見参! カマニンジャ!

■ショートシナリオ


担当:U.C

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月25日〜07月30日

リプレイ公開日:2004年08月02日

●オープニング

 ──夜。
 仕事帰りに自宅への道を急ぐケン・タケマッジーさん24歳独身(仮名)の前に、突然もくもくと白い煙が立ち込めた。
「なななななんですかー!?」
 いきなりの事に立ち止まり、目を剥くケン・タケマッジーさん24歳独身(仮名)。
 しかし、当然というかなんというか、事態はそれだけでは済まなかったのである。
「はぁ〜い。お・げ・ん・こv 今宵はいい夜ねぇん。アタシとねっとりでぇと‥‥しなぁい?」
 なんて声と共に、煙の向こうから姿を現したのは‥‥黒装束に身を包んだでっかい身体だった。声も姿形も実にごりっぱな漢だったが、妙にくねくねしている上に顔にはハデハデな化粧まで施している。
「っっっ!? うわぁぁぁぁ〜〜〜!!」
 悲鳴を上げ、とにかくケン・タケマッジーさん24歳独身(仮名)は背を向けて逃げ出した。コンマ数秒とかからない判断と行動だ。ほとんど条件反射である。まあ、当然といえば当然かもしれないが。
 しかし‥‥残念ながら、既に状況は手遅れだったのである。
 黒装束漢の隣から、いきなり何かがぴょーんと跳ねたかと思うと、逃げるケン・タケマッジーさん24歳独身(仮名)の身体の上にのしかかり、押し倒してしまう。
「ななななな、なんだぁぁぁ!?」
 目を白黒させる彼の上で聞こえるのは‥‥げぇこ、げぇこ、という鳴き声。
 見ると‥‥それは巨大な、3メートルはあろうかという巨大ガマであった。
「‥‥んふ、うっふっふっふっふ‥‥」
 黒装束漢の低い笑い声がその場に流れる。
「紹介するわん、そのコはオギーンちゃん。アタシのパートナーよん。でもって、アタシはハットリカマゾー(自称)。カマ忍法の正統伝承者よん。よろしくねんvv」
「カ、カマ忍法って何ですかー!? でもってよろしくなんてしたくないんですけどー!!」
 心の底から思いっきり叫ぶケン・タケマッジーさん24歳独身(仮名)である。
 そんな彼を見下ろして、巨大カマ‥‥じゃない、巨大ガマのオギーンちゃんが長い舌を伸ばし、ケン・タケマッジーさん24歳独身(仮名)の顔をペロペロ舐め回していた。なんか目つきが妙に艶っぽく、キラキラしているのは気のせいだろうか、気のせいだと信じたい。
「さぁ、今夜はハッスルハッスルよぉん〜! カマン! アタシのカマニンジャー隊っ!!」
 さらにカマゾーが叫ぶと、どこからともなく4体の黒装束姿が現れる。そいつらは‥‥人ではなく、ゴブリンであった。いずれもオギーンちゃんに押し倒されたケン・タケマッジーさん24歳独身(仮名)を、恋する少女の瞳で見つめている。
 ‥‥まずい。とにかくまずい。目で見える現実以上に途方もなくまずい事態になりそうな気がする! というか確信している! ひぃぃーーー!
 ケン・タケマッジーさん24歳独身(仮名)の中に流れる血が、エマージェンシーコードを声を大にして発していた。
 が‥‥結局彼にはこの状況をどうにかするだけの力はなく‥‥。
「じゃあ、いくわよん。カマ忍法、疾風脱衣の術ー♪」
「いやぁぁぁぁああぁぁああぁぁ〜〜〜!!」
 夜空に、ぽんぽんぽーんと景気良く飛び上がる衣服と悲鳴‥‥。
 ケン・タケマッジーさん24歳独身(仮名)は、今宵も‥‥散った。


 ‥‥というわけで、キャメロットから2日程行った所にある町で、この所毎晩カマ忍者を名乗る者が男ばかりを襲ってあーんな事やそーんな事をしている。これをなんとかしてくれ。
 なお、現在の所知られている相手の情報は以下の通りである。

1.カマ忍者、ハットリカマゾー(自称)
 カマ忍法の正統伝承者を名乗るカマ忍者。さまざまな妖しげなカマ忍術(というか、実際は力技で脱がせるだけらしい)と、普通の忍術も使う男のようだ。言うまでもなく筋肉マッチョである。

2.カマガエル、オギーンちゃん
 カマゾーが大ガマの術で呼び出すガマ。よくこの術を使うので、まず間違いなく遭遇すると思われる。何故か男好きな性格をしているらしい。

3.カマ忍者隊、カマゴブリン×4
 カマゾーと何故か意気投合して行動を共にしているゴブリン達。全員黒装束を着ており、やっぱり男好き。もちろんオスである。

 ‥‥これらを倒すのだ。全ては健全なイギリスの風土を守るために。
 諸君等の健闘を期待する。

●今回の参加者

 ea0003 瓦 耀(42歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0508 ミケイト・ニシーネ(31歳・♀・レンジャー・パラ・イスパニア王国)
 ea0781 アギト・ミラージュ(28歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea1716 トリア・サテッレウス(28歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea3168 ルア・セピロス(27歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea4457 きむら よしお(33歳・♂・忍者・パラ・ジャパン)
 ea4509 レン・ウィンドフェザー(13歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea4676 ダイモン・ライビー(25歳・♀・クレリック・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

「ふふふ‥‥良い、夜ですねぇ‥‥本当に‥‥良い、夜だ‥‥♪」
 中天にかかる月を見上げて、1人の男が竪琴を奏でていた。
 時は夜、人々が寝静まった深夜である。
 そんな中、上半身裸となり、民家の屋根に腰掛けて、甘く切ないセレナーデを爪弾く彼──トリア・サテッレウス(ea1716)。
「さあ‥‥皆さん、がんばりましょう‥‥がんばって、下さいね‥‥ふふふ‥‥あはは‥‥あははははははは‥‥♪」
 開幕を告げるベルのように、夜の町の中に響く楽しげな笑い声と音楽。
 眼下の町を行く2つの影を、愛しげな色をたたえた瞳が見下ろしていた‥‥。
「‥‥嫌な夜だな」
 歩きながら、ふと呟く瓦耀(ea0003)。
 頬を過ぎていく風は何か生暖かく、まとわりつくかのように鬱陶しく感じられる。併せて、気のせいかもしれないが、ねっとりとした何者かの視線も感じていた。
 まるでこちらを値踏みでもしているかのような意図を感じる、邪な気配‥‥。
 しかも、妙に後ろから‥‥さらに局地的に、尻のあたりに刺すような目線を覚える。
 自然と顔は険しくなり、足も速くなって‥‥落ち着かない。
 ‥‥尻だ。
 尻が、自分の勘に『危険』だと訴えてきている。
 そんな感覚であった。
「‥‥」
 ふと隣を見ると、マントとフードで身体をすっぽりと覆ったアギト・ミラージュ(ea0781)がいる。
 妙に目の光が鋭く、目の前の一点を見つめて何も語らず、ただ黙々と歩く様は‥‥どうにも鬼気迫るものがあった。
 何か今回の依頼に含む所でもあるのかと思った耀が、何度となく声をかけようとしたのだが‥‥彼の雰囲気に、結局何も言えずに、こうしてただ、共に囮として歩いている。
 ‥‥さて、どうなるか。
 言い知れぬ、そして正体の知れぬ不安が拭えない耀だ。
 と──。
「うふふふふふふ〜。きゃわゆいボーヤ。みぃ〜つけたぁ〜vv」
 静かな夜には思いっきりふさわしくない、ピンキッシュな声が響いてくる。
 と同時に、どんどろどろどろ‥‥と、道の前方で湧き上がる怪しげな煙。
「ぬっ!?」
 思わず、耀は立ち止まった。
 しだいに、煙の中に複数の人影が浮かび上がる。
 背後に4体のゴブリンを従えた、大柄な男がそこにいた。全員が黒装束に身を包み、じっと耀とアギトを見つめている‥‥なんとなく、モノ欲しそーな瞳で‥‥。
 さらに、先頭の男の隣には、
 ──ゲェコ、ゲェコ。
 妙に鼻にかかった声で鳴く、全長3mの大ガマが控えている。
 耀は、確信した。
 ‥‥間違いない、こいつらが‥‥。
「はぁ〜い。アタシ達はカマニンジャー隊。でもってぇ、アタシが頭目のハットリカマゾー(仮称)。で、こっちがカマガエルのオギーンちゃんよん。よろしくねんvv」
 くるりと回ってご挨拶する黒装束のごっついやつら。
「‥‥む」
 言いようのない危機感を感じて、耀は腰の刀に手をやった。この者達との戦いにおいて、やりとりするのは命や名誉などではない。もっと別のモノだ。戦う者としての勘、いや、男の本能がそう感知する。感知することおびただしいほど感知する。
 そして一方、アギトはというと‥‥。
「‥‥出たなカマめ‥‥この地上に生きる全ての生きとし生ける男達の敵め! 行くぞ! 変・身ッ!!」
 ぶぁさっとマントをはためかせ、一気に脱ぎ捨てると、なんだか傷だらけの仮面を装着する。
「この傷のひとつひとつが俺の心を表している! 狭い心に大きな信念を持つ男‥‥その名もカマんハンター・アギト! ここに爆誕!!」
 カマに指を突きつけ、宣言した。目は血走り、身体からやる気のオーラを噴出させる様は、本気も本気だ。
 前回のカマとの戦いにおいて唇を奪われ、彼の中で何かが失われ、代わりに何かを得たものと思われる。
「アンタに怨みはない‥‥が、奴と同じカマというだけの不条理な理由で消えてもらう!! 覚悟ォ〜!!」
 叫び、拳を振り上げて突進するアギト。
 闘志も気合も十分だが、身体とスキルはウィザードなので‥‥かなり無茶な行動だ。
「とりゃぁぁぁーーー!」
 放ったパンチもキックも良い感じにへろんへろんであり、全てかわされ、受け止められ‥‥結局押さえつけられて脱がされ、カマガエルのオギーンちゃんに顔をれろーんと舐められる。
「うにゃぁぁぁぁぁ〜〜〜!!」
 夜の町にこだまする、17歳ウイザードの切ない悲鳴。
「‥‥哀れな」
 耀がそっと目を背けた。せめて見ないでやるのが武士の情けか。
「ぷ♪ きょうもたのしいおあそびがはじまるの♪」
 ‥‥その様を、屋根の上にちょこんと腰掛け、無邪気な笑顔でスケッチしている10歳エルフ少女がいた。レン・ウィンドフェザー(ea4509)だ。芸術的な絵筆の冴えで、今日も彼女はあんまり芸術的じゃない題材の絵を仕上げていく。
 と──。
「$%&”#*+@¥〜〜〜!!」
 突然、一体のカマゴブが絶叫し、バタリと倒れた。
「あら、どうしたのん?」
 カマゾーが見ると‥‥そのカマゴブの尻には一本の矢が刺さっている。
「あんたらがカマの忍者はんやな? で、忍者は何人じゃ?」
 ニコニコ笑顔で路地から出てきたのは、ミケイト・ニシーネ(ea0508)だった。
「‥‥」
「‥‥」
 相手の返事は、ない。
「って、ツッコミなしかい! 何言うてんねんくらい言いや! そんなんだからカマなんや!」
 ちょっと寒い空気を感じたのか、慌てて1人ツッコミをするミケイト。
「‥‥たく、最近ツイてないんや。この前の依頼では矢を1本しか持ってへんで、無くなった上、獲物まで逃して、報酬もナシやったしな‥‥ケチって買わんかったのがアホやったわ、ホンマ‥‥」
 なにやらブツブツ呟いたかと思うと、目の前のカマ忍者隊を見回し、
「これもみんなビンボとカマが悪いんや! つーわけで覚悟しいや!」
 新たな矢をつがえ、発射。アギトがまだ捕まったままだったが、遠慮しなかった。完全な言いがかりの上、問答無用だ。
 さらに、別方向から手頃な石が飛んできて一体のカマゴブの後頭部にぼこっと当たった。
「‥‥何故私はまたこんな所にいるんだろう‥‥あぁ‥‥そうか。悪しきカマは――――この世から滅ぼせ、ということか‥‥」
 ため息をつきつつ、石を手にしたルア・セピロス(ea3168)が現れる。少々気持ちはアンニュイなようだが、狙いは正確無比だ。
「‥‥悪しき生命体よ‥‥光射す世界に、汝ら闇黒、住まう場所無し‥‥!」
 ぶん、と手を一振りすると、また別のカマゴブの頭に当たり、大きくのけぞらせていた。
「チッ‥‥アイツ結構いいアシ(蛙)持ってんじゃネェか」
 と、カマガエルのオギーンちゃんに鋭いガンを飛ばす男が1人。
 うんこ座りしながら民家の壁に『今夜も釈迦力仏恥義理』(しゃかりきぶっちぎり)と筆で書いていたきむらよしお(ea4457)である。普通の字はあんまり知らないが、こういう当て字は得意だ。
「なりてぇ‥‥風になりてぇ‥‥」
 呟きながら、そっと目を閉じる。
 脳裏に蘇るのは、故郷の村でイカした大ガマに跨って水田のあぜ道を駆けていたアニキ分達の雄姿だ。
 大ガマに原色のハデメイクを施し、漢字を羅列した旗を立てて走る姿に、幼き日のよしおは憧れたものである。
「みんな元気でやってっかな‥‥って‥‥へっ、らしくねえぜ。昔を思い出すなんてヨぉ」
 頭を振り、苦笑した。
 が、その目がいきなりくわっと見開かれる。
「あれは‥‥ア‥‥アニキ? アンタ、化摩憎のアニキ!?」
 カマゾーを指差し、わなわなと震えるよしお。
 ああ‥‥きむらよしお22歳、宿命の再会であった。
 ‥‥‥んなわきゃないが。
「ふふふ、やるわねぇん。それじゃあこっちも本気でイクわよぉ〜んvv」
 カマゾーがウインクと同時に印を組み、術を発動させた。
 どんどろどろどろどろどろ‥‥と、立ちこめる煙。
 それが収まると‥‥。
「はぁ〜い、アタシはアギトちゃんよ〜。よろしくねぇんvv」
 人遁の術でアギトに化けたカマゾーがそこにいた。ただし、顔と体つきはアギトだが、声や仕草はそのまんまで何の変化もない。
「──ぐはっ!」
 精神的にダメージを受け、思わず白目を向いて崩れるアギト(本物)。
「な、なんて見事な術や! 見分けがつかひん!」
 ミケイトが、驚愕に目を見開いた。
「‥‥そんなわけないでしょう」
 落ち着いた表情で、ルアが投石。
「ぐごぁっ!」
 アギト(本物)に命中。仰向けにぶっ倒れる。
「‥‥ふん、子供騙しだな」
 耀がやや離れた位置から、ソニックブームを撃った。
 それはしっかり狙い通りにアギト(本物)に命中。残り少ない衣服を全て切り裂き、宙に儚く舞わせる。
「今宵は僕と‥‥歌いませんか? 二人で奏でる愛の調べ‥‥そう、しっとりと、ねっとりと‥‥♪ うふふふふ‥‥♪」
 いつの間にか屋根から下りてきたトリアも、迷う事なくアギト(本物)の手を取り、数センチの距離で甘く切なく情熱的に語りかけつつ、指先でアギト(本物)の背中を、こう、つつつ〜っと‥‥。
「あ゛〜〜〜〜〜〜!!」
 どうやったって間違えっこないはずの本物と偽物をこうまでパーフェクトに間違えられ‥‥とうとうアギトの中で何かが音を立てて崩壊した。決定的な何かが。
「うひゃへひゃひゃっひゃっひゃっひゃっ‥‥」
 目玉がくりんとでんぐり返り、いきなり狂ったように笑い始めるアギト(本物)。
「コワレた‥‥っちゅーより、これはもう放送禁止の顔や!!」
 ミケイトが叫ぶ。
「ひゃひゃひゃ! 臨・兵・闘・者・皆・陣・裂・在・前!! これでも食らえ食らえ食らえ〜〜〜!!」
 両手を組み合わせ、人差し指を揃えてピンと伸ばした印(?)を結ぶと、電光石火の勢いでもって、それをゴブリンの尻めがけてロックオン&ファイヤー。
 ──&$%#>*+@¥〜〜〜!!
 苦痛と若干の『何か』が混じった悲鳴を張り上げつつ、ゴブリンは倒れた。
「‥‥うーん、なんかアギト君、いつものアギト君じゃないですね‥‥あはははは♪」
「あかん! アギトはん、今は歩く事だけ考えるんや!」
 目を細めて笑うトリア。アドバイス(?)を送るミケイト。
「‥‥」
 耀は愛馬の鬼禪丸の元へと後退し、いつでも撤退する準備ができている。
「‥‥もう一回思いっきり頭に石をぶつけたら元に戻らないかな‥‥」
 本気でそう思って、ルアは石を構えていた。
 と‥‥その時。
「にゅっふっふっふっふ。目撃★どきゅーん」
 おかしな笑い声と共に、道端に生えていた木が1人の少女の姿となる。どうやらミミクリーの魔法で変身していたようだ。
「とわりゃーーー!!」
 掛け声も高らかに天へと飛翔すると、空中で身を捻ってきりもみしながらアギト(本物)の顔面に両足を揃えたロケットキックをぶちかます。
「おっぺぎゅ!!」
 何かが潰れるような音がこぼれ‥‥悪(ぇ)は滅んだ。
「聖兎少女(せいんとしすたー)ダイモン・ライビー!(ea4676) 只今参上♪」
 アギトを踏んづけつつ、微笑んでポーズを決める少女。
「ライビーって呼んでね★」
 ウインクしながら華麗に可愛く名乗った。
「貴方ねっ! 夜な夜な男の人を襲って、あーんな事やそーんな事をしちゃったりしてるのはっ! この世にカマなど、のーさんきゅー! 男の人の後ろの方の安息を護るため! ないーぶで、でりけぃとな男心を護るため‥‥!」
 杖をずばびしぃっとカマゾーに付きつけ、ライビーは宣言する。
「いざいざ、天誅ー!! ぶれいくぶれいくー♪」
 どどーんと弾けるディストロイの魔法。
 が、カマゾーはいち早く空蝉の術を用いて魔法から逃れていた。
 カマゾーのいた位置には、頭が爆発してチリチリヘアになったアギトがひくひくしている。
「な、なんてひどい事を! もう許さないんだからっ!」
「‥‥いや、魔法を撃ったんはあんさんやけどな」
 義憤に燃えるライビーと、それをさりげなくツッコむミケイト。
「皆さん! 一気にヤっちゃって下さーい★」
 背後の仲間達へと振り返り、ライビーが呼びかける。
「‥‥ん?」
 それにタイミングを合わせたかのように、耀の目の前にヒラヒラと一枚の布が落ちてきた。
 どこからともなく『読んでね♪』と聞こえた気がして‥‥手に取ると、耀が書かれていた文言を読み上げる。

 ――イロモノの空より来たりて
 ――正しき弄りを胸に
 ――我等はカマを断つ剣を執る

 ──汝、『無垢なる破壊神』――レン・ウィンドフェザー!

 次の瞬間、静かな風が場を通りすぎていった‥‥気がした。
「きゃは♪」
「うおぉっ!?」
 突然、耀の直上にレンが飛び降りてくる。どこから落ちてきたのかは、誰にも分からない。
「ひかりさすイギリスに、なんじらカマ、すまうばしょなしなの。ほらず、がっつかず、とんでいけ〜〜〜〜〜〜〜!」
 きゅごごごごごごごごご!
 レンから放たれた魔法の重力波が、直線上にいた全ての人、物、カマに照射され、あるものは吹き飛び、あるものは転び、あるものは破壊音を上げて崩壊する。破壊神の御力は全てに平等だ。
「おっしゃー! なし崩しにこのままいったる! 絶対大物獲ったるでアタックやー!」
 ミケイトが矢を放ち、カマガエルの尻を狙う!
「‥‥変な病気とか移ったりしねえだろうな、オイ‥‥」
 ぶつぶつ呟きつつ、耀がスマッシュによる一撃を決めた。
「さて‥‥じゃあ君の悲鳴を聞かせてもらおうかな。なんだったら僕のも聞かせてあげようか? あははははは♪」
 トリアが槍を構え、後に回り込む、狙い所はもちろんひとつだ。
「アンタ変わっちまった‥‥昔のアンタはドコ行っちまったんだよぉぉ〜!」
 梅干を投げつけるよしお。
「父さん‥‥母さん‥‥私は今、この夜に、この世に生けていてはいけないモノを撃ちます。私に加護を‥‥」
 ルアは月を見上げ、祈りを捧げる。
 それからキッとカマゾーを睨むと‥‥今回始めて弓に矢をつがえ、引き絞った。
「これが‥‥悪しきカマの定め。あぁ‥‥滅ぼしてみせよう、全ての悪しきカマを‥‥私の平和の為に‥‥」
 シューティングPAの力が込められた一矢が、まっすぐにカマゾーの尻へ。
「いっやぁぁぁ〜〜〜んvv」
 さすがにこれだけの集中攻撃を受けては、術の発動も追いつかない。
 気のせいかちょっとだけ嬉しそうな声を上げ‥‥カマゾーは天に召された。
 尻に複数の矢を生やしてうつ伏せに倒れたカマゾーの隣には、白く燃え尽きたアギトが仲良く並んでいたようだ。
「オレ、アニキに憧れてたよ‥‥せめて安らかに眠ってくれ‥‥」
 そっと目を閉じつつ、よしおがそのカマゾーとアギトの鼻に梅干の種を詰め込む。彼なりの弔いに違いない。
 こうして‥‥またカマは滅びたのであった。

■ END ■