たったひとりの

■ショートシナリオ&プロモート


担当:紡木

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月24日〜11月29日

リプレイ公開日:2006年12月03日

●オープニング

「おともだちを、たすけてほしいの」
 昼下がりの冒険者ギルド。
 7、8歳と思われる少女が、膝に乗せた手を、きゅ、と握り締めた。
「あのね、一週間まえにね、村に、ゴブリンがきてね」
 涙がにじむのを、必死でこらえている、そんな声。
「いたずらして・・・・。おとなのひとたちが、おいはらったんだけど」
 噛み締めたくちびるが、赤い。
「でもね、リリのおともだち、つれていかれちゃった」
 冒険者達は、驚いた。
 ゴブリンは、頭は悪いが妙に要領が良い。悪さをするときも、困るけれど、人を雇ったり、もしくは村中で退治に行くほどではない、というギリギリのラインで行うことが多いのだ。そうであるから、村の子供を攫うような、それこそ巣ごと狩られるような事件は、滅多に起こさない。
 それに、厄介ではあるものの、大して強くはない。一週間も前ならば、とっくに退治されていそうなものだが。
「ひとつ、聞くけれど」
 傍で聞いていた受付嬢が、コホン、と咳払いをした。
「お友達、というのは、もしかして犬とか、猫だったり・・・・?」
「ううん。お人形よ」
 大人たちのため息に、リリは、きっ、と顔を上げた。
「ずうっと、いっしょにいたのよ。リリの村ね、すっごくちいさいの。村のおにいちゃんや、おねえちゃんたちは、おしごとがいそがしいから、いつも、ルーといっしょにあそんで…」
 ルーというのが、人形の名前らしい。
「おとうさんも、おかあさんも、あきらめなさいって、しかたないのよって、いうの」
 こらえていた涙が、ぽろ、とこぼれた。
「でもね、でもね・・・・ひっく・・・・っぅ・・・・ルーはね、たったひとりの・・・・ともだちなのよ。・・・・おかね、もってきたの。すくないけど・・・・ひっく・・・・たくさん、おてつだいしたの」
 握り締めていた硬貨を、机の上に広げた。・・・・本当に少ない。それでも、この歳の少女が集めるのは、大変だったに違いない。
「うぇ・・・・っく。おねがい、ルーを・・・・たすけて」

●今回の参加者

 ea5242 アフィマ・クレス(25歳・♀・ジプシー・人間・イスパニア王国)
 eb3084 アリスティド・メシアン(28歳・♂・バード・エルフ・ノルマン王国)
 eb6702 アーシャ・イクティノス(24歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb7368 ユーフィールド・ナルファーン(35歳・♂・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 eb7983 エメラルド・シルフィユ(27歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 eb8372 ティル・ハーシュ(25歳・♂・バード・パラ・ノルマン王国)
 eb9202 ルード・ロットナージス(28歳・♂・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 eb9253 スケマチカチ(21歳・♀・チュプオンカミクル・パラ・蝦夷)

●リプレイ本文

 リリの住む村まで、徒歩で出発。順調に行けば、夕方には到着する筈である。アーシャ・ペンドラゴン(eb6702)と、ルード・ロットナージス(eb9202)は、一足先に馬で出発した。
 アフィマ・クレス(ea5242)とエメラルド・シルフィユ(eb7983)は途中で用意し忘れた保存食を買い足した。
「なんか、ちょっと高いよね‥‥次は、ちゃんとパリで用意しとこ」
 アフィマが、肩を落とした。
「あ、あ‥‥全く、だ」
 エメラルドが同意する。その口調が、妙に苦しそうだ。
「エメラルドさん‥‥大丈夫‥‥です‥‥か‥‥?」
 スケマチカチ(eb9253)が、泣きそうな顔をしている。
「ああ、とりあえず。すまない‥‥出発前に、怪我を負って‥‥治療している、暇が無かったんだ」
 出発時には、周囲に気付かれないよう気を配っていたが、歩くうちに悪化してきてしまったらしい。
「これでは、リカバーポーションも利かないな。怪我をおしてまで子供のために動こうとするのは立派だが、自己管理を怠るべきではないよ」
 アリスティド・メシアン(eb3084)の言葉に、エメラルドは目を伏せた。
「本当に‥‥申し訳ない。皆にも、迷惑を、かけて。一晩、休めば、少しは‥‥マシになる。戦闘は無理でも、リカバーくらいなら‥‥力になれると、思う」
「とりあえず、早く村へ行きましょう。少しでも、休めるように」
 ユーフィールド・ナルファーン(eb7368)の言葉に、皆が頷いた。

 結局、村へ付いたのは夜半過ぎ。ルードが、村の入り口で皆を待っていた。そのまま、使われていない納屋へと向かう。中では、アーシャが待っていた。
「この小屋へ案内してくれたのも、そこの毛布を用意してくれたのも、リリちゃんです」
「あんなに小さな子が? 本当に、必死なんだね」
 ティル・ハーシュ(eb8372)が、呟いた。

 翌朝、保存食で朝食を済ませると、リリが姿を見せた。
「おにいちゃん、おねえちゃん、きてくれて、ありがとう。でも‥‥おれい、あんまり、できないの。ごめんなさい」
「金のことなら気にすることはない、どうせここにいるのは物好きだけだ」
 ルードが、告げる。アーシャが、優しく微笑み、リリの小さな頭をそっと撫でた。
「待っててね、お姉ちゃん達がルーを探してくるからね。ルーは、どんな子? 教えてくれる?」
「あのね、これくらいでね」
 と、自分の肩幅より、少し広い程度に手を広げた。
「かみは、リリとおんなじ。ちゃいろで、みつあみでね、おようふくは、あかいろなの」
「分かりました。では、ゴブリンの巣がどの辺りにあるか、分かるかな?」
 ユーフィールドの質問に、リリは首をかしげた。
「村の北だけど‥‥ちかづいちゃ、ぜったいだめ、っていわれてたから‥‥あんまり、わかんない」
「これは、村人に聞いた方がいいかもしれんな。ゴブリン退治に来た、と言って情報を集めるか。依頼人は伏せておこう」
「あたしも、高いとこに上って、テレスコープで見てみるよ」
 と、ルードとアフィマ。エメラルドを休ませ、スケマチカチを看病に残し、残りは情報収集に出かけた。

 夕刻、再び納屋へ集合し、集まった情報を整理した。
 ゴブリンは、村の北方へ約半日歩いた所にある洞窟に、いつの間にか住み着いたらしい。その数は10匹程度と、意外に少ない。巣までの道のりは割と平易で、それがまた、ゴブリンが村へ頻繁にやってくる原因のひとつでもあるようだ。今まで、人や家畜が死傷したことは無いが、盗難や破損は頻繁で、これ以上続くようなら、冒険者を雇うことも、本気で検討しなければ、と村人達は思い始めていたようだ。
「‥‥と、こんなところか。テレスコープでは、どうだった?」
 アリスティドが、まとめる。
「うん。だいたい話どおり。平坦な道がずっと続いた先に、洞窟の入り口があったよ」
 アフィマが、これより大分大きいくらい、と両手をめいいっぱい広げて、入り口の大きさを示す。
「なるほどな。大体のことは、分かった。明日の早朝、出発しよう。10匹程度なら、うまくいけば、明日の夜には戻って来られるだろう」
 明日の朝は、早い。ルードが、明かりを吹き消した。

 洞窟の前に着くと、そっと中を伺った。戦うには、狭そうだ。
「ゴブリンを、外におびき出しましょう。保存食でいいかしら?」
 アーシャが、バックパックをさぐる。
「あ、だったら、こっちがいいかも」
 アフィマが取り出したのは、甘い味の保存食であった。入り口付近に適当にばら撒き、岩陰に隠れて、様子を伺う。
 しばらくして、1匹、のっそりと穴から姿を現した。保存食に気付くと、ひとかけら摘みあげ、食べ始める。
「ギャギャギャギャ」
 味に驚いたのか、声を上げた。それにつられるように、2匹、3匹と姿を現し始める。
「‥‥4、5、6匹。そろそろいいか。あの中には、ルーを持っているやつはいないな」
 アリスティドがスリープを唱える。6匹のゴブリンが、パタパタと眠りに落ちていった。
「行きます!」
 ユーフィールドが、霊剣を抜き払い、眠っている1匹を切り払う。
「ギャアァァ!」
 その悲鳴に驚いて、他のゴブリンが目を覚ました。しかし、寝起きのため、抵抗する動きが鈍い。
「ゴブリンごときが私にかなうものか!」
 全身にオーラを纏ったアーシャが、シールドソードを振り回す。
「オラオラオラ! どうした! かかってこいよ!」
「アーシャさん、別人だなぁ‥‥」
 1匹ずつ丁寧に相手をしながら、ティルが呟いた。その隣で、ルードがクルスソードを振り下ろす。
 ガキン! ゴブリンが、拙いながらも、斧で受けた。
「ゴブリン程度に遅れはとらない」
 言うと、ゴブリンの斧を打ち払い、斬りかかる。
「あれ‥‥洞窟の中‥‥青白い‥‥光、みっつ、じゃない、よっつ‥‥? ティルさん、危ない!」
 スケマチカチが、叫んだ。
「うわ!」
 洞窟から飛び出してきたゴブリンに、背後から飛び掛られ、ティルが浅い傷を追う。
「ギャッ!」
 次の瞬間、アリスティドのムーンアローが、そのゴブリンを貫いた。
 エメラルドが素早くリカバーを施す。
「大丈夫か?」
「うん。ありがとう」
「あと‥‥3匹、中にいるみたい」
 地面に置いていたホイップを拾いながら、アフィマが警告した。リヴィールエネミーによる青白い光が、こちらへ近づいてくる、と。
 やがて飛び出してきたゴブリンに、アーシャによるオーラを纏ったアフィマが、モノスゴイ悪言雑言を浴びせかけた。言葉は通じなくとも、悪意は伝わる。怒ったゴブリンたちが追いかけてくるのを、ひらりとかわしながら、逃げ回った。がら空きになったゴブリンの背中を、ムーンアローや、剣、ナイフが攻撃する。

「こんなところでしょうか」
 しばらくして、ユーフィールドが、剣を鞘に収めながら言った。周囲には、もう動いているゴブリンは一匹もいない。
「ルーを持っている者はいなかったな。あるとしたら、洞窟の中か」
 アリスティドが、眉を寄せた。
「私‥‥先頭で‥‥‥歩きます。‥‥リヴィールエネミー‥‥‥使えるし‥‥少しは安全」
 スケマチカチが、再び魔法を発動させた。
「僕、ランタンと油持ってるよ」
「私もです。持って行きましょう」
 ティルとユーフィールドが、言った。
「私は、あまり役に立ちそうにないな。ここで、皆の荷物を見張っていよう」
 岩陰にバックパックを集め、エメラルドはそこに座り込んだ。
「じゃ、いこっか」
 アフィマが、洞窟の中に踏み出した。

 洞窟の中は狭く、一列でしか移動できない。所々の壁に穴が掘られ、小さな部屋となっていた。
ひとつずつ覗いて回るが、ゴブリンの残党はおらず、ルーも見当たらない。変わりに、村から奪ってきたらしい品々が散らばっている。
「こんなに色々‥‥村の方達は、さぞかし大変だったでしょうね」
 落ち着きを取り戻したアーシャが、小さく溜息をついた。
 先頭にユーフィールドとスケマチカチ、殿にティルとアフィマで、前後を警戒しながら進む。しばらくして、スケマチカチが立ち止まった。正面には、ボロボロの布が掛かっている。
「ここ‥‥この部屋の中‥‥ぼんやり、光ってる‥‥‥? ‥‥でも‥‥ちょっと‥‥小さい」
「自分が行こう」
 ルードが剣を構え、部屋に入った。彼も相手も動く気配がないので、続いて皆が中に入る。そこは、全員が入ってなお有り余る、大きな部屋になっていた。
「ゴブリンの‥‥子供?」
 誰かが、呟いた。部屋の隅にいたのは、他よりも一回り小さいゴブリンであった。その腕に、何かをきつく抱えている。
「ルーだ」
 アリスティドが、言った。
「ええと、モンスターに、子供なんているの? それとも、ただ小さいだけ?」
 ティルの言葉に、答えを返せるものはいなかった。ただ、一回り小さいゴブリンが人形を抱え、こちらをにらみつけている、その様子は、攻撃し難いこと甚だしい。そもそも、皆子供の為に無償奉仕同然でやってきた者達なのだ。
「でも、やらないことには、どうしようもありませんね」
 ユーフィールドが、剣を構えた。
「剣は、ルーを傷つける可能性がある。僕がやろう」
 アリスティドが、一歩前に出た。
 不穏な気配に気付いたのか、ゴブリンがじりじりと間合いを詰めてきた。
「ギャッ」
 片手で斧を振り上げ、飛び掛ってくる。
 カッ! 淡く光る矢が、ルーをすり抜け、ゴブリンの胸に突き立った。ドサ、と倒れ込んだゴブリンに、ユーフィールドが止めを刺す。
 沈黙が、落ちた。
 ルードが近寄って、人形を拾い上げた。茶色の三つ編みに、赤い服。一目で素人の手作りと分かる、質素な布の人形だった。右手は取れかけ、服は破れかけ、全身が土埃で汚れている。
「傷んではいるが、これに間違いないな」

 洞窟の外に出ると、ルードが剣を置き、十字架を握り締めた。
「一応、入り口を壊しておくか」
 ドゴン! ディストロイを唱えると、凄まじい音とともに入り口が崩れ、塞がった。
「今いる分は殲滅したし、これで当分は新しく住み着くこともできまい。しばらくいたずらも収まるだろう」
 そうして後始末も済ませると、早速、スケマチカチがルーの修理に取り掛かった。湿らせた布で丁寧に埃を拭い、針と糸を巧みに使って、腕や服を補修する。
「いつもより‥‥‥調子がいいです‥‥アーシャさん‥の‥‥煙草入れ‥‥のおかげ‥‥‥」
 傍らに置いた金の煙草入れ。その小人のレリーフを、小さな手でそっと撫でた。
「うん、いいんじゃないかな」
 修理の終わった人形を見て、アフィマが言った。元通りというわけにはいかないが、汚れは大分落ちたようだし、取れかけていた手は、しっかりとくっついている。
「さ、帰りましょう。リリと、馬達が待ってますし」
 アーシャが、煙草入れを仕舞いながら、言った。

「ルー‥‥! ルー。おかえり‥‥おかえり‥‥ひっく‥‥ひっく‥‥」
 夜半、例の小屋に戻ると、リリが眠い目を擦りながら待っていた。
 差し出された人形を、しっかりと抱きしめ、ぼろぼろと泣いている。今まで、ずっと我慢してきたのだろう。
「リリの気持ち嬉しかったよ。ありがとう」
 どこからともなく聞こえた声に、リリが目をまるくした。
「ルーが‥‥喋った?」
 驚きで、涙も止まったようだ。アフィマが、ちらり、と笑う。
「ルーも、きっと怖かったよ。頑張ったねと褒めておあげ」
 アリスティドの言葉に、リリがこくこくと頷いた。
「‥‥皆さん、本当にありがとうございました」
 背後から聞こえた声に、全員驚いて振り返る。
「おかあ‥‥さん」
 リリの呟き。
「あちゃー、バレちゃった?」
 ティルが、額を押さえた。
「そりゃあね。ルーが、ルーが、ってきかなかった子が、パリで迷子になった日から、何も言わなくなったんです。そのくせ妙にそわそわして。家の毛布が大量になくなったと思ったら、次の日には、冒険者だって人たちが、ゴブリン退治に来たって。気付かないわけ、無いでしょう」
 母親が、苦笑を浮かべた。
「あの‥‥リ、リリちゃん‥‥を‥‥叱らな‥‥いでください‥‥私達は‥‥リリ‥‥ちゃんのため‥‥ここに来たんですから」
「そうそう。大切な子を奪われたらあたしもきっと同じことすると思う」
「この子は、自分に出来る限りのことを、一生懸命にやったんです。決して、無茶はせずに。その結果、こうしてルーと再会できた。希望を捨てない、強い子です。叱らないでやってくれ。」
 スケマチカチと、アフィマ、アリスティドが言い募る。
「叱りませんよ」
 そう言って、ちらりと笑う。
「ルーを無くしたときの、この子の落ち込みようは、酷くてね。そうはいっても、あたしらには、どうしようもないじゃないですか。確かに、ゴブリンには困ってたけど、たくさん冒険者を雇うだけの蓄えは村にはないし。だから、諦めなさい、と言いました。でもね、この子がどれだけルーを大事に思っていたのかは、よく判ってるし、可哀相だとも思ってました。だから、叱りません」
 ほっとした、空気が流れた。
「それにね‥‥‥ルーを作ったのは、あたしなんですよ。この子が生まれたときにね。だから、まあ、ルーも言ってみりゃ娘みたいなもんですしね。あたしからも、お礼を言わせていただきます。ありがとうございました」
「あのね、すくないけど、おれいなの」
 そう言って、リリが1人ずつコインを手渡した。
 保存食1回分で無くなってしまう硬貨が、暖かかった。ずっと、握り締めていたのだろう。
「それから、良かったらこれも、持っていってください」
 差し出されたのは、透明な液体の入ったボトルと、いい香りのする紙包み。
「うちで作っている、ハーブワインとハーブティーです。お礼にもならないような、ささやかなもんですけど、味は保証しますよ」
「良い香りですね。楽しみだわ」
 アーシャが、紙包みをそっと撫でる。
「これ以上ゴブリンに畑を荒らされると、来年の収穫はちょっと危ういですけどね」
 小さく溜息をついた母親に、ユーフィールドが告げた。
「ああ、それならもう、心配ありませんよ」
「ゴブリンは殲滅しておいた。入り口も壊したから、新たに住み着くことも無いだろう」
 ルードの言葉に、絶句する。
「本当に、ゴブリン退治まで‥‥? ありがとうございました。明日、村長の所へ来てください。これよりは、きちんとしたお礼ができるはずです」
「いや、明日は朝になったらすぐ帰るよ。だって、ルーを取り戻したお礼はキミたちからちゃんと貰ったし。ゴブリンは、ま、ついでだしね」
「そんな‥‥っ」
 ティルの言葉に、まだ言い募ろうとする彼女を言いくるめてその日は就寝し、次の日の朝には出発した。

 村の入り口まで、リリと母親が見送りにやってきた。リリが、大きく手を振って、叫んだ。
「おにいちゃん、おねえちゃん、ほんとうに、ほんとうにありがとう。ルーをたすけてくれて、ありがとう!」
 リリが、満面の笑みを浮かべた。今回の、何にも代え難い報酬であった。