模擬戦をやらないか?

■ショートシナリオ


担当:九十九陽炎

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 52 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:10月19日〜10月24日

リプレイ公開日:2005年10月26日

●オープニング

「御免、少々頼みたい事があるのだが‥‥」
 言葉と共に、ギルドに入ってくる身なりの良い男。
「今日は、どの様なご用件でしょうか?」
 いつも通りの対応を行う若いギルド員。人によって態度を変えていてはとても受付は務まらない。
「うむ、此処最近、内乱にデビルと情勢が不穏であろう? 無論、我々騎士も鍛錬はしているのだが、少々冒険者に手伝ってもらいたい事があるのだよ」
「ふむ?」
 眉を顰めるギルド員。前置きは確かに頷けるのだが、何をするのかさっぱり見えてこない。
「身内だけで模擬戦をしても、お互いの人となりは知れてしまうからな。互いの戦法が読めてしまい、内容は閉塞してしまっている。だが、傭兵や悪魔信者共は予測も付かない戦法を取ってくるかも知れぬだろう? そこで、冒険者を仮想敵として訓練をしたいのだ」
 男の言葉に、ギルド員は納得がいった、と言う表情で頷いた。
「確かに、冒険者は様々な事態を想定して動きますから、そう言う意味では確かに適任でしょう。解りました。お引き受けしましょう」

 後日、集まった冒険者達に説明を始めるギルド員。
「皆さんには、騎士団のお相手をして頂きます。場所はある程度開けた林で、特に危険な動物は入り込んで居ない事は確認されています。よって、相手との戦闘に集中する事が出来るでしょう。とは言え、あくまで訓練なので、やり過ぎないようにして下さい。そして、実力差があっては、訓練にはなりませんから、補助効果のある物品は一時預かりとなりますのでご注意下さい」

●今回の参加者

 ea1911 カイ・ミスト(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2389 ロックハート・トキワ(27歳・♂・レンジャー・人間・フランク王国)
 ea5989 シャクティ・シッダールタ(29歳・♀・僧侶・ジャイアント・インドゥーラ国)
 ea9248 アルジャスラード・フォーディガール(35歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・インドゥーラ国)
 eb0420 キュイス・デズィール(54歳・♂・クレリック・人間・ノルマン王国)
 eb2546 シンザン・タカマガハラ(29歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb2762 クロード・レイ(30歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イスパニア王国)
 eb3305 レオン・ウォレス(37歳・♂・レンジャー・人間・ノルマン王国)

●サポート参加者

無道 風鳴(ea1658

●リプレイ本文

●細工は流々

 カイ・ミスト(ea1911)の提案により、場面設定は林に逃げ込んだ敵の掃討と言うことになった。半日早く現地入りし、罠を仕掛け始める冒険者達。
「草を束ねて結ぶ‥‥これは基本だな」
「穴は膝くらいまでの深さで良いか。隙を作れれば良い訳だしな」
「数だけ水増しするなら、奥のは掘ったように見せかけるだけと言うのもありだな。相手が避けようとさえすれば、進路の限定にはなる」
 罠を仕掛けているのはレンジャーのレオン・ウォレス(eb3305)とクロード・レイ(eb2762)に加え、ファイターのシンザン・タカマガハラ(eb2546)である。彼等は罠作成に優れているのでこの役目を買って出ていた。
「あらあら、そういえば紅一点。女はわたくしだけですわね」
 これから戦闘だと言うのに、シャクティ・シッダールタ(ea5989)は全く気負っていない様子である。確かに彼女は紅一点。だが、敵味方併せて身長は最大、肉弾戦の技術でも五本の指に入る猛者である。
「へへ‥‥偶にはアレも良いかもな‥‥アレも」
 鼻の下を伸ばしてキュイス・デズィール(eb0420)が独り言を言っている。その後の目的のために、着ている鎧は簡単に脱げるようになっているのだが、それがどう転ぶかは今の所不明である。
「さて、そろそろ時間だな‥‥」
 日も陰って来たあたりでロックハート・トキワ(ea2389)が呟く。彼は先行し、敵の構成等を把握する役目がある。視界も十分では無いこのような場所においては索敵は重要な任務である。
「笛の音‥‥戦闘開始か」
 合図の笛の音と共に アルジャスラード・フォーディガール(ea9248)が呟いた。

●交戦開始

 先行偵察隊の先頭に立っているのはロックハート、ついで、戦闘馬でカイが追走し、戦闘補助としてシンザンがついている。ロックハートは見事に足音は愚か気配さえ消しているのだが、問題があった。
「なあ、カイ‥‥俺達の布陣、入れ替えた方が良くないか?」
「何故だ?」
「目立つ、五月蝿い」
 そう、確かにカイは馬術の達人で、こう言う障害物が多い地形でも支障なく馬を走らせることが出来ている。だが、戦闘馬の巨体と足音を消す事は流石に出来ない。そして、忍び足は姿を消すわけではないので、視界内に収まれば発見されてしまう。逆に戦闘馬が前に立てば、自ずと目立つ為、他が目立たなくなる、つまりは見つかりにくくなる。
「解った、では私が先行しよう。シンザン殿も其れで良いか?」
「ああ、では俺は更にその後ろにつこう。その方が見つかりにくいし、いざと言うときには殿になれる」
 やがて、シンザンが敵集団を発見する。それを受けてロックハートは林の中に潜伏し、カイとシンザンは音を立てて向こうに気付かせる。
「居たぞ!」
 騎士の一人が叫び、纏まって走ってくる。弓使いの射線上に立たないように注意をしながら、林の奥へと誘う二人。やがて後退を止め、騎士達に向き直る二人。
「好期!」
「待て、逸るな!」
 二人の足が止まったのを受けて、騎士の一人が、他の騎士の制止を聞かず勇んで間合いを詰めようとする。が、数歩の時点で前のめりに転ぶ。
「掛かったな!」
「やらせん!」
 茂みに潜んでいたアルジャスラートが、倒れている騎士に殴りかかる。だが、別の騎士が割って入り、小太刀で受け止め、同時にダーツを投げつける。それを盾で叩き落すと、仕切りなおし、とでも言いたげに間合いを取るアルジャスラート。だが、更に別の騎士が弓で狙っている。だが、その矢が放たれる直前、彼の肩に二本の矢が突き刺さり、さらに追い討ちと言わんばかりに光線が浴びせかけられる。
「奇襲としては十分だが‥‥」
「流石にまだ傷は浅いか‥‥」
「もう一押し、でしたわね」
「うぐぐ‥‥回復を‥‥」
 呻きながらポーションを飲み下す騎士。レオン、クロード、シャクティによる伏兵の一手である。
「狙撃‥‥向こうか!」
 その方向に目を向けた一際筋肉質の男がシャクティを発見し、スクロールを広げる。だが、詠唱が始まる直前、キュイスのホーリーによって意識がそがれる。
「おっと、お前の相手は俺だぜ‥‥」
 怪しく手を蠢かせ、舌なめずりをするキュイス、その異様さに男が怯み、一歩後ずさる。だが、其処には浅い穴が掘ってあり、バランスを崩す。
「貰った!」
 更に男目掛け、いつの間にか忍び寄っていたロックハートの刀が迫る。狙いは足の腱。だが、穴にはまり込んでいた男の足の腱は狙えず、止むを得ず別の場所を切りつける。
「野郎!」
 丁度、漸く体勢を整えた最初に転んだ騎士がロックハートを殴りつける。思わぬタイミングで喰らった所為か、目の前を星が舞う。敵も、味方もこの混戦に自制心が薄れていた。一部を除いては。
「良し、皆、散れ!」
 アルジャスラードが叫んだ。彼は狙っていた。一対一が狙えそうな状況を。どんな言葉も頷けそうな状況を。とっさに転進するアルジャスラート。人数が減っては戦線を構築出来ないと判断した他の冒険者たちも、各々別の方向に転進する。レンジャー二人とシャクティ、そしてシンザンは纏まっていたが。そして、予期せぬ出来事に浮き足立つ騎士団。そして、迂闊にも次の一言を発してしまった。
「止むを得ん、各自散開して敵を追え!」

●決着

 馬に追いつけるのは馬だけである。と言うことで、必然的にカイの相手は同じく馬に乗った騎士であった。余談だが、最初に転んでいた騎士を止めようとしたのも彼である。
「一対一での騎乗戦闘か‥‥いい経験になりそうですよ」
 呟きながら機を覗うカイ。騎士も慎重な性格のようで、此方も隙を覗っている。
「来ないならば‥‥此方から行くぞ!」
 真直ぐ馬を走らせるカイ。対して騎士は盾で受け流し、反撃を叩き込む為に待つことを選択していた。だが‥‥。
「ぐはぁ!」
 叫びを上げたのは騎士の方であった。防御に集中していればその攻撃を受け流せていたであろう。だが、後の攻撃の事を考えていたため、盾で受け止め損ねていたのだ。カイの加速のついた一撃は、騎士の体に深い傷を刻み付ける。だが、騎士の捨て身の一撃もまた、カイに同等の深い傷を付けていた。続いてもう一度剣を振るう騎士。その一撃は、抵抗もなくカイの体に叩き込まれていた。だが、それは同時に、自らの身にもカイのカウンターアタックが叩き込まれたと言うことでもあった。

 騎乗騎士、リタイア。敗因、カウンターアタックを狙った為のチャージングの受け損ない。

「畜生‥‥何処に消えやがった‥‥」
 ぼやいているのは先程ロックハートに一撃を叩き込んだ騎士。ナックルにローブと、一見騎士には見えないが、一応騎士であり、持っている盾には紋章が刻まれている。そのまま追ってきたは良いが、途中でまたも躓き、その隙にロックハートを見失ってしまっていたのだ。探し疲れ、木に寄りかかる騎士。だが、彼の死角よりダーツが投げつけられる。
「うおっ?!」
 腕に痛みが走る。見ればダーツが突き刺さっている。鍛えた腕の筋肉のお陰で大した傷にはなっていないが。そして、視線の先には移動を始めているロックハートの姿が。
「クッ、ばれたか‥‥この形は不本意だが‥‥やるしかないな‥‥」
 呟きと共に手裏剣を投げて牽制するロックハート。無論、ポーションを飲んで先ほどのダメージは抜いてある。だが、利き手ではない手で投げられた其れは紙一重で避けられる。
「おっと、‥‥アブねェな‥‥」
 猪の様に急速に間合いを詰める騎士。ロックハートも覚悟を決めて肉薄する。先に切りつけたのはロックハート。霞小太刀の鋭い一撃で騎士の胸板を切り裂く。だが、騎士も意地と言うか、負けじと素早く、且つ重い連打を浴びせかけてくる。だが、諦めずに繰り出したロックハートの斬撃の前に、膝を折った。

 軽装騎士、リタイア。敗因、後手に回った所為。先手を取れていれば勝敗は変わっていたかもしれない。

 ある程度深くまで走ったところで騎士を待つアルジャスラード。だが、一向に姿を表す気配が無い。苛立ちが募るアルジャスラード。だが、突如二本の矢が飛来する。油断もあったのか、一本を盾で叩き落したものの、もう一本を喰らってしまう。
「少々当ては外れたが仕方ない、俺の技が射撃手にも通じるかどうか試してみるか」
 盾を構え、意識を集中して矢の飛来する方向に向けて歩き出す。弓矢は攻撃と攻撃の間に間ができるのが欠点である。彼の武を持ってさえ、飛んでくる矢を防ぐのは至難の技であったが、稀に飛んでくる甘い矢を確実に防ぐ事で、辛うじて間合いを詰める事に成功する、接近されてしまえば、狙撃手には打つ手はなかった。彼の矢がアルジャスラードに届く前に間合いを詰められる距離まで接近されると、潔くリタイアした。尤もストライクを食らえば否応なくリタイアであったが。

 狙撃手A、リタイア。敗因、欲を出さずに一発ずつ撃っていれば若しかしたら結果は変わっていたかもしれない。

 最も体格の良い男をしきりに挑発し、奥に誘うキュイス。途中何度かホーリーを放っており、精神的にきついはずだが、煩悩パワー全開で頑張っている。一方、相手の魔法使いは息が切れ始めている。
「さて、そろそろ頃合か‥‥」
 鎧を脱ぎ捨て、男に文字通り飛び掛るキュイス。だが、その分厚い胸板に抱きとめられたかと思うと、奇妙な浮遊感を味わい、やがて頭から衝撃を突き抜け、目の前を星が舞う。そして、何が起こったのか把握する前に、首に太い腕が回される。そして、首に巻き付く暖かな温度を感じながら、彼の意識は闇に呑まれて行った。

 キュイス・デズィール、リタイア。敗因、彼の予定が丸々外れてしまったからであろう。世の中そんなに甘くない。ちなみに、彼の相手は炎の魔法を使うウィザード‥‥の筈だったが、格闘術に目覚めてしまい、魔法技術そっちのけで今ではこの騎士団の中で団長に次ぐ腕にまで成長してしまったらしい。

「流石に敵も手強そうだな‥‥」
 シンザンが呟いた。目の前に迫る敵は騎士に狙撃手、魔法使いとバランスが取れている。しかも、その道では彼等冒険者にも引けは取らないであろう実力者と見て取れる。但し、彼等が確認しているのは三人。そして、林の中と言う状況では、視認距離は同時に大抵魔法や射撃の範囲でもある。
「流石にこの距離では撃ちまくるしかないか‥‥」
「確かにな‥‥手数を増やすしかない」
 ダブルシューティングを中心に射掛けるクロードとレオン。それに対し、弓を持った騎士と魔法使いもそれぞれダブルシューティングとサイコキネシスで対抗する。その下で、じりじりと剣と盾を持った騎士が間合いを詰めている。だが、騎士団と冒険者の違い、それは回復役の有無。シャクティは精神力の続く限り、安定性には欠けるがリカバーを掛ける事ができる。それに対し、騎士団側はリカバーポーションが合わせて5つ。物量の差は如何ともし難く、騎士達はリタイア寸前まで追い詰められる。だが‥‥。
「喰らえ!」
「ぐぁ!」
 レオンが悲鳴を上げる。そして、その背後には小太刀を持った騎士の姿があった。
「馬鹿な‥‥伏兵は見つからなかったぞ!」
「正面に集中しすぎましたね‥‥私は遠くより迂回してあなた方の背後に回ったのですよ」
 丁寧に種明かしをする騎士。その一瞬の隙を突いて、盾を持った騎士が間合いを詰めていた。
「先手必勝、喰らえ!」
 間合いに入った瞬間、シンザンが重量を乗せたバーストアタックを放つ。すかさず盾で受け止める騎士、受けた盾が砕け散る。そして、その衝撃は彼の腕の骨すら砕いていた。だが、彼はそこで終わりではなかった。同時に彼の刀もシンザンに向けて放たれていたのだ。しかも、カウンター。余分なオマケを持って。シンザンもやはり盾で受け止めるが盾は砕け、そして、その衝撃に耐えかね、彼自身も崩れ落ちた。

 シンザン・タカマガハラ、リタイア。敗因、先手必勝が必ずしも正しいとは限らない。一撃で相手を倒せない場合には。

「せめて‥‥一人位は道連れにしていく!」
「ガッ!」
 今度は騎士の口から呻き声が漏れる。シンザンが倒れたその後ろから、レオンが執念のダブルシューティングを放っていたのだ。既にその身を守る盾は無い。成す術無く倒れる他なかった。

 騎士団長。リタイア。敗因、捨て身の連携の前に力尽きる。

 この直後より、お互いにバタバタと倒れてゆく。まずはレオンが狙撃手の弓を受け、重傷、リタイア。ついで、地魔術師、クロードのダブルシューティングの前に力尽きる。
「ぐっ‥‥」
「がはっ!」
 残った狙撃手と、クロードの射撃戦。シャクティは隠行騎士とにらみ合ったまま、動くに動けない。二人はほぼ同時に矢を番える。この時の二人の違いは、クロードは一人を狙えばよかった、だが、狙撃手はシャクティも射ねばならなかった。その結果蓄積したダメージが狙撃手の限界を超えてしまったのだ。辛うじてクロードはまだ立っている。
「残りは貴方一人ですわね‥‥降伏なさいませ」
 シャクティが自分の腕に刺さった矢を引き抜きながら説得する。だが、騎士の返答は否であった。
「笑止、敵に下るなど、国を守る者として断じてする事はできぬ!」
「仕方がありませんわね‥‥では、かかっていらっしゃいませ」
 その言葉を受けて騎士が斬りかかる。それがシャクティに傷を残すが、さらにシャクティは踏み込むと、騎士を投げ落とした。そして、クロードが矢を番えた弓を向けると。そこで漸く騎士は降参した。

 結果、冒険者二名生存、騎士団全滅、と言うことで冒険者側の勝利となった。後ほど、騎士団と冒険者は意見交換をして依頼を終えた。尚、破壊された物、消耗したものは騎士団より補充され、ロックハートの手裏剣はノルマンでは手に入らないため、必死に捜索された結果漸く回収されたらしい。