【収穫祭】まるごとさん劇場

■ショートシナリオ


担当:紡木

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:10月16日〜10月21日

リプレイ公開日:2007年10月20日

●オープニング

 パリの、とあるレストラン。
 掲げられた看板には、可愛らしいヤギの姿が描かれている。
 扉を開くと、そこは、まさに夢の世界。

『小柄なドワーフ達が、まるごとヤギさん姿でお給仕いたします』


「ヨルゴ! デザート上がったぞ」
「了解、そこ置いてくれ!」
「ボリスさん、山鳩のワイン煮注文入りましたー」
「おう、あと仕上げだけだ!」
 夕刻の店内。
 とてとて、とことこ。フロアを動き回る、まるごとヤギさん姿のドワーフ達。
「盛況ですね〜」
 見習いコックのルネが、フロアの賑わいに耳を傾ける。
 今でこそ充分な人員を抱え、活気溢れるこのレストランであるが、実は夏期に一度、休業の危機を迎えている。まるごとヤギさん着用が義務の給仕達が、軒並み暑気中りで倒れてしまったのだ。その時は冒険者ギルドに頼んで人員を集め、ドワーフの村から応援が駆けつけるまでの間を凌いだのであった。
「あ、そういえば、さっきも『あれ』言われましたよ〜」
 『あれ』、というのは、ここ最近、よく貰うリクエスト。すなわち『ヤギも良いけど、他のはもうやらないの?』。この店のまるごとヤギさんは全てドワーフ仕様である。よって、人間やエルフの助人達には、自前、あるいは貸出して、ヤギさん以外のまるごとさんを着用してもらっていた。それが、思いの他好評を博したのである。
「でも、うちにはドワーフ用はヤギしかないぞ」
 店主兼料理長のボリスが、鍋片手に返事をした。
「そーですよねー‥‥。また、手伝いに来て貰いません?」
「だが、給仕の数は足りてるぞ。あんまり多いと、却って効率が悪くなる。だからといって、皆に暇を出すわけにいかんだろ」
「でも、もうすぐ収穫祭でお客も増えるかも〜」
「収穫祭‥‥収穫祭か‥‥そうだ! 客が増えるかも、じゃなくてだな、客を増やす手伝いをしてもらうってのはどうだ?」

 翌日、冒険者ギルドにルネの姿があった。
「あのですね〜。収穫祭に合わせて、お客集めの為のパフォーマンスをして欲しいんですけどー」

●今回の参加者

 ea1641 ラテリカ・ラートベル(16歳・♀・バード・エルフ・ノルマン王国)
 ea5242 アフィマ・クレス(25歳・♀・ジプシー・人間・イスパニア王国)
 ea6215 レティシア・シャンテヒルト(24歳・♀・陰陽師・人間・神聖ローマ帝国)
 eb1460 エーディット・ブラウン(28歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb7208 陰守 森写歩朗(28歳・♂・レンジャー・人間・ジャパン)
 ec0828 ククノチ(29歳・♀・チュプオンカミクル・パラ・蝦夷)
 ec3660 リディア・レノン(33歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ec3992 シュシュ・ガットー(18歳・♂・バード・パラ・ノルマン王国)

●サポート参加者

セイル・ファースト(eb8642

●リプレイ本文

「ちまこいなぁ」
 メンバーを見て、一言。エーディット・ブラウン(eb1460)と陰守森写歩朗(eb7208)を除いた5人の平均身長、約135。
「うちの店員はドワーフの中でも小柄なのばっかりだから、丁度良いかな」
 ははは、と笑うヨルゴ。
「ま、まだ伸びます‥‥多分」
 シュシュ・ガットー(ec3992)10歳。
「ええ。私達には未来があるわ!」
 力強く頷くレティシア・シャンテヒルト(ea6215)とラテリカ・ラートベル(ea1641)。
「そうそう。20までは伸びるっていうし」
『デモ、3年前ト変ワッテナ‥』
「アーシェン!」
 言ってはイケナイ。アフィマ・クレス(ea5242)と彼女が操る人形アーシェン。その掛け合いを通訳して貰い、ひっそり涙のリディア・レノン(ec3660)30歳。若さは時に残酷だ。
(「まだ伸びる‥‥だろうけどパラには限界が‥‥」)
 心中呟きつつ、希望に燃えるシュシュにはどうも言えないククノチ(ec0828)。それを認める日が来たら、彼は大人になるのだろう。

「ヤギさん、可愛いです」
 ウェイトレスにぎゅーっと抱きつくラテリカ。
「うふふ。お客さん沢山呼んで来てね」
「はいです〜」
 ぱふぱふと頭を撫でられ、目を細めた。
「まるごと‥これが‥‥」
 じ〜っと見つめるククノチ。
「愛らしくはあるが、ノルマンの収穫祭には珍妙な風習があるのだな」
 触りたい、けれど‥‥つい、手がわきわき。14歳の無邪気さが、ちょっぴり羨ましい。
「ラテリカ、今回もふぇれっと着るですよー。ククノチさんはどうされるですか?」
「え‥あ、わんこを‥‥」
 ぽそぽそ。
「わあ、ククノチさんなら似合いそです」
「そ、そうだろうか」
 いそいそと試着。嬉しそうだ。人間の子供用と聞かされて、ちょっと凹むのはもう少し後。

「お願いしますね〜♪」
 手紙を託したシフール便に手を振って、練習に戻るエーディット。ラテリカに借りた角笛に挑戦しているのだが、どうも上手くいかない。
「頑張るのです〜」
 ひゅい〜‥
 か細い音が、通り抜けた。

「え〜っと、明日の昼はここ、夕方はこのコースね」
 地図を広げるアフィマ。
「毎日別コースで。女の人と子供が多いのは、やっぱ広場か市場かな?」
 その格好はまるごとハトさん。身長的にはドワーフ用ヤギでも問題ないが、横幅が緩いのと、もうひとつ。
「髭は自前なのですね〜」
 その髭にリボンを結びながらエーディット。
「出来ました〜」
 一般的なまるごとヤギさんには、髭が縫い付けてあるが、この店のヤギさんには、それが無い。ドワーフは、男女共に髭があるから。
「皆さんも、おめかししましょう〜」
 エーディットのメリーさんの首には、大きなリボン。
「シュシュさんには、蝶ネクタイですね〜♪」
 同じくメリーさんのシュシュ。
「親子さんみたいですね」
 呟くラテリカ。大小メリーさん、その身長差頭ふたつ分。
「こんな大きな子供、いませんよ〜」
 ぷう、と頬を膨らますエーディット。でも、シュシュの約8倍生き‥‥何でもありません。

 しゅたっ!
 ‥‥ごろん。
 くるっ!
 ‥‥くる‥ごろり。
 たしんっ!
 ‥‥ぐぎ。
『あの、無理はしない方が‥‥』
 森写歩朗がリディアを助け起こした。2人の会話はイギリス語。リハーサルで、リディアは森写歩朗の動きを参考に踊っていたのだが、身軽で素早い軽業師の動きには、付いていけない。
『そうね、出来る範囲で踊る事にするわ‥‥』
 彼女のまるごとは、ただでさえ動き難い。何せ陸に上がったほえーるである。

「わ、凄いです」
「収穫祭中だから、特に賑やかだな」
 パリに出てきたばかりというシュシュを、ククノチがコースの下見を兼ねて連れ出した。
「冒険者ギルドは、そう、あそこだ。あの道を真っ直ぐ進むと酒場が‥‥って、あれ?」
 振り返るとそこは空。
「シュシュ殿?」
 数歩先の屋台の前で、目を奪われている。
「‥‥あまり、フラフラしないように」
 がし、と後ろ襟を掴んだ。
「ご、ごめんなさい」
 好奇心旺盛な年頃は、捕まえておくのも大変だ。

 花売りを捕まえたレティシア。
「えっと、このお店に、この花と、これも。届けてくれる?」
「はーい。お買い上げありがとう」
 お祭だから、と少し色を付け、代金を払った。

 ぷお〜〜♪
 昼前の街。おや、と足を止める人々。レストランの入口で、まるごとふぇれっとが、オリファンの角笛を高らかに。
「吟遊詩人?」
 隣には、リュートを抱えた銀髪の少女。
 ジャラン‥‥
 器用に弦を弾きながら、広場に向かって通りを歩く。緊張のせいかぎこち無かった指先は、曲が進むにつれて、軽やかに。
 てこてこ、もこもこ。
 後から、森の仲間‥‥とプラス1。曲に合わせて通りを行進。注目を集めつつ、広場に到着した。
(「すってー‥はいてー‥」)
 高鳴る胸に、手を当てるレティシア。
(「1‥‥2‥‥3!」)

  いらっしゃいませ あそこは楽しいレストラン
  ちょっと覗いてみませんか? まるごとさんのレストラン

 歌に合わせて、まるごとさんが踊る。
「一緒に踊ろ!」
 見物客の手を取って、ハトさんがくるりと回す。
「収穫祭キャンペーンなのですよ〜♪」
「お、お店でパフォーマンスやりますです。遊びに来てください」
 大小メリーさんも元気にアピール。
「なんで、あのおねーさんだけお魚なんだろうね」
「ねー」
 魚じゃなくて、ほえーるだけど。子供が首を傾げている。
「ねー‥なんで尻尾が大きいの?」
 ずんぐりまるまるなトナカイさんの背中から、リスみたいな、大きな尻尾。
「さあ、どうしてでしょう?」
 子供を担ぎ上げながら、トナカイ?さんが笑った。
「トナカイさんは、正体を隠しているのかも知れません」
 『尻尾を出』しちゃってますけどね。
 ぷお〜♪
 再び、角笛。
「お店に行かなきゃ!」
 わんこがころころくるりでぴょん。

  森の仲間も 海の仲間も 大人も子供も いらっしゃい
  収穫祭の楽の音に みんな揃って踊りましょ

 歌って、踊って、手を引いて。楽しい歌に連れられてまるごと行列の後を追う。店に入ると、奥にごく簡単な舞台が設えられていた。

 ぶおぉ〜〜♪
 てっく、てっく、てっく、てっく‥‥
 角笛鳴らして、ゆったりステップ。舞台に上がる、メリーさん(♀)。
 ぽーぴーぽー♪
 後ろにくっつく、子メリーさん(♂)。一生懸命オカリナを、角笛に合わせ鳴らします。
 おっと、メリーさん躓いた? 手をぶんぶん。子メリーさんに、ぶつかった。
「ああっ」
 ぽーん。オカリナ飛んじゃった!
 慌てて追いかけ‥‥すってん、ころりん。子メリーさんも飛んじゃった! ステージ上から真っ逆さま!?
 ぽすっ。素早くキャッチ。
「あ! トナカイがリスになってる!」
 子供の歓声。これぞ、きたりす忍法速変わり‥‥なんちゃって重ね着。
「大丈夫ですか?」
 スリムで大きなきたりすの、右手に子メリー、左にオカリナ。何とも軽々抱き上げて、とん、と舞台に戻します。
「あ、ありがとうございますっ」
 ぽーぴーぽー♪
 あらオカリナも、無事みたい。
 しゅた‥‥くるり。
 きたりす宙返り。舞台の上に飛び乗ります。
 ‥‥ぽぷっ。
 大きな尻尾も、一瞬遅れて。
 ちゃららん、ちゃららん♪
 わんこがてくてく。歩くたび、紐で繋げた木の実のベルトが、秋色の音を奏でます。どんぐりころころ、わんこもころころ。
 ぽ、ぽ、ぽ、くるる、くるっぽー♪ 
 ハトさんの鳴き声は、あらまあ本物そっくりだ!
「遅刻しちゃう!」
 たっとこ、たっとこ。
 慌てて出てきたウサギさん、リュート片手に、ずれた頭を直しています。
「しちゃう〜♪」
 ふよふよ、ふより。
 陽のフェアリー、リトルちゃん。ミニうささんで追いかけます。
 ちりりん、ちりちり♪
 足の短いふぇれっとが、ちょこちょこ、ちょこり。リズムに合わせて歩くたび、アンクレット・ベルが鳴る。
「お揃いでしょか〜?」
 森の仲間が揃ったら、お祝い演奏始めます♪ 皆で楽しく踊りましょう!
『‥あの〜‥』
 木陰から、じーっと皆を覗う視線。
『ここは‥どこ〜』
 あらまあまあ。ナントほえーるがコンニチハ。海から陸に上がったら、道に迷ってしまったのかな。
 さめざめと泣くその顔を、ハトさんの羽がふわりと撫でる。
「大丈夫! ほえーるお姉さん。あたしは、海への道を知ってるよ。いつも、空から見てるもん」
 海と森では、言葉も違う? 身振り手振りで、どうにかこうにか伝えます。
『ああ。良かった』
 へなへな‥‥ごろん。しゃがむつもりが、後ろへごろり。
「ほえーる殿も、一緒に踊ろう」
 優しいわんこ。助け起して、頭の上に、皆とお揃い、木の実の冠載せてあげます。
『だけど、私は海の生き物』
「大丈夫〜今日はお祭なのですよ〜♪」
 にっこり笑うメリーさん。
「セーラさまの魔法なのですよー」
 ふぇれっとがぐい、と胸を張る。森の仲間じゃなくっても、普段は仲良しじゃなくても。今日は、皆で楽しんで。そんな、女神様の贈り物。
「さあ、一緒に」
 ポロロン‥‥
 ウサギさんの、輝くリュート。ただ一節で、聴く人皆を惹きつけて。
「〜♪」
 ふぇれっとの、高く澄んだ声が重なる。
 ゆったり始まり、だんだん速く。それに合わせてまるごとさんが、ころころ、もこもこ踊りだす。下手でも良いよ。元気に踊ろう。皆と一緒に。皆で楽しく。
 さあ、今日は楽しい収穫祭!

「ふい‥‥」
 控え室にて。シュシュが息をついた。
「緊張しましたです」
 冒険者としての、初仕事。
「結構疲れるね。でも、好評で良かった! お客さんも一緒に踊れると楽しいんだけど。ま、食事中じゃ無理かなあ」
 アフィマが、ハトさんの羽でぱたぱたと自分を扇ぐ。
『夕方も、頑張りましょうね!』
 ほえーるを脱ぎながら、リディア。
「作り置きですが、良かったら」
 疲れた時には甘いもの。森写歩朗の手作りクッキーで、しばしの休憩である。
「一杯、お客さん呼ぶですよー」
 ちりん。ラテリカのベルが、涼しげな音を響かせた。

「おや、まだ居たのか」
 閉店後、塵ひとつ残すまじ、と遅くまで掃除をしていたレティシア。
(「来たわね」)
 決意を胸に、気合を瞳に。
「あの」
 ぐ、と拳を握り締めた。前回はお酒代わりに甘酒。ならば発想の転換。
「そういえば、前に酒欲しいって言ってたな。丁度今年のワインが村から‥」
「ええ、甘酒をお願いします!」
 甘酒を頼めばお酒‥が‥って‥‥あれ‥?
「え、今年‥」
 のワインって何?
「何だ、そんな気に入ったのか」
 あっさりと『今年のワイン』を仕舞うヨルゴ。
「は‥ああ〜‥」
 代わりに、棚から取り出した物を鍋に掛ける。
「ほい」
 お馴染み、不思議な香りの白濁液。
「うう‥‥ちょっとしょっぱい」
 これは涙の味なのか。
「塩をひとつまみ入れるのがコツだからな」
 だ、そうです。残念。

「お待たせしましたです。『ふぇれっとのホットミルク』なのですよー♪」
 夜間だけの特別メニュー。その品を注文すると、まるごとさんがお給仕します。1、2、1、2、一生懸命なふぇれっと見たさに、注文が集まる。
「お待ちどうさま。『ウサギさんの人参グラッセ』でーす」
 こちらはレティシア。
「や、久しぶり」
 以前、少し仲良くなった常連客だ。
「あ、また同じの食べてる。偏った食事はいけませんって」
「好きなんだよこれ。ほら、人参も頼んでるし大丈夫」
「もう、気をつけて下さいね」

「はい」
 ぱらり。扇を畳むと、林檎が箱から隣の器に移動している。
「わぁっ」
 森写歩朗の手品に喜ぶ子供達。
「ね、どうやるの!?」
「さて、どうでしょう。‥‥おや? こんな所に細い糸が‥‥」
「あ〜!」
 ネタばらしは、お約束なのです。

「あらあ〜?」
 ふと、客に目を留めたエーディット。何処かで見た顔のような‥‥。
「ああ〜!」
 ぽむ、と手を打った。

「さて、お客様の中に、収穫祭中にご結婚される方はいませんか?」
 ステージの後。レティシアがホールを見回した。が、照れているのか、本当に居ないのか、なかなか手が上らない。
「は〜い! ここなのです〜♪」
 見ると、エーディットが青年の手を掴んで上げさせている。隣には、驚き顔の若い女性。
「ええっと?」
「あら〜、もう結婚されてましたか〜?」
「い、いえ。僕達の事、知ってるんですか? 何処かでお会い‥」
「しているのです〜♪ それで〜結婚のご予定は〜?」
「あ‥はい。今月末に」
「末? 収穫祭、ほとんど終わっちゃってるんじゃ?」
 今頃の方が賑やかなのに、とアフィマ。
「あの‥大切な人が、もうすぐパリに戻って来るので、そうしたら‥‥」
 照れたように、女性と視線を交わす。それに合わせるように、シャラン、とレティシアがリュートを鳴らし、ラテリカが出だしを歌う。
「皆さん、ご一緒に」
 森写歩朗の掛け声に、1人、2人‥‥やがて皆が、歌に加わる。誰でも知っている、祝福の歌。若い2人の未来が、幸せであるように。歌が盛り上がってきた所で、レティシアは伴奏をシュシュのオカリナに託した。仲間1人1人の胸に指した花を集めて小さなブーケを作り、
「重ねたその2つの手で、幸せな未来を作って下さいね」
 曲の終わりと共に、差し出した。盛大な拍手。そして、リディアと森写歩朗が、ワインのカップを2人の前に。
「おめでとうございます」
『これは、お祝いね』
 ククノチがとん、と座り2人の掌を開かせた。
「将来、子どもが何人生まれるか占ってみよう。名前は?」
「僕がニコラ。彼女は、コレットです」
「ふむ‥‥」
 じっ、と見つめた後で、アフィマに目配せ、アーシェンに耳打ち。
『エエ、ソンナニ? ソレハ、大変ダー』
 大げさに驚いてみせるアーシェンに、どっ、と笑いが起こった。

「また来てくださいね〜♪」
 入り口で客を見送るエーディット。リピーターはお店の宝。
「わんこさんの冠、綺麗ね」
「これか? ‥‥良かったら、あげよう」
 子供の頭に、そっと木の実の飾りを載せる。
「わあい!」

 ぶお〜♪
 夕暮の広場に、角笛が響き渡る。吹いているのはメリーさん。
「レストランの演奏会にいかなくちゃ〜」
 叫んでほてほて走り出す。

 遠い角笛の音を認めて、わんこの踊りがぴたり、と止まる。
「そろそろ、行かねば。本番は、お店へお越し頂きたい」
 さっと、一礼。

 ジャララン。リュートで一節弾き終わり。
「もう、行かなくちゃ! 遅れちゃう」
 ウサギさんも、立ち上がる。

 続々集まる仲間たち。その周りには、お客を連れて。
「はーい、いらっしゃーい!」
 ばさり。店の入り口。羽を広げて、待ってましたと笑顔のハトさん。

「リュシアンさん、アメリーさん、いらっしゃいです!」
 ちりちり、ちりりん。
「エーディットさんに招待状貰って‥‥来ちゃいました。ふぇれっとさん、可愛いですね」

  いらっしゃいませ ここは楽しいレストラン
  ちょっと覗いてみませんか? まるごとさんのレストラン

 夢の世界の、ちょっと素敵なキャンペーン。4日間、なかなかの好評を博したようである。