荒くれ者とはこういう事だ!

■ショートシナリオ


担当:U.C

対応レベル:1〜4lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 0 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月28日〜08月02日

リプレイ公開日:2004年08月03日

●オープニング

 とある貴族の屋敷に勤める使用人一同からの依頼だ。
 その屋敷では、3ヶ月程前に当主が病で倒れ、床に伏している。当主の奥君は早くに亡くなっており、息子が1人いるのだが‥‥この1人息子がどうしようもないらしい。
 もうじき20歳にもなろうというのに、毎日上半身をはだけて荒くれ者の格好をしては、屋敷のうら若い女性使用人達を追い掛け回しているというのだ。
 なんでもこの若君、何にも縛られない荒くれ者、アウトローに強い憧れがあるらしく、そんな行為に耽っているらしいのだが‥‥屋敷の者は皆、当然ご子息のご乱行ぶりに大変困っている。
 そんなわけで、病気で寝ている旦那様のためにも、若君にはしっかりしてもらいたいという使用人達の切なる願いを込めた依頼が、ここに寄せられてきた。
 具体的には‥‥冒険者達が盗賊に扮し、屋敷を襲ってくれ、との事だ。
 そうして、本当の荒くれ者というのが、どんなに粗暴で野卑で教養がなくて、まさに社会の屑、ゴミ以下の存在なのだという事を、問題の若君に思い知らせてほしいという。
 使用人達は、まさか本当の盗賊に襲ってもらうわけにもいかないので、ここに頼むしかなかった、と言っている。
 無論、屋敷の全ての使用人達はもちろん、病床の主人もこの事を了解しており、知らないのは若君ただ1人だ。
 屋敷にいる使用人は、女性が10数名と、それらを取り仕切る老紳士が1人であり、皆協力してくれるだろう。
 この依頼に望む者は、全員荒くれ者に扮し、屋敷に突入の上、若君が『アウトローに憧れた自分は馬鹿だった』と思い知るような行動に励んでほしい。
 とにかく、乱暴で馬鹿で下品で動物以下、この地上に生きる全ての生物の中で最低の者達だ‥‥とまで思わせてしまえば良いだろう。屋敷の主人も、必要とあれば屋敷など多少壊れても構わんと言ってくれている。存分に暴れて来てもらいたい。
 とはいえ‥‥‥‥決してやりすぎないように。
 諸君等の天晴れな暴走ぶりと同時に、ギリギリでの自制心に期待する。
 以上である。

●今回の参加者

 ea0043 レオンロート・バルツァー(34歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea0258 ロソギヌス・ジブリーノレ(32歳・♀・レンジャー・人間・エジプト)
 ea0730 八神 猛(29歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea2462 ナラク・クリアスカイ(26歳・♀・神聖騎士・エルフ・イギリス王国)
 ea3198 リーン・エファエイム(24歳・♂・レンジャー・エルフ・フランク王国)
 ea4756 朱 華玉(28歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea5455 ローザ・パンテル(26歳・♀・バード・人間・フランク王国)
 ea5458 シュヴァルツ・ティーゲル(39歳・♂・レンジャー・人間・フランク王国)

●リプレイ本文

 ──襲撃予定一日前。
「あの‥‥故郷から親戚を頼りに出てきたんですけど、その親戚も死んでしまって‥‥お料理なら少しはできます、雇ってもらえませんか?」
 瞳をキラキラさせた朱華玉(ea4756)が、館を一足先に訪れていた。
 話は既についており、無論彼女は使用人として雇われる事になるのだが‥‥館の当主の一人息子だけが、彼女がやってきた本当の目的を知らない。
 ‥‥そう。
 冒険者達の恐るべき計画は、もう始まっていたのだ!


 ──翌日。
「あ〜れ〜、若君様、お戯れを〜」
「うへへへへへ〜、た〜べちゃ〜うぞ〜!」
 早速華玉は、上半身をはだけた若君に朝から追いかけ回されていた。荒くれ者に憧れる若君様の困った日課である。
 と、その真っ最中に、
「‥‥若君、食事の支度が整いました。本日のお勤めはそのくらいになさって下さいませ」
 部屋のドアから、いかにも執事、といった感じの初老の紳士がうやうやしく入ってきた。
「あ、そっか。うん、わかった」
 その声を聞き、ようやく足を止める若君だ。
「ふぅ‥‥」
 一方、額に浮かんだ汗を拭いつつ、小さくため息をつく華玉。
「‥‥覚えてなさい。いい気になっていられるのも今のうちよ‥‥ふふ、ふふふふふ‥‥」
 光る目で若君を見つめ、背後に黒い炎を背負って呟く彼女であった。


「‥‥本日のメインディッシュでございます」
 食堂には若君の父親にして現在病気療養中の館の主を始め、全ての使用人達も揃っていた。
 長いテーブルの上には、天井にまで届きそうな程のドーム状の器がどん、と置かれている。
「で、でかい!」
 思わず、目を丸くする若君。
「本日はスペシャルですゆえ。では‥‥ごゆるりとお楽しみを!」
 執事が手を叩くと、使用人達が器の蓋を取り去った。
 中から現れたのは‥‥。
 ──ずどーん★
 突然、煙が吹き上がり、室内を満たす。
「ふはははははは!!」
 続いて、野太い男の笑い声。
 煙の中に、3つの人影が浮かび上がる。蓋が取られた大皿の上に乗り、色とりどりのオードブルやサラダに飾られた中に立つ、謎のマント姿の者達。
「だ、誰だ!」
 思わず椅子から転げ落ちながら、若君が問う。
「‥‥ふっふっふ。君がアウトローに憧れていると噂で聞いて、我らネコレンにゃ〜にスカウトをしに来たんだ」
「ね、ネコレンにゃ〜って‥‥なに?」
「それは今から教えてやろう‥‥見るがいい! 我らの勇姿を!!」
 叫ぶと、3人は一斉にマントを空中に脱ぎ捨てた。
「うわぁぁぁぁぁぁ〜〜〜!!」
 若君の悲鳴がこだまする。
「赤き鬣は王者の印、紅蓮の戦士、シシレンにゃ〜此処に見参!!」
 赤い獅子の仮面をつけたレオンロート・バルツァー(ea0043)が雄々しく名乗りを上げた。
 身につけているのは、その仮面のみ! 下は見事なくらいなんもない! 筋肉質な漢の肉体が、どうだ! とばかりにそこにある。
「同じく、黒き体に白き模様、悪しき世界に一筋の光、トラレンにゃ〜お呼びと有らば即参上ッ!!」
 隣には、黒字に白の縞模様が刻まれた虎の仮面をつけた漢がいる。彼はシュヴァルツ・ティーゲル(ea5458)。仮面は全て彼のお手製である。ちなみに言うまでもなく、シュバルツもまた仮面しか身につけてはいない。素晴らしいまでにぶらぶらだ。何がぶらぶらかは、とても言えない。言えるものかッ!!
「そして最後に控えし紅一点! ピンク色は女の子の証、ヒョウレンにゃ〜華麗に登場!!」
 3番目に名乗ったのは、ピンクの全身タイツっぽい衣装を身につけたローザ・パンテル(ea5455)であった。言葉の通り、顔にはヒョウの仮面を装着している。さらに、手には先に黒い丸の付いた棒を持って、2人の仲間のホットスポットをしっかりカバーする事も忘れない。その辺は女性らしい心遣いと言えるだろう。たぶん。
「我等三人揃って、愉快な猫科のお仲間! ネコレンにゃ〜!!」
 ──ずどどーん★
 とどめとばかりに3人が声を合わせて名乗りを上げ、ローザがイリュージョンの魔法でもって、自分達の背後で派手に爆発が巻き起こるイメージを若君に送り込んだ。
「たたたたたいへんだ! へんたいへんたいへんたいだーーー!!」
 腰を抜かし、ネコレンにゃ〜達に指を突きつけて回文みたいな台詞を喚き散らす若君。
 周囲の女性使用人達もレオンロートとシュバルツのぶらぶらっぷりにきゃーとか悲鳴を上げ、何人かが失神した。
「何を言うか! このこわっぱめが! だからお前はアホなのだぁ〜〜〜!!」
 レオンロートが、大音声で叫ぶ。
「良いか、よく聞け! イギリスに存在する荒くれ者の約90%(当社比)が、我々のように己自身を全身で表現する猛者なのだ! 断じて、そのようなゲスで下等でふにゃふにゃな概念で縛られる存在ではないわ!!」
「な、なんだってぇーーー!?」
 それを聞いて、若君の目が驚愕に見開かれる。
「ふっ‥‥驚いてる驚いてる。どうやらわかっちゃいなかったようだね。レオンロート、シュバルツ、言葉だけじゃなく、身体にも教えておあげ!」
「あらほらさっさー」
 ローザが命じると、漢2人が敬礼してそれに従う。どうやらボスは彼女らしい。
「‥‥さあ、怖がらずに我々と一緒にアウトローの世界へ」
「‥‥さあ〜、さあ〜、ワシと、きょ、兄弟の契りを〜」
 何のつもりか、手をにぎにぎしながらにじり寄る2人。
「ぎゃ〜! 嫌イヤいやぁ〜〜〜!!」
 目に涙を溜め、背中を向けて逃げ出す若君。
 とにかく部屋を出ようと、ドアへと走ったが‥‥。
「邪魔するぜぇー!」
「ふぎゃー!」
 タイミングよくドアが開き、若君の顔面を直撃する。
 ぬっ、と新たに入ってきたのは、八神猛(ea0730)だ。
「だ、誰ですか!?」
 打ち付けた鼻を押さえて若君が聞いたが‥‥。
「ふん」
 それを見下ろして鼻で笑い、胸倉を掴んで軽く持ち上げると‥‥。
「‥‥盗賊だよ、間抜け」
 ドスの聞いた声で、猛は告げた。
「ひぃぃ〜!」
 顔面蒼白となる若君。
「おぉ、可愛い姉ちゃん達もいるじゃねえか。2、3人こっち来て付き合いな。酌でもしてもらおうか!」
 が、すぐに若君の事は放り出すと、そんな事を言いつつ、女性使用人達に振り返る。
「へっへっへ。いいですね〜。おいお前等! 猛さんの酌の相手ができるなんて幸せだぞ!」
 と、リーン・エファエイム(ea3198)が揉み手をしながら猛に言い、打って変わって使用人達には高慢に告げた。ちょっと口調がぎこちないが‥‥まあ、芝居なので仕方がない。それでも一生懸命、卑屈な男の役になりきろうとしている。
「はっ、何本当の事言ってやがる! つべこべ言ってないで女の子を捕まえるぞ!」
「へいっ!」
 リーンの頭を軽く小突くと、早速女性使用人達を追いかけ始める2人だ。
「あああああどうしようどうしよう」
 頭を抱え、おろおろする若君の目が、ふと1人の使用人と合った。
「そうだ! すぐに助けを呼ぼう! 君、すぐにこの事を誰かに知らせに‥‥」
「‥‥お断りよ、この道楽息子」
「へ‥‥?」
 即答され、思わず若君の目が点になる。
 冷たい目で若君を見下ろすその女性使用人こそ、華玉その人だ。
「ふん、まだ分からないの? あたしは前もってこの屋敷に入り込み、盗賊の侵入を手引きしたのよ。つまり彼等の仲間ってわけ」
「そ、そんな‥‥」
 衝撃の事実に、声を失う若君であった。
 それを尻目に、華玉はふっと顔を曇らせると、
「この館にも上半身裸の変態がいるって聞いて楽しみにしてたのに、こんな小物とはね‥‥残念を通り越して頭に来るわ。憂さ晴らしに暴れてやるから覚悟なさい!」
「ひぇぇ〜〜〜!」
 襟首を掴んで無理矢理に壁際に立たせ、拳を叩きつける。ぼこっ、と派手な音がして、若君の顔のすぐ横の壁に、華玉の拳が手首までめり込んだ。
「情けない声上げるんじゃないの! それ以上あたしをがっかりさせたら、次はアンタの顔がこうなるからね!」
 睨まれ、青い顔でコクコク頷く若君である。
「あぁ‥‥感じます。不幸な波動を感じます。仲間ですね、そうですね、そうだと言って下さい、言うのです」
 と‥‥今度はそこに妖しい目つきの女性がフラフラとやってきた。ロソギヌス・ジブリーノレ(ea0258)だ。片手には骨付きの鶏肉、もう片方の手にはワインの瓶。服のポケットにはこれでもかとパンを詰め込んでいたし、口の中にもたくさんの食べ物を詰め込んでいるようだった。リスみたいに両方の頬が膨らんでいる。ほのかに頬が赤い所をみると、既に酔ってもいるようだ。
「わかりますよ‥‥何者にも縛られないのっていいですよねえ‥‥私もあこがれますよ‥‥思えばイギリスにきてからこっち、盗賊にはフクロにされ、官憲には追われ、騙されてインチキな壷は買わされ、たまたま運勢を見てもらった占い師は結果を告げる前に青い顔で逃げていくし‥‥私が一体何をしたっていうんですか‥‥ひっく‥‥」
「は‥‥はあ、で、あなたはどちら様ですか?」
 切々と己の不幸を語る女性に、一歩後ろに下がりつつ、若君は尋ねてみる。
「誰って‥‥貴方の同志です! 仲間です! フレンズです! これでも私、万引きしようとしてお店の前で三日三晩悩んでたら、衛兵に不振人物と間違われて補導されちゃったり、町角で遊んでいる子供を笑顔で眺めていたら人さらいと思われて一週間牢屋に放り込まれた事があるくらいの無法っぷりなんです!」
 若君の手をがしっと掴み、目を潤ませるロソギヌス。
「ねえ、教えて下さい」
「な‥‥何をですか?」
「私の自由はどこでしょう?」
「‥‥え?」
「私の自由はどこですかーーー!!」
 なんか感極まったのか、叫びつつ泣き始めるロソギヌスである。幸せ探して21年。ゴールはまだまだ見えないらしい。もう、頑張れ、としか言葉がない。
「‥‥ふむ、大分追い詰められてきたようだな。そろそろ頃合、か」
 その様子を眺めつつ、壁に背を預けていたマント姿が静かに動き出す。
 目の部分だけを覆うマスクで素顔を隠した人物の名は‥‥ナラク・クリアスカイ(ea2462)だ。
 チラリと視線を送ると、それを受けた屋敷の主人と執事が、僅かに頷く気配。
「‥‥う、うううううう‥‥」
「旦那様! しっかりなさって下さい旦那様!!」
 突然、館の主人が胸を押えて苦しみ出す。
「父さん!」
 慌てて若君も近寄ろうとしたが‥‥。
「動くな」
 静かだが、鋭い声が飛んだ。と同時に、テーブルに乗っていた花瓶が轟音を上げて砕け散る。ナラクがディストロイの魔法を放ったのだ。
「で、でも父さんが!」
 足を止めた若君が、訴えるような眼差しをナラクへと向ける。
 しかし‥‥。
「誰が死のうと、我々の知った所ではない。黙って見ているがいい」
 ナラクはにべもなくそう告げる。
「おおお‥‥むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがおったげな‥‥!!」
「ああ旦那様! これは間違いなく持病の発作でございます!」
 顔面蒼白でうわ言を口にする主を見て、執事が叫んでいた。
「なんか‥‥変わった病気みたいですね」
「そうみたいだな。けどここは姐さんに任せとけ」
 食事を食い散らしつつ、リーンと猛はそんな会話を交わす。猛の言う姐さんとは、ナラクの事だ。
「ふむ‥‥よかろう。私に任せるがいい。以前、東洋に伝わるツボ治療というものを聞き及んだ事がある」
 ナラクはマントを翻し、主人へと近づいた。
「今、その技を試してくれよう! この病気に効く秘孔は‥‥ここだ! 心・霊・台!!」
 くわっと目を見開き、指先を主人の背中へと突き立てる。
「おあぁぁああぁぁぁぁあああぁぁぁぁ〜〜〜!!」
 瞬間、絶叫を放って主人の身体がビクンビクンと脈打った。
「さすがはナラクの姐御だ! 俺達のできない事を平然とする! そこが痺れる憧れるゥゥゥ〜!!」
 声を揃えてナラクを称える猛とリーン。
 やがて、バタリと主人が倒れ伏して数秒‥‥ナラクは、言った。
「ん〜? 間違ったかな〜?」
「おお! 旦那様! 息も脈も止まっておられる! 旦那様! 旦那様ーーー!!」
 執事の、絶叫。
「そ、そんな‥‥!」
 若君も力を失い、ヘナヘナと崩れる。
「‥‥よかったね。これでアンタは自由さ」
 その若君に、薄く笑った華玉が告げた。
「華玉の言う通りだな。それに元々、本当に何にも縛られたくないなら、屋敷から出て行けば良かっただけの話だ。それができないでいたのは、自分独りでは何もできないから‥‥違うか? 世間知らずのお坊ちゃま?」
 ナラクも、冷たく言い放つ。
「甘えるのも大概にしておくのだな。君を思い上がらせてくれる人間がいつまでも居ると思ったら大間違いだ」
「それを分かった上で、まだアウトローになりたいって言うなら、アンタは本物だね。さて‥‥どうする?」
 ナラクが見つめ、華玉が問う。
 しばし、若君は何も言わなかったが‥‥やがて、
「違う‥‥僕が求めていたのは、こんな自由でも、こんな力でもない‥‥こんなのは‥‥いらない‥‥ッ!」
 震える声で、そう口にする。
「‥‥」
 その様を見て、ナラクと華玉、そして執事が小さく頷いていた。主もまだ床に倒れたまま、そっとVサインをしてみせる。
 実は、全て芝居だったのである。
 あらかじめナラクが手紙で主人を巻き込んで死んでしまうよな芝居を打てないかと提案し、それに主人が乗ったのだ。結果は見ての通り、大成功であった。
「大変だ! 冒険者の奴等が僕達を嗅ぎつけてきたよ!」
 リーンが、言う。これももちろん嘘だ。撤退の合図である。
「こーのスカポンタン! いつまで何やってるんだい! とっととずらかるよ!」
 きゃーきゃー言って逃げ回る女性使用人達の前で華麗に腰を振ってみせ、サービス大解放中だったレオンロートとシュバルツの頭を思いっきり殴りつけたローザが、2人を伴って退場していく。
 他の皆も、次々にこの場から立ち去っていったが‥‥。
「‥‥ちょっとお待ち下さいませ」
 最後に残っていたロソギヌスと猛が、執事に首根っこを押さえつけられていた。
「皆様のお手並みは見事でございました。が‥‥少々こちらの予想以上の損害が出たようでして。お2人には、しばらく屋敷に留まって頂き、下働きなど如何でございましょう?」
 ニコニコ言う執事だったが、目は笑っていなかったという。
 かくて‥‥この2人だけはさらに数日の間現地に留まり、嫌と言うほど働かされたそうである。
 ちなみに若君は無事真人間への道に戻り、今はまっとうな若き貴族として過ごしているという話だ。

■ END ■