫が無事離脱したら、バガンの退路を絶たれないよう、私たちが援護に回りますわ!」
フローラ・ブレイズ(eb7850)の頼もしい言葉に、スレインが笑顔で頷いた。
「姫の救出だが、グライダーよりチャリオットの方が近づけるようなら、そのままチャリオットに姫を乗せて離脱するのはどうだ?」
トアの問いに、皆の意見を慎重に聞いていたクーフス・クディグレフ(eb7992)が答える。
「そうだな、‥‥だが、追っ手の襲撃から姫を守るには、高度を取れるグライダーの方が安全だ。姫を無事にグライダーに乗せることを最優先に、我々は行動しよう」
「分りました。俺は命がけで姫を安全な地点まで運びます!」
グライダーの操縦を任された音無 響(eb4482)が、胸を張って答えた。 続いて、ペットのグリフォンと共に参戦するアトラス・サンセット(eb4590)が提案する。
「私たちは地上すれすれに高度を保ちつつ、チャリオットのすぐ後をついていきます」
「私は弓で応戦します。ランスを振り回すより、弓で攻撃する方がグライダーのボディに傷をつけずに済むと思うわ」
グライダーを操縦する響を後部座席から援護するシルビアが、そう提案した。
「兎にも角にも‥‥‥‥この作戦は連携が鍵を握るな」
スレインの言葉に一同は大きく頷いて、各自様々な思いを抱きながら夜が明けるのを待った。
●いざ、森へ!〜まずは、グライダー奪還!
明けて朝。チャリオットの操縦席にいるリィムが声を掛ける。
「左右の重量バランスに注意して下さいね。命綱もしっかり結んで! 」
「振り落とされないようにしなくちゃ‥‥」
フローラはしっかとロープを確認する。
「チャリオットは上下の揺れが少ないから、弓だってスピードに慣れさえすれば大丈夫よね‥‥」
「こいつに乗るのは初めてか?」
「ええ‥‥まあ」
不安げなシルビアの背をトアが笑顔でポンと叩く。
「野営地周辺に近づいたら、俺の優良視界を生かして、敵兵が罠を仕掛けていないか探ってみよう」
(今回はゴーレム操縦には関われないが、鎧騎士として一層精進するぞ!)
と、クーフスは気合を入れ直す。
やがて全員の準備が整った後、チャリオットは障害物を排除しつつ慎重に森の奥へと進んでいった。
グウィィィ――――――――――――――ンと微かな機械音がして、チャリオットが空中で静止する。
「この辺りでいいかな?」
ちょうど遺跡の手間辺り‥‥グライダーがこの近辺にあるのだ。響とシルビアが、素早く降りる。
「ようし‥‥んじゃ、私とグリフォンで見張りの目を逸らせます。その隙にグライダーを!」
「了解!」
アトラスの言葉に響たちが速答する。次の瞬間、アトラスを乗せたグリフォンが、チャリオットを飛び越えて敵の目前へ突進した。
「後は宜しくお願いしま〜す!」
アトラスの言葉を受け、チャリオット部隊は、そのまま姫のいる野営地目がけてまっしぐらに飛び立った。響とシルビアは素早くグライダーの位置を確認し、ダッシュした。
グライダーが動くことを確認すると、シルビアは弓を片手に素早く後部座席に乗り込んだ。
「結構風圧来ますから、良かったらこれを‥‥」
響から渡された飛行兜を着用する。
「それから、そこに吊るしてある袋の中身、いざとなったらあいつ等に撒いて下さい。目潰しです」
「響さん、お若いのに気が利くんですね‥‥了解です!」
グライダーは一端高く上昇すると、姫の奪還目指して敵陣へ直進した。
●陽動作戦〜バガン出撃!
「グライダーは無事取り戻せたようだな」
森のカオス兵に気付かれないように入り口付近でスタンバイしていたバガンの操縦席で、スレインが呟く。
(姫の救出は勿論だが、貴重なゴーレムを失うわけにもいくまい。作戦を成功させるには、些細な油断も禁物だ‥‥)
スレインは大きく深呼吸してから、その巨大な石像が歩く姿をイメージする。
「カオスの恐獣部隊め、俺が相手になろう!」
バガンはその機体を震わせながら、ズンズンと堂々と森の中へ踏み入った。
ズオォォォ――ン――――ズオォォォ――ン――――‥‥
と、バガンが巨体を唸らせる。すると、森の動物たちが、その音に負けじと大慌てで騒ぎ出す。その気配はすぐに、森の奥の敵陣にも伝わっていった‥‥。
●姫救出!〜遺跡からの脱出
「恐獣部隊が、バガンの方へと移動し始めたぞ!」
チャリオットの上から、サンレーザーで敵を蹴散らしていたトアが声を張り上げる。
「陽動成功ですね!」
「よっしゃ〜じゃあ、突っ込みますよ〜〜! しっかり捕まって下さいねっ!」
カオス兵が群れているど真ん中に突っ込むチャリオット!
「貴様ら! この女の命がどうなってもいいのか!?」
「知った事じゃない! 僕らはキミらの殲滅に雇われた!」
「なんだとぉぉ?」
リィムはそれでも、敵だけを轢き飛ばしながら古木の手前でチャリオットを止めた。
「今だ!」
「はいっ、では援護を頼みます!」
フローラが颯爽とチャリオットを降りて、姫のもとへ駆け寄った。
フローラを援護すべく、クーフスもチャリオットを降りてサンソードで果敢に敵と戦う。
「姫様っ、もう大丈夫です!」
「あ‥‥あなた方は‥‥」
「話は後です。すぐにここから退却しなければ‥‥!」
姫の縄を解いたフローラは、羽織っていたマントを脱いで急いで姫に掛ける。
「姫――――――――――っ!」
「響さんっ、シルビアさん!」
その刹那、ゴーレムグライダーが敵の壁を破って突貫!
「間に合いましたね!」
シルビアの声が明るく響く。
「ええっ!さあ‥‥もうこれ以上、姫には指一本触れさせない!」
グライダーを一端地上に着け、シルビアと交代で姫を後部座席へ座らせる。
「飛ばします、俺にしっかり掴まってください」
「はい‥‥!」
絵姿よりもずっと綺麗な姫に抱きつかれて、胸の鼓動が高まる響だったが、意識を集中させ、グライダーでその場を急速離脱。
シルビアは援護に駆けつけたグリフォンの背に、クーフスはチャリオットに戻って次の行動へと移った。
「さて! 次に行きますか! 揺れるから注意してね〜」
リィムは巧みな操縦でカオス兵を轢き飛ばしつつ走った。姫を無事に確保したからには、全員早々に退却しなければ‥‥。
敵は易々とは追いつけないが、リィムたちに執拗に鋭い矢が飛んでくる。リィムの傍で敵の攻撃をカバーしていたクーフスが、やにわに倒れこんだ。
「うっ‥‥!」
「クーフスっ!?」
「リィムは操縦に集中しろっ! 俺のはただのかすり傷だっ、なんともない!」
「クーフス‥‥‥‥ちっきしょー! カオス兵の馬鹿野郎がっ!」
リィムを心配させまいと、クーフスは痛みを堪えて立ち上がる。
「さぁ、スレイン卿のもとへ急ごう。彼も懸命に戦ってくれているんだ!」
「バガンの援護に!」
●怒る守護獣〜バガン撤退
「小型の恐獣兵では大きなダメージこそ受けないが‥‥」
恐獣部隊を相手に奮闘を続けるスレインは軽い疲労を覚え始めていた。
「あまり時間が掛かるとまずいな‥‥リィムたちも無事脱出できていればいいが」
そこへグリフォン隊とチャリオット隊が同時に到着。
「お待たせしました〜!」
「陽動作戦は完了だな。では、撤退する」
動きが鈍くなってきたバガンを先に行かせようと、仲間が道を空けたその時‥‥
ウォオウォ――――ン、ワオオオオ――――――――――――ン‥‥
キィエエエィッ、キィエエエィッ、‥‥
と、やにわ森の奥から身の毛もよだつ様な恐獣の遠吠えが轟いた。
「あれは?」
「もしかして‥‥あれが、守護獣ってやつでしょうか?」
「カオス兵たちがめった打ちに‥‥アレに遭遇しなかったのは、つくづくラッキーだったな」
一同は、自分たちの運の強さに感謝した。
こちらは一足先に合流地点についた姫たち。姫の応急手当を終えた響が、ちゃっかり自前のお弁当を差し出していた。
姫が落ち着いたのを見計らって、響が声を掛ける。
「あの、宜しければ、疲れたおみ足をお摩り致しますが」
「まあ、殿方がレディの足を見るのは礼儀に反しましてよ?」
「あ‥‥‥‥」
「響様は、そんな風にいつも女性を安心させて口説いてるのかしら?」
「ご‥‥ごめんなさいっ」
「いいえ、お気持ちはとっても嬉しいわ。お弁当、頂きますわね!」
「はいっ!」
流石に年上の女性は落ち着いている。響の心臓の鼓動は治まらない。
●再び、森の入り口にて
「ごめんなさい‥‥‥‥あの場はあぁしないと皆が危険になったので」
リィムは敵地での無礼を詫びた。
「承知しています。そもそも、ドレス姿などでグライダーに乗った私が軽率だったのです。
しっかり装備をしていれば、カオス兵の5人や10人‥‥」
「‥‥」
「それでも、私のせいで多くの方に迷惑をかけたのは事実です。心からお詫びします」
腕に包帯を巻いたクーフスを顧みて、姫は素直に謝罪する。
「姫様。これからは、一人で遺跡を調べるとか無謀な事はどうかお控え下さい」
とリィム。
「今度気になることがあれば、一人で飛び出すんじゃなくて 、冒険者ギルドを通して仲間を募ったら楽しいと思うよ」
「仲間‥‥ですか?」
「うん。仲間がいれば、今回みたいな危ないことも少なくなるし、‥‥婿探しとでも
言っておけば家も出してくれるんじゃない?」
トアの提案に姫はコクリと頷く。
(やっぱり!?)
主人の目が輝くのをグリフォンは見逃さない。
(貴族で美人で情に厚くて、おまけにあのくそ度胸! やはり姫が『運命のボス』に違いないっ!)
(なるほど、あの姉御が食物連鎖の頂点なんやね)
と、グリフォンも同じく目を輝かせるのであった。
「ところで、花婿候補はどうなったの?」
(活発な感じの美女だな‥‥いい年だが俺が立候補するかな)
(婿候補かぁ〜〜‥‥俺としてはっ、その‥‥姫の気持ち次第で‥‥)
スレインと響が赤面しているのを尻目に、シルビアが威勢よく豪語する。
「誰も立候補しないのなら私が! ‥‥なーんて、冗談よ冗談‥‥って、あれれ? 」
そこへ、白馬を駆って颯爽と登場する騎士が一人。
「マロン姫! ご無事でしたかっ!」
「ジークフリート!!」
皆の前でしっかと抱き合う二人。
「申し訳ありません、姫。西方のカオス軍を抑えるのに手間取ってしまいました。姫の窮地に間に合わぬとあっては、騎士の名折れ‥‥この身の処分は如何様にも受ける覚悟で参上致しました‥‥」
「何を言うのです! そなたが来てくれた‥‥それだけで私は満足です」
「ああ‥‥姫‥‥っ!」
再びしっかと抱き合う二人。
「ジークフリートだって」
「そうですってね」
「お名前もかっこいいですが、お姿も大変見目麗しく‥‥」
「姫さまと超お似合い!」
「パラのカッコ良い男性を紹介してほしかったけど、今話しかけるのは無理っぽいね」
「元気な姫様のお目付け役的ポジションに私をどう?って思ってたけど‥‥必要なさそうですわね」
「姫が独身なのも、ひょっとしてあの騎士のせいだったりしてね」
と女たちが口々に囀る。
「そんなことより‥‥あれをどうするかだ」
ふと、トアが後ろを指差した。
その先にはがっくりと項垂れる男たち。
婿候補に名乗りを上げたところで、ライベルは少々手強過ぎるようだ。
「ま。作戦は大成功だったわけだし! 街に戻って、皆でぱーっと行きましょうよ!」
女たちに背を押され、ラブラブの姫と騎士をその場に残して、冒険者たちは静かに戦場を後にするのであった――――。