【第三次カオス戦争】東進恐獣兵団阻止作戦
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■ショートシナリオ
担当:月乃麻里子
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:5 G 47 C
参加人数:10人
サポート参加人数:2人
冒険期間:10月27日〜11月02日
リプレイ公開日:2007年11月02日
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●オープニング
●ギリア破砕軍
『十の虎』の一人が首長を勤めるカオスニアン部隊で『ギリア破砕軍』という部隊の存在が確認されている。
兵の数はおよそ300名ほどと目されるが、実はその殆どが中〜大型恐獣で組織されているので兵力値は有にその3倍はあり、実質的な耐久力は5倍だとも言われている。
そして、彼らの合い言葉は――――『損害にかまわず前進せよ』。
つまり彼らの主目的は敵軍に痛烈な打撃を与え続けることにある。
●東進恐獣兵団阻止作戦
『ギリア破砕軍』が戦線を東進している。敵は文字通り損害にかまわず前進し、その圧倒的な耐久力でメイの国の戦線を崩壊させている。
この部隊は都市リザベ攻略を他部隊に任せて、自身はティトルからその先のナイアドを目指して進軍中と思われる。よって我々は彼らが港湾中継都市であるティトルに入る前に何としても彼らの動きを封じてこれを打破しなければならない。
『ギリア破砕軍』の現在地はリザベ〜ティトルの中間点付近であるが、リザベの詳しい戦況は不明であり、ゆえにリザベからの援軍は期待出来ないだろう。
「迎撃地点にはシルバーゴーレム及びカッパーゴーレムを積み込んだ大型戦闘艦ナロベルで向かう。又、ストーンゴーレムやチャリオットの使用も許可されているので、必要であれば申請して欲しい」
と冒険者を前にして騎士団の隊長が声を上げる。
「ゴーレム乗りじゃなくても参戦して構わないんだろ?」
と、話を聞いていた大柄なジャイアント族の男が尋ねる。
「勿論だ。腕に覚えのある者は是非にも参加して欲しい。冒険者内で乗り手がつかなかったゴーレムには騎士団の鎧騎士が搭乗し、任務の遂行に当たらせてもらう。尚、ナロベルで同行する騎士団の騎兵隊は敵の大将を討つ事を主眼に置いている。生身の体で100以上もの恐獣を相手には出来んからな。よって騎乗出来る弓兵を含めて精鋭部隊を組ませてもらった。また、今回敵は空の戦力を持ち合わせていないから、ナロベルが活躍できる場も多いだろう」
隊長が言い終わるや否や、今度は刈り上げ頭の恰幅の良い傭兵が勇ましく叫んだ。
「よっしゃ! 大した役には立てないかもしれねーが、幼い子供とかーちゃんがナイアドで俺の帰りを待ってるんだ。これ以上奴らを東に行かせはしねえっ!!」
「ああ、当然だ。僕は剣は握れないが食事の支度や伝令や雑務なら手伝えると思う。僕も参加させて欲しい!」
と見るからに大人しそうな青年が、傭兵たちに混じって声を上げた。彼はティトルの市民であった。
敵が国内へと進撃を始めた今、市民までもが立ち上がろうとしているのだ。
騎士団の隊長は傭兵以外の一般市民にはあくまで後方支援として騎士団に協力してもらうと断りを入れてから後、声を張り上げてこう締め括った。
「我等の任務は限られた兵力で敵を迎撃し、これを撃破する事。もしこれが叶わなければ、王都を含めたメイの国全土が深刻な状況に追い込まれる事は必須である。我等騎士団を含め冒険者諸君の奮闘に期待するっ!」
■依頼内容:東進してくる『ギリア破砕軍』を迎え撃ちこれを撃破する。
・敵の大将を討てば勝敗は決するが、恐獣部隊はいくつかの小隊〜中隊に分かれており、大将は部隊の後方からそれを統括していると思われる。
【使用可能なゴーレム】
・大型戦闘艦ナロベル
・シルバーゴーレム
ヴァルキュリア級 1騎
トール級 1騎
・カッパーゴーレム
オルトロス級 2騎
・他ナロベルに搭載可能なストーンゴーレムやチャリオットについては希望による。
※冒険者に任される随伴兵力は、兵員約100名。
※ゴーレム弓の使用も可能。
●リプレイ本文
●ナロベル発進
「ティラノサウルスは確認出来ませんでした。これで少しはこちらにも勝機が出てきましたね」
サイレントグライダーで夜間偵察を終えて戻ったイェーガー・ラタイン(ea6382)の無事な姿を捉えて冒険者たちは安堵の表情を浮かべた。同機を操縦していたシュバルツ・バルト(eb4155)はこの後もゴーレムに搭乗するので、暫しの仮眠を取った。
「やはり奴は長距離遠征には向かないって事か」
と、かつてこの大恐獣に苦戦を強いられた経験のある龍堂光太(eb4257)が言葉を繋いだ。ティラノサウルスは恐獣部隊にとって最強とも言える兵器だが、そのでかい図体を運ぶにはゴーレムシップなりフロートシップなりが必要なのだろう。といっても輸送中にティラノが暴走して自滅という報告も複数上がっているので、とても確立された輸送手段とは言い難いが。
「それでもアロやデイノニクスの数は半端じゃありません」
「損害を考えずに敵国を荒らす軍団か。迷惑極まりない戦法よな」
それまで話に耳を傾けていたシャルグ・ザーン(ea0827)が口を開く。するとその横からベアトリーセ・メーベルト(ec1201)も声を荒げた。
「命知らずな皆さんばかりですよねー。交戦規定でゆくと大将が無事な限り戦闘続行ですので、きっと自分の部隊でも壁にしますよ、壁にっ!!」
「久々の大一番とは言え敵が敵だけに油断大敵か‥‥。それじゃ、偵察隊の報告を元に最終の詰めを始めるとするか!」
陸奥勇人(ea3329)の掛け声に冒険者が頷いた。
兵法の心得のあるシャルグと勇人を中心に敵軍の行動予測が割り出され、ティラ・アスヴォルト(eb4561)とリアレス・アルシェル(eb9700)はモナルコスに騎乗する騎士団の鎧騎士たちにも細かな指示を与えた。
「なるべく被害は出さないようにしたいけど、相手が相手だし厳しい戦いになりそうね」
場合によっては自分の判断のみで敵恐獣に立ち向かわねばならない事を鎧騎士たちに告げるティラの表情が不安で一瞬曇るが、そこは天真爛漫なリアレスが明るく答えた。
「出来れば二機連携しつつ、全機で声を掛け合い隙を作らないよう協力し合おうね! 私達は『損害を出さずに打倒しよう』だよ。皆揃ってメイディアに帰るんだ!」
「そうだな、俺は少しでも厄介な連中を倒すことに専念するかな。モナルコス同士、よろしくな」
スレイン・イルーザ(eb7880)はそう言って初顔合わせとなる若い鎧騎士の肩をポンと叩いた。
「皆さん、そろそろ夜が明けます」
ナロベルのブリッジに水の魔術師イリア・アドミナル(ea2564)の済んだ声が響くと、やがてナロベルはゆっくりと高度を落し始めた。
●ゴーレム隊強襲
ナロベルは敵部隊の約2km手前でまず騎兵隊を、約1km付近手前でゴーレム隊を降ろしたのち、単身前方の敵へ突っ込んで一斉砲撃を行なった。火力及びバリスタ隊の指示系統を一手に請け負ったのはイェーガーであった。彼は夜間の偵察時に視認出来なかった対空兵器の存在を懸念していたが、ギリア破砕軍は一切の対空兵器を持たなかった。これは一つの目的地を陥落させるという意味合いを持たない、まさに『破砕軍』ならではの姿だったかもしれない。
やがて敵に強烈な第一波を与え終えるとナロベルは敵上空をフライパスし、それと入れ替わるようにゴーレム隊と騎兵隊が敵陣へと雪崩れ込んだ。
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「さて、メイのゴーレムの性能とやらをたっぷり見せてもらおうか」
前方から迫り来るアロサウルスの軍団を見据えながら、トール級シルバーゴーレムに搭乗したシュバルツは盾とモーニングスターを構えた。夜間にグライダーを操縦した疲れはもう残ってはいない。いや、この想像を絶するような修羅場に降り立った彼女の気力がそれに勝ったのかもしれなかった。
それに加えて銀ゴーレムの攻撃力は十分に彼女の期待を上回った。彼女は恐獣を操るカオスニアン兵を片端から落すつもりで武器を選定したのだが、その鉄球は僅かな手数だけで操縦者のみならず大型恐獣にもダメージを与え得た。だが、それでも敵は数で押してくる。
「工房の調整が間に合って良かったわ!」
ティラは次々と突進してくる恐獣をその大きな盾で遮った。ゴーレムブロッカーは対ゴーレム用の巨大盾だが、持ち手部分をしっかり調整さえすればゴーレムの武具にもなり得る。オルトロスに搭乗した彼女は大型恐獣の足を狙ってゴーレム剣でポイントアタックを放ち、的確に敵の勢いを抑えていった。
一方銅、銀ゴーレムより機動力で劣るモナルコスは先行して大型恐獣に挑む彼女らに追従し続けるにはいささか無理があった。だが、スレインとリアレスは騎士団のモナルコスを上手く補佐しつつ、互いに連携を取り合って奮闘していた。
「リアレスっ、騎兵隊が!」
スレインの叫びにリアレスが振り向くと、前方へ斬り込む予定の騎兵隊がすばしっこい中型恐獣に遮られ苦戦を強いられていた。馬と恐獣ではあまりに分が悪いのだ。
「あのままじゃ大将首を取るまで持たないよー! 勇人さんっ、騎兵隊を一旦離脱させるね!!」
風信機を通じてナロベルにいる勇人にそう告げると、モナルコス隊は騎兵隊を一度恐獣の群から逃がすべく壁を作った。とそこへ、前方から大型恐獣を薙ぎ倒しながら電光石火のごとくヴァルキュリアが現れた。
「凄いねー、この機体は!」
と、ヴァルキュリアの足の速さに制御胞の中で思わず光太が叫ぶ。
「遅れてごめんっ、僕もカバーに入るから早い所この煩い奴らをやっつけよう!」
「なるほど、慎重かつ大胆に‥‥とはよく言ったもんだ!」
スレインのセリフに思わず光太が笑う。それは光太のオハコであった。
「こいつらを絶対にティトルには行かせない。行かせるもんか――――っっ!」
アロサウルスの顎目掛けて槍を突き上げるリアレスの声が戦場に木霊した。
●魔法砲台
恐獣の大軍とゴーレム隊が激しくぶつかり合う中を前進する装甲チャリオット、パンターIIにはイリアが乗り込んでおり、そして彼女の進路を守るようにベアトリーセが操るオルトロスが剣と盾で終始恐獣共を撃ち、追い散らしていた。
「大将攻めでオルトロスに搭乗すると勝ち戦続きで縁起がいいんですよ〜。ほんとですよっ☆」
「はい! 人々の笑顔を守る為にも、この戦争に必ず勝ちます! ベアトリーセさん、詠唱に入りますから巻き込まれないよう注意して下さいっ!!」
前方射程内に味方がいない事を確認した後、イリアはアイテムで魔法の成功率を上げて超越級の攻撃魔法を唱え始める。まさに移動する魔法砲台であった。
「終焉の吐息、永久の眠りを齎す息吹よ、嵐となりて抱擁せよ――。アイスブリザ――ド!」
突如巻き起こった猛吹雪の中で中型恐獣は次々と倒れてゆく。二度目の超越魔法は不発だったが彼女は怯まずに難易度を下げて攻撃魔法を連発し、敵の混乱が拡大した所でムーンアローを放った。敵軍の白髪、赤目の大将ク・レドの居場所を突き止める為である。
この状況を上空でつぶさに偵察していたグライダーは敵司令官の隊を確認後、直ちにナロベルに帰還した。
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大将を捕捉したナロベルは再度攻撃に転じた。敵の側面から再び精霊砲とバリスタの雨を降らせるのだ。
「これより突入用の道を抉じ開けます! パンター改の発進準備、お願いしま――すッ!」
イェーガーの号令に応じて精霊砲が唸りを上げる。大将首まであと一歩だ――。
「ここまで皆に頑張って貰ったんだ。最後まできっちりやる事やらねぇとな!」
勇人の言葉にシャルグが深く頷く。チャリオットに搭乗して大将を狙う二人を乗せたパンター改は砲撃後高度を下げたナロベルから速やかに発進した。
「来ましたよ〜〜っ! 勇人さんたちのチャリオットです!」
と、各ゴーレムに積まれた風信機にベアトリーセの元気な声が伝わった。
いかにタフな金属ゴーレムといえども大型恐獣相手の連戦――恐獣の壁また壁――では搭乗者の精神的疲労が蓄積される。だが、
「さて、ここが正念場ね!」
ペットボトルに入れたハーブティを喉に流し込んだティラが更に声高に皆の士気を高めた。
「このトール級ゴーレムに、恐獣の100や200は敵ではないっっ!」
シュバルツがモーニングスターで恐獣を脇腹から殴り倒すその側を、パンター改が駆け抜けた。
●大将首
「ここまでやって来るとは大した奴らだと一応誉めておこう。だが、所詮はここまでだ」
大柄なカオスニアンはシャルグと勇人を前にして、口元に笑みを浮かべながらそう豪語した。
パンター改が大将の陣営に到達した時点で、大将の部隊は恐獣部隊の大軍からほぼ孤立した状態にまで追詰められていた。先に本隊を離れた味方の騎兵隊が恐獣部隊との接触を避けつつ移動し、パンター改が降下したと同時に敵の大将目掛けて再び本隊に合流したのだ。
目印は光太の乗るヴァルキュリアである。足の早いヴァルキュリアが向かう先に大将がいると悟った指揮官は隊を導いた後、兵に一斉に弓を引かせて、純金の扇の馬印を取り囲んでいる恐獣のカオス兵を片っ端から射落とした。と同時に、操縦者を失ってなおも暴走する恐獣の体をヴァルキュリアがその勇ましい剣で貫いていった。
「お前がギリアの大将か。この期に及んで影武者とか言うなよ?」
「白髪赤目の将はここにいるカオスニアン全てを見渡してもわししかおらんわ。だが、負けるのは貴様らだっ!」
デイノニクスに騎乗するク・レドから素早く振り下ろされた槍をシャルグはオーラシールドで受け流し、続けて恐獣の足めがけてラージクレイモアでスマッシュEXを叩き付けた。
「わしの槍を受けただとぉ!?」
「その首‥‥貰ったああ――――!!!」
ほんの一瞬の隙を突いて真紅の魔槍が勇人の手から放たれる。
「ぐっ‥‥ぐわああああぁぁぁッ!」
長槍に見事なまでに身体を貫かれ恐獣の背から転げ落ちた大将目掛けて狙いを定めたシャルグの直刀が、空を切って振り降ろされた――。
●勝利
「御大将が首、我等が討ち取った――!」
シャルグが高らかに声を張り上げ、ゴーレム隊や騎兵が勝鬨をあげる中、イェーガーは単身ペガサスのふうに乗って敵の状況を上空から査察した。薬物で暴走する恐獣が出るのを懸念しての事で、彼は特に撤退する騎士団の騎兵に襲い掛かろうとする恐獣を弓矢で牽制した。
又、光太が危惧した通り、傷を負い討ち捨てられた恐獣たちはメイの国を脅かす害として残り、西方へ逃げ落ちた多数の恐獣部隊は依然カオス勢力の脅威として残存した。
それから純金の扇を嬉しそうにナロベルに持ち帰ったリアレスが、KBCのジョゼフにこれを届けたかどうかは定かでないが、ジョゼフはいたく彼女を気に入った様子であった。
そうして、冒険者の活躍によって『ギリア破砕軍』は事実上壊滅したのである。
尚、冒険者諸氏には精竜銀貨章が授与された。