【第三次カオス戦争】中継都市ティトル防衛

■ショートシナリオ


担当:月乃麻里子

対応レベル:8〜14lv

難易度:やや難

成功報酬:5 G 47 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月30日〜11月05日

リプレイ公開日:2007年11月05日

●オープニング

●ケーニス翼竜隊
 『十の虎』の一人が首長を勤めるカオスニアン部隊で『ケーニス翼竜隊』という部隊の存在が確認されている。
 兵の数はおよそ140名ほどだが、その全てが中型翼竜組織で編成された完全な航空兵力部隊である。
 彼らの主武装は搭乗者の弓のようだが初期の木造フロートシップを悩ませた火炎瓶を搭載しているとの噂もあり、又、中型翼竜(多くはプテラノドン)のチャージングを巧みに咬ませた強力な嘴攻撃の破壊力もこれらの武器同様に決して侮る事は出来ないだろう。
 グライダーで翼竜と戦った経験がある者は熟知している事実だが、グライダーはゴーレム兵器といえども人型ゴ−レムほど頑強には作られておらず、体力比では圧倒的に翼竜に劣っている。よって恐獣の攻撃から受けるダメージは思いの他グライダーに蓄積されるので、操縦者は注意が必要である。
 尚、これはKBCからの追加情報となるが、『ケーニス翼竜隊』について言えば魔術師が同乗しているケースは報告されていない。優秀な魔術師の数は限られているし、恐らく『数で押す』のが特徴のこの部隊には配属されていないものと思われる。

●中継都市ティトル防衛
 西方防衛帯が突破され、カオス勢力の侵攻は東方中部まで拡大した。
 そのうちの『ケーニス翼竜隊』が現在、港湾中継都市のティトルの目前に迫っているとの情報が入った。ティトルには多くの市民も残っており、我々は総力を挙げて何としてもカオス勢力から都市を守らなければならない。

「味方の守勢は約300。騎士団はこの兵力を都市の防衛ライン上及びティトル都市内の守りに配置する予定だ。だが皆も承知の通り、今回の敵は空の上である。本作戦の主旨はまずコンゴー級2隻を主力として100騎以上から成る敵の数を叩き、ティトル手前の防衛ラインより先に進もうとする翼竜があれば地上からもゴーレム弓やランスなどで片っ端から叩き落す事。そして可能な限り早期に敵の大将を討ち取る事である」
 との騎士団の隊長の説明に参戦希望者から質問が飛ぶ。
「私はゴーレム乗りではないが、ぜひにもこの戦いには参戦したい。鎧騎士以外の者にも仕事はあるだろうか」
 すると、女冒険者の問いに隊長は満足気に答えた。
「無論である。射撃術に秀でた者であればフロートシップのバリスタや我が騎士団の鎧騎士、あるいは冒険者でも勿論構わんが、その騎士が操縦するグライダーの後部座席で射手に当たるのもよいだろう。魔術師の方も同様にしてぜひ空戦に参加して頂きたい。又、剣術、武術に秀でた者であればぜひティトルの守備に就いてもらいたい。空軍は翼竜を街に入れないよう最善を尽くすが、もし翼竜が数騎でも市街地に降りたなら民の安全は危険に晒されてしまうだろう。そのような事態を防ぐ為にも騎兵と連携を取り、空軍と共にティトルを守って欲しい」
「承知しました!」
 女冒険者の勇ましい返事を聞いて、周りにいた者たちも口々に名乗りを上げた。
「先に説明したものはほんの一例に過ぎず、冒険者は各々得意な分野を生かして参加してくれれば良い。そこが戦場である以上、治療に当たる者も必要になるだろう。また作戦の骨子については大枠に過ぎず、細かな作戦内容については冒険者に任せるのでどんどん提案して欲しい。冒険者諸君の奮闘に期待する!」
 まだ年若い隊長の朗々とした声が青い空高く響き渡った――。


■依頼内容:港湾中継都市のティトル目前まで来た『ケーニス翼竜隊』を迎撃、これを撃破し、何としても都市を守ること。

・敵の大将を討てば勝敗は決するが、翼竜部隊はいくつかの小隊〜中隊に分かれており、大将は部隊の後方からそれを統括していると思われる。

【使用可能なゴーレム】

・邀撃戦闘艦コンゴー級ミョーコー(3番艦)
・邀撃戦闘艦コンゴー級チョーカイ(4番艦)
・カッパーゴーレム
 オルトロス級 2騎(ゴーレム弓装備可能)
・アイアンゴーレム
 アルメイラ級 2騎
・グライダー
 ヒエン 5騎まで(NPC搭乗可)
・他カッパーゴーレム以下については希望による。

※守勢約300の兵は防衛ライン上及びティトル都市内の守りに配置可能。
※コンゴー級に積みきれないゴーレムは、ゴーレムシップでティトルまで輸送する。
※ゴーレム弓の威力においては、アルメイラよりもオルトロスが上である。

●今回の参加者

 ea1702 ランディ・マクファーレン(28歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea3641 アハメス・パミ(45歳・♀・ファイター・人間・エジプト)
 ea8594 ルメリア・アドミナル(38歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 eb4395 エルシード・カペアドール(34歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4482 音無 響(27歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4532 フラガ・ラック(38歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb7857 アリウス・ステライウス(52歳・♂・ゴーレムニスト・エルフ・メイの国)
 eb8174 シルビア・オルテーンシア(23歳・♀・鎧騎士・エルフ・メイの国)
 eb8475 フィオレンティナ・ロンロン(29歳・♀・鎧騎士・人間・メイの国)
 ec1370 フィーノ・ホークアイ(31歳・♀・ウィザード・エルフ・メイの国)

●リプレイ本文

●グライダー隊出撃
「ええいっ、雨雲はまだかッ、雨雲はあああ――!!」
 晴天の空にフィーノ・ホークアイ(ec1370)の絶叫が駆けた。彼女は朝一番にレインコントロールを詠唱しておいたのだが、如何せんこの辺り一帯は先頃より晴天が続いており、戦地の上空まで雨雲が到達するには少々の時間を要した。

「だ、大丈夫ですよ、フィーノさんっ! きっとすぐに雲行きは怪しくなりますよ♪」
 と、グライダーの後部座席で興奮しているフィーノを音無響(eb4482)がなだめ、同じくルメリア・アドミナル(ea8594)を後に乗せたフィオレンティナ・ロンロン(eb8475)も声を掛けた。
「そうだよー。もし朝から雨が降ってたら敵も味方も動けなかったし、これくらいが丁度いいよ! 天下の鷹の目フィーノ・ホークアイの魔法が失敗するわけ‥‥ウギャ――ッ!」
 刹那、フィオレンティナの後頭部にフィーノの手から投げられたと思われる朝食の生卵が命中した。
「皆、敵が前進し始めたわよ」
 騎士団の弓兵を乗せたエルシード・カペアドール(eb4395)の言葉に二騎のグライダーが即座に反応し、直ちに体勢を整える。響、フィオレンティナ、エルシードによるグライダー隊は2隻のコンゴー級戦闘艦の上空で待機していた。
 そして今、彼らの敵が前方よりゆっくりと近づいて来る。
「空を埋め尽くす翼竜、これがケーニス翼竜隊‥‥」
 想像以上の数に思わずルメリアが唸った。
「以前も翼竜部隊と戦った事はあるけど、今回のは数が段違いね。地上と上空で連携した攻撃が出来るかが勝負の鍵になりそうだわ」
「確かに今迄の戦いとは規模が違う‥‥。恐ろしいけど、でも俺たちは負けられない!」
 エルシードに頷いた後、響はいつになく厳しい表情でテレパシーを自身に付与した。地上部隊や艦と連絡を取り合う為だ。やがて速度を上げたコンゴー級に向かって敵翼竜部隊の先陣が真っ向から向かってきた。
「ルメリア、突っ込むよ!」
「はい!」
 まず一騎のグライダーが翼竜部隊へ向かって降下し、それを援護すべくエルシードの機体が後に続いた。響は敵の動きを見極める為、そのまま上空に留まった。
「目標補足――雷撃手の名にかけて!」
 ルメリアが達人級ストームの圧倒的な暴風で翼竜を上から押さえ込んだので、味方の艦に向かっていた翼竜の多くはバランスを崩して落下あるいは降下を余儀なくされ、その機を逃さず2隻のコンゴー級の火精霊砲と地精霊砲が一斉砲撃に出た。この攻撃には火の魔術師アリウス・ステライウス(eb7857)も加わっている。火砲支援に味方を巻き込まないように仲間たちと十分な打ち合わせを済ませた彼はコンゴー級チョーカイに乗り込んだ。今まさに敵部隊にファイヤーボムを射ち込んでいるはずだ。
 やがて次々に落下してゆく翼竜を見て、再びフィーノが吠えた。
「他人ん家の玄関に断りもなくたかりよって、このガチャ蠅どもが! かっちりきっちりこれっきり叩き落としてくれる!」
「敵の第二陣が来るわよっ、皆、囲まれないように注意して!」
 グライダー隊を捕らえた複数の敵が向かってくるのを見てエルシードが叫ぶ。
 第一波で先陣の翼竜を落せたものの――それでも向こうにはとんでもない数がまだ残っている。
「絶対勝って帰るんだっ、約束したんだ!」
 フィオレンティナのグライダーがルメリアを乗せたまま再び魔法攻撃の態勢に入った。
「今だ! ラプラス、俺達に力を貸してッ!」
 響はラプラスを呼んで援護を任せるとフィーノと共に群がる翼竜群の上から敵大将サンク・トスの索敵に入った。

●防衛戦
「来ましたね‥‥ここから先には行かせません!」
 響のテレパシー連絡を受けると、オルトロスに搭乗したシルビア・オルテーンシア(eb8174)は地上に降下してくる翼竜にしっかり狙いを定めてゴーレム弓の太い矢を放った。その矢は翼竜の片方の翼を貫き、体勢を崩したプテラノドンからカオス兵が振り落とされた。
「さて、お次はどなたかしら――っ!」
 一騎落せばすぐにまた別の一騎と、シルビアは矢を番えては放った。オルトロスの威力と彼女の射撃の腕をもってすれば落せない翼竜などまずいない。チャージングを掛けてくる翼竜には、まさにチャンスとばかり防御力が下がった所を下方から狙い撃った。
「こっちは精密射撃に連射も出来て移動も出来の。バリスタとの違いをとくと見せてあげるわねっ」
 そんな彼女に弓に覚えのある鎧騎士がアルメリアで続く。後は敵の大将首が上がるまでの間、集中力を欠かく事なく踏ん張るだけであった。
(この機体なら打たれ強いから、いざとなれば街の盾になるぐらいは出来るはず!)
 彼女の気迫が周囲に伝わるような凄まじい戦闘であった。

  **

 一方、ランディ・マクファーレン(ea1702)はペットのイーグルドラゴンパピーを空に放ってテレスコープによる遠視を行なわせ、自身はペガサスに騎乗してティトル市街地上空で敵側の侵入の警戒に当っていた。彼はまた、本作戦において騎士団の守備兵の装備や作戦行動に関する具体的な方策を司令官に提示し、冒険者との連携及び相互協力の要望を事前に伝えた。兎も角かつてないほどの大規模な戦いである。味方の損害を抑え、市民を守る為にもそれらは不可欠であった。そして市街地に配備されたモナルコスには騎士団の鎧騎士が搭乗した。

「ちっ、早速1騎来やがったか」
 その翼竜はシルビアが守っている防衛線上に落下したのだが、依然体力だけは残っていたようで、飛べない翼を引き摺るようにしながら少しずつ歩行し、市街地の入口に差し掛かっていた。ランディは騎士団の隊長に敵の位置を報告すると再び空中で戦闘体勢を整える。
「弓隊は俺の合図で一斉射撃を! 槍隊、弓隊は常に複数で纏まって、決して無茶な近接戦闘はするなよ。モナルコスがこっちに回ってきたら、前衛は奴に任せろ!」
 そう大声で指示を出すとランディはオーラシールドをその左手に施術し、単身翼竜の傍へ降り立った。
「この戦、勝たないと約束が果たせないんでね」
 一瞬、ランディの握る片刃の刀が宙を舞うと翼竜の太い首から鮮血が迸った。

●コンゴー級
 その頃上空ではコンゴー級2隻と翼竜部隊との熾烈な戦いが繰り広げられていた。カオス兵が投げつける火炎瓶の威力自体は小さなものだが、数で押されては艦内の兵だけでは後手に回ってしまう。
「翼竜はホバリングが出来ないでしょうから、一度攻撃を行えば次の攻撃までに一旦体勢を整え直すはずです! そこを狙ってバリスタや精霊砲の射界へ敵を誘導しましょうっ!」
 グリフォンに騎乗してチョーカイの甲板にいる兵たちにそう呼び掛けているのはアハメス・パミ(ea3641)であった。
 翼竜の脅威も勿論だが、翼竜に同乗しているカオス兵に艦に乗り込まれ、精霊機関に攻め込まれるのはもっと厄介だ。彼女はまずロングボウで操縦者らを射落とし、艦へ近づく翼竜にはヘビーボウを構える複数の兵と共に一斉射撃を試みた。矢に押され甲板を一旦離れた翼竜にバリスタが止めを刺す。彼女たちの防衛戦は休む暇もなく続けられた。

「鎧騎士の誇りに賭けて、これより先には一匹たりとも進ませません――!」
 ミョーコーの甲板上でオルトロスに搭乗したフラガ・ラック(eb4532)が押し寄せて来る翼竜の群に向かって声高に吠えた。背後の町には大勢の守るべき人々がいる。たとえこの身を盾にしてでも決して彼らをカオスニアンの餌食にはさせないという強い意志が、不安定な甲板での戦闘をも可能なものにしていたのだ。
 フラガはオルトロスの機動力を生かして獰猛な翼竜の嘴攻撃を盾で受け流し、長槍で敵の胴や翼の薄い部分を狙って攻撃を繰り返した。また複数の敵に押された時は、太いロープを幾重にも束ねたものをゴーレムの怪力で振り回し、翼竜の乗り手をバンバン叩き落とした。
(船から落ちたら命はない。だが‥‥っ)
「この船を落とされでもしたら味方の士気に関わります。ゆえにコンゴー級は死守します!」
 フラガの船上での決死の覚悟は味方の兵に伝わり、士気は一層高まった。

 また、チョーカイに乗船していたアリウスは敵の近接戦が始まると、火炎瓶投下による炎上被害を尽くプットアウトで抑えていった。盾を構えた兵士に守られながら彼は消化活動に力を注ぎ、精神力の回復には貴重なソルフの実を食べた。また、船上でゴーレムに乗って戦う鎧騎士にはバーニングソードを付与し、着実な戦力の底上げを図った。彼もまた艦の重要性を認知しているのだ。
「おお、ようやく雨雲が垂れ込めてきたな」
 ふと空に目をやると、アリウスは安心した顔でそう呟いた。
「後はグライダー隊の腕を信じるしかないな。きっと大丈夫。彼らなら‥‥」
 空から艦内へと視線を戻すとアリウスは再び魔法の詠唱に入った。

●大将狙い
「天の怒り、風の猛り、紫電一閃よ、ライトニング・サンダァボルト――――ッッ!」
 ルメリアは大胆にも超越級の魔法を唱えて後方で群をなしている翼竜部隊に斬り込む為の突破口を開いた。上空より敵の動きを査察していた響とフィーノはこの時、依然群がる翼竜の中から敵司令官の隊の位置をほぼ掴んでおり、後は大将を見つけ出すのみだった。そして何より上手い具合に空が暗く厚い雲に覆われ始めている。
「いたぞっ! 響!!」
 突如、フィーノが声を上げた。
「鷹の眼が見る空にトカゲは要らぬ‥‥疾く墜ちんかっ、この戯けがぁッ!」
 彼女はまず高速詠唱でヘブンリィライトニングを一発。これは味方に大将を確認した事を知らせる意味もあった。
 と同時に敵側にも動きが出た。グライダーに向かって数騎の翼竜が突っ込んでくるのに気付いた響は再びロック鳥のラプラスを呼び寄せ、その巨大な鷲の威力を見せつけた。
「よしっ! これで大将を狙いに行けますね!」
「後ろで耐えてくれてる仲間の為にも、ここは一気に勝負ね!」
 と、弓兵と共に翼竜の操縦者を射落とすべくエルシードが響の前にでる。
「ルメリア、狙える!? 思い切りぶっ放しちゃえ――!」
「はい!」
 フィーノとルメリアは雷魔法を放ち続け、遂に敵司令官はその翼竜と共に空から落ちた。
「あのプテラ、鶏みたい‥‥って、あれ?」
 赤いトサカの翼竜が舞い落ちてゆくのを眺めつつ響が呟いた。
「下に落ちゃったら、敵の大将首‥‥取れないですよね」
「まあ、この高さで落ちれば命は無いと思うけど」

 ――――‥‥。

  **

「ともかく勝ててよかったよね〜」
 ティトルにある料理店でランディとフィオレンティナが魚料理をつついている。
 どうやらこの日はランディの誕生日だったらしい。
 彼女はコンゴー級に乗り込む前に地上に残る彼と握手をした時の手のぬくもりを思い出し、嬉しそうに笑った。
 司令官不在となった敵軍は早々に退却し、結果味方は勝利した。また、半数以上の翼竜や乗り手を失った『ケーニス翼竜隊』は実質壊滅したも同然であった。ただ、この戦の後、悪徳な業者が落ちた翼竜の肉を掻き集めては別の食肉と称して売りさばいたという噂が広まったが、その真意は定かではない。
 尚、冒険者諸氏には精竜銀貨章が授与された。