【巫女と魔物】ウェディングケーキは蜜の味

■ショートシナリオ


担当:月乃麻里子

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:7人

サポート参加人数:1人

冒険期間:07月30日〜08月04日

リプレイ公開日:2008年08月12日

●オープニング

 王宮は国の権威の象徴であるとともに、まつりごとの中枢でもある。
 天界で言うところの防衛省や大蔵省といった大切な政務を司る武官や文官が、国王のもとで今日も忙しく働いているというわけだ。
 中でも高級文官のディミトリ・ゾンターブルクという貴族、彼は国の財政面を司る重要な役目を担っているが、国王の信頼もことのほか厚く、極めて優秀で真面目で勤勉な文官であった。
 だが、彼にはひとつの悩みがあった。

「うーん、なにかよい策はないものか。嫡男のアルフォンスもじきに18。あと10年もすれば私も老いて、アルフォンスに今の私の職を継がせることになるだろう。だが、果たしてそう上手くいくのだろうか」
 ゾンターブルク家は実はアリオ王の母方の遠縁にあたり、爵位は立派な子爵。だが、ゾンターブルク子爵家は治めるべき十分な領地を持たなかった。
「国王がご健在の間はまだしも、時が移り、やがて息子の時代になった時、この国はどうなっているのだろう」
 メイの国は先の王妃の時代から何事も実力主義的な面が強い。つまり、家柄に頼ってぼやぼやしていたら、力のある者にその職を奪われてしまう可能性もあるのだ。
「アルとて私の自慢の息子。聡明で剣の腕も確かだ。しかし、アルフォンスは心根が優しすぎて大の戦嫌い。文官を目指してくれるのは父としても嬉しいが、やり手のライバルが現れでもしたら、アルは上手く立ち回ってゆけるだろうか」
 と、彼が浮かない顔で宮中の庭園を散歩していると、どこぞの貴族の奥方たちが噂しあっている声が聞こえてきた。

「まあ、それで巫女さまはシーハリオンの丘には当分帰れそうもないと」
「ええ、それですっかり気落ちなさっているとかで」
「せっかく目の病が少しずつ癒えてきているというのに、お気の毒ですわ」
「私の下の娘は巫女さまと同じ年頃ですの。せめて夫がお城に上がった時だけでも、巫女さまの遊び相手になれれば良いのですけれど‥‥」

 城内ではごくありきたりの噂話であったが、この時、ディミトリの瞳が爛々と輝いた。
「そうか! その手があったか!」
 彼はすぐさま部屋に戻ると、国王への拝謁を求める手紙をしたためた。
 そして一週間後――――。

**


「ナナルが結婚――――??」
 驚いて目を丸くしたあとで、エドガーの真剣なまなざしを見た琢磨はプププっと笑いを堪えるも、ついには腹を抱えて大声で笑い出した。
「ひーっっ、あのナナルが結婚ねえ、いいんじゃない? あのおてんば娘をもらおうって太っ腹な男がいるんなら、この際、嫁に出すのも悪くないだろ。俺は賛成だ!」
「ちょっと琢磨くん、これは冗談なんかじゃないんですよ、わかってます?」
 琢磨の態度をふざけすぎと見たエドガーが、険しい表情できっと琢磨を睨み据える。
 エドガーの話によると、縁談話を持ち出したのは城でも高名な文官のゾンターブルク子爵。
 巫女をぜひにも我が嫡男の嫁にと国王に申し出たところ、多忙極まりない王は結婚は巫女の自由意志によるものとして介入を拒んだ。が、王はダメだとは言っていない。
 さっそく使者を立て、この事を巫女に伝えたところ、巫女は縁談をあっさり拒否。だが、子爵はあきらめなかった。
 国民の信頼厚き巫女ナナルを家に迎えることができれば、この先も子爵家は悠々安泰と考えたのである。

「それで、王都の『お菓子食べ放題ツアー』にかこつけて自分の息子と対面させようってわけだな。そのツアーの記事を当たり障りのない範囲で俺が書くと」
「ええまあ、そういうことなんですけどね」
「冒険者も警護に呼ばれるんだろ? ならいいじゃないか。それともエドはナナルの結婚には反対なわけ?」
「当然ですっ! ナナルの気持ちを考えると、私は琢磨くんみたいには‥‥」
 小さくため息を吐いて、エドガーが寂しそうにうなだれる。
「でもさ、子爵さまなら生活に不自由はしないだろ? 俺はいつまでもナナルを巫女とやらの使命に縛りつけておく方が悲しいと思うぜ。普通の幸せを掴めるものなら、俺はあいつにそれを掴ませてやりたい」
「琢磨くん」
「まあ、その息子次第って部分もあるけど」
 にっこり笑ってそう言うと、琢磨は依頼主である子爵からKBCに回ってきた書類に再び目を通した。今回のスポンサーは子爵本人である。

 子爵は無類の菓子好きの巫女のために、王都にほど近い貴族街にある名店を3軒ほどピックアップ。
 ギルドで集められた冒険者が警護する中、巫女が名店を順に訪れて試食。最後の店ではお見合い相手であるアルフォンスが待機していて、ティータイムを一緒に過ごしたのち、アルフォンスのエスコートで付近を散策。夕方には巫女を城へと送り届けるという段取りだ。
 ちなみに、選ばれた店は
 一軒め「果物が超美味しいお店」
 二軒め「天界より伝わる珍しい菓子のあるお店」
 三軒め「焼き菓子が最高に美味しいお店」

「三軒回ってナナルが上機嫌のところで、見合いの相手が登場と。んー、冒険者はツアーに出る前に城内でナナルとの面会が可能とあるが、見合いの件はナナルには内緒‥‥この点は重要だな」
「はい、子爵曰く、事前に見合いのことがバレて巫女が外出しないと言い出したら計画が水の泡。あくまでも目的はお菓子ツアーで、くれぐれもお見合い、つまりアルフォンスが店で待っていることは伏せておいて欲しいというのが条件です」
「ま、よほど鈍感じゃなければ、息子がでばったところで見合いだと気づくだろうが」
 いや、ナナルはその『よほど』かもしれないが――――と琢磨は思ったが口には出さず、エドガーに話の続きを促した。
「それから、王都も魔物の跳梁が目立つようになりました。貴族街とはいえ油断は大敵です」
「ああ、そこは冒険者にがんばってもらうしかないだろうな」
 巫女の外出に合わせて騎士団から数名腕のたつ騎士が同行することになるが、有事の際には冒険者がその場の指揮を取ってもよいとのことである。
「ナナルももちろんですが、琢磨くんも十分に気をつけて」
「俺のことはなるようになるって」
 小さく微笑んでのち、KBCの看板記者上城琢磨はさっそくツアーの準備に取り掛かった。
 ところで余談になるが、エドガーの話にもあったように王都では『矢尻の尻尾を持つシフールに似た魔物』や『背中にコウモリの羽を生やした小鬼』などが目撃されているが、近頃は背中に黒い翼を生やし、炎をまとった鬼を見たという証言もある。身の丈は人間ほどで魔法を使って人や物を燃やすことができるようなので、十分な注意が必要である。


■依頼内容:城から外出する巫女ナナルを警護しながらツアーを成功させ(子爵の息子ときっちり対面)、夕方までに無事に城に連れ帰ること。

●今回の参加者

 ea0439 アリオス・エルスリード(35歳・♂・レンジャー・人間・ノルマン王国)
 ea5229 グラン・バク(37歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb0754 フォーリィ・クライト(21歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb4197 リューズ・ザジ(34歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4244 バルザー・グレイ(52歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb6729 トシナミ・ヨル(63歳・♂・クレリック・シフール・イギリス王国)
 ec4205 アルトリア・ペンドラゴン(23歳・♀・天界人・人間・天界(地球))

●サポート参加者

イェーガー・ラタイン(ea6382

●リプレイ本文

●城
「ナナル様、準備が整いましたので出発いたしましょう」
 品のある優しい声でそう言って巫女に恭しく頭を下げるのは、侍女用のドレスに身を包んだアリオス・エルスリード(ea0439)である。ナナルの世話を兼ねながら間近で彼女を護衛しようという策だが、これがなかなか板についていた。
「うん、皆今回も世話になる。よろしく頼むぞ」
「お久しぶりです、ナナル殿。今日は存分に楽しんでくだされ。ただ食べ過ぎにはどうかご注意を」
 数々の冒険を共にし、もうすっかり聞きなれてしまったバルザー・グレイ(eb4244)の穏やかな声に振り向くとナナルは笑顔で答える。
「うん、店ではバルザーも一緒だぞ。ひとりで食べるのはつまらん」
「はい、全員揃って席に着くのは護衛の都合上難しいですが、交代でならきっとナナル殿のお相手ができます」
 巫女の幸せを心から願うリューズ・ザジ(eb4197)が温かい言葉を述べると、
「本当か! 私は菓子よりそっちの方がずっと嬉しいぞっ!」
「おい、ナナル、そっちには階段が‥‥こら、待てっ!」
 迎えに来た近衛兵が部屋の大きな扉を開く音が聞こえるや否や、早く階下に降りたくてナナルが一目散に駆け出す。それをグラン・バク(ea5229)が慌てて捕らえ、ナナルを軽々持ち上げると自分の肩にひょいっと乗せた。
「うあ、な、なにをする、下ろせー!」
「役得かな。っと、はゃぐな」
「ナナル様、そのように暴れておられましたら」
「ツアーの最後まで持ちませんよ」
「この男は私を子供扱いしたいだけなのだ。そうだろう、グランっ!」
 アルトリア・ペンドラゴン(ec4205)と女装したアリオスが、ふたりのやりとりを微笑ましく見つめる。

(うん、ほんとに子供だと思うんだけどねー。そのナナルが見合いねぇ‥‥)
「フォーリィさんや、例の青年のことぢゃが」
 と、城門に向かうナナルの後をついてゆくフォーリィ・クライト(eb0754)のもとにシフールのトシナミ・ヨル(eb6729)がふわふわと宙を飛んでやってくる。
「友人にも頼んで調べたところ、特に悪い噂はないようぢゃが、あとはわしらの目で確かめるしかないかのう」
「そうね。じーっくり拝ませてもらいましょ」
 冒険者たちは『見合い』のことは隠したままで、貴族街を目指して城を出た。

●お菓子ツアー
「目はまだよくならないか。いっそ皆で薬草探しにいくとよいかもな。アスタロト殿にでも相談して」
「(パクパク‥‥)アスタロト?」
「(ムシャムシャ‥‥)あ、そういう奴いたわねぇ」
 冒険者は三班に適当に分かれて交代で巫女とテーブルについた。
 二軒目の店で天界の珍しい菓子が運ばれてくると、巫女はそのいくつかを店の者に頼んで包ませた。あとでリューズに渡すのだという。
「カフカは今めちゃくちゃ忙しそうだし、きっとろくに会ってもいないのだろうと思ってな。恋する乙女への差し入れだ」
「ナナルさんは恋したことはあるんぢゃろうか」
「ない」
 きっぱり即答するナナルに皆の視線が集まる。
「じゃ、結婚とかどう思うの? ほら、噂によると‥‥」
「ああ、見合いなら断った。私にそんな暇があると思うのか? まったく高官どもめ、目が見えなくなったくらいで私を城に閉じ込めおって」
 カオスの魔物の動きがこれ以上ひどくなるなら、別働隊を率いて王都の巡回警備にも加わるつもりだと言い出すナナルに、冒険者たちの顔は曇る。魔物にとってみれば、一市民のそれよりカオスの穴を封印した巫女の方がずっと価値があるからだ。
 その時、バルザーが持っていた石の中の蝶が羽ばたいた。
「魔物です!」
 警護の騎士や冒険者の間に緊張が走る。
 だが、蝶は大きく羽ばたいたのち、すぐさまその動きを止めた。

 * *

「さっそくこちらの動きを読みにきたというところでしょうか」
「町の人を操って我らを襲ってくることも考えられます。ここが正念場ですね」
 三軒目の店でナナルと共にテーブルについたアリオスとアルトリアが小声で話しながら慎重にあたりの様子を伺う。
 店はたいそう繁盛しているらしく、店内は冒険者が思ったよりも広く、客席はそこそこ埋まっていた。客たちは巫女を見つけると口々に声を上げたが、城からついてきた護衛の騎士たちが静まるように促すと、客らはすなおにそれに従った。いまのところ、怪しそうな輩はいなかったが、肝心のゾンターブルク家の子息の姿が見えない。
 トシナミがゾンターブルク家の付き人にこっそり尋ねると『すぐに参ります』の一点張りで、埒があかない。
「どうした、トシナミ」
 気配に気づいて巫女。
「いやいや、なんでもないですぢゃ」
「あやしいな。なにを企んでいる」
「ナナル様、皆、ナナル様のお身を心配しているのですわ」
「魔物の動きにも油断できません」
 巫女の気を逸らしつつアリオスとアルトリアが話題を振ると、焼き菓子を頬張りながらナナルが言った。
「私を狙って魔物が出てくるなら好都合だ。小者ではなく、いっそ大物を釣り上げたいところだが」
「巫女殿をそのような危険な目に合わせるわけには参りませんよ」
 春の風のように瑞々しく涼やかな声がする。振り向くと、白いエプロンを纏った菓子職人の姿をした若者が店の奥から出てきた。絹のように艶やかで長い金髪に薄灰色の明るい瞳、それに町人にしては品格のある美しい顔立ちだ。
「その方は誰か! 気安く巫女に近づくな!」
 怪しい青年にアリオスが叫ぶと、席から離れていた冒険者たちも一斉に集まった。その時、再び蝶が舞う。
 ガシャ――――ンっと皿の割れる音が響いたと思うと、手に斧や棍棒を持った町人たちが裏口から店に乱入し、すぐさま護衛の騎士と乱闘になった。
「操っている魔物が近くにいるはずよ! 注意してっ」
「ナナルさん、フィールドの中へ入るんぢゃっ!」
 素早くホーリーフィールドを展開したトシナミのもとへ先ほどの青年がナナルを抱えて走る。冒険者にもひけをとらない軽やかな身のこなしだ。
『邪魔する奴は皆殺しにしろ! 皆殺しだ!』
 窓から入った黒きシフールは逃げ遅れている客や騎士たちをも惑わそうとしたが、フォーリィとグランが見事にこれを仕留めた。
 だが、石の中の蝶はまだ羽ばたいている。

「まだ油断できんぞ」
「店に残っている者と巫女の退路を確保せよっ、急げ!」 
 バルザーとリューズが騎士を指揮して逃走経路を確保する中、アルトリアが店の奥から火の手が上がるのを発見した。
「火が上がっています、一刻も早くここから出なければ」
 だが、店の中にはすでに有毒な煙が立ちこめ始め、身体の弱いナナルが煙を吸って真っ先に倒れた。
「ナナルっ!!」
『おまえたちはここで燃える。巫女はわれらがいただく』
 声のする方を振り返ると、背中に黒く大きな翼を生やした魔物が炎を纏って現れた。
 アリオスが銀の礫を放つが、それと同時に大きな火の玉が冒険者を襲った。この魔物は高速詠唱で魔法が使えるのだ。
「長引いたらナナルが危険よ、あたしとグランが突っ込むからあとはよろしく!」
「「「承知!」」」
 フォーリィの言葉で皆の意識がひとつにまとまるのを見て取ると、炎を纏った魔物はふわりと天井高く舞い上がる。
『ここで殺られるわけにはゆかん。仔細を上に報告せねばな』
 魔物はさらにスモークフィールドを放つと早々に姿を消した。
 ナナルはトシナミが応急手当を施したものの、店には少なからず被害が出てしまった。

●お見合い
「申し遅れました。私はアルフォンス・ゾンターブルクです」
 城から救援の部隊が駆けつけ、店の中も落ち着いてきた頃を見計らってエプロン姿の青年が冒険者に挨拶に来たが、ナナルは眠ったままで目を覚ます気配もない。
「なんでエプロンなんだ。知らなかったから、つい怒鳴ってしまっただろ」
 侍女の格好を脱いだアリオスが怪訝そうに青年に尋ねると、菓子作りが好きなので頼んで厨房に入らせてもらったのだと言う。
(まさしく、ナナルを餌付けできるタイプなわけね)
(そうですね、料理上手な男は好かれやすいですし) 
 フォーリィはじめ女性陣がしげしげと若者を眺めまわしていると、バルザーがやにわに正面から切り出した。
「たいそうな邪魔が入りましたが、このあとどうされるのです? もし、お父上の意向に沿うつもりなら後見人である国王やこちらでの父とも言える虹龍殿も説得する必要がありそうですが、シーハリオンまで行かれる勇気はおありですかな?」
 少しばかりきつい調子でバルザーが言うと、若者が静かに答える。
「もちろん、必要とあらば地の果てまでも」
「失礼ですが」
 今度は、あらたまった調子でアリオスが尋ねる。
「ナナルは巫女としてカオスの穴封印に赴きました。命を落とすことを覚悟して、です。友人や家族と引き離された少女がこの世界のためにそうまでして、命が拾えたのは幸運だったからに過ぎません。貴方達はこの上さらにナナルを自分達のために利用しようとするのですか」
「あなたが怒るのは当然だ」
「俺は怒ってなど」
 アリオスの言葉をさえぎって若者は続けた。
「巫女殿を利用しようと考える者は多いし、またそれを退けるのは無理というものだ。巫女殿はすでにそういうお立場に立ってしまっているのです。でも、彼女に会ってわかりました。あの方は強く、そして聡明だ。己を利用しようとする者の足を、彼女なら容易に挫くことができるでしょう」
「そ、そんなことはわしらもよく知っておるわ! わしらが知りたいのはおまえさんがどう思っておるのかぢゃ!」
 孫を送るぢぢいの様な複雑な気分ぢゃ――と思いつつ、トシナミが詰め寄ると‥‥。

「私はあの方と一緒になりたいと思います。あの方がこの世界に留まっておられる限り」
「「「エエエええええ――――――――っっっ???!!」」」


「早速宣戦布告か。しかも当の本人はすやすや寝てるし」
 二軒目の取材に手間取って今頃現地に到着した琢磨が、ナナルに贈るウィル土産のお菓子をバックパックからごそごそ取り出しているグランに小声で呟いた。すると、
「巫女ファンの貴族子息がナナルに会う依頼だと思っていたのだが‥‥お見合いだったのか。俺は全く気づかなかった」
 色恋に疎いのはナナルだけだと思っていたのだが、おまえもデスかよ――――と琢磨はため息をついて羊皮紙にペンを走らせる。
 果たして、ナナルの気持ちはどうであったのか。
 それはまた、次回の依頼で明らかになる‥‥はずだ。