動き出した闇〜調査編

■ショートシナリオ


担当:九十九陽炎

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 62 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月13日〜10月18日

リプレイ公開日:2005年10月19日

●オープニング

「皆さん、良く来てくださいました」
 集まった冒険者に挨拶をする若いギルド員。その表情は真剣そのもの。
「既に内容は承知して頂けているとは思いますが、念のため説明しておきましょう。先日、アンデットの掃討をした廃砦の、本格的な調査に赴いて頂きます」
 ギルド員は一枚の羊皮紙を冒険者達に見せる。
「これは件の砦の見取り図の一階部分の見取り図の写しなのですが、この地点に扉が取り付けられていると言う報告がありました。恐らく、地下に続く階段はこの先にあるのでしょう」
 そして、今度はハンマーと手斧を持って来る。
「そこで、その先に侵入するのに必要であろうと思いますので、此方で強引に押し入る為の道具を準備させて頂きました」
 不穏な発言が混じったが、突っ込まずに流す冒険者達。
「但し、これ等を使わずに奥に侵入できたとしたら‥‥いえ、使ったとしてもですけど気をつけて下さい。悪魔信者と鉢合わせる可能性がありますから」
 ハンマーと手斧を冒険者の一人に押し付けると、席に着くギルド員。そして、もう一度真面目な顔を作る。
「そして、追加情報なのですが、この付近を通り掛かった人から、巨大な鳥を見たと言う話をちらほら聞くようになりました。本件には関わり無いとは思いますが、念のため伝えておきます。それでは、無事に依頼を達成できる事をお祈りいたします」
 ギルド員は頭を下げて冒険者を送り出した。
 

●今回の参加者

 ea5950 チャミリエル・ファウボーラ(17歳・♀・ナイト・シフール・イスパニア王国)
 eb0420 キュイス・デズィール(54歳・♂・クレリック・人間・ノルマン王国)
 eb2678 ロヴィアーネ・シャルトルーズ(40歳・♀・ファイター・人間・ノルマン王国)
 eb3243 香椎 梓(33歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb3336 フェリシア・フェルモイ(27歳・♀・クレリック・エルフ・ノルマン王国)
 eb3351 レオパルド・キャッスル(39歳・♂・ナイト・ジャイアント・イギリス王国)
 eb3385 大江 晴信(37歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 eb3536 ディアドラ・シュウェリーン(21歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)

●リプレイ本文

●調査と言う名の押し込み

 かつて冒険者によってアンデット駆除の行われた廃砦。今回、冒険者が派遣された理由は其処の調査であった。中には、アンデット駆除に関わった冒険者も居る。ロヴィアーネ・シャルトルーズ(eb2678)もその内の一人であった。
「先に鳥について調べときたかったんだけど、手掛りは無いみたいだねぇ」
「まあ、仕方が無いな。悪魔崇拝者が居たら、そいつ等を捕まえて聞き出せば良いさ」
 大江晴信(eb3385)が苦笑を浮かべつつ返す。冒険者達の大部分の興味は、新たに見かけるようになったと言う鳥に向いているようであった。
「だな。精々、根暗野郎共をお天道様の下に引きずり出してやるか! ‥‥ん?」
 既に戦う気満々で、レオパルド・キャッスル(eb3351)が魔法のハンマーと盾を構える。だが、彼は腰の下の方に妙な違和感を感じた。
「おーおー、良い肉つけてんなぁ」
 キュイス・デズィール(eb0420)が感心した声でレオパルドの腰部を撫で回している。感じた違和感の正体はキュイスの手だったらしい。
「ばっ‥‥、何処触ってんだ!」
「じゃ、別の所なら良いのか?」
 手をワキワキと動かし迫るキュイスに、激しく後ずさるレオパルド。
「そんなに怖がらなくても良いじゃありませんか」
 さらに香椎梓(eb3243)も悪戯っぽい笑みを湛えてレオパルドに寄り添う。更に蒼ざめて慌てふためくレオパルド。
「じゃれてる余裕があるのは良いけど、本分を忘れないようにしないとね?」
 三人を苦笑を浮かべて嗜めるロヴィアーネ。
「さ、そろそろ参りましょうか」
 フェリシア・フェルモイ(eb3336)が手に持ったランタンに火を灯す。
「此処みたいね。それじゃ、頑張ってね」
 目的の扉の前でディアドラ・シュウェリーン(eb3536)がレオパルドとロヴィアーネに声を掛ける。
「これって、調査と言うより押し込みよね‥‥」
「まあ、これも仕事だ」
 と、各々感想を述べつつハンマーを振りかぶる。数度の殴打の後、扉は崩壊し、その向こうには暗い地下への入り口が口を開けていた。

●査察と言うかガサいれと言うか

 地下は広大な広間となっており、寝室や倉庫等の部屋がオマケのように付いている、と言う構造であった。まずはアンデット等が潜んでないかどうか確かめる。
「悪魔だろうとなんだろうとオーラの力で倒すよ! ‥‥でも、まだ何も居ないみたいだね」
 チャミリエル・ファウボーラ(ea5950)ぼやく。意気込んでいただけに少々拍子抜けしたようだが、オーラエリベイションを使い、飛び回りながら光の届く範囲を眺めている。
「何か手掛りになるような記録等が見つかると良いのですが‥‥」
 一方書棚や引き出しなどを捜しているのはフェリシアである。記録は勿論、集団のリストや、資金の出所などが解れば、大きく進展がある事だろう。だが、捜索は難航しているようだ。
「‥‥あら、何かしら?」
 ディアドラが、床に刻まれた模様に気付く。様々な模様や文字が円形に配置されている。
「こりゃ、ひょっとすると魔法陣って奴かもな‥‥」
「生贄を捧げて崇拝する悪魔を召喚‥‥なんてこと、あるわけ無いわよね」
「流石にそれは笑えませんよ‥‥」
 どれどれと覗き込んだレオパルドが呟く。それを受けたロヴィアーネが冗談めかして言うが、流石に香椎に突っ込まれる。
「どうだ?何か見つかったか?」
「そうですね‥‥取りあえず、この位でしょうか‥‥」
 フェリシアに声を掛ける大江。フェリシアは数冊の冊子を指差してみせる。資金の収支状況、そして、教団員のリストらしかった。
「おや? この音は何でしょうか?」
 香椎が何かの音に気付く。ついで、大江、チャミリエルも音の正体を捉え始める。
「足音、か?」
「誰か来たみたいだよ! 準備しないと!」
 チャミリエルの言葉を受けて、冒険者達は広間に集まり、迎撃準備を取る。やって来たのは一見戦士風と見える男達と、インプが数匹であった。

●追い込まれたのはどちら?

「手前等! そこで何してやがる!」
 やって来た男の内の一人が剣を抜いて叫ぶ。盾と剣を構えた姿が様になっている所を見ると、腕前はそこそこはあるらしい。
「お前達を役人に突き出しに来たんだよ!」
 レオパルドが言葉と共に一歩歩み出る。その凄みに気圧される男達、唯一人を除いては。
「そうか、上の死体共を片付けたのはお前等か。お陰で使い易くなった。其処だけは礼を言っとくぜ」
 人を喰った態度の男。どうやら、一番の手練の様である。
「神の教えに背きし者を見過ごすわけには参りません!」
 クレリックらしいフェリシアの言葉に、今度はインプが騒ぎ始める。
「ギヒヒ‥‥神の御使いらしい言葉だなぁ‥‥生贄には丁度良い、絶対逃がすなよ?」
「あっちの男はどうする? アレも捕まえるか?」
「見るからに生臭ってるなぁ‥‥ほっとけよ」
「ンだとコラァ!」
 思いっきり馬鹿にされたキュイスが、インプ目掛けてホーリーを放つ。それを切欠に戦闘が始まった。
「オーラよ、邪悪を打ち砕く力となれっ!」
 ロヴィアーネにオーラパワーを掛けるチャミリアム。その間に大江も自分の日本刀にオーラパワーを掛ける。
「レオ! オーラパワーをブッ掛けてくれや!」
 オーラエリベイションの詠唱を終えたレオパルドに、大声で言うキュイス。レオパルドは応じる為にまた詠唱の為の集中に入る。その間にも敵は近付いてくる。
「まだ近付かせないわよ、アイスブリザード!」
 更に近付こうとする敵は、間合いに入る前にディアドラのアイスブリザードの前に足を止める。そして、キュイスのナックルにオーラパワーが掛けられる。
「ありがとよ、礼に悪魔避けの魔法を掛けてやる、目を閉じてな?」
「申し出はありがたいがそれどころじゃ無さそうなんでな。辞退させてもらおう」
 キュイスの申し出を断って、前線に向かうレオパルド。企みのあったらしいキュイスは悔しそうな表情をするが、その鬱憤を晴らさんとばかりに近くにいたインプに殴りかかる。が、格闘術を学んで居ないその攻撃は、尽く空振りに終る。
「戦えねぇなら大人しく下がってろや!」
 そのキュイスを狙って男が剣を振り下ろす。だが、その一撃を大江が受け止め、さらにロヴィアーネが背後から殴り倒す。そして、止めとばかりに倒れた男に日本刀を突き刺す大江。
「一応、回復役がやられると困るのよね」
「囮としても丁度良いしな‥‥。ま、一丁上がりか」
 そして、当のインプは香椎のデビルスレイヤーの一撃の下に葬られていた。
「持ってきておいて正解でしたね‥‥」
 微笑を浮かべて、別のインプに狙いを定める香椎。インプは慌てて逃げようとするが、回り込んでいたレオパルドに阻止される。
「逃がさねえよ‥‥喰らえ!」
 レオパルドの渾身の一撃に、文字通り伸されたインプ。確認するまでも無く即死であった。
「流石にやりやがる‥‥だが、やられっぱなしじゃ性に合わんよな!」
 間合いの外から振りかぶる男。だが、その一撃は扇状に剣圧を伴い、ロヴィアーネと大江を傷つけた。
「大丈夫ですか?」
 どうにか自力で下がったロヴィアーネと大江の治療を始めるフェリシア。
「迂闊には近づけませんね‥‥ならば、これで!」
 懐からダーツを取り出し、投げる香椎。だが、その盾に叩き落される。
「だったら魔法で‥‥アイスブリザード!」
「私もやるよ! オーラショット!」
 二つの魔法の直撃を受け、膝をつく男。
「詰み、だな」
 レオパルドの一撃で倒れ伏す男。だが、その間に残った男は隙を見て逃げ出してしまった。
「あ、コラ、待ちやがれ!」
 キュイスを始めとして、後を追い始める冒険者達であった。

●暗躍する、闇

 逃げ出した男を追う冒険者達。だが、男の逃げ足は速く、中々追いつけない。だが、辛うじてチャミリエルが追いついた。
「往生際が悪いよ!」
 シルバーナイフを振り回すチャミリエルだが、男に掠り傷をつけるのがやっとで、男の手に虫を払うかのように振り払われる。そして、ついには砦の外に出てしまった。突然の光量の変化で男を見失う冒険者達。だが、頭上より叫び声が聞えてきた。
「ゆ‥‥許して‥‥助けてくれぇ!」
 はっと上を見上げる冒険者達。其処には、巨大な鳥のような影と、それに掴まれた男。必死にもがいている様だが、鳥は意に介さずに上昇してゆく。
「くそっ!」
 係留してあった馬から鉄弓を下ろし、矢を射るレオパルド。だが、矢は届かずに推力を失い落下する。そして、ある程度の高さに達すると、鳥は男を落とし、そのまま悠然と飛び去ってしまった。男のほうは、生きているのが奇跡的なほどの重傷であった。
「何てこった‥‥」
 誰とも無く呻く。やりきれない表情は皆同じだ。そして、予め用意してあったロープで地下の男達を縛り上げ、詰問する。担当しているのは大江である。
「先程、お前の仲間がでかい鳥にやられたが‥‥あれとお前達はどんな繋がりがある?」
 男は、その言葉に一瞬怯えたような表情を浮かべたが、何か吹っ切れたような表情を浮かべて答えた。
「‥‥そうか、切られたか‥‥。俺達は唯の末端。あのお方はまあ、俺たちが裏切らない為の見張りみたいな物だな」
「そんな事を喋ってしまって良いのか?」
「だから言ったろ? 切られた、ってな。どっちにしろ殺られるんならかまわねぇよ」
 半ば自棄な男。無理も無い、確実なる死が突きつけられているのだから。
「知ってる事洗い浚い白状すれば助かるかも知れないじゃない。ところで、あの魔法陣、何なの?」
 ディアドラが口を挟む。それに対し男は、諦めが混ざった表情で答える。
「だったら良いけどな。あの魔法陣に関しては俺もしらねェ。インプが生きてりゃ何か解ったかも知れないけどな。俺達は、生贄を探すか、物資調達をやるように指示されてただけさ」
 他、幾つかの質問があったが、知らぬ、存ぜぬの一点張りであった。後日、街に帰還した冒険者は、男を役人に引き渡す事にした。最後に、有益な情報を引き出せたら、命だけは助けてやって欲しい、と付け加えて。