【第三次カオス戦争】港湾都市ナイアド防衛

■ショートシナリオ


担当:月乃麻里子

対応レベル:8〜14lv

難易度:難しい

成功報酬:5 G 47 C

参加人数:10人

サポート参加人数:1人

冒険期間:11月27日〜12月03日

リプレイ公開日:2007年12月03日

●オープニング

●トーラス貴族団
 情報量が乏しくはあるが、バの軍の中に貴族有志で編成されたゴーレム主軸の部隊の存在が確認されている。
 その名も『トーラス貴族団』。
 構成員は15名ほどの鎧騎士で主力はゼロ・ベガ級カッパーゴーレムだそうである。
 前回のナイアド近郊の森探索(関連「己ただ人なることを」)から冒険者とKBCの記者が持ち帰った情報を検証したところ、ナイアドを目指して進軍している部隊は恐らくこの『トーラス貴族団』と断定された。指揮官などの詳細は不明。

●東進恐獣兵団阻止作戦
 カオス勢力の侵攻はいよいよ東方中部まで拡大した。
 ナイアド近郊まで大型フロートシップ1隻と輸送艦1隻で進軍してきた『トーラス貴族団』は、まずナイアドの港を精霊砲で襲撃。宣戦布告と住民への避難勧告を通達した上で、ナイアド手前の平原を見渡せる丘陵に布陣した。次に敵のフロートシップが動く時は主力ゴーレム部隊を投入した決戦となることは明白であった。
 尚、決戦の場となるであろう平原からナイアドまでは目と鼻の先である。ここを死守しなければナイアドの町が敵に攻略されるのは必須である。

「ナイアドの手前に布陣した敵の偵察を行なった斥候隊の話によると、敵が運び込んだゴーレムはゼロ・ベガ級カッパーゴーレムが8騎、その他バグナが付近の哨戒に当っていたらしい。数は2〜3騎ほどとの事だ。こちらの迎撃地点にはシルバーゴーレム及びカッパーゴーレムを積み込んだ大型戦闘艦ナロベルで向かう。敵がゴーレムを主力とした部隊である以上、こちらもゴーレムで対抗することになるが、危惧されるのは先に粉砕した恐獣部隊『ギリア破砕軍』の残党がこの機に乗じて都市へ攻め込んでくる事である。よって、騎兵約400を投入して都市の防衛に当らせることになった。大半の騎兵はすでに現地に到着済みである。ゴーレムに搭乗しない冒険者には、ぜひこの対恐獣戦への参加をお願いしたい。また魔術師であればフロートシップに乗船しての魔法支援も可能だ。加えて今回も冒険者内で乗り手がつかなかったゴーレムには騎士団の鎧騎士が搭乗し、任務の遂行に当たらせてもらう。空と陸からの攻撃で負傷者も続出することになるだろう‥‥だが、我らがここを死守しなければナイアドが、そしてその後にある王都までもが危険に晒されることになるのだ! 必ずや敵を駆逐し、勝利を我らの手に掴むこと。これこそが我らメイの騎士団と冒険者に課された使命であるっっ!!」

 蛇足ながらKBCの女性記者が目撃した未確認のゴーレムについての情報は、それがある種の『生物的』要素を含んでいるかもしれないという事以外ほぼ皆無である。
 決戦となれば敵がこれを使用しないとは考えられないので、十分な注意が必要であろう。


■依頼内容:港湾都市のナイアドまで来た敵兵力『トーラス貴族団』及び『ギリア破砕軍』の残党から都市を守ること。

【敵兵力】
・大型フロートシップ1隻
・ゼロ・ベガ 8騎
・バグナ 2〜3騎
・未確認のゴーレム??

【使用可能なゴーレム】
・大型戦闘艦ナロベル
・シルバーゴーレム
 ヴァルキュリア級 1騎
 トール級 1騎
・カッパーゴーレム
 オルトロス級 2騎(アルメリアとの機種交換は可能)
・他ストーンゴーレムやチャリオット、グライダーについては希望による。

※冒険者に任される随伴兵力は、兵員約400名。NPC鎧騎士の搭乗が可能(技能レベルは専門以下です)

●今回の参加者

 ea1702 ランディ・マクファーレン(28歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea2564 イリア・アドミナル(21歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・ビザンチン帝国)
 eb0754 フォーリィ・クライト(21歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb4244 バルザー・グレイ(52歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4257 龍堂 光太(28歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4482 音無 響(27歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb7992 クーフス・クディグレフ(38歳・♂・鎧騎士・人間・メイの国)
 eb8174 シルビア・オルテーンシア(23歳・♀・鎧騎士・エルフ・メイの国)
 eb8475 フィオレンティナ・ロンロン(29歳・♀・鎧騎士・人間・メイの国)
 ec1201 ベアトリーセ・メーベルト(28歳・♀・鎧騎士・人間・メイの国)

●サポート参加者

ソフィア・ファーリーフ(ea3972

●リプレイ本文

●第三次カオス大戦
「バの国の貴族が来ちゃって宣戦布告って、カオスニアン使って裏で暗躍じゃなくって本格的に戦争する気って事?」
「そうなんだよね‥‥よくわからないけど、おおっぴらにバを名乗って侵攻してきていいのかな?」
 ナロベルのブリッジで首を傾げるフィオレンティナ・ロンロン(eb8475)と龍堂光太(eb4257)にKBCの記者として同行していた琢磨が答えた。
「交戦規定の交渉が行なわれた経緯もあるし‥‥一方的ではあるけど、これは両国における『戦争』だ」
 一方的――そう言いながら、琢磨はかつて母国が他国のある湾を襲撃した歴史的事件を思い起こしていた。
「ロード・ ガイによるカオスとの戦いを第一次とすると、ウーゼル・ ペンドラゴンが降臨し勝利を収めた先の大戦が第二次。さしずめ今回は第三次カオス大戦というところかな」
「カオスの穴から帰ってきたら今度はバの侵攻か。この国にはやつらの興味を引く何かがあるのか‥‥?」
 かの混沌竜を打ち倒し、カオスの穴を見事封印せしめた冒険者の一人であるバルザー・グレイ(eb4244)が思わず呟く。カオスの穴から帰還した者の中でバルザーの他に琢磨とフォーリィ・クライト(eb0754)、クーフス・クディグレフ(eb7992)が今回の依頼に参加していた。
「そこまでは分からないけど、でも、先の大戦で家族や大切な人を失った人たちはバの国にもいるだろうし、彼らにメイやジェトを憎む気持ちがないとは言えない」
「そんなっ‥‥攻め込んできたのはバやカオス勢力なのですよ!」
 メイの鎧騎士であるシルビア・オルテーンシア(eb8174)は思わず反論したが、琢磨はもっともだと頷いてから言葉を続けた。
「昔、俺がいた国は世界の大国相手に戦争を始めた。それはどう考えても無謀な戦だった‥‥でも当時の人々にとってはそうじゃなかったんだ。国民は皆、皇帝陛下のために進んで命を捧げ、国のために戦っていた。それが美徳ですらあったんだ。俺はカオスの穴でバの騎士に会って、その事を思い出した。この『戦争』の根底にあるのは、単純なものじゃないのかもしれない‥‥」
 琢磨の言葉に周囲の者が黙り込むと、先ほどまで甲板で身体を解していたフォーリィやランディ・マクファーレン(ea1702)がブリッジに戻ってきた。
「んー、やっぱり陽光の下が一番よねー! って、みんな暗い顔してどうしたの?」
「鼻息荒いバの貴族連中と手負いの獣相手にこれから戦おうってんだ。しゃきっとしようぜ!」
 彼らの声に従うように冒険者は気合を入れなおして各自の持ち場に向かった。
 その場の雰囲気から、また琢磨が余計な事を言ったのだと察したフォーリィは彼の頬を思い切りつねっていたがそれはともかく――。

「メーベルト、発艦します!」
「同じく音無響、発艦しまーすッ!」
 青空の下、ベアトリーセ・メーベルト(ec1201)と音無響(eb4482)のグライダーが敵陣を偵察すべく飛び立った。ベアトリーセの後部座席には魔術師イリア・アドミナル(ea2564)の姿もあった。
「ゴーレムを操る貴族騎士達! 強敵だけど此処で負ける訳には行かない。ナイアドを守る為、全力で立ち向かうよ! 」
 イリアはシルビアから預かった記録用のメモリーオーディオと携帯電話の使い方をもう一度確かめた。未確認ゴーレムの情報を少しでも持ち帰る為であった。
 彼らより少し遅れてゴーレム隊が目的の平原へと降り立った。
 するとナロベルの動きに応じて敵のフロートシップも空に姿を現した。ゼロ・ベガ8騎は平原ですでに陣形を取って待ち構えている。
 冒険者は光太の案通りにシルビアのアルメリアを囲う形で陣を敷くと、まずアルメリアから最初の矢が放たれた。先頭に立っていたゼロ・ベガはこの矢を盾で払い落とすと一声高く叫んで後、味方とともに一気に前に押し出してきた。
「絶対勝って、今度はナイアドの冬の味覚を堪能するぞー! (ね、ランディ!)」
 銀のトール級に搭乗したフィオレンティナが叫ぶと、シルビアも負けじと次々に矢を放ち、ほどなくゴーレム同士の壮絶な戦いが始まった。

  **

「ゴーレムが手薄なこっちにバグナを回すなんて、卑怯もの〜〜〜っっ!」
「貴様らのゴーレムなぞ我がゼロ・ベガ部隊がすぐに片付けてくれるわっ!」
 正面のバグナを大声でなじるフォーリィに敵騎士が悠然と答える。
 騎士団の騎兵はランディの指示により、海を背に三方に別れてナイアド市街を囲む隊形を取っていたが、その一角にバグナ2騎が現れたのである。夜陰に紛れて密かに別働隊として動いていたらしい。 
「バグナとて逸らず恐れず、各々の為すべきを果たされたし! 王国騎士諸兄らの奮闘に期待するッ!!」
 ペガサスに騎乗したランディは騎士たちを叱咤激励すると自らもフォーリィと共にバグナに立ち向かっていった。
 以前バグナと戦ったことのあるフォーリィはその回避能力の高さを生かしながらポイントアタックで確実にダメージを与え続けた。いかにバグナの打撃力が高くとも当らなければ意味は無い。
 ランディは恐獣部隊の急襲にも注意を払いながら、モナルコスの加勢が到着するまでバグナを足止めすべく奮闘した。彼はオーラシールドで攻撃を受け流しながらスマッシュを脚部に打ち込んでバグナの機動力を奪っていった。
 一方、バグナの襲撃に合わせて中型恐獣部隊が別の場所からナイアドに攻め入ろうとしたが、ランディから戦術の指南を受けていた騎兵たちが体を張ってこれを押し留めた。負傷者は若干出たが、ギリア破砕軍の残党たちも深手を負った。

  **

 その頃、上空ではイリアがグライダー上から敵フロートシップに向けて魔法攻撃を仕掛けていた。
「全てを包む冬の吐息、氷の乱舞を我らの敵に示せ‥‥アイスブリザ――――ド!!!」
 ソルフの実を使いながら超越級の魔法を放ち続けるイリアの前では、フロートシップも為す術がなかった。だが、旧式のシップはともかく、金属ゴーレムを従える貴族の船はそう容易くは落ちなかった。
「今一度、アイスブリザードで!」
「ちょっと待った! ‥‥後から何か来る‥‥っ」
 フロートシップの後方から何かが近づく気配に気付いた響が、テレパシーを使う間もなく思わず叫んだ。
(敵の新兵器か? 貴族趣味の自動人形部隊だったり‥‥モビ△ドールとか言うなよっ!)
 響とベアトリーセが敵艦と距離を置こうとすると、敵艦自らが謎の飛行物体の後へ後退した。
「敵の動きが妙です。何か仕掛けてくるかもしれませんっ、響さん、気をつけ‥‥キャ――――っ!!」

『ググググアァァルルウッルッ――――ゴガガガガっギギアアアおおッッッ!!!』

 浮遊する体長20mほどの巨大な化け物から金属音とも肉声とも区別のつかない雄叫びが聞こえたと思うと、その不気味な図体から太くて長い銀色の管のようなものが突然伸びて、生き物のようにグライダーに襲い掛かった。響とベアトリーセは機体を急浮上させて寸での所で攻撃をかわしたが、翼竜では避けきれなかっただろう。
 イリアは咄嗟に達人級の吹雪を放ち、その隙にグライダー隊は一旦戦線から退いた。それは本能的な『恐怖』からでもあった。

●新兵器
「みぎから〜!」
「わかってる」
「まえ〜!」
「少し静かにしててくれっっ!」
 ヴァルキュリアを駆る光太の制御胞の中で妖精が叫びまわっているようだ。
 光太はすでにヴァルキュリアの扱いに慣れていた。COこそ体得していないが、彼の格闘術や回避術の高さがそれを補った。彼は両手剣で味方の数を上回る敵に対峙していた。フィオレンティナのトールもバルザーのオルトロスもそれぞれ1騎以上のゼロ・ベガを相手に戦っている。
 しかも相手は正真正銘の貴族――すなわち、然るべき師につき然るべき武術を身につけた者たちばかりであり、アルメリアの矢で幾分優位を稼ぐものの戦況は依然不利であった。
「惨めに負ける前に投降したらどうかね? ならば命まで取ることはしない」
「俺達は与えられた役割を果たす。ただそれだけだ!」
 敵の鎧騎士にモナルコスに乗るクーフスが叫ぶと、他の鎧騎士たちも声を上げた。金属ゴーレムほどに動き回れずとも、その耐久力と勇気をもって戦況を優位に導く事が出来るはず――クーフスが指揮するモナルコス隊は身を呈して味方を守ることに専念した。
「他を気にする暇があったら、各自自分の役割を果たせ!!」
「はいっ!」
 クーフスの呼び掛けにシルビアは再びゴーレム弓で応えた。脚部を集中して攻められて、さしものゼロ・ベガも体勢を崩しかけたその瞬間――。

 上空から異様な金属の物体が平原の中央に舞い降りた。
 それは大きな翼を持った竜のような形をしてはいたが、長い触手のようなものが20本近く備わっていて、それらが各々生物のようにうごめいていた。
 丁度そのタイミングを推し量ったように、丘陵付近からギリア破砕軍の残党が打って出た。形勢有利と見たのだろう。だがしかし、彼らは平原を突っ切ってナイアドに到達することは叶わなかった。金属の物体が30mはあろうかという長い触手を使って彼らを『食べた』のである。

「ひ、引け――――! 撤退だっ、『アレ』に構うなっ!」
 新兵器が恐獣やカオスニアンを次々に己の口に入れるのを見てゼロ・ベガは一気に丘陵へ逃げ込んだ。慌てた冒険者も撤退を始めた時、謎の金属竜は一声吠えた後に動かなくなった。その数秒後に金属が焼けるような匂いがして、竜の口の周りが溶けた。
「し、死んだのか‥‥?」
「死ぬって何がだっ!??」
「何って‥‥そ、そんなの分かるかよ!!」
 騎士団の鎧騎士たちが騒ぎ立てる中、カオスの穴でカオスドラゴンの姿をその目で見たバルザーが訳もなく身震いした。
 同じ頃、グライダーからこの様子をつぶさに見ていた響も、朽ちた金属竜から何か禍々しいものを感じ取っていた。
 又、ランディとフォーリィは見事にバグナと恐獣部隊を駆逐したが、突如現れた謎の兵器のおかげで勝鬨を上げ損ねてしまった。
「腕の1本でももぎ取れれば‥‥と思ってたけど、丸ごと確保出来ちゃうとはねー」
「全くですっ☆」
 トーラス騎士団は新兵器を放棄して退散し、冒険者たちは辛くも勝利を収めナイアドの都は守られた。冒険者には精竜銅貨章が授与されたようである。

 尚、壊れた敵の巨大兵器は人力での解体が困難なため、後日ゴーレムを使ってその回収作業を行なう事になるだろうと王宮より冒険者ギルドに通達があった。冒険者諸氏にはぜひともご助力頂ければ幸いである。