寄ってらっさい射撃大会

■ショートシナリオ


担当:UMA

対応レベル:6〜10lv

難易度:やや難

成功報酬:4

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月01日〜10月06日

リプレイ公開日:2008年10月09日

●オープニング

 秋の気配が色濃くなってきたノルマンでは、各所で徐々に収穫祭へ向けての準備が始まっている。
 そんな中、パリから20kmほどの位置にある『アトラトル街』と言う小さな街では、この祭の時期を切欠に少しでも観光客を呼ぼうと、祭の時期の少し前に大々的に執り行う催しを画策していた。
「私としては、駿馬の被り物を被って終夜ニンジンを追い掛け回す『伝統芸能馬づくし』を推したいのだが」
「いやいや、私としては魔法少女のローブが世界一似合う少女を募集する『マドモアゼル魔法少女コンテスト』を是非」
「いやいやいや、私としては――――」
 しかし、どうにも話がまとまらない。
 この件に関する観光協会内での話し合いは既に1ヶ月経っていると言うのに、何一つとして進展していなかった。
「どうですか、ここは妥協して『愛の歌コンテスト』に着地しては」
「いやいやいやいや、そのような凡庸なものではとても集客は‥‥」
「では、馬の被り物を被って愛の歌を歌う魔法少女を募集して‥‥」
「いやいやいやいやいやいやいやいや」
 そして、今日も何ら進展ないまま、会議室での話し合いが終わろうとしていたその時。
「祭と言えば、景品」
 委員会の一員でありながら、それまで一言も発していなかったクッポーと言う青年が突然ポツリと呟いた。
「よく聞け愚民ども。人間と言うのは強欲な生き物。連中を釣るなど、物資を与えるだけで十分なのだよ」
「む、むう」
 役員全員が、その言葉に息を呑む。
 と言うのも――――その青年、言葉遣いとは裏腹に、恐ろしいほどの童顔で、甲高い声なのだ。
 瞳は拳が全部入りそうなくらい円らで、身長も150cm程度。身体は風が吹けば折れそうなほど細く、肩幅も狭い。
 まだ変声期にも過ぎていないような声は、女声と殆ど区別が付かないくらいだ。
 そんな男が毒舌を吐いても、なんか怒りは沸いて来ず、役員達は黙って話を聞いていた。
「と言う訳で、射撃大会を申し出る」
「射的ではなく射撃、なのかね?」
「クックック‥‥」
 男は不気味なようで微妙に可愛らしい笑い声を上げ、足元に置いていたらしきライトロングボウを持ち上げた。
 ちなみに、この弓は全長2mくらいあり、軽く作られているとは言え持ち上げるのは結構大変だ。
 その男は――――
「うにゃっ」
 案の定、弓に潰されてしまった。
「ああっ、大丈夫か!」
「しっかりするんだ! 頑張れ!」
 自分達の半分程度しか生きていないであろう青二才に尊大な態度を取られながら、役員達は真面目に彼の身を案じていた。
「余興だ」
 涙目で立ち上がる青年に、役員達は何故か目尻を下げていた。
「と言う訳で、射撃の腕を競う射撃大会の開催を提案する。武器は弓矢に限定する必要はない。
 魔法でも何でも構わない。無論、優勝はこの俺だがな」
 男の提案は、何故かあっさり通った。
 斯くして――――『第一回 アトラトル街射撃大会』が開催される運びとなった。
「そうそう。素人の参加も歓迎すると付け加えておけ。この俺が直々に弓の手ほどきをしてやる。
 もっとも、地獄を見る事になるがな‥‥ククク」
 ‥‥だそうです。

●今回の参加者

 eb2235 小 丹(40歳・♂・ファイター・パラ・華仙教大国)
 ec0290 エルディン・アトワイト(34歳・♂・神聖騎士・エルフ・ノルマン王国)
 ec1752 リフィカ・レーヴェンフルス(47歳・♂・レンジャー・人間・フランク王国)
 ec4441 エラテリス・エトリゾーレ(24歳・♀・ジプシー・人間・神聖ローマ帝国)

●リプレイ本文

●1日目
 賑わいを見せる『アトラトル街』の郊外にある広場では、5日後に開催される『第一回 アトラトル街射撃大会』に向け、数多の射撃手が練習に励んでいた。
「ふむ、では射撃初心者はこれだけかね」
 そんな中、観光協会の一人で大会運営を任されている男の前に並び立つ者は3人。
 エルディン・アトワイト(ec0290)、エラテリス・エトリゾーレ(ec4441)、エルナ・リーネと言う冒険者達だった。
「では先生を呼ぶとしよう。先生。先生!」
「クックック‥‥どいつもこいつも雑魚ばかりで困る」
 不敵なようで癒しの笑み。しかし、広場の喧騒に紛れて冒険者の耳には届かない。
「はて。その先生とやらは何処にいらっしゃるのでしょう?」
 エルディンは辺りを見回し、その存在を探す。クッポーはその下で愛らしく微笑んでいた。
「目まで悪いと来たか。これでは俺の優れた指南も意味を成しそうにない」
 少し音量を上げたその発言は、誰かが遠距離の的に当てた際に起こった歓声に綺麗にかき消された。
「ン、ンン! ンンン!」
 鳥の鳴き声のような咳払いが聞こえる。エルディンはまだ発見できずにいた。
「えっと‥‥もしかして、この方じゃないかな☆」
「ん? おお。これは失礼しました」
 流石に気の毒に思ったエラテリスが指摘するや否や、エルディンは腰を屈め、クッポーと同じ目線になり、笑みを浮かべる。
「ククク‥‥その程度の観察眼で射撃を習おうとは」
 クッポーの邪悪なようで天使のような笑みと、エルディンの聖職者の笑みが対峙する。
「ははは」
「クックック」
 その笑み合いは数十秒続き――――
「ははは」
「ククク」
「‥‥(ぴくぴく)」
「!?」
 エルディンが耳をピクピク動かした瞬間、クッポーが驚きの余り腰を砕き、勝負あり。
「ところで、先生の腕はどれ程のものなのでしょうか」
「実は我々も良く知らんのだ」
 エラテリスがエルナと協力してクッポーを起こす中、エルディンと運営委員の男は何やら話し合っていた。
「と言う訳で、先生の腕前を是非拝見したく」
「素人が俺の腕試しとはな‥‥まあ良いだろう」
「では、あそこにいる彼と勝負してみて下さい」
 エルディンの視線の先には、リフィカ・レーヴェンフルス(ec1752)の姿がある。
 彼らは既に一度冒険者ギルドで顔を合わせており、エルディンはその実力についてある程度把握していた。
「‥‥と言う訳で、宜しくお願いします」
「ああ、構わない。私も先生とやらの腕前の興味があるしな」
 リフィカは含み笑いを浮かべながら承諾の異を唱えた。 
「前哨戦だね☆」
 エラテリスも楽しげに見守る中、開戦。
 大会のルールに則り、10mの距離に置かれた大きさの違う10個の的を狙うと言う勝負だ。
 より中心に近い所を狙うのではなく、的に当てれば良い。
 ただし、ただ当てるだけでは駄目だ。
 貫通した瞬間も威力を損なわずに突き抜ける、台上に破片一つ残さず破壊する、などの芸術点も十分に加味されるのだ。
 で、結果――――リフィカの勝ち。
「早っ! そして弱っ!」
 委員会の男が叫ぶ中、クッポーは敗北とライトロングボウの重さに押し潰され、ぐたーっとなっていた。
「ひん‥‥」
 と言うか泣いている。
「先生、勝敗は時の運です。先生の腕はしかと見届けました。改めてご指導を賜りたく」
「ククク。この俺の器量に感謝するんだな」
 クッポーは涙目のままエルディンに撫でられていた。
「ええと、ボクは他の人から習おうかな」
「では、僭越だが私が指導しよう」
「それじゃ、お願いするよ☆」
 エラテリスがお辞儀する中、リフィカは邪笑を携えつつクッポーを見つめていた。

●2日目
 射撃大会の開催に伴い、アトラトル街では露店が数多く構えられている。
 その中の一つに、大会の出場者である冒険者の小丹(eb2235)の店もあった。
 売りに出しているのは、ジャパンで仕入れた綿入り半纏と、ロシア製の毛糸の靴下と手袋。
 異国の物と言う珍しさが受け、丹の露天の前は客で溢れかえっていた。
(う〜む、もう少し仕入れてくればよかったのう‥‥)
 どじょう髭の付け髭をなぞりつつ、丹はその細い目を極限まで細め、空を仰いでいた。
 真上には青空が広がっているが、西の空には雲の大群が見える。
 もしかしたら近々雨が降るかも知れない――――そんな事を考えていた丹は、異質な気配を察知しそっと視界を落とした。
 何者かが、商品を盗もうとゆっくり手を伸ばしているのだ。
 その不自然に消そうと努力している気配は、逆に目立つ。明らかに素人だ。
 どうやら、丹が眠っていると勘違いしているらしい。
(‥‥失礼な話じゃ)
 どこか愉快そうに心中で呟きつつ、丹はカッ! と目を見開いた。
「ひっ!?」
 気配を消す真似事が出来るくらいの者なので、最低限の察知は出来るらしい。
 丹の眼力に恐れ戦き、手を引っ込め一目散に逃げ出した。
「カルト君、儲かってるかい?」
 その背中を嘆息交じりに眺めていた丹に、そんな声が掛かる。
 丹は射撃大会出場に即し、偽名として『カルト』を名乗っていた。
「リフィカの坊ちゃんじゃったか。ほっほっほっ、順調じゃよ」
「何よりだ」
 暫し談笑し、二人は分かれた。

●3日目
 大会まであと2日。
 保存食を口にしながら練習風景を眺めているリフィカの元に、エラテリスが元気良く駆け寄ってくる。
 その手には薄い木製の皿に乗ったオムレット・フロマージュを持っていた。
「レーヴェンフルスさん、こんにちは☆」
「こんにちは、エラテリス君。随分美味しそうに食べているね」
「えへへ☆」
 恥ずかしそうにしながら、エラテリスは口元を拭った。
「そうそう。実は女性向の弓を持っているんだ。良かったら使ってみるかい?」
「おお! 良いのかな?」
「勿論だ」
 リフィカの微笑に、エラテリスはオムレットを頬張りつつ笑顔を見せる。
 その傍らで、エルディンはクッポーの教えの通り弓を引いていた。
「さて、ここからどうすればいいのでしょうか‥‥あっ」
 思いがけず手が離れる。
 弓は上手く固定されていなかったようで、矢が殆ど真上に近い角度で飛んでいってしまった。
「クックック‥‥それが貴様の現状。しかしこの俺の力で多少の改善は可っ」
 言葉はそこで途切れたが、意味は通じるので、エルディンは気に留めず練習を再開した。
 が、再び矢は真上に飛ぶ。
「中々上手く行きませんね」
 小さく息を漏らし、次の矢を用意する。
「うにゃっ」
 何か猫が潰れたような声が聞こえたが、エルディンは練習に没頭していた為に気に留めなかった。
 3本、4本‥‥矢は以前として上方に飛んで行く。
「熱心だね、エルディン君」
 そこに、リフィカが現れた。
「いつも親戚達が世話になって有難う。話は良く聞いているよ」
「いえいえ。私こそ」
 和やかに談笑する中、二人の足元に赤い液体が流れてきた。
「‥‥あ」
 二人同時に振り向くと、頭からドクドク血を流して倒れているクッポーの姿があった。

●4日目
 練習最終日、そして大会前日となる4日目。
 丹の露天に並んでいた商品は、毛糸の靴下と手袋が残り1つずつとなっていた。
(風が強いのう。一雨くるかもしれんぞい)
 腕組みし、早めに店を畳むかどうか悩んでいる丹のところに、季節の果物詰め合わせセットを抱えたエラテリスが駆け寄ってきた。
「カルトさん、もうすぐ雨が降るからお店畳んだ方が良いかも、だよ」
「ほっ?」
 エラテリスはウェザーフォーノリッヂと言う天気予測の魔法を使用し、今後の天候予知を行った事を説明した。
「そりゃ便利じゃのう。教えてくれてありがとうなのじゃ」
「どういたしまして☆ それじゃ、お手伝いするよ」
 はにかみつつ微笑むエラテリスが店を畳む手伝いをしている中、丹は手元に置いておいた明日使う弓をその手に取った。
 聖弓トゥループロファシー。
 ノルマンで起きたとある事件の際、彼の手に渡った物だ。
「さて、どれほどの物なんじゃ?」
「え?」
「ほっほっほっ、何でもないんじゃ」
 好々爺のような笑みを浮かべつつ、丹はその弓を布で包んだ。

 一方、練習場広場――――
 放物線を描いた矢が、10m先の的を掠めて地面に落ちた。
「ふむ、大分感触は掴めましたね」
 エルディンの放った矢は、大体5本に1本の確率で的に触れるようになっていた。
 無論、実戦で使用できる精度ではないが、運次第で何かを起こせるくらいにはなって来ている。
「クックック、たかがその程度で射撃の真髄を掴んだかの如き発言‥‥片腹痛し」
 その傍らで、エルディンのリカバーによってすっかり回復したクッポーが愛らしい笑顔を浮かべていた。
「だが、図に乗るのは今の内だ。明日はこの俺との決定的な、衝撃的な、厭世的な差によって絶望の淵を‥‥うにゃっ!?」
 ご高説を垂れていたクッポーの眼前数cmのところを、鋭利な先端の矢が空気の壁を切り裂き突き進む。
「あぁ済まない。羽虫がいたんでね。どうも私の矢は煩い者に向かって飛ぶ傾向があるようだ」
 リフィカの邪笑にクッポーは反撃――――を試みる事なく卒倒した。
 昨日の矢が心的外傷を及ぼしていたらしい。
「少々お灸が過ぎたかな‥‥ん、雨か」
 ポツリ、ポツリと地面を叩く雫の音。
 それが徐々に広がり、大地は水滴を弾く音楽に包まれていった。

●5日目
 そして、大会当日。
 昨日の雨はすっかり止み、大会は滞りなく開始された。
「いや、本当に助かった。お陰で予定通り進行できそうだ」
「ええと、どういたしまして☆」
 こういった屋外の大会は、雨が降るかどうか微妙な状況だと、進行や予定の変更、会場設営など、様々な面で苦労する。
 エラテリスのウェザーフォーノリッヂは、大会運営者ならびに会場の周りに露店を構える面々に大好評を博した。
 そんなこんなで大会開始。
 ルールは単純。10m離れた場所に置かれた、大きさの違う10個の的を射抜き、その正確性と破壊芸術点を競うと言うもの。
 尚、会場は練習に使った広場だ。
「ん‥‥!」
 早速、1人目のエルナ・リーネと言う冒険者が弓を構える。矢はとてつもない方向に飛んで行き、広場を遥かに越えて場外へと消えていった。
 その数秒後、遥か向こうから微かな悲鳴が聞こえてくる。
「‥‥難しいな」
 しかしエルナは特に気にするでもなく、次々に矢を放つ。
 全てが場外へ飛び、全てに悲鳴があがった。
 その後、2人連続で高得点が続き、エルディンの番がやってくる。
「さて、折角教えて貰った手前、結果を残したいものですね」
 テイル・リングをはじめとした幸運グッズで身を固め、万全を喫した。
 しかし――――
『精度点20点、芸術点30点、計50点!』
 入賞は絶望的な点数だった。
 ちなみに、精度点は一つの的に当てるごとに5点×10。芸術点は総合判断で50点満点となっており、総合100点満点となっている。
「すいません、先生。せっかくお教え頂いたのに」
「クックック。その程度の腕にしてはそれなりだ」
 気まぐれか、先日のリフィカのお灸が効いているのか、クッポーの発言は微妙に柔化していた。
 そして、エルディンの4人後に、リフィカが登場。
「わーん!」
 クッポーは急に逃げ出した!
 その様子を苦笑交じりで眺め、リフィカはその視線を的の方向に移す。
 そして、全身を弓と同調させ、一つの武器として捉えるようなイメージで弦を引き、放つ。
 結果――――
『精度点45点、芸術点48点、計93点!』
 ブランクもあってか2番目に小さい的を外してしまったものの、それ以外は全て鮮やかに射抜いて見せた。
「これは優勝も狙えそうですね」
「できれば2位が良いのだけどね」
 エルディンと控えめなハイタッチを交わし、リフィカは後続を見守る。
 エントリー16、エラテリス。
「いっくよー☆」
 彼女が使用するのは、太陽の光を湾曲集中して放つ魔法、サンレーザー。
 加えて、チェリーピアスに装着したレミエラの効果が相成り、威力が増した状態で放たれる。
 その結果、命中した的は跡形もなく消し炭と化していった。
「うわーっ、火事だーっ」
 そして、的の遥か向こうの薪の山も引火。
「あ、あれ?」
 エラテリスは今大会を通じ色々な意味で有名になってしまった。
 なお、得点は精度点35点、芸術点50点、計85点。
 途中遠慮もあってサンレーザーではなく弓矢にシフトした分、後半点数を落としてしまった。
 そして、最後の射撃手――――丹。
 クラウンマスクで素顔を隠した彼が持つ聖弓トゥループロファシーに対し、見物者の反応は――――ない。
 弓自体の知名度は、この武器が贈与された件を把握していれば知っている程度で、誰もが知ると言う武器ではないようだ。
「成程のう。これなら使えそうじゃ」
 今回の目的を達成した丹は、飄々とした面持ちで矢を放ち続けた。
 結果――――精度点30点、芸術点46点、計76点。
「わざと外したようだが?」
 満足げに引き上げる丹に、リフィカが話しかける。
「余り上位じゃと目立つからのう」
 小丹――――隠密剣士を目指す者。
 人にはそれぞれの生き方、在り方と言うものがある。

 その後、表彰式が執り行われた。
 第1位は、95点でベロベロ・ベロベーロ。
「お、おめでとう‥‥」
 全員が引き気味の中、2位に輝いたのはリフィカ。更に3位にエラテリス、5位に丹が入賞した。
「うーむ、入賞できなかったのは私だけですか‥‥あ」
 残念がりつつも微笑を浮かべていたエルディンの足元に、唇を噛んで涙ぐんでいるクッポーの姿が!
 ちなみに彼、ちゃんと出ました。大会。ええ。
 出て‥‥8位だったんです‥‥
「これはどうしたものか」
 思い悩むエルディンの視界に、会場の端で乱闘騒ぎを起こしている運営委員の姿が映る。
「やっぱり大して盛り上がらなかったじゃねぇか! だから『魔法少女コンテスト』が良かったんだ!」
「そうだそうだ! 何だあの優勝者の名前!」
 醜い争いだったが、そこにエルディンは活路を見出す。
「あの、エラテリス殿。折り入って相談が」
「いいよ☆ 派手な服は苦手だから着ないと思うし、あげるよ☆」
「助かります」
 エルディンはエラテリスと賞品を交換して貰い、クッポーを担いで控え室へと向かう。
 そして10分後、微妙に頬の辺りに痣をこしらえて戻ってきた。
「運営委員の皆さん。今後の発展の為に提案が幾つかあります。まずはこれをご覧ください」
 エルディンが抱えてきたクッポーを下ろす。
「ま、魔法少女だ!」
「どうです。今後は彼をアイドル射手として、更に募集を拡大しては。あと、腕や職種を分けて開催する方がいいのではないかと」
「素晴らしい! しかし‥‥」
 全員が固唾を呑んでクッポーの発言を待つ。
「クックック。俺がいないと成り立たないようだな。愚民どもよ、せいぜいこの姿に酔うがいい!」
 と言う訳で、矜持を回復させたクッポーはアトラトル街のアイドル射手となった。

 なお、後日エルディンには別個魔法少女のローブが支給されたとか。