【後始末】オーガ掃討作戦

■ショートシナリオ


担当:九十九陽炎

対応レベル:2〜6lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 3 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月21日〜09月26日

リプレイ公開日:2005年09月29日

●オープニング

 シュヴァルツ城の戦闘からかなりの時間が経った今でも、爪跡と言うものは残る。
「良いところに。是非お頼みしたいことがあるのですが」
 冒険者の姿を認めるなり、声を掛ける若いギルド員。
「シュヴァルツ城の戦闘で、オーガの群れが参戦していたのは記憶に新しいと思いますが、当然それらは全滅した訳ではありません。撤退先に居付いてしまった者達も居ます。暫くは鳴りを潜めていたんですが‥‥」
 ギルド員は、はぁ、と溜息をつく。
「最近、戦闘で負った怪我が癒えたのか、活動を再開し始めましてね。近隣の村が被害を受けているんですよ。敵の数は不明ですが、結構大規模と聞いています。また、オーガのみではなく、オークやゴブリン等と、節操無い混成部隊のようですね」
 冒険者の一人に地図を手渡して続ける。
「皆さんにお頼みしたいのは、全滅させろとは言いません。出来る限り、数を減らしてください。無論全滅させた方が良いのは確かですけど、流石に規模も解りませんからね。それと、もう一つ。参考になるかは解りませんが、オーガ達は朝にやってきて、夕方には引き上げてるそうです。それでは、くれぐれも宜しくお願いします」
 ギルド員は丁寧に頭を下げた。

●今回の参加者

 ea8558 東雲 大牙(33歳・♂・武道家・ジャイアント・華仙教大国)
 ea8988 テッド・クラウス(17歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb1835 芦品 慈恩(43歳・♂・忍者・ジャイアント・ジャパン)
 eb3511 ヘヴィ・ヴァレン(34歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

●敵は雲霞の如く

 一足早く村に辿り着いたテッド・クラウス(ea8988)が見た物は、今正に村に押し入らんとしているゴブリンとコボルトの群れであった。
「一人では押し負けるかもしれない‥‥でも、村が襲われるのは見過せない!」
 近くの木に馬を繋ぐと、ゴブリン達の群れに切り込んで行く。挨拶代わりにと剣圧で数匹を纏めて薙ぐ。被害を受けたゴブリンの叫びに、他のゴブリン達もテッドに気付く。目の前には武器を持っていて、しかも一度に複数相手を攻撃できる。だが、子供。そう判断したゴブリン達は、一斉にテッドに殺到した。ゴブリンの棍棒に耐え、コボルトの剣を盾で弾き、或は身を捩って避け続ける。だが、とても多勢に無勢。反撃に出る余裕は無く、しかも息が上がり、コボルトの剣の餌食になるのも時間の問題かと思われた。その時である。凄まじい打撃音と共に、一体のコボルトが宙を舞った。
「大丈夫か?」
 声の主は芦品慈恩(eb1835)であった。疾走の術を駆使して走ってきたついでに、その加速状態からの一撃を叩き込んだのだ。飛ばされたコボルトは最早動ける状態ではなく、地面に転がって痙攣を起こしていた。そのあまりの威力に怯むゴブリンだが、まだ数の上では勝っている、とばかりに、隙だらけの芦品に襲い掛かる。だが、彼の重装備の前には、有効打を与える事は出来なかった。
「‥‥‥砕け‥‥散れ!」
 再び物凄い打撃音と共に、またしてもコボルトが宙を舞った。東雲大牙(ea8558)の渾身の一撃が炸裂したのだ。被害を受けたコボルトの首は捩れ、首の骨は完全に砕けている。生きているのが不思議なほどの怪我である。それを見たゴブリン達は、盾を持った個体の号令で逃走に入る。
「逃がすかよ!」
 ヘヴィ・ヴァレン(eb3511)が叫びと共に衝撃波を繰り出す。通常よりも得物の重量分威力を増したそれは、ゴブリンに致命傷を与えるに十分であった。だが、流石に全てを討ち取れた訳では無く、盾を持った個体はしっかりとその衝撃波を受け止めていた。そして、残った一握りは無傷のまま逃げおおせた。
「‥‥仕方が無い‥‥撃退できただけでも上出来か‥‥」
 大牙が呟いた。圧倒的不利な物量差で考えれば、十分過ぎる戦果ではあったのだが、逃げた敵も居るのも事実であった。
「まあ、敵もアレで全てと言うわけじゃないだろう、村人から情報を集めておくか」
 へヴィ、テッド、そして芦品が村に情報収集の為に向かった。

●寡兵を以て多勢を制す

 情報収集の結果、先程追い払った敵は、全体の一部に過ぎないことが判明した。そして、敵は弓を持つものは殆ど居ないと言うこと、常に同じ方向から来る事も解った。
「此処は待ち伏せをするのが一番だな。敵は此方が邪魔なのだ。排除する為には近付かねばならぬであろうからな」
 芦品が提案する。一回、二回追い払っただけでは敵は懲りずに押し寄せて来るだろう。つまり、黙っていても敵は来る。ならば少しでも有利になるように布陣しておくのが一番だろう。
「明日も早い、さっさと休んでおくか」
 オーガ達が攻めてくる前に起こしてもらうように頼み、眠りに就く冒険者達であった。
 翌朝、付近の茂みに潜伏し、敵を待つ冒険者達。やってきたのは、オーガとホブゴブリン。その合計は、冒険者達の三倍である。
「‥‥多いな‥‥だが、後には退けん‥‥」
 険しい顔で呟く大牙。他の冒険者達も同様に頷く。
「今です!」
 オーガ達が冒険者に気付かずに通り過ぎようとした瞬間、飛び出して切りかかるテッド。他の冒険者たちも後に続く。とっさの事に反応が遅れるオーガ達。奇襲としては成功であるだろう。テッドの剣がオーガの一体に傷を付ける。さらに、芦品が大槌で追い討ちをかける。一撃で一体しか攻撃出来ないなら、確実に一体ずつ仕留めた方が良い。
「‥‥潰す!」
 大牙の渾身の一撃がオーガの棒を叩き折り、怯んだ隙に渾身の蹴りをお見舞いする。流石のオーガも、その一撃の前には倒れ伏すしかなかった。
「喰らいやがれ!」
 一方、ホブゴブリンを相手にしていたへヴィ。得意の重量を乗せた衝撃波で纏めて叩き潰そうとする。範囲内には二体。
「取った!」
 本人の手応えとしては十分だったようだが、ホブゴブリンは若干ゴブリンより身のこなしに優れているらしく、一体は辛うじて避けていた。軽く舌打ちするへヴィ。逆襲をするホブゴブリンの斧を避けると、今度は一体ずつ、確実にその脳天を砕きに行く。
「加勢する!」
 さらに芦品も加わり、ホブゴブリンは倒れていく。だが、オーガの一体が背後よりへヴィを殴りつけた。
「ぐぁっ!」
 どうにか急所は避けたものの重い衝撃に呻くへヴィ。
「‥‥大丈夫か?」
「ああ、なんとかな‥‥」
 残ったオーガも倒した大牙が駆け寄る。その顔にも青あざが滲んでいた。
「見ろ、残りが逃げてくぞ」
 同胞を容易く倒す冒険者に恐れをなしたのか、動けるオーガ達が引き返して行く。
「後を追いましょう!」
 言うが早いかテッドが駆け出す。他の冒険者も後に続く。

●決戦は朝日と共に

 オーガを追い、森の中に分け入る冒険者達。そして、巣窟らしき場所の目星をつけると冒険者は一度引き返し、テントを張る。本陣を襲うに当り、疲労をなるべく取っておく方が得策であると判断したからである。
「‥‥勝てますかね‥‥僕達‥‥」
「さて、な。まあ、今まで二回返り討ちにしてるんだ何とかなるさ」
「全滅は厳しいだろうな。だが、これだけ大規模な集団が居座ってると言う事は、統括しているリーダー格が居ると言うことだ。それを倒せば、少なくとも集団は壊滅するだろうな」
「‥‥唯‥‥俺達は出来る事をするのみ‥‥」
 日が昇ると同時に、巣窟に攻め入る冒険者達。丁度これから村に攻め入ろうとした群れと鉢合わせる。それは、オーク戦士をリーダーとした、バグベアとオークの群れであった。
「さて‥‥後始末‥‥‥つけようか!」
 大牙がオーク戦士に大振りで殴りかかる。狙いはその槌であった。が、意外にもその攻撃は避けられる。その隙にオークの一体が大牙に殴りかかるが、テッドがその盾でカバーする。そして、芦品が助走をつけてオークを殴り付け、へヴィがその重みを増した打撃で止めを刺した。残りはオーク戦士が一体、バグベアが一体、平オークが三体である。その技量から、大牙がオーク戦士、テッドがバグベア、芦品とへヴィで三体のオークを相手にすることになった。
「行くぞ!」
 芦名がオークに殴りかかる。芦名の得意技である助走からの攻撃は、一度放つと隙が出来る為、そう何度も連発する事は出来ない。本人は一撃離脱戦法を狙っていたようだが、相手も自分と同等の質量がある分、弾き飛ばすわけにも行かず、となれば地道に一発ずつ叩き込むしかなかった。敵も避けられないが、此方も殴られる覚悟が必要である。防具分の厚みがあるとは言え、オークの攻撃力も半端では無い。二体なら押し負けるであろう。そこで鍵を握るのがへヴィである。
「喰らえ!」
 雄叫びと共にオークにメタルロッドを打ち付けるへヴィ。オークの槌を最小限の被害で受け止め、反撃として叩き込む。自らのダメージも蓄積しているはずだが、それでも攻撃の手は休めない。一体を打ち倒し、続いてもう一体と渡り合っている。へヴィが二体目を打ち倒すのと、芦名が殴り勝つのは殆ど同時だった。
「く‥‥手強いですね‥‥」
 一方、バグベアと戦うテッド。確実に敵の攻撃を受け、その上で確実に切りつける。だが、オークとオーガの特長を合わせたようなバグベアの前に、膨大な徒労感が襲っていた。幾度の攻撃を受け、幾度の攻撃を繰り返し、漸くバグベアは膝を折った。だが、同時にテッドもその場で腰砕けになっていた。
「‥‥倒す‥‥!」
 此方はオーク戦士と渡り合う大牙。渾身の一撃では避けられる可能性があるため、確実性と威力を両立させた攻撃で戦っていた。だが、その脂肪の鎧と、歴戦によって磨かれた槌の攻撃の前に、旗色は決して良くは無かった。ナックルをつけた拳、続いて鎌の様に鋭い上段蹴りが叩き込まれる。だが、戦士は怯むことなく槌を振り下ろす。柄の部分に手を伸ばし、受け止めようとするが、痛みに一瞬、反応が鈍り、直撃を受けてしまう。
「‥‥ぐっ‥‥!」
 呻く大河。其処に再び戦士の槌が振り下ろされる。だが、其処にテッドが割って入って盾で受け止める。
「‥‥大丈夫‥‥なのか?」
「僕もいつまでもへばってる訳には行きませんから‥‥」
 思わぬ増援に怯むオーク戦士、だが、其処に追い討ちを掛けるように、打撃音が鳴り響き、膝をつく戦士。芦名の突撃が直撃したのだ。
「後は任せてくれ」
「止めだ!」
 へヴィの叫びと共に、渾身の一撃が振り下ろされる。その一撃は、今まで蓄積されたダメージと相まって、戦士を葬り去るには十分であった。

●戦終って日もまた沈む

 オーク戦士達を仕留めた冒険者たちは、連日の戦闘による疲労も相まって、既に戦う力を残していなかった。
「やはり、全滅は無理か‥‥」
「仕方が無いな。だが、オーガ達もあの後散り散りに逃げた様だ。流石に、徒党を組んで襲うと言うこともかなり減るだろう」
「流石に俺達にこれ以上出来る事は無い。精々、村人に自衛の策を幾つか教授する事位だな‥‥」
「そうですね‥‥僕達はやれるだけの事は出来たと思います」
 全滅と言う明確な決着をつけられなかった以上、自分達で納得するしかない。冒険者達は、ある程度の治療を済ませると、村を後にするのであった。
 余談であるが、しばらく後にこの村では、オーガの軍勢から村を守った四人の英雄の話が、御伽噺として広まったと言う。