クッポーと弓矢の材料をルキンフォー!

■ショートシナリオ


担当:UMA

対応レベル:6〜10lv

難易度:難しい

成功報酬:4 G 50 C

参加人数:6人

サポート参加人数:2人

冒険期間:10月15日〜10月20日

リプレイ公開日:2009年10月23日

●オープニング

 アイドル射撃手にふさわしい弓矢。
 なんとも面妖なそのテーマに対し、ドワーフのベップ・パブリィはこの一ヶ月、毎日検討を重ねていた。
 そして、その結論が出たという手紙が、クッポーの元に寄せられたのが、つい昨日の事。
 クッポーは早速、差出人のいる丸太造りの山小屋へと足を運んでいた。
「このクッポーに相応しい弓矢なのだ。さぞかし、世界を牛耳る力を宿している事だろうな」
「その可能性も秘めている弓矢、と言う事は否定すまい」
 天上まで届きそうなほどに上がった期待値に一抹の不安を抱きつつ、ベップは助手の青年スロリーに命じ、設計図を持って来させる。
「‥‥」
「ククク、御苦労」
 スロリーは口を利く事が出来ない。
 それを知るクッポーは、差し出された紙を丁重に受け取り、広げてみた。
 大きさとしては、短弓より更に小型。
 とは言え、クッポーの身体には合っている大きさだ。
 弓の胴部は柔らかい波を描いており、両端は翼を模した形状となっている。
 色はまだ決まっていないようだ。
 弦は、予定通りヤギの腸。 
 ただし、単なるその辺のヤギの腸と言う訳ではない。
 他の部位も、様々な材料を必要としていた。
 また、矢に関しても、光を放つ矢と言う事で、それに相応しい材料を用意しなくてはならない。
「後、例の2つの弓を1つにすると言う件だが、基本的には溶かして固める方向で進める予定だが、良いのか?」
「それは当人に聞け。尤も、あの2つの弓を合体させたらどうなるのか、興味がないと言えば嘘になるがな」
 クックック、と天使の歌声のような清らかさで笑いつつ、クッポーは入念に自身の弓の設計図に目を通していた。
「デザインは変更可能だ。ただし、必要な材料は全て集めなくてはならぬ」
「容易な事だ。このクッポーの手にかかれば、エクリプスドラゴンの爪だろうと、バハムートの角だろうとお手の物」
「そこまで大げさではないが、結構色々用意して貰う事になる。幸い、全部ノルマンで集められそうだがの」
 苦笑しつつ、ベップはテーブルに広げられた地図を親指で差した。
「スロリーに調べて貰い、各材料を有している動物、モンスターの生息地をあそこに記してある。好きな時に探しに行って、入手して来るが良い」
「上等だ。このクッポーの手にする弓矢の一部となるに相応しいモンスターかどうか、この目で確かめて来てやろう」
 実際確かめに行った結果、診療所送りとなった。
「‥‥仕方ない奴だ。スロリー、ギルドに行って依頼出して来い」
 スロリーはコクコクと頷き、山小屋を出て行った。

●今回の参加者

 eb6702 アーシャ・イクティノス(24歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb8302 ジャン・シュヴァリエ(19歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 ec0828 ククノチ(29歳・♀・チュプオンカミクル・パラ・蝦夷)
 ec4441 エラテリス・エトリゾーレ(24歳・♀・ジプシー・人間・神聖ローマ帝国)
 ec5382 レオ・シュタイネル(25歳・♂・レンジャー・パラ・フランク王国)
 ec5385 桃代 龍牙(36歳・♂・天界人・人間・天界(地球))

●サポート参加者

ユリゼ・ファルアート(ea3502)/ レリアンナ・エトリゾーレ(ec4988

●リプレイ本文

 燃え盛る加熱炉の炎を背に、ベップは1人『2つの弓』の設計図を何度も見直していた。
 1つの弓の開発は、順調に進んでいる。
 ただ、もう1つの武器に関しては、どうやらそう簡単には行きそうにない。
 ベップは現時点で自分の元に届けられている材料の1つに、そっと手を伸ばした――――


「――――と言う訳で、大事な仲間の為に、どうしても必要なんだ」
 レオ・シュタイネル(ec5382)は頭を下げ、眼前の男――――パストラルの村長の返答を待つ。
 レオがこの地を訪れた理由は、ホワイトカシミヤ山羊の買い取りの為。
 エラテリス・エトリゾーレ(ec4441)の親戚レリアンナ・エトリゾーレに案内され、その山羊がいると言う村に赴いていた。
 ホワイトカシミヤ山羊は、非常に高価な山羊と言う事もあり、村の宝物として大切に飼育されている事から、交渉相手は村長となったのだ。
「話はわかりました」
 この村に強い結び付きを持つレリアンナの紹介と言う事で、話を聞いて貰うのは容易だった。
 しかし――――
「ですが、あの山羊はそう簡単には手放せません。代わりに珍しい動物を頂けるのなら話は別ですが」
 結局、この日の交渉はこれが結論となった。
 羊をはじめとした放牧を大々的に行っているこの村にとって、このホワイトカシミヤ山羊が村にいる、と言う事自体に大きな意味がある。
 等価交換が可能な物は、その山羊に匹敵する希少性の高い動物のみ。
 最初から金に物を言わせる気はなかったが、レオは代替物の模索に頭を痛めつつ、村の宿へと向かった。


 その材料は、巨大だった。
 普通に生活する上で、この部位を目にする機会は多い。
 だが、ここまで大きな『それ』となると、一般人が手に取る事はまずないだろう。
 ベップは一人満足げに、その部位をそっと撫でた。


「お帰りなさい。風呂にするか? 食事か? それとも‥‥」
 マルシャンス街の一角にある元不幸男の家に、雷鳴のような悲鳴がこだましたのは、その時の事。
 少し前までは街の名物だったその絶叫だが、現在は殆ど聞かれる事はなくなっていた。
 そんなマックスと旧知の仲である桃代龍牙(ec5385)は、つやつやした顔でここに来た理由を――――
「いや‥‥そんな事より、何故俺の留守中にこの家にあがれたのか説明してくれ」
「気にするなよ、唯の愛だ。それより食事だと言うのにペーターさんは来てないのか?」
「まて。ペーターの事より、今しれっと言った一言はどう言う事だ」
 混沌とした会話の中で、龍牙は要件を終える。
 ここに来た理由。それはマックスの友鳥であるホワイトイーグルの居場所を教えて貰う為だ。
『ブラン・エクレール』の異名を持つその鳥は、割とこの街を頻繁に訪れている。
 案の定、マックスから聞いたとある空き地に龍牙が赴くと、その巨大な翼をわっさわっさ動かしながら、狩った獲物を食していた。
 その空き地は彼のリラックスルームと化しているらしく、羽根もかなり落ちている。
 ホワイトイーグルの羽、20枚。
 弓の材料として必要と言われたそれは、割と簡単に見つかった。
 しかし、巨大なホワイトイーグルの羽根はかなり嵩張る。
 龍牙はケット・シーのやなぎに通訳をして貰い、乗せて行ってくれないかと依頼したが――――残念ながら通じる事はなく、結局自ら大きな羽根を運ぶ事となった。


 柔らかなホワイトイーグルの羽根を愛でたベップは、次に別の材料に目をやった。
 弓作りの過程において、ベップは2つの至福を知っている。
 予め描いた設計と、実際に出来た武器が一致した時の快感。
 そして、見知らぬ材料と出会う瞬間の高揚。
 ベップはその1つに、暫く身を委ねていた。
 

 黄金の月が浮かぶ水面が、歪に揺れる。
 その湯に足を浸し、空を仰いでいたククノチ(ec0828)は、夜空に浮かぶ金色の龍の存在を感じていた。
 ユリゼ・ファルアートのバーニングマップにより、最短経路で到着した初見の地に滞在して2日目の夜。
 ようやく待望の瞬間だ。
 ククノチがこの地を訪れたのは、ムーンドラゴンの鱗を頂戴する為。
 懇願の為にインタプリティングリングを装着し、龍が降りるのを待つ。
 暫くすると、500mほど離れた岩場へと優雅に降り立った。
 ククノチを見つけて参上した訳ではないようだ。
『イワンケ殿、頼む』
 キムンカムイのイワンケの背に乗り、ククノチは慎重に野生の龍へと近付く。
 今回共に依頼を受けたアーシャ・イクティノス(eb6702)の飼う月龍セライネより遥かに大きなその身体に、ククノチは戦慄すら覚えた。
『お休みの所を失礼する』
 返答を待つが、ムーンドラゴンは特に反応を示さず、首を動かす事もなかった。
『私はチュプオンカミクルのククノチと言う。可能であれば、話を聞いて貰えないだろうか』
『‥‥手短に済むのであれば、な』
 形容しようのない音を鳴らし、そのままの体勢でムーンドラゴンは意思の疎通を許した。
 しかし、決して好意的な物言いではない。
 果たして、この願いは龍の逆鱗に触れる事はないのだろうか――――
 

 同時刻。
「そうですか。色々教えて頂き、ありがとうございました」
 旧知の娘に頭を下げ合ったアーシャは、その家の前で待つジャン・シュヴァリエ(eb8302)、エラテリスの2人に近寄りつつ、首を横に振った。
 この集落の直ぐ近くに、バイコーンがいると言う『ブルヤールの沼地』がある。
 当然、3人の目的はその角を頂戴する事だ。 
 しかしこのバイコーン、ノルマンでは全く目撃証言がない。
「マッパ・ムンディには、二本の角があると記されています。森にいるみたいですね」
 アーシャは荷物から書物を取り出し、うーんと唸りながらパラパラ捲っている。
「精霊の事は一通り学んだんだけど、このバイコーンの事は記憶にないんだよね」
「ボクもわからないよ☆」
 他国の目撃情報から、ユニコーンの仲間と思われるバイコーン。
 亜種である事は間違いないが、精霊に関する書物に、その記録はない。
 ジャンとエラテリスが近隣住民に目撃情報を問い合わせてみたが、結果は同じだった。
「手を拱いてても仕方ないし、取り敢えず行ってみようか?」
「そうですね。ジャン君のブレスセンサーもありますし、何とかなりますよね」
「それなら、お天気を調べておくよ☆ 1日目の事もあるしね☆」
 と言う事で、それぞれの移動手段を用い、沼地へと足を運んだ。
 この沼地にはアーシャが一度訪れており、ある程度地理は掴めている。
 霧は森の中まで侵食しており、視界は非常に悪い。
「うー‥‥また転んじゃった」
 かなり視力の良いエラテリスでも、数m先は殆ど視認出来ず、何度も転んでしまうくらいだ。
 エラテリスはめげずに猫足のサンダルに履き替え、アーシャも忍び足で足音を消し、慎重に調査を始めた。
 だが、ブレスセンサーが頼りと言う事で、ジャンに掛かる負担が大きく、余り長くは探せない。
 そして、調査開始から3日目。
「‥‥何かいる。バルバラと同じくらいの大きさだ」
 ジャンは自身をここまで運んだグリフォンの名を出し、警戒を呼びかける。
 反応は100m先。一頭だけだ。
 3人は頷き合い、接近を試みる事にした。
 しかし、後30mと言うところまで達したその時――――
「呼吸が‥‥変わった?」
 ジャンがそう認識すると同時に、3人の目の前にあった何本もの樹木が、消し飛んだ。


「よっ、生きてるか?」
 パリの診療所で寝ているクッポーの元に、レオとククノチが現れたのは、依頼最終日の夕方の事。
 クッポーは、アーシャから送られて来た手紙を読みながら、愛らしい笑顔を浮かべている最中だった。
「ククク。話はこの手紙で知っている」
 お気に入りだったのか、自身の似顔絵が描かれたその手紙を大切そうに仕舞い、クッポーはお見舞いに訪れた2人に目を向けた。
 その内の1人、ククノチとはこれが初対面となる。
「ククノチと言う。宜しく申し上げる」
「クッポーだ。ククク、貴様も中々隅に置けないな」
 目が合ったクッポーのそんな言葉に、レオは思わず赤面する。
「お前‥‥そう言う事言うのな」
「少し、聞いていた話と違うようだが」
 ククノチも口元を押さえ、照れていた。
 初心な2人は一息吐き、その後お見舞い品をそれぞれベッドの傍の椅子に置く。
 練習用のリトルボウと、中々入手困難な焼き菓子。
「ほう、深みのある甘さだ。それでいてクドくない」
 クッポーは満足げに完食し、自身の荷物からマントをククノチに取り出した。
「持っていくが良い。このクッポーのサイン入りだ」
「そ、そうか。では、あり難く頂く事にしよう」
 若干困惑気味のククノチに、レオは苦笑を禁じえない。
「案ずるな。貴様にもある」
 その表情を、クッポーは何故か『羨ましそう』と解釈したらしく、今度はレオに自身の物を差し出す。
「え? お前、これって‥‥」
 それは、クッポーが長年使っていたライトロングボウだった。
「おいおい。大事に持っておけよ」
「クックック。遠慮などしなくても良い」
 特に遠慮と言う訳ではなかったのだが――――レオは色々な物を飲み込み、その弓を受け取る。
 クッポーは何処か嬉しそうだった。
「で、首尾はどうだった?」
「ああ。それが‥‥」
 レオは今回の成果について、クッポーへと報告した。


「お、ここにもあったぞ」
 最初にエアリアルの塔を訪れた龍牙を待っていたのは、塔の至る所に落ちている切歯だった。
 縄張り争いの際に折れたのか、木箱を噛んで折ったのかは定かではないが、7階以外にも結構落ちている。
 ウサギの折れた歯は再び生えてくる。それが幸いしたようで、龍牙は以前訪れていた際に作成した地図を頼りに歩き回り、1日かけて20本以上集める事に成功した。
 そして、翌日。
「やっぱりウサギって言ったら、人参だよね☆」
「殺さないように‥‥と。よし、こっちは準備出来た」
 合流したエラテリスとレオも加え、残りの歯を得る為、3人での捕獲作戦を準備していた。
 おびき出す罠としては、人参と林檎を用意。
 それを大きな貝殻の上から吊るし、ウサギが来た所をガブリ、と言う仕掛けだ。
 殺す気はなく、基本は気絶させて歯を切ると言う方針。
 せめてものお詫びにと、沢山の人参や共食いっぽい餅も用意してある。
「あ、来たよ☆」
「しっ!」
 エラテリスが慌てて口を手で塞ぐ中、体を帯電させたウサギが罠の方へ近づいて行く。
 冒険者達は、壁に身を隠してその様子を眺めていた。
 そして――――がっちょん、と貝殻の口が締まると同時に、その貝殻が電撃によって破壊される!
「今だ!」
 レオの縄ひょうが投じられ――――ビリビリ中のウサギの後頭部に命中した。


 ベップは、加熱炉に再び目を向ける。
 2つの魔弓を一つにすると言うこの試みは、あと半月程で形となるだろう。
 問題は、クッポーの方の弓矢だ。
 今回の依頼は難しかった。
 と言うのも、1日目に局地的な豪雨と暴風が到来し、冒険者達が山中で足止めを食ってしまったのだ。
 だが、天候ばかりが問題ではない。
 交渉の見返りの弱さ。
 足の用意不足。
 そして、モンスターの情報不足――――


「まさか、デビル魔法を使うとは思いませんでした」
 アーシャが汗を拭い呟く間にも、バイコーンはオーラをまとい、遠距離攻撃を仕掛けて来る。
 初弾こそ避けたものの、中々ペースを掴めない。
 ユニコーンより遥かに高い魔法持久力に加え、デビルの魔法まで使用して来るバイコーン。
 つまり――――このモンスターは分類上、デビルと言う事になる。
『我の角を欲する者、何人たりとも許すまじ』
 テレパスによる、宣戦布告。
 アーシャがどうにか宥めようと言葉を投げかけたが、まるで聞く耳を持たなかった。
 しかし、このまま手を拱いている訳にはいかない。
 ジャンは既に暗くなった周囲に危機感を覚え、アーシャとエラテリスに呼びかける。
「ライトニングサンダーボルトで援護します。この魔法なら、かなり離れた場所からでも行けますから」
「わかりました。私は角に集中します」
「ぼ、ボクも頑張ってみるよ! って、わわっ?!」
 会話の途中、突然オーラの塊が襲ってくる!
 しかし、そのオーラは冒険者の周囲に光る球形の結界により、霧散した。
 魔弓「上弦の月」と「下弦の月」の弦を合わせる事で使用可能となる、ムーンフィールドだ。
「ふーっ、危なかったよ☆」
「好機です!」
 アーシャが吼える。バイコーンは次の攻撃の為に助走を取っていたが、それも気にせず、一気に突進。
 相打ち覚悟の突貫だ。
 そして、バイコーンの体が弾け、アーシャと接触――――したその瞬間、氷の剣が閃く!
「!?」
 しかし、角の前で剣は止まる。光のシールドによって防がれたのだ。
 アーシャの顔に焦燥が滲んだその時――――直進する雷が木々の隙間を縫うように走り、バイコーンを直撃した!
「間に合った、かな」
 遥か遠方で安堵の息を漏らすジャンに、アーシャはウインクで感謝を示す。
 そして――――
「その角、いただきます!」
 一閃。
 回りながら、角が宙を舞った。


 ライトニングバニーの切歯30本。
 ホワイトイーグルの羽20枚。
 ムーンドラゴンの鱗4枚。
 そして、バイコーンの角、1本。
 今回得られた成果は、以上だ。
「幸い、龍の鱗は頂けたのだが‥‥時間が掛かり過ぎてしまった」
「こっちも、羊の方は交渉失敗。ウサギは今頃、腹膨らませてるかな」
 ククノチとレオは、口惜しそうにクッポーへ報告した。
 全員が前半に時間をかけすぎた事もあり、ビジョンフラワーに関しては邂逅も叶わず。
 バイコーンも、角を折られてからは離脱に終始し、オーラをまとった身体でジャンのトルネードにも耐え、逃げ切ったと言う。
 魔法の使い方、戦局の見極め。
 デビルらしい奸智と判断力を持つ、厄介なモンスターだ。
 リベンジの機会を設けるならば、注意しなければならない。
 一方、当のクッポーはその報告に笑顔など見せていた。
「英雄は最後に現れる。残りはこの俺が‥‥」
「止めとけって。逃げない姿勢は、まあ立派だけどな」
 レオは口の両端を上げ、クッポーの頭を強く撫でる。
 その様子を、ククノチは思案顔で見つめていた。
 レオから幾度か聞き及んだ話と、容姿、そして声。
 どちらかと言うと、歌い手や役者の方が向いているのではと、ククノチは感じていた。
「クッポー殿は何故、射手を志された?」
「弓がこの俺を必要としているからだ」
 良くわからない理由だったが、ククノチは追及を避ける。
 信念。それを感じたからだ。
 代わりに、鞘に収めた神刀「クドネシリカ」をクッポーの額にかざす。
 そして――――
「‥‥呪いを」
 音もなく斬った。
「クッポー殿の個性と技術、互いに足を引かぬ様、祈っている」
 ククノチの神秘的なその所作を、レオは惚けつつ、そして誇らしく思いながら、暫し眺めていた。
 未来を。
 或いは、その先を。