恐獣大襲撃〜砂漠篇

■ショートシナリオ


担当:月乃麻里子

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:5 G 39 C

参加人数:10人

サポート参加人数:2人

冒険期間:08月26日〜09月03日

リプレイ公開日:2007年09月01日

●オープニング

「最近砂漠の方じゃカオスの恐獣どもは暴れてないみたいだな」
「ああ、でかい声じゃ言えねーが、俺ら傭兵は戦地に行けてなんぼだからよー。これじゃお飯食い上げだよなあ」
「おいっ‥‥声、でかいっ!!」 
 と、冒険者ギルドの片隅で溜息を吐いている諸君に朗報‥‥もとい、情報である。
 暫く沈黙していた砂漠で再びカオス勢が活発化。なんとあの、大型恐獣アロサウルス3頭を従えたカオス恐獣部隊が山裾にある集落を襲って大暴れしているらしい。
 場所はティトルを北上し、さらにサミアド砂漠を北に進んだセルナー領との境にある山脈の手前の荒野との事。
 詳しい地形の情報があまり無いのだが、事態は急を要するのでともかくゴーレム部隊の出動要請が王宮より冒険者ギルドに出された。

「金属ゴーレムは強襲揚陸艦に乗せ、モナルコスはリネタワと分けて運ぶ事になる。まだ避難しきっていない住民もいるだろうから、付近の状況をしっかり把握した上で
大型恐獣との戦闘に踏み切って欲しい」
 小柄ながらも恰幅の良い隊長はそこまで話してから、顎鬚を無造作に弄った。どうやら彼の癖のようであった。
「諸君も知っての通り、アロサウルスは強敵である。まともに攻撃を食らい続ければいかにタフなゴーレムと言えども破損は免れない。
だが、カオス勢力との戦いは今後も続いてゆく――ゴーレムは対カオス戦の貴重な戦力なのだ。よってどれだけこちらの負傷を軽減し敵を素早く殲滅出来るかが鍵となろう。
健闘を祈る!」
 つまり――存分に暴れるのはいいけど、まあ、出来ればなるべく壊さないようにしてね。と言う事である。


■依頼内容:サミアド砂漠北部の山裾の荒野で暴れているカオス恐獣部隊を殲滅。付近の集落の民を無事避難させる事。

【敵兵力】
・カオス大型恐獣 アロサウルス3頭
・カオス中型恐獣部隊 1個群(ディノニクス5頭)
・歩兵少数

【使用可能なゴーレム】
・グラシュテ級又はアルメイラ級アイアンゴーレム 1騎
・モナルコス 6騎
・グライダー 2騎
・チャリオット 1騎
・騎兵少数
・輸送艦リネタワ
・強襲揚陸艦グレイファントム

●今回の参加者

 ea1911 カイ・ミスト(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea8773 ケヴィン・グレイヴ(28歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb4077 伊藤 登志樹(32歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4155 シュバルツ・バルト(27歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4257 龍堂 光太(28歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4532 フラガ・ラック(38歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb8297 ジャスティン・ディアブローニ(38歳・♂・鎧騎士・人間・メイの国)
 eb8388 白金 銀(48歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb9700 リアレス・アルシェル(23歳・♀・鎧騎士・エルフ・メイの国)
 ec1370 フィーノ・ホークアイ(31歳・♀・ウィザード・エルフ・メイの国)

●サポート参加者

シュタール・アイゼナッハ(ea9387)/ 楊 書文(eb0191

●リプレイ本文

●作戦会議
「正面から殴り合うにも、まず足場を固めていかないといけませんからね」
 皆よりも一足先に戦地の状況を調べに向かったケヴィン・グレイヴ(ea8773)率いる斥候隊がグレイファントムに戻った所で、カイ・ミスト(ea1911)は再度作戦内容を確認する。艦は伊藤登志樹(eb4077)の提案で、今現在は集落から少し距離を置いた敵の死角である山陰側に潜んでいた。
「住民のうち動ける者は比較的安全な山中へ逃げているが、体力の無い者や怪我をしている者がまだ集落に残っている。彼らを動かすには多少人手がいるな」
 ケヴィンの言葉に相槌を打つと、カイは先を続けた。
「ではアロサウルスはゴーレム隊に任せ、私は騎士団と共に残った住民の避難誘導を行ないます。避難が完了次第、我々もカオス兵の殲滅に当ります」
「恐獣どもはグライダーとこのグレイファントムでがっちり住民から引き離すから任せておけ」
「待っておれカオス共! じきに黒焦げにしてくれるわっ! 」
 グライダーを担当するシュバルツ・バルト(eb4155)の背中をフィーノ・ホークアイ(ec1370)が興奮気味にバシバシと叩く。外は雷使いの彼女にはうってつけの曇り空であった。
「と言っても、戦力の大半は輸送艦の方に乗っているわけだから、カタパルトがあるこの艦から僕が先に出撃して展開までの時間を稼がないとね」
 と、今回はアイアン級のゴーレムに乗る龍堂光太(eb4257)がやや緊張した面持ちで語った。どうせならカッパー級のが頑丈なんだけどなぁ‥‥と彼が思ったかどうかは定かでない。
「フロートシップの火力を使ってアロを一体でも撃破できれば後が楽ですが」
「アロ三匹にディノ五匹って‥‥また一杯居るねー。兎も角がんばって助けて敵を全滅させないと。がんばろ――っ!」
 少し心配そうに腕を組むフラガ・ラック(eb4532)の肩を今度はリアレス・アルシェル(eb9700)がポンポンっと叩く。最後に射撃戦法について友人から詳しく教わってきた白金銀(eb8388)が艦内のバリスタを受け持つケヴィンや操舵手に細かな説明を行なっていたようである。
「目標とする敵を中心として周囲上空を旋回しつつ射撃を浴びせる。これは対ガス・クド用として用いられた戦法の一つだそうです」
 尤も、味方に誤射してしまっては元も子もないので、これは射撃手や操舵手の腕が試される戦術とも言えるだろう。

●狙撃手と雷使い
 先鋒で出撃したグライダーからの合図を確認した後、グレイファントムはカオス恐獣部隊の進路を塞ぐようにしてアイアン級のグラシュテを降ろし、その後直ちに浮上した。間もなく、後方のリネタワからも速やかに仲間のモナルコスが出て来るだろう。
 ゴーレムに気付いた恐獣部隊にグレイファントムから火の玉と矢の雨が襲い掛かる。ケヴィンは優良視力とシューティングポイントアタックの技を駆使してデイノニクスの動きを封じる。バリスタの矢を2本食らったデイノニクスは体を横転させて動かない。一方タフなアロサウルスは、精霊砲を1発くらい受けても平気で暴れまわっている。どうやら精霊砲は火球直径が大きく効果範囲が広い分、威力自体はバリスタの方が上のようである。
「あんちくしょーは、でかいだけの事はあるな!」
 グライダーを駆るシュバルツの背後で悔しそうにフィーノが叫んだ。
「ゴーレムと格闘になってからでは味方を巻き込んでしまう。今のうちに‥‥」
「分かっとる!!」
 フィーノは慎重にトルネードを詠唱する。体長12mの巨獣アロサウルスを巻き上げられるか試したかったのだが、専門レベルでも奴はびくともしなかった。流石に巨獣――。
「くそーっ!!」
 フィーノが空で悔しがっている間に地上では人型ゴーレムと恐獣の格闘戦が火蓋を切っていた。アロサウルスを相手にするだけでも大変なのに、デイノニクスにまで纏わり付かれてはゴーレムは動きが取れない。
 フィーノは慌てて高速詠唱トルネードでこの中型恐獣を巻き上げた。横転している恐獣をケヴィンがバリスタで確実に狙い打つ。これは操舵手との呼吸も必要な高度な作業である。
「相手を混乱させるのがこちらの仕事だ。前衛の連中が上手く戦える様、敵に余裕を与えないようにしないとな」
 グレイファントムの中で、彼は狙撃手として懸命に後方支援の役目を果たそうとしていたのである。
 一方、雷使いのフィーノは戦法をヘブンリィライトニングに切り替えた。彼女は間合いを見計らってゴーレムと交戦中の大型恐獣を狙って雷を落す。即座に倒れる事は無くとも、ダメージは蓄積されてゆくものだ。3度の雷攻撃を食らってふらついたアロサウルスの脇腹へ、フラガがゴーレム剣を深々と突き立てた。

●アロサウルス戦
「さてモナルコス、今日もがんばろうねっ」
 ロングソードを二本持った二刀流モナルコスに搭乗するリアレスは目の前にいる巨大で獰猛な敵を見据えて気合を入れた。相方の銀は大き目の盾と小回りの利く剣を携えている。やがて銀がおとりとなって大型恐獣を挑発した。向かってくる敵の牙攻撃を盾を翳して必死に受け止める。と、そこへリアレスがダブルアタックで打って出た。
「いてまえー!」
 果たして彼女の双剣はアロサウルスにかなりのダメージを与え得た。そして、彼女がほっとした瞬間――まさにその瞬間にキレたアロサウルスが血走った眼でギロリと彼女を睨み付けた。
「きゃ――――――――!!」
「リアレスさんっ!!」
 次の瞬間、リアレスの剣は目にも止まらぬ早さで恐獣の顎下から頭部へと深く突き抜け、恐獣は唸り声も上げずに大地に倒れた。レディを睨むのは良くないのである。
 一方、登志樹と光太も奮闘していた。
「うう‥‥もっとしっかり剣道をやっておけばよかったな‥‥」
「しっかりしろ、光太! もうちょいだっ」
「ああっ、ここで引くわけにはいかないんだ!」
 思えば二人とも地球人であった。遠い異世界からやって来て古代の生物だと思っていた大恐獣と戦う事になろうとは――と、光太がふと足元をふらつかせた刹那、アロサウルスの強靱な顎がゴーレムを砕こうと襲い掛かった。だが、同時に脇から登志樹が盾を構えたままで思い切り敵の腹に突っ込んだ。アロサウルスが登志樹に噛み付こうとして瞬時に体勢を変える。
「今だっ、光太! 刺せ――――ッ!」
「オオッ!!」
 光太は恐獣の長い尾の攻撃を巧みにかわすと、恐獣の首にしがみつき、後頭部から喉へと剣を突き立てた。痛みから思わず反り返る恐獣の胸部に今度は登志樹が剣を突き刺す。鮮血が迸り、モナルコスの鎧は見る見るうちに血に染まった。大恐獣は沈黙した――。

●デイノニクス戦、そして‥‥
 さて、大型恐獣を倒されてはさしものカオス勢も勢いを失い、逃げ腰の彼らを住民の避難を終えたカイが騎兵と共に追い立てた。5頭もいたデイノニクスも残るは1頭だけである。
「見せてやろう。ウィルの鎧騎士の能力を」
 このデイノニクス戦ではバリスタや魔法と同じくシュバルツも目覚ましい活躍を見せた。彼女は危険を避ける為にフィーノをフロートシップに戻し、単独で飛行していた。
 そもそもグライダーは人型ゴーレムほど頑丈には造られていないので、恐獣の爪や牙の攻撃を食らえばそう長くは戦えない。だが彼女は高い回避技術と操縦の腕でそれらをかわしつつ、効率よく恐獣の乗り手を狙っていったのである。
「将を射らんとすれば馬を射よと言うが、こいつ等に組織的に動かれてはかなわんからな」
 そうしてシュバルツは最後の乗り手を倒し、デイノニクスは砂漠の彼方へ駆け去った。
 この間、戦闘馬に騎乗したカイは大長刀を振り翳しながら騎士団の騎兵を統べて敵の歩兵らを残らず一掃していった。

  **

「もうちょっと鍛え無いと拙いなぁ‥‥モナルコスだけじゃなくて、ゴーレムももっと強力な機体がロールアウトしてくるし」
「リアレスさんはよくやりましたよ。私ももっと頑張らねば」
 リアレスと一緒に戦った銀は爽やかにそう答えた。
「なんとか敵は撃破出来たようだが、皆さん機体の状態はどうですか?」
 一息ついた所でフラガが尋ねる。
「ぱっと見た感じでは思ったほどには傷ついて無いように見えるが、ただ‥‥盾と剣が‥‥」
 ゴーレムを見上げながらカイがふと言葉を濁した。確かに鎧の一部を含め、血まみれの盾や剣には刃こぼれや歪みが見られた。
「これだけで済めば上等だわっ! はーはっは!」
 実はフィーノの眼には僅かなゴーレムの歪み具合もつぶさに映ってはいたのだが、あえて口にしない彼女であった。
(技術屋としては整備が追いつくのか心配ですが‥‥)
 天界人銀の心中に不安が過ぎる。カオスの脅威はまだまだ続くのだ。