星河を渡るその日まで
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■ショートシナリオ
担当:紡木
対応レベル:フリーlv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:5人
サポート参加人数:1人
冒険期間:07月06日〜07月11日
リプレイ公開日:2007年07月14日
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●オープニング
『クレメント。クレメント・ルース』
聞き慣れない音に、少女は首をかしげた。
『イギリスの生まれなんだ。大陸風だと、クレーメンス? クレマン? とか、そんな感じ。さて、君の名前は? 親切なお嬢さん』
行き倒れ男クレメントは、にっこりと笑って、差し出された林檎を受け取った。
それは、もう20年も前のこと。
「今年も、そんな時期になりましたか」
「ええ。早いものですね。リュックの居ない時分に申し訳ございませんが、2日程お休みを頂いても?」
「勿論ですよ。あなたには、普段からあまりお休みを差し上げられなくて、常々申し訳ないと思っているので。‥‥うん、美味しい」
淹れたてハーブティーの香りを深く吸い込んで、感嘆の溜息をひとつ。
「マリーさんのお茶は、本当に」
ブラン商会店主、ダニエル・ブラン。只今、午後の休憩中。
「また、娘さんとお2人で?」
家政婦のマリー・ルースは、お茶請けの菓子皿を置いて、小さく首を振った。
「いえ、エリザは、お休みが取れないというので、私1人で」
「それは、彼も残念でしょうね。‥‥う〜ん‥‥近頃、世間は物騒だ。先達ても放火騒ぎがあったばかりだし。お2人でも危ないのに‥‥‥そうだ! 同行者をお願いしましょう。シャロンが普段お世話になっている、ええと、そうそう、冒険者ギルドで」
「いえ、そんな大げさな。歩いても半日で着きますし、翌日には帰って来ますから」
「いやいや、この前も火事騒ぎがあったばかりだ。もしもマリーさんに何かあったらウチは立ち行きませんからね。費用はこちらで持ちましょう」
「そんな‥‥」
「そうしてくださいな」
深く頷いたのは、店主夫人のルイーズ・ブラン。
「奥様‥‥」
「ね、マリー姉さん。今年は私もこの人も居るし、2日なんて言わずに、もっとゆっくりしてきたら?」
会いに行くのは、年に1度。過ごすのは、1晩。それは、昔、自分で決めた事だった。
「今年も村の子達に、お土産を持って行くのでしょう? 沢山人がいれば、それだけ運べるわ。用意するのも手伝って貰ったら良いじゃない。此処を使ってくださいな」
馬車を用意しようとは言わない。必ず、マリーは自分の足で歩いて行くからだ。
「それは良い。冒険者の皆さんが来てくれたら、シャロンも喜びますからね」
ダニエルが頷いたなら、それはもう決定事項。
「‥‥ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えさせていただきます」
シャルロットが喜ぶ、と言われては断れない。今頃は、新人と店に出ているだろう、ブラン商会の一人娘。
昨晩、ジャパンからの手紙を何度も何度も読み返していた姿を、思い出す。自分にも、確かにそんな時代があった。
『ねぇ、マリー』
その人は、絵描きだった。だから、一緒に旅をした。
『華国には、不思議な昔話があってね』
それは、年に1度しか会えない夫婦の話。
『でもね、一瞬だけど、永遠でもある。なんせ星だからね』
ずっと一緒に居られるけれど、瞬く間に終わってしまう人の生と、一瞬の邂逅ではあれど、永遠に続く星の光。
『なかなか、上手くいかないよね』
一緒に過ごした日々は、今となっては、たった一度の瞬きのようで。
●リプレイ本文
「久しぶりね。元気にしてた?」
「はい! ユリゼさんも、お元気そうで」
うきうきと出迎えたシャルロットを、ユリゼ・ファルアート(ea3502)が引き寄せる。
「‥やぁ、頬が薔薇色に染まっている。いい事でもあったかい?」
溢れる王子様オーラ。普段着でも格好良い。確実にレベルアップしている。
「み、皆さんにお会いできたことが嬉しいんです! ‥あと、リュックから、手紙が。皆さんにも宜しくって。元気、みたいです」
たまに視線を感じるから、今度団子で釣ってみる、とかよく分からないことも書いてあったが。‥団子で釣る? ちなみに、穴が空くほど読み返したことは秘密だ。バレていたって秘密なのだ。
「それは良かったです」
「一安心ですね〜」
「クリスさん! エーディットさんも‥お久しぶりです」
エーディット・ブラウン(eb1460)には、照れたように笑う。ユリゼが首を傾げた。
「何かあったの?」
「えとっ、秘密です」
「秘密です〜♪」
「あら、怪しいわね」
微笑ましいやり取りに、マリーが目を細める。
「ふふ‥。ケイジさんも、お久しぶりです。そちらの方々は、はじめましてですね」
「南イングランドのアフリディ・イントレピッド(ec1997)と申します。エフとでも呼んでくだされば幸いです」
「アレックス・ミンツ(eb3781)だ。よろしく頼む」
「エフさんにミンツさん。よろしくお願いいたしますね」
「タンザク?」
「これくらいの四角い紙で‥」
クリスが手で大きさを示すと、シャルロットは店の奥へと引っ込んだ。戻って来ると、手に五色の和紙と笹の枝。
「荷物の中に入っていて‥何に使うんだろって思ってて。ジャパンって面白い行事が沢山ですね。多分売れないし、マリーさんに何枚か渡して、残りはお客さんに配って、笹に吊るして貰います。教えて頂いたお話も伝えますね。クリスさんも1枚どうぞ」
「ありがとうございます♪ これで、ノルマンに七夕が広まったら素敵ですね。来年は商品として売れるかもですよ」
ちなみに、話しているのは店先で、クリスとユリゼの格好は東洋皇子様、エーディットとシャルロットはお姫様である。
「ね、この簪借りて良い? エーディットさんに似合いそう」
「あ、本当。どうぞ、使ってください。‥ユリゼさんには、この扇とか素敵かも。ちょっと持ってみて下さい!」
道行く人は、またブラン商会が何か? と興味津々。ちなみに、牛飼いは『海の向こうにいるから』今回は見送りだそうな。
「私は、先に吊るしておきますね〜。『リュックさんが早く帰ってくるように』♪」
「これ、いくらかな?」
アフリディは、絵の具を手に取った。
「良かったら、差し上げます。安いものだから、あまり鮮やかじゃないですけど」
シャルロットが、いくつか袋に詰めて差し出した。
「いや、これは個人的な土産だからな。あたしが払うよ。何と言われてもね」
きっぱりと言い切り、代金を渡した。
「ボクはこれで失礼するですね。明日から、画家見習いさんのお手伝いなのです」
「画家、ですか」
「? ‥何か?」
「いえ、それはもうとんでもなく甲斐性なしの絵描きを知っていたもので、ちょっと」
マリーの苦笑に、クリスは首を傾げたのだった。
翌日、馬とロバに荷物を積んで出発。そう遠い場所でもないので、歩みは自然とゆっくりになる。
「マリーの故郷は、どんな村なのでしょう?」
と、パトリアンナ・ケイジ(ea0346)。
「え? 私は、両親共々パリの生まれですけど。ああ、あの依頼書だと、里帰りとも読めますわね、すみません。確かに故郷のようなものです。娘はあの村で生まれましたし」
「そういえば、娘さん、今回はご一緒ではないのですね?」
「ええ。お休みが頂けなくて。家政婦をしておりますので、ケイジさんに会えたら、学ぶことが多いでしょうね」
「それでは、次の機会にでも」
「はい。是非」
水場や木陰で休憩を取りながら進み、昼過ぎには村へ到着した。
教会は、丘の麓に小ぢんまりと建っていた。入り口に、50歳くらいの女性。
「今年もお世話になります。‥皆さん、こちらはクレリックのノエミさん」
「ようこそいらっしゃいました。何もない村ですが、寛いで下さいね。さ、お疲れでしょうから、荷物を下してください」
「アレックスさんは、力持ちですね〜」
大きな荷物を軽々と抱える姿に、エーディットはしきりと感心している。
厩に馬とロバを繋ぎ、荷物を運び終えてから、お茶で休憩。
「あら、マリーさんは?」
いつの間にか姿が見えない。ユリゼが、周囲を見回した。
「挨拶でしょう。1年振りですもの」
ノエミが、おっとりと微笑んだ。
「そっか‥教会には‥‥」
ちらりとパトリアンナを伺うも、黙って茶をすする彼の表情は読めない。
「1年に1度だけ‥か‥‥」
「1年ぶり、ね。エリザは、お仕事ですって。あの子も、もう大人になったのよ」
少し寂しそうに微笑んで、マリーは手を伸ばした。夏の日差しの下、伴侶の名を記した墓石は、じんわりと温かい。
「えーっとね、およめさん!」
「素敵ですね〜旦那さんは誰ですか〜?」
「わかんない。でもね『おとなになったらかっこいいひととけっこんしたいです』ってかくの」
夕刻、教会に集まった子供たちが、短冊を手に願い事を考えている。
「『けっこん』、『けっこん』は〜」
「こうですよ〜」
蝋版に、エーディットが正しい綴りを書いて見せると、少女は真剣にそれを写し取る。
「ありがとうございます。あの子たちも、勉強がしやすくなりますわ。炭や砂で手を汚さなければならなかったので」
蝋版は、アフリディのお土産だ。木枠に蝋を引いたもので、尖った棒で字を書くことが出来、蝋を溶かしなおせば何度でも使える。ノエミは、篤く礼を述べた。
「役立ててもらえれば、それで良いのだね。この子たちは、皆なかなか書くのだな」
ゲルマン語に関して、少々綴りに自信のない彼女は、感心したように頷いた。子供の年齢は様々。年長の子供たちは、自分で願いを書き、年少の子を手助けしている。ユリゼとエーディットも手伝って、皆の分を書き上げた。
「ジャパンは、この辺りの島国で〜月道というもので繋がっているのです〜」
地面に大雑把な地図を書き、ジャパンと華国について、エーディットが説明している。
「これ、ジャパンの服なの? お姉さんのも?」
浴衣の袖をひらひらさせながら、少女が尋ねた。他にも、浴衣の子供が何人か。
「そうらしい。浴衣はパトリアンナ殿とマリー殿が作ってくれたのだね。あたしのは、袴というのだ」
「七夕っていうのはね、今日、7月7日のことで‥」
ブラン商会には、短冊と一緒に七夕物語の絵草子も入荷されていた。それを買っておいたユリゼが、絵を見せながら解説をする。
「おや、なかなかお似合いだ」
浴衣姿のマリー。
「そ‥そうですか? あの、エーディットさんが着せてくださったのですけど‥その、年も年だし、お恥ずかしくて」
紫陽花の淡い模様が、ランタンの明かりに映えている。
「よく似合ってるから大丈夫よ。さ、大分暗くなったわね。そろそろ吊るしましょ」
笹の代わりにオークの枝を、五色の短冊で飾っていく。窓辺にくくりつけて、完成だ。
『いつかパリで暮らせますように』『りっぱなだいくさんになりたい』『父さんに少しやさしくなってほしい』
不吉な世相が避けて通りそうな程、子供たちの願いは、どれもささやかで微笑ましい。
「少し離れててね」
ユリゼが、水桶に向かいクーリングを詠唱。
「あれ、ちょっとやりすぎ?」
凍りついた水面に、子供たちが目を見張る。
「お姉ちゃん、すっご〜い」
「冷たい!! きゃ〜」
夏にはあり得ない現象に、大喜びだ。
「ちょっとやり直すから、待っててね」
汲みなおした水で、もう一度。
「‥うん、今度はいい感じ」
適度に凍ったそれを、ざっくり砕いて器に盛っていく。そこにエーディットのお土産と、パトリアンナ特性のジュースをそれぞれかけて、氷菓子の出来上がりだ。
ユリゼは、以前にも魔法でシャーベットを作ったことがあった。両親を亡くした幼い姉妹の為。その時、子供達に、寂しくなったら教会に来ると良い、少しだけ両親に近い場所だから、と伝えたのだ。でも‥、ユリゼは思う。マリーは、それすら年に一度しか己に許さない。そこに、どんな想いがあったのか、今何を思っているのかは、分からない。でも‥‥
「おいし〜」
思案に耽っていると、氷をかき込む少年の姿が目に止まった。
「あ、あんまり急ぐと‥‥」
忠告半ばで、少年は頭を抱えて突っ伏した。
「頭痛くなるわよ‥って言おうと思ったんだけど」
少々遅かった。
「カンナを借りて来たのさね。大きい氷も、これで削ってみよう‥む、意外と難しい」
「あ、俺やる」
10歳くらいの少年が、アフリディからカンナを受け取り、氷を削る。
「上手いものだね」
「父ちゃん大工でさ。俺も大工になるから」
「ふむ、なかなか将来有望だな」
満天の星の下、五色の短冊が揺れる。冷たい菓子と涼やかな衣装で、皆七夕の夜を堪能したのだった。
翌朝、台所では、パトリアンナとマリーが粉を相手に奮闘していた。
「しかし、マリーは依頼主様なのですから、楽をしてみては? 台所は僕が占有ということで」
「いえ、私も好きでやってますから。占有ではなく、戦友でいさせてくださいな」
こちらは、隣の倉庫部屋。
「直りますか?」
ノエミの問い。
「ああ」
底の凹んだ鍋を覗き込み、アレックスは答えた。
「良かった。このままだと使い辛くて」
「他にも、壊れた金物があったら持ってくると良い」
「すみません、こんな事まで」
「いや、子供の相手は他がしているから」
ふと外に目を遣ると、冒険者を中心にいくつか輪が出来ていた。
「これ、妖精さんの葉っぱなの〜?」
ユリゼに渡された葉を、不思議そうに見つめる少女。
「そう。依頼で、トレントに会ったことがあってね。お土産に貰ったのよ」
「とれんとって?」
「森の番人よ。怒らせると怖いんだから。枝で攻撃してきたり、森を迷宮に変えちゃったり」
「え〜」
「でも、きちんと話を聞いてくれるし、話せば分かってもらえるわ。だから、森を大事にしないとね」
「パリには、素敵な正義の魔術師さんがいるですよ〜」
怖い悪魔と戦った金髪ツーテール美少女(?)の活躍譚。
「ん〜っと、それ、プリティ‥ナントカ?」
「知ってるですか〜?」
「おとーさんがね、パリできいたって。パリで、すっごいすっっごい有名なんでしょ?」
「そうなのです〜。パリで大人気★☆なのですよ〜」
にっこり。エーディット会心の笑み。
「そう。好きなように、楽しんで書いてごらん。ゆっくりでいい」
用意してきた木枠に布を張り、木炭で線を引く。
「エフお姉ちゃん、上手だね。アベルみたい」
「ありがとう。アベル殿というのは、村の方かな? でも、うまい下手なんて、気にしなくていいんだ。書きたいものを書けばいいんだ。」
普段は、地面に落書きがせいぜいの子供達である。キャンバスや、色とりどりの絵の具に、はしゃぎっ放しだ。
「すっげ、絵の具だ。こんなに沢山、久しぶりに見たなぁ」
子供とは違う声。振り返ると、青年が立っていた。
「アベル〜」
「絵が上手な、アベル殿か?」
「ははっどうかな。普段は、木の板に炭で書いてるばっかだし」
「良かったら、これ、使うかい?」
「いいの? うわ〜、ありがと!」
「アベル! あらま、また背が伸びたわね」
「マリーさん!」
マリーとパトリアンナが、パンと焼き菓子の籠を抱え、やってきた。
「パリで話題の、蜂蜜煮入りスズランパンを作ってみましてね。災害を避ける願いも込めて」
「それは素敵だ。アレックス殿達も呼んでくるのだね。外でお昼にしよう。皆、絵の具で手が汚れただろう? 洗っておいで」
アフリディが席を立った。
「アベルが、お墓、いつもきれいにしてくれてるって、ノエミさんが。ありがとうね」
「いいって! 俺の師匠だしさ。そういや、今年エリザは来れねぇって?」
「ええ。あの子も、アベルに宜しくって」
「うん。‥俺、今度パリ行くんだ。したら、会いに行くよ」
暫くして皆が揃った。快晴下での昼食の味は、格別だ。
翌日は、教会の手伝い。
「‥身内に、奉仕活動で酷い目に遭ったと言われたのだが、大したことはないような?」
床を磨きながら、アフリディが首をかしげた。
「場所によるんだろう」
倉庫整理を終えたアレックスが通り掛った。ノエミでは動かせない物も軽々運ぶので、重宝されているようだ。
辺りが、すっかり暗くなった頃。
「おや‥」
丘の上に人影。
「あら、ケイジさん」
「エーディット嬢に、忘れた籠を持ってくるよう頼まれたのですが‥」
「この辺りでは見ませんでしたけど」
謀られたかな、とパトリアンナは思った。エーディットの、妙に楽しげな顔を思い出す。
「ま、明日探しますかな」
「‥‥‥」
何となく会話が途切れ、2人して星を見上げる。
「‥今日のパンも、素晴しかったですね」
「マリーの焼き菓子も、好評でしたな。昨年より美味しい、と」
「それは、ケイジさんのお陰でしょうね。あの焼き菓子、お店にも出していたものですけど、夫の好物だったんです」
「ほう」
「『マリーの焼菓子が一番美味しい』って、口癖みたいに。だから、私にもそれなりに自負があったのですけど‥世の中には、それよりずうっと美味しいお菓子を作る方がいらして」
「悔しかった?」
「ええ、とっても。そして、もっと精進しないとって。だから、一緒に台所に立つことが出来て、本当に嬉しく思ってますのよ。これからも、宜しくお願いしますね」
「ええ、こちらこそ♪ 戦友としてお互い高め合いましょう」
「私が学ぶばかりですけど、向上心だけは互角のつもりですのよ」
「仲はいいですのに〜。なかなか『いい雰囲気』にはなりませんね〜」
少し離れた木の影で呟くのは、勿論エーディットである。
翌日、村の皆に見送られ、一行はパリへ戻った。
「また、来年ね」
一度だけ、振り返って漏らした呟きを、冒険者達はそっと胸に仕舞った。
『これは、預かるね』
するり、と妻の薬指から銀色の輪を抜き取ると、クレメントは小さく笑った。
『ねぇ、マリー? いつか話した、年に1度の逢瀬の話、覚えてる?』
唇を噛締め、マリーは頷いた。
『僕は、先に行って待ってるよ。いつか星の河を渡って、君がやって来る時まで。その後は、1晩なんて誰も言わない。ずっと一緒だから。飽きるほどね。だから‥なるべくゆっくりおいで』
枕に載った顔は青白く、握り締めた指は細い。
『‥そしたら、私すっかりお婆さんよ』
『大丈夫。絶対に見つけるから。エリザが大きくなって、孫ができて、ひょっとしたらひ孫もいて‥いいなぁ、楽しそうだな。そういうこと、たくさん話しておくれね?』
その日の夜、星が流れた。天の川を横切るように。涙で曇る視界の中、それだけは、何故かはっきりと見えたのだった。