お菓子屋ノワールの雛祭商品

■ショートシナリオ


担当:紡木

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:02月15日〜02月20日

リプレイ公開日:2008年02月21日

●オープニング

「ジャパン菓子‥‥ですか?」
「ああ」
 聞き返したシャルロットに、ライラ・マグニフィセント(eb9243)は頷いた。
「こちらは、3月に雛祭を行うと聞いたのだが」
「はい。去年やりましたし、今年も出来ればやりたいなって思ってますけど‥‥」
「だろう? あたしの店『お菓子屋ノワール』で、雛祭に向けたお菓子を作ろうと思ってるんだ。それを、こちらに卸させて貰えないだろうか」
「そうですねぇ‥‥」
 ブラン商会は雑貨店だが、焼菓子も、家政婦のマリーが毎朝作ったものを、1種類だけ置いている。
「マリーさんも、ジャパン菓子は作れませんし、面白いかも知れませんね」
 にこ、と笑みを浮べるシャルロット。
「父に、相談してみます」

 後日、ライラの元に、製作を依頼する旨の連絡が届いた。当日より前に、試作品を持ってきて欲しいとの事だ。その時に、1個当たりの卸値も相談する事になった。
「確か、マリー殿は家事の達人だったさね‥‥」
 仕入れを決めるのは彼女ではないが、彼女に恥じないだけの物を作らなくては。
「あたしも、ジャパンに詳しい訳ではないし‥‥皆に、手伝って貰うとするか」

●今回の参加者

 ea5242 アフィマ・クレス(25歳・♀・ジプシー・人間・イスパニア王国)
 eb1460 エーディット・ブラウン(28歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb3600 明王院 月与(20歳・♀・ファイター・人間・華仙教大国)
 eb8121 鳳 双樹(24歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 eb9243 ライラ・マグニフィセント(27歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

「集まってくれて、どうもありがとうさね」
 ぐるり、と顔を見回すライラ・マグニフィセント(eb9243)。
「皆アイディアを考えてきてくれたみたいだし、それを元に作れるだけ作って、それぞれのコストを計算するとしよう」
 指を顎に当て、考える仕草。
「そうだな‥‥選択のポイントは‥‥」
 ライラの説明を纏めると、以下の通り。
  1、外見の華やかさ、異国を感じさせる事。
  2、コストが卸値と釣り合う事、現実的な価格で売りに出せる事。
  3、美味しく感じられる事。
「‥‥という所さね。それじゃあ、やってみようか」

●エーディット・ブラウン(eb1460)の場合
「昔ジャパンを旅した事があるので、ちょっと懐かしいかも〜」
「え!? エーディットお姉ちゃん、ジャパンに行ってたの?」
 驚き顔の明王院月与(eb3600)。初耳だ。
「どうして? 旅行?」
「それは秘密です〜♪」
 秘密の多い女エーディット。秘密は女性を綺麗に見せるとか見せないとか。
「和菓子なら、お饅頭が美味しそうですよね〜」
「そうですね」
 懐かしい味を思い出したのか、にこにこ顔の鳳双樹(eb8121)。
「饅頭か‥‥やってみるさね」
 まず粉と水を混ぜて、こね、生地を作る。
「お手軽そうかなって思ったんですけど〜。意外と大変〜?」
「そうさね、工程自体は大したこと無いが、材料の配合やこね具合なんかは意外と難しそうさね。練習の必要があるかもな」
 そう言いつつも、皮の部分が完成。
「具は、何を入れようか。餡は用意していないのだが‥‥」
 それ以前に、餡がノルマンで受け入れられるかも少し不安なライラ。
「それなら、果物や木の実やお肉を入れたら変わった味わいになるかもです〜。皮さえ作ってもらえれば、中に具を入れるのは私でも出来そうですし〜」
 試しに、鳥の照り焼きと栗を入れてみよう、ということに。
「照り焼きは汁が皮に染みて美味しそうですし〜。栗はあまあまですよ〜♪ 酒場から果実酒のゼリーやニョッキのトリコロールを買ってきて入れても楽しいかもですね〜」

●明王院月与の場合
「明王院殿には、色々と勉強させて貰おう」
 と、ライラ。ライラも店を出すくらい料理上手だが、月与も負けていない。
「えへへ、楽しくやろうね」
 月与からは、日本酒・どぶろく1本と、5Gの材料費が提供された。
「あのね、やっぱり皆が色々美味しいものが食べれた方が良いもん。ちょっとだけど、御手伝いさせて」
「こんなに‥‥。ありがとうさね」
「どういたしまして。でね、お料理なんだけど、半年とちょっと、京都の辺りで生活してたんだ」
 年相応に食べ歩きなどもしているから、その時の経験を生かした意見を。
「和菓子の主な原材料っていうと‥‥お米、餅米、小麦、小豆‥‥辺りだよね。味付けは、醤油、味噌、抹茶や‥‥素材の素朴な甘味が塩味を生かすのが多いんだよね」
「そうらしいな」
 うん、とライラが頷く。
「優しい味のものが、多いですよね」
 双樹も同意。
「前にこっちでお団子作るのに餅米買ったけど‥‥あんまし売ってなかったし、とっても高かったの。やっぱり、お米を使ったのは金額的に庶民向けじゃないよね」
「そうですね〜‥‥お団子、美味しいですけど〜」
 ちょっと残念そうなエーディット。
「調味料は‥‥少量だったら、どうにか使えるかな?」
「どうだろうな。ものにもよるとは思うが‥‥」
 砂糖や醤油なんかは、かなり厳しい。
「小豆は手に入るかな? 駄目でも、似たような豆を使えば餡子やウグイス餡みたいな風味の餡子が作れるかな?」
「それは、あたしも考えたさね。エンドウ豆辺りでやってみるとしようか」
 他にも、麦芽糖や稗、粟等の雑穀、といったような候補が挙がる。
「材料は、こんな感じかな〜」
 それでは、実際のお菓子の方は。
「餡は、もう少し時間が掛かるから、先に出来る事をしようか」
「麦芽糖と稗や粟で‥‥」
「これは‥‥おこし、ですか?」
 双樹が尋ねる。
「うん、ちょっと形は悪いけど‥‥雛あられっぽくならないかな?」
 あとはね‥‥と言いつつ、小麦粉に胡桃を混ぜ、焼き、麦芽糖を塗りつつフライパンで転がした。
「じゃんっ。かりんとう」
「こんな事も出来るですね〜」
 ぱしぱしと、エーディットが瞬き。

●鳳双樹の場合
「私は料理は出来ないんですけど、ジャパン風のお菓子と聞いて、思わず来ちゃいました。宜しくお願い致しますね」
 ぺこり、とお辞儀。
「ノルマンの方に馴染むようなお菓子ですか‥‥そうですね」
 双樹の視点は、なかなかユニークだった。
「合う合わないかは香り次第ではないかと考えています」
 彼女の生業は調香師。それらしい目の付け所だ。
「ノルマンの主産業にワインがあるそうですので、ノルマン風ということであれば丁度いいのではないかと思います」
「なるほどな‥‥」
 ふむ、と感心している様子のライラ。
「材料は餡子等でつくって、そこにワインで香り付けするのはどうでしょう」
「面白そうですね〜♪」
 ワイン風味餡子〜‥‥と想像を巡らせるエーディット。
「普通のワインと、アペリティフ・ワインのようなワインも使えないでしょうか。復興用メニューとして考えられたものですから、皆さんにも馴染みがあると思いますし、宣伝にもなるかと思いますので‥‥」

●ライラ・マグニフィセントの場合
「明王院殿のおこしは面白いと思うさね。麦芽糖も良いが、やはりパリでは蜂蜜の方が手に入れやすいかな‥‥? 少し考えたのが、色をつけてみるのはどうだろう。こう‥‥形も菱形にして重ねたら」
「あっ、菱餅みたい!」
 綺麗、綺麗、とはしゃぐ月与。
「雛祭らしくて素敵ですね」
 双樹もほんわりと微笑んだ。
「あとは餡だが、どの程度香りをつけるのが良いかなぁ」
「良かったら、私が調節します。調香の要領で、出来るかもしれませんし」
 香りには敏感だから、微妙な所で調節が出来る。
「よろしく頼む」
 そして、餡を見つめて考えを巡らせる。
「あとは‥‥繊細に見せる細工を上手く入れられると良いんだが。少し考えてみるさね」
 やはり、見た目は重要だ。華やかな、外国を感じさせるものがベストなのだが。


 アイディアが出揃い、一通り作り終わった所で、お待ちかね試食の時間。
「お2人とも、お料理がお上手です」
 くるくると動く手に、次々と出来上がっていく料理に、間近で見ていた双樹とエーディットは興奮気味だ。勿論任せきりではなく2人も出来る事は手伝ったが、やはり手つきが全く違う。
「素敵料理人さんですね〜♪」
「ありがと〜。お料理、出来ると楽しいよっ」
「さあ、食べてくれ。感想も、忌憚なく聞かせ欲しいさね」

 まずは、饅頭から。ふっくら蒸された饅頭が、ほこほこと湯気を立てている。
「栗入り、甘くて美味しいです」
「鳥も、汁が染みて美味しいさね。ただ、これはお菓子というよりは食事かなあ」
「ニョッキ入りも美味しいけど、やっぱりご飯かな〜。あと、あんまりジャパンっぽくない‥‥かな。それから、冷めちゃったらちょっと残念かも」
「ゼリー入りは〜‥‥あら〜、具が消えちゃっているのです〜」
「‥‥まあ、ゼリーは蒸したら熔けるだろうな」
「こっちは、エンドウ豆の餡ですね」
「ああ、これが香りなしで、こちらがワイン、これがアペリティフ・ワインの香りさね」
「エンドウの餡も、ワインの香りも、何だか不思議な感じですね〜。でも、私は好きかも〜」
「アペリティフ・ワインよりも、ワインの方が良いかもな。アペリティフ・ワインは餡と合わせるには少し香りが複雑さね」
 それと、材料費の問題もある。ニョッキやゼリーもそうだが、復興用メニューは、冒険者向け価格で、かなり割高だ。それ以前に、毎回菓子の材料をシャンゼリゼで買ってくる訳にもいかないし、一から作るには、材料のひとつとしては少々手間がかかる。
「この中では、栗入りと餡入りが有力かな」

 次は、おこしとかりんとう。
「うん、歯応えがなかなか面白いさね」
「あまあまで素敵です〜♪」
「やっぱり、おこしの菱餅の形、素敵だと思うよ」
「私はかりんとうも好きです。胡桃が香ばしくて」
「おこしもあられも、どっちも捨てがたいなあ‥‥でも、両方となると準備が少し大変さね」
 何しろ、ライラ1人の店であるから。
「ゾウガメとコゾウガメはどちらも美味しいって思ってるみたいですよ〜」
 大小2匹のカメが、並んではむはむと完成品を食んでいる。
「この子達は食通なので、味見もお手の物なのです〜♪」
 ペットは飼い主に似るという見本なのだろうか。マイペースに生きるカメの姿に、ほわほわと空気が和んだのであった。

 その後、ああでもない、こうでもない、と試食しながら意見を出し合い、ジャパンらしく日本酒で香りをつけてみたりもしつつ、いくつかに絞った上でさらに改良を加え、商品が完成した。

「商品が出来たので、見せに来たのだが」
「いらっしゃいませ」
 にこにこと出迎える店主。
「皆さん、いらっしゃいませ! 楽しみにしてました」
 こちらはシャルロット。
「それでは、早速だが‥‥」
 最終的に、完成した商品はふたつ。菱形に固め、無着色と薄紅の二色を重ねた菱餅風おこしと、薄目の皮に、エンドウ豆で作り、ワインで香り付けをした餡を包んだ饅頭。
「わぁ、可愛いですね」
 どちらも、大きさは1口大。その方が見た目に可愛らしいのと‥‥あとは、コストの問題だ。しかし、下手に大きいよりも高級感があるので、それで落ち着いた。甘味は麦芽糖も候補に上がったが、やはりパリでの入手しやすさを考えて蜂蜜に。蜂蜜とて安くはないのだが。
「おこしは、多少日持ちする筈さね。饅頭は、その日の分を朝届ける事になるかな。‥‥まあ、食べてみてくれ」
「はい。頂きます」
 まずはおこしを一口。
「‥‥ふふ、甘くて美味しい」
「不思議な食感ですな。しかし、悪くはない」
 概ね、好評。
「じゃ、こちら‥‥お饅頭、でしたっけ、これも、頂きます」
 饅頭も、一口。
「‥‥‥? 何か‥‥??」
「口に合わなかったかい?」
「いえ、不味いって訳じゃ、無いんですけど‥‥何か、不思議、っていうんでしょうか」
 味も、食感も、初めて。
「あとちょっと、大人な味の感じも‥‥」
「ワインで香り付けしてあるからかな」
 酒精は加熱で飛んでいる筈だが、風味は残っているだろう。
「慣れれば、美味しい‥‥かな? 好みの問題だと思うので」

 その後、店主との交渉で、雛祭での入荷が決まった。
「どちらも甘味は蜂蜜で‥‥原価もそれなりに掛かりますでしょう?」
「しかし、仕入れ値がこれで、売値がこれだと‥‥あまりそちらの儲けにはならないんじゃないかい?」 
「これ以上値上げすると手に取ってもらえるか微妙ですし。大丈夫です。当方では、こちらの商品では、利益を出すというよりは、お客さんに興味を持って来て頂く事を考えておりますから」
 ダニエルとライラが難しい話をしている間に、つつ、とシャルロットに寄り添うエーディット。シャルロットは、商品候補とは別の試作品のお裾分けを貰って食べている。
「このお饅頭、美味しいですね。甘くないけど、パンとは少し違って。中身‥‥鳥の、グリルとは違いますよね」
「照り焼きなのです〜。ふふ〜お料理、楽しかったですよ〜。良かったらシャルロットさんもやってみてくださいね〜♪」
「そうですね、マリーさんにちょっと習ってみようかなぁ‥‥」
 何しろ、シャルロットもリュックも料理が出来ない。今は楓のお陰で何とかなるようになったが、以前は店主夫人とマリーが揃って居なくなると、大変な事になっていた。
「男の人は女の子の手料理に弱いらしいですよ〜♪」
「‥‥へ?」
 最近、リュックを『狼』にすべく色々と目論んでいるエーディット。その為には、シャルロットからの攻めも抜け目なく応援しなくては。
「手作りお菓子でリュックさんのハートを揺さぶるのです〜」
 ごほ、と思わず食べかけの饅頭で咽るシャルロット。慌てて、マリーの淹れた茶で流し込む。
「可愛いフリル付エプロンで作ってくださいね〜。美味しいお菓子は可愛い服装から、ですよ〜♪」
 今度は茶で咽せたシャルロットの背中を、エーディットはさすさすと撫でた。
「今回も一緒に出来たら楽しかったのですけど〜」
 店が忙しいのでは、仕方が無い。

「この前はお姉ちゃんにカンザシをありがとうございました♪ 私の分も頂いたそうで嬉しいです」
「いいえ、双樹さんの分は差し上げましたけど、お姉さんにはお買い上げ頂いちゃいましたし。こちらこそ、ありがとうございましたって、お伝え願えますか?」
「はい、分りました。‥‥あの、それで、もし今在庫があるなら人数分購入させて頂けますか? 私も関わった物ですので広めたいと思っていますし、買って皆にプレゼントしたいです」
 双樹の申し出に、シャルロットの顔が輝く。
「わぁ、ありがとうございます。お手伝い頂いた方に、愛着持って貰えるのって嬉しいですね」
 エーディットと月与には以前渡していることを話し、ライラの分を渡した。
「えへへ、お買い上げ、ありがとうございます」
 商品を手に取って貰えて、嬉しい顔をしてもらえる。そんな時が、仕事をしていて1番幸せだ。


「皆、どうもありがとうな。無事、入荷が決まったよ」
 一度ノワールに戻って、お茶でほっこりの冒険者達。
「どういたしまして」
「完成して良かったのです〜♪」
「ゾウガメ殿と、コゾウガメ殿もな」
 ライラが声を掛けると、ゾウガメは部屋の隅で、コゾウガメはその上で眠っていた。相変わらずの様子に、皆笑みをもらす。
「特に月与殿には助けられたよ」
「どういたしましてっ。あたいも、料理の話が沢山出来て楽しかったよ」
 同じ分野の話が通じる者との会話は、互いに学ぶ事が多くて刺激的だ。
「また、一緒にやりたいものだな。いつでも店に来てくれよ。勿論、双樹殿とエーディット殿もな」
「はいですよ〜」
「お店、頑張ってくださいね」
「ああ」
 ライラが頷く。
「とりあえずは、雛祭に向けて頑張るとするさね。腕が鳴るよ」
 春の弥生の、上巳の節句まで、あと少し。少しずつ、少しずつ緩んできた寒さが、春がそう遠くない事を知らせている。