夢幻の呼び声
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■ショートシナリオ
担当:紡木
対応レベル:6〜10lv
難易度:やや難
成功報酬:3 G 80 C
参加人数:4人
サポート参加人数:3人
冒険期間:11月27日〜12月02日
リプレイ公開日:2007年12月04日
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●オープニング
「すっかり寒くなりましたねぇ」
冒険者ギルドにて。休憩時間、ハーブティーをすすりながら呟く受付嬢。
「そうですね」
向かいに座って頷くのは、エルフの男。
「レオンさんは、またお遣いですか?」
「はい。この季節は何かと入用ですし」
頷く動きに合わせて、月光を紡いだような髪がさらりと揺れた。
「何か、上手いこと使われてません?」
「村で一番旅慣れているのは私ですから」
何しろ、ずっと旅暮らしだったのだ。
「それに、何もせずにお世話になるのは心苦しいですし。仕事があった方が在り難いのですよ」
「あー、成程」
この男、レオン・ランベールは、旅のバードである。しかし、今年の7月にとある村の人々と知り合い、今年の冬をその村で越すことになっている。彼は、冒険者ギルドにも、村の、あるいは個人的な用事で何度か訪れており、この受付嬢とも顔見知りになった。彼女に、パリに来た際には顔を見せに来るように言われている。
(「だってねえ‥‥」)
受付嬢は、心中呟いた。
(「なんか、放っとけないんだよなぁ‥‥」)
つくづくと、無駄に整った顔を見つめた。見慣れた今でこそ「無駄に」と言い切る事も出来るが、初対面の時は息が詰まったものだ。しかし、その麗しい顔には、あまり表情が見られない。生気が薄い。しかし、人形のように味気ない訳ではなくて‥‥つい、手を差し伸べてしまいたくなるような、世話を焼きたくなるような、そんな雰囲気がある。
「何か、変わったこととかありました?」
だから、明らかに相手が年上なのに、保護者のような事を聞いてしまう。
「そういえば‥‥」
ふと、思い立ったように呟くレオン。
「今回は、別の村にも用事があったので、いつもと違う道を通ったのですよ。途中で暗くなったので、森の中で野営をしていたら‥‥名前を、呼ばれたような」
「‥‥はい?」
「夢か現か‥‥どちらとも取れるような、声で何度も『レオン‥‥』と」
「‥‥それって『そういえば‥‥』レベルの話なんですか? 幽霊に呼ばれた、とかかも知れないじゃないですか!」
普通だったら大騒ぎだ。
「死者に呼ばれる心当たりは、1人しかありませんから」
「‥‥その人、だったんですか?」
尋ねると、レオンは静かに首を振った。
「彼女は、今までどれほど求めても、私を呼んではくれなかったのですよ」
「そうですか‥‥。ちなみに、その場所は?」
「ここから、歩きなら‥‥そうですね、1日程でしょうか」
詳しい場所を聞きながら、受付嬢は、あれ? と思った。
「その場所‥‥前にも何処かで‥‥‥あ!」
彼女は、ギルドの資料保管所へ行くと、1年程前の記録を漁った。
「そこ、以前依頼が出てますよ」
レオンの所へ戻ると、羊皮紙を開いた。
パリから徒歩1日の森。そこで、青白い炎が数度目撃されている。レイスの可能性有るので、調査求む。‥‥というもの。
「元は静かな森で、綺麗な池があったらしいですね。ただ、去年の大雨洪水で、崖が崩れて大分荒れてしまったようです。レイス騒ぎはその後。そんな騒ぎがあったから、今では誰も近寄らない、らしいです」
「洪水で荒れた森‥‥」
レオンは、胸に手をやった。服の上から、首に下げた指輪を押さえる。
「以前‥‥といっても、洪水の数年前ですが、女性が1人、森で行方不明になっています。ただ、彼女の場合は、元々体が弱くて‥‥その、長くないと言われていたので、最後の場所に、その森を選んだのだろう、と‥‥その時の依頼人さんが」
「数年経っているのなら、レイスとは無関系‥‥では?」
「呼ばれた、らしいです」
「‥‥?」
「依頼人というのが、行方不明になった女性の弟さんで。彼は、レイス騒ぎが起こり始めた頃から、夢を見るようになって‥‥何度も、お姉さんに名を呼ばれるのだそうです」
「そこで、レイス調査の依頼を出した、と?」
「はい。姉がレイスになったとは思えないし、思いたくないけれど‥‥もし苦しんでいるのなら、何とかしたい、と‥‥。彼は、足に不自由があって、数年前村を出てから、ずっとパリで暮らしているようです。名前は、レオン・セロー‥‥レオンさん、です」
当時は人員が集まらず、依頼は果たされないままになっている。
「その依頼‥‥私がもう一度出す訳には、いきませんか?」
「それは構いませんけど‥‥どうして?」
名前くらいしか、接点がないのに。
「ちょっとした、感傷です」
湖面のように静かなレオンの顔に、漣のような苦笑が浮かんだ。
●リプレイ本文
「あの森に、行かれるんですか‥‥」
1日目、冒険者達はギルドで住所を尋ね、最初の依頼人レオン・セローを訪問した。初めは困惑していたレオンだが、事情を説明されて納得し、彼らを家に招き入れた。器用に2本の杖を使って歩く彼の片足は、膝から下のズボンが潰れていた。
「その日、僕は隣村に用事を言い付かっていて‥‥」
寝付く事が多くなっていた姉が、今日は調子が良いから、レオン帰る頃森まで迎えに行く、と言い出した。当然止めたが、彼女は、森が見たいから、と笑った。
「もう長くないと言われていました。子供の頃は、とても元気だったのに。‥‥だから、森を見せてあげたかった。けど、絶対に無理はするな、と言って出かけました」
帰り道でレオンは姉―リーズと行き会わなかった。やはり無理だったのだと思い、家に帰ったのだが、姉の姿が無かった。慌てて引き返し、村民総動員で森と周辺とを探したが、見つからなかった。
「ただ、池の底だけは、深くてさらう事が出来ませんでした。ですから‥‥姉は今もそこに眠っていると思います」
「何か、お姉さんが心残りに思いそうな事はない? 生前何か約束をしたとか」
ジェラルディン・ブラウン(eb2321)が尋ねた。
「その頃、彼女にはすっかり悟りきっている雰囲気があって」
レオンは、それがとても悲しかった、と語った。
「思い残しとか、未練とか、そういう言葉は、思い当たらないんです。だから、去年になって急に夢に現れたのも不思議で‥‥」
ただ、静かに眠っていると思っていた。だから、彼女がレイスになったとは思えなかったのだ。‥‥そこには、思いたくない、という気持ちも、多分に働いているのだけれど。
「洪水で森が荒れた、という話を聞いた後、レイス騒ぎが起こり始めたので、何か関係があるのかな、とは思いますが」
「もしかして‥‥」
言いかけて、エルディン・アトワイト(ec0290)は口を閉ざした。その時に、彼女の遺体が何処かで野ざらしになって、それを供養して欲しいのかとも思ったが、彼の心情を鑑みて言葉を切ったのだ。
「‥‥それとも、何か別の理由があるのかも。それにしても、最後の場所に森を選ぶ? 私なら最後は遺族に看取られたいです」
「森は、僕達の遊び場だったんです」
春夏秋冬、常に違う表情を見せる森。深く、静かで、美しい池。巡る季節を、あの森で感じた。
「体が弱くなってからは、出かける事も出来なくなっていましたが‥‥」
よく、もう一度行きたい、池の畔で昼寝がしたい、と微笑んでいた。
「お気に入りの場所で、眠りに就きたいと思われたのですね」
「多分」
レオンが頷いた。
「‥‥もしかしたら、別の誰かかも知れんな」
と、アルンチムグ・トゥムルバータル(ea6999)。彼女は、レオンから姉の外見を聞いて、似顔絵を作成していた。
「レオンって欧州では割とある名前なん? 故郷の村に他に『レオン』はいた?」
「まあ、少なくはないと思います、僕もパリに出て何人か会いましたし。ただ、故郷となると‥‥村を出てから生まれた子供は分かりませんが、それ以外には居ません」
「ふーん‥‥あ、お姉はんの顔、こんな感じ?」
ぴら、と完成した絵を見せる。
「はい。良く似ています」
懐かしむように、レオンが微笑んだ。口元に、僅かに寂しさを漂わせながら。
その後、彼の元の家の場所を聞き、思い出の品だというペンダントを預かった。
「もしも、レイスが彼女だとしたら」
ジェラルディンが、真紅の瞳で、真直ぐにレオンを見つめた。
「私の名にかけて、貴方の姉上を安らかに眠らせます」
きっぱりと、告げる。心の中で、物のついでだし言うだけならタダだしね‥‥と付け加えた事は、内緒だ。
「何か、伝言があれば預かるけど」
「そうですね‥‥もし、姉だったのなら‥‥‥安らかに、と。それだけを‥‥」
「分かりました」
同じ頃、ポーラ・モンテクッコリ(eb6508)はパリ大聖堂経由で、行き先の村の司祭宛に事情の説明と協力願いを送っていた。そこには、炎の目撃場所の情報を、出来れば地図付で欲しい事も付け加えてある。
その後、合流した冒険者達は騎乗で村を目指した。ジェラルディン、ポーラ、エルディンのクレリック3人は少々難儀したようで、モンゴルホースのソレンゴを軽快に操るアルンチムグを少々羨ましげに見つめていた。
「‥‥‥」
「どないしたの? ジェラルディンはん」
そして、昼食時。
「保存食、忘れた‥‥」
「おやおや。余分に持ってますから、差し上げますよ」
「ありがとうエルディンさん。でも、買い取らせてもらうわね、自戒も込めて」
「向こうに着いたら宿に泊まるから、往復の2食分があれば足りますわね」
‥‥そんな一幕もありつつ、夕刻、村に到着した。
「リーズはんと、恋愛関係にあったオトコはんとかおらんの?」
アルンチムグが、村の若者を訪ねて情報収集を行っていた。皆、レイスの所為であの森を通れず困っていたので、協力的だ。
「居なかったわ。‥‥リーズ自身、自分が長くないって分かってたみたいで‥‥だから、そういう関係は、持たないようにしていた、ように見えたわね」
リーズの友人だという女性が、目を伏せながら、ぽつぽつと語った。
「ねえ、レオン、元気だった? ‥‥足、難儀してたかしら」
「元気やったよ。杖の使い方も上手かったし」
「そう、良かった‥‥」
事故で片足を無くしたレオンには、農村での生活は難しかったから、パリへ出た。それから1度も帰っていないらしい。
「皆、心配してるって、もし会ったら、伝えて貰えます?」
「どうもありがとう」
村の教会を訪れたポーラ。司祭から頼んでおいた地図を受け取り、謝礼を渡す。
「‥‥目撃は、池の周囲に集中しているのね」
地図には、青白い炎の目撃場所が記されていた。
「目撃時間は、主に夜です。‥‥レオンは、姉のリーズではないと思う、と言っていたのですね?」
穏やかな表情の、中年の聖職者。
「ええ。私は直接聞いてはいませんけど」
「そうですか。‥‥私も、レオンの言う通りだと、思います。‥‥そうであって欲しいと、思っています」
聖印を握り締める手に、年月が皺を刻んでいた。それは、彼がこの村を見守り続けた時の流れでもあった。
「ふむ、それでは、あなたは炎を見たのですね」
「ええ、池の側でねぇ‥‥こう、ぼーっと浮かんでたんだよう。おっそろしくて、すぐに逃げたんだけどね」
村滞在中に宿泊する宿屋のおかみさんから話を聞くエルディン。
「他にモンスターを見かけた事は? あるいは、そういった話を聞いたとか」
「いやあ? そういうのは聞かないねぇ‥‥もしあったら、とっくにどこかに退治を頼んでるだろ。今まで放っておけたのは、あれが森から出てこないからだし」
森は、村のすぐ近くなのだ。複数体のモンスターが闊歩していては、流石に生活出来ない。
「‥‥あ、馬は厩舎に繋いでおくからね。なんか、珍しい馬も居たけど」
「よろしくお願いします」
「おばけの事も、頼むね。結構、不便してるんだ、皆。漂ってる方も、可哀想だしさ」
「はい。私は、さ迷える魂を浄化しに来たのですから」
翌朝、夜明けと共に徒歩で森へ出かけた冒険者達。
「洪水で酷いことになったって聞いたけど‥‥」
ジェラルディンが、周囲を見回した。確かに、1度は荒れ果てたのだろう。しかし、それから1年の時が過ぎている。倒れた木を苗床にして若い木が芽生え、押し流されてきた大きな石を、柔らかな苔が覆っている。木の葉が厚く降り積もった地面は、来春の芽生えに備えているようにも見えた。
「美しいですね」
池の畔に立つエルディン。朝の光を弾く、鏡のような水面。あまりに深くて底は見えない。1度は濁り果てたのだろう水は、今は静かにゆたっている。
「あんまり、幽霊が出そうなおどろおどろしさは無いなあ‥‥どうや?」
アルンチムグが、デティクトアンデッドを発動しているポーラに尋ねた。
「今の所、反応は無いわね。目撃は大体夜だし、それまで待った方が良いかも知れないわね」
「出待ちって感じね」
肩をすくめるジェラルディン。魔法を使う回数には限りがある。その為、暗くなるまでは、それぞれが周囲の探索に当たった。
「夢で呼ぶのが私にも聞こえたら、呼びかけた方向を探せるのにねぇ」
その日の夜は、何も出なかった。
そして翌晩。
「あちらに‥‥何か」
ポーラの目が、一瞬の光を捉えた。それを受けて、アルンチムグが自らの武器にオーラパワーを付与。ジェラルディンとポーラを下がらせた。エルディンは、全員にグッドラッグを、アルンチムグにレジストデビルを、それぞれ専門でかける。
「‥‥出たわね」
ゆらゆらと近づいて来る青白い炎。ビリビリと放たれる殺気に、アルンチムグとエルディンは、ぐ、と顎を引いた。
「リーズ殿!」
エルディンが呼びかけるも、反応が無い。
「レオンさんから、伝言があります」
後ろから、ジェラルディンも声を掛けるが、やはり意にかける様子は無い。
―ヒュッ!
そして、突然速度を増して、向かってきた。
「ぐっ‥‥」
青い炎が、エルディンの肩をかすめた。腕全体に走った痛みに顔を顰める。装備を固めて臨んでいたが、レイスの接触は、容赦なく傷を負わせた。腕を庇いつつコアギュレイトを高速詠唱するものの、レイスの抵抗力は、高い。弾かれる。
「このっ‥‥」
―ザッ!
再び彼に接触せんとした直前、アルンチムグが後ろからベイエルラントで斬り下げた。すると、方向を変え、今度は彼女へと向かってきた。しかし、先程かけられたレジストデビルが、そのダメージを弾く。
「大丈夫?」
ジェラルディンが、エルディンに駆け寄ってリカバーを施す。
「ええ、ありがとうございます」
たちまち引いていく痛みに、ほっと息をついた。
「嘆いている‥‥悲しくて悲しくて、何もかもを、恨んでいるのね‥‥」
ポーラが呟いた。
何がしかの能力で読み取ったのではない。あえて言うならば、直感。それが、魂の千切れるような嘆きを、感じ取った。
「大人しゅう、してくれんか?!」
アルンチムグから2度目の斬撃を受けたレイス。既に重傷を負い、炎は小さく、弱くなっている。
エルディンは立ち上がると、聖なるロザリオを掲げた。少し離れた場所で、ポーラも同じように。
「元は、生きていた人間です」
だから、最後は、刃ではなく、浄化を‥‥
2人同時に、ピュアリファイを唱える。白い光が、苦痛を燃やす炎を、優しく包み込んだ。
「これ、役に立たなかったわねえ」
レオンから預かったペンダント。レイスの気を逸らせるのでは、と木陰に置いておいたのだが。
ジェラルディンが、それを拾い上げようと、触れた瞬間‥‥ふっ、と気が遠くなった。
「‥‥‥‥え?」
ごしごしと目を擦るジェラルディン。
「目の錯覚かしら‥‥それとも、白昼夢? ‥‥って、夜だから、この場合は普通に夢?」
「どないしたん?」
「ん、何かね、白い服着た女の人が‥‥ここに立って」
同じように、その場に立つジェラルディン。
「あっちの方を、指差してる像が見えたわ」
そう言って、指差すのは、最初に炎を目撃した辺り。
「顔は良く分からなかったけど‥‥髪型なんかは、アルンチムグさんの描いた、人相書きに良く似てたような‥‥」
その日はもう遅く、辺りも暗かったので、翌日、再び冒険者達は現場を訪れた。
「これは‥‥崖崩れの跡かな? 道が塞がってるわ」
と、アルンチムグ。
崩れた土砂は、一部が池にまで流れ込んだようだ。
「とりあえず、掘ってみましょう」
エルディンがスコップを取り出した。
崩れてから一年が経った土砂は、既に硬く固まっている上、周囲の木の根も徐々に張り出しており、掘り進めるのに難儀した。特に、ポーラとジェラルディンは道具の数の関係で交互に作業をしていたのだが、あっという間にばててしまう。そして、さくさくと掘り進めるアルンチムグを、尊敬の眼差しで見つめていた。
数刻後。
現れたそれに、クレリック達はホーリーシンボルを掲げ、祈りを捧げた。小柄な体。すっかり白骨化して、容貌は全く分からない。
「‥‥旅装?」
アルンチムグが首を傾げた。レオンによると、リーズは白くて長い服を着ていたとの事だが、この人物は防寒服にマントを重ねている。
「それに、話より大分小柄ですね。‥‥これは、別人でしょう」
マントを広げ、丁寧に骨を重ねてゆくエルディン。遺品のバックパックと共に包み込んで、丁重に抱えた。
「放置するのも気が引けますし、村に持ち帰ってしかるべき祭祀を行いましょう」
村で尋ねてみても、心当たりのある者は無く、またバックパックからも素性がわかりそうな物は見つからなかった。状況からして、森を抜ける途中に崖崩れに巻き込まれた旅人なのであろうが。
「あなたは、何を訴えたかったのかしら?」
教会の庭に設えられた墓地。名前の無い墓石にポーラが問いかけたが、帰ってくる声は無い。この人は、誰だったのか。何が、レイスになる程に辛かったのか。今となっては分からない。
「リーズは、きっと、自分の眠る森でさ迷う彼女を見ていられなくて、レオンの夢に現れたのでしょう。優しい娘でしたから」
教会の主が、花を手向けながら語った。
「これで、私達は、また森の道を使う事が出来ます。リーズも、この方も、皆さんのお陰でゆっくりと眠る事が出来るでしょう」
その言葉に、ジェラルディンが頷いた。そして、レオンと約束した言葉を、伝える。
「どうか‥‥安らかに」
リーズと、名も無きさ迷い人に向けて。
数日後、レオン・セローが冒険者ギルドを訪れた。
「冒険者の方と、もう1人のレオン‥‥レオン・ランベールさんに、ありがとうございました、とお伝え下さい。僕は、もう夢を見なくなりました、とも。そして‥‥」
1度、言葉を切る。
「最後に見た夢の中で、姉は、静かに笑っていました、と」
伏せた目の淵。うっすらと、光っているものがあった。