第二回まるごとオールスターズ武闘大会
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■ショートシナリオ
担当:UMA
対応レベル:6〜10lv
難易度:やや難
成功報酬:4
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:01月07日〜01月12日
リプレイ公開日:2009年01月13日
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●オープニング
今から約1ヶ月程前のこと。
パリから20kmほど離れた場所にある『ルッテ』と言う街で、『まるごとオールスターズ武闘大会』と言う大会が開催された事をご存知だろうか。
この街は、とある事情によって経済状況が破綻寸前に陥っていた。
その為、何かして街に観光客を集めようと言う事になり、このような催しが企画されたのだが、それが見事に大当たり。
大会は大盛り上がりを見せ、観光客の数も3倍に上昇。
各店の売り上げも伸び、まるごとシリーズを模した木彫りの小さな置物や絵画も土産品として人気が高く、生産が追いついていない。
街はウハウハ。店もウハウハ。子供達は大喜び。
順風満帆だった。
しかし、そこで事件が勃発。
役員の一人、オットマール氏が運営費用を持ち逃げしてしまったと言う話が浮上。
「野郎、ぶっ殺してやる!」
「絶対に逃がすな! 俺らの手で八つ裂きにしてやるぞ!」
「あいつ絶対妙な女に引っかかったんだ! 間違いねぇ! だから浮気はダメだっつったんだ!」
が、それは罠だった。
本当の犯人はオットマール氏の妻、キャサリン。
浮気された腹いせに、夫の仕業に見せかけ、費用を盗んでいたのだ。
それが判明し、尚且つ彼女を問い詰め、官憲に引き渡し、その後ヨリを戻すまでには様々なドラマがあったのだが、ここでは割愛する。
「‥‥と言う訳で、連れ合いが使い込んじまった費用の補填を行う為に、第二回まるごとオールスターズ武闘大会を開催したいと思う」
役員全員から白い目で見られる中、オットマール氏は小さな声でそう告げた。
数日後――――武闘会場前。
そこには、『第二回まるごとオールスターズ武闘大会』の開催を報せる張り紙と、日程の確認を行う街の住民達の姿があった。
その中に、この街の住民ではない者が数名混じっている。
「妙な催しですね。こう言うものを見るとウズウズして来ますよ」
偶々材料の仕入れで『ルッテ』を訪れていた、マルシャンスと言う街にお住まいのペーター。
「モンスターの格好をして殴り合うなんて、とっても画期的なのですっ!」
「リッサ、殴り合うと決まった訳じゃありませんよ」
モンスター調査の為に偶然近くに来ていたクラリッサ・ハックとキースリング・フリードリッヒ。
「クックック‥‥随分と下らない余興に精を出している街だな」
そして、アイドル射撃手として各地域の催し事に呼ばれており、その帰りの途中だったクッポー。
彼らもまた、運命の導きに招かれ、まるごとに身を包む事になる。
今回の大会は、戦闘力に余り自信のない者が魅せる戦いをする為に参加する『ほわほわの部』と、強さ、まるごとの愛らしさの双方を全力で競う『メキメキの部』に分かれている。
どちらにもベスト4までには賞品が進呈されるようだ。
前回以上の盛り上がりが期待できる、『第二回まるごとオールスターズ武闘大会』。
近日、開催――――
●データ
◆武道会場
試合場内は縦10m×横10m。100人ほど動員できる観客席付き。
◆賞品
●ほわほわの部(戦闘力低い人用のコース)
優勝 カモメの被り物&フェザーマント
準優勝 やぎ角ヘアバンド&ゴートヘッド
ベスト4 ベアマント&ベアヘッド&ベアフンドーシ
●メキメキの部(戦闘力高い人用のコース)
優勝 黄金の獅子の盾
準優勝 羊飼いの杖
ベスト4 バタフライドレス
◆試合ルール
相手を殺す事、観客へ向けて攻撃する事は一切禁止。実行した場合は牢獄で臭いご飯を食べる日々を送る事に。
必ずまるごとシリーズを着用する事。
ファンサービスも必ず行う事。
己の技量を見せる事にこそ意義があり、相手を敬う心を忘れない事。
審判には逆らわない事。
トーナメント戦で、参加人数は16名を予定。
ほわほわの部とメキメキの部のどちらかを選んでエントリーする事。
まるごとシリーズは無料レンタル可。
武器、魔法の使用を許可する。
勝敗は場外、気絶、審判の判断、降参によって決定。
◆出場者予定表(現時点)
●ほわほわの部
・ぐりふぉんさん 不詳 男 人間 モンスター調査員 Lv.08 インテリ型
・おばけさん 15歳 女 人間 令嬢 Lv.04 ほわほわ型
・うさぎさん 16歳 女 パラ バード Lv.10 いやし型
・ぺがさすさん 14歳 男 人間 神聖騎士 Lv.07 流星型
●メキメキの部
・おおがらすさん 不詳 男 人間 鍛治師 Lv.20 ?型
・りすさん 不詳 男 人間 アイドル射撃手 Lv.03 ?型
・えんじぇるさん 14歳 女 エルフ ウィザード Lv.22 小悪魔型
・どらごんさん 36歳 男 ハーフエルフ ナイト Lv.30 大器晩成型
◆レンタル可能なまるごとシリーズ一覧
・まるごとトナカイさん
・まるごとメリーさん
・まるごとホエール
・まるごとおうまさん
・まるごとわんこ
・まるごとあざらしくん
・まるごとすくろーる(文字、無地)
・まるごとすのーまん
・まるごとたーとる
・まるごとどんきー
・まるごとふるあーまー
・まるごとおさるさん
・まるごときたきつね
・まるごとたいがー
・まるごとたぬきさん
・まるごとだいなそあ
●リプレイ本文
『第二回まるごとオールスターズ武闘大会』
そう記された看板が掲げられた会場の前には、本大会『メキメキの部』の勝者を予想する賭事が行われていた。
前回大会でベスト4に残った中で唯一の参戦となった『えんじぇるさん』が一番人気。
そして――――
(致し方なし、と言ったところでしょうか)
予想配当を確認したアハメス・パミ(ea3641)は、自身の低い評価に対し、ある程度納得の表情を浮かべていた。
本名ではなく赤い亜麻布の女主人『セクメト』として参加している為、彼女の知名度はセクメトとしての評価になる。
アハメスがこの名でとある地下闘技場の殺戮ゲームを調査し、実際に試合に参加したのは3年以上前の事。
事実上、『セクメト』の名はこのルッテ街においては無名と言って良い。
しかし、それは本日まで。
明日以降は、その名を轟かす事になるだろう。すふぃんくすさんとしてだが。
(‥‥?)
その瞬間、彼女の直感が視界にない者の存在を捉えた。
だが、殺気は全く含まれていない。
意に介する必要性もないと判断し、そのままアハメスは通りへと足を進めた。
その背中を、インビジビリティリングで透明化したミシェル・サラン(ec2332)がじっと眺めている。
彼女の目的は、アハメスと同じく敵情視察。
スキルや弱点を少しでも頭に入れておく為だ。
(と、その前に‥‥)
ミシェルにはもう一つ目的がある。
運営部の元を訪れ、クリエイトウォーターと水晶のダイスのレミエラでお酒を大量に生み出すと言うものだ。
「お客様にも振舞ってあげたらどうかしら? 素面よりずっと盛り上がるわよ」
「おお、これはありがたい!」
役員達から大いに感謝されたミシェルは、偵察を再開すべくルッテの空を舞った。
その羽音が喧騒にまぎれる中、街頭では2つの子供達の集団が出来ていた。
一つは、高らかに歌うレティシア・シャンテヒルト(ea6215)の周りに集まっている子供。
もう一つは、まるごとらいおんさんのの周りに集まっている子供。
前者は、とある2つの村が仲直りしていく様を2人の子供の視点で謳ったレティシアの歌に、瞬きを忘れて聴き入っている。
後者は、ふかふかのらいおんさんに抱きついたり飛びついたりして楽しんでいる。
そして、その様子を不敵なようで愛らしい笑みで眺めている者が一人。
参加者の一人、クッポーだ。
レティシアが謳い終えると同時に、クッポーは大げさに拍手してその存在感を見せつけ――――ようとしたが、それより大きな子供達の拍手で完全にかき消された。
「あ、グッビー! 久しぶりじゃん」
「ククク‥‥随分と脆弱な記憶力だな。この俺がマークするほどの相手ではないか」
「ご挨拶だなあ。ま、狙撃手同士頑張ろうな!」
レオ・シュタイネル(ec5382)にバシッ、と背中を叩かれ、グッピーは吹っ飛んだ。
「‥‥あれ?」
そして、そのままレティシアの身体目掛けてダイブ。
子供達が大騒ぎする中、レティシアは自身の胸に顔をうずめて目を回しているクッポーに、珍しく満面の笑みを向けた。
「‥‥組み合わせ、とっても楽しみね」
ルッテの一角に、空気が激しく歪む音が聞こえた。
一回戦の組み合わせ――――
らいおんさん(レオ) vs りすさん(クッポー)
「‥‥ちっ」
既に二回戦進出を決めているうさぎさんが誰にも聞こえない声で舌打ちする中、戦いは始まった。
射撃手同士の対戦。
長期戦になってもおかしくない中、レオが様子見の為に投げた縄ひょうの縄に引っかかって、りすさんはコロコロと場外に転がって行った。
「‥‥うわーん!」
何故か優勝候補の一翼を担っていたりすさんのまさか(?)の敗走と、らいおんさんの金星に、会場が大いに沸く。
「これで金星って言われても、ちょっと納得行かないような」
らいおんさんが首を傾げつつ退場する中、空を舞う小さいわんこさんの登場に会場が再び沸く。
そらとぶわんこさん(ミシェル) vs えんじぇるさん
ふかふかのわんこの身体に、エンジェルドレスが身にまとわれているその姿は、愛くるしさと神秘さを同居させた未来のアート。
定位置に着くと同時に、わんこさんはドレスの裾を摘み、令嬢のように一礼した。
そして、今回唯一となるシフールの参加者となったわんこさんの前に立つのは――――優勝候補筆頭のえんじぇるさん。
前回大会ベスト4の強者だ。
「はじめっ!」
審判の掛け声と共に、両者共に距離をとる。
共にウィザード。前の試合と同じく遠距離戦を得意とする者同士だ。
(確か、この方は‥‥)
わんこさんは偵察した際に、彼女の戦い方について綿密に調べていた。
スリープやコンフュージョン、チャームなどの精神攻撃を得意とし、戦術自体も実にえげつない。
案の定、えんじぇるさんはしたり顔でコンフュージョンを高速詠唱で使用してきた。
「フフ、場外に落ちないように気をつけなさい」
これが成功すれば、わんこさんは高確率で場外に出てしまうだろう。
ある意味一撃必殺。
しかし――――全く効果がなかった!
「あ、あれれ? 何で?」
寧ろえんじぇるさんが混乱した!
その隙を逃さず、ミシェルは一気に距離を詰め、高速詠唱でクリエイトウォーターを唱える。
彼女唯一の攻撃魔法であるアイスコフィンを直接使用していたら、エンジェルさんには通用しなかっただろう。
しかし、ミシェルはそれを読み、別の攻撃方法を取った。
大量の水がまるごとえんじぇるさんの内部に発生。
「ひやややややっ!?」
あっと言う間にえんじぇるさんはずぶずぶえんじぇるさんになった。
「ぐちょぐちょで気持ち悪いでしょ♪」
更にミシェルは携帯していた石をアイスコフィンで凍らせ、えんじぇるさんの背中に入れる!
「%&×$#@¥!?」
季節は1月。
こんな寒いとある日に氷の塊に等しい物を背中に入れられたら、正気を保てと言う方がどうかしている。
「わきゃー! ひややや‥‥あべしっ」
ずぶずぶえんじぇるさんは混乱の中足を滑らせ、そのまま頭から転倒。
完全に気絶した。
「勝者、そらとぶわんこさん!」
二戦続けての番狂わせ(?)に、会場のボルテージは最高潮に達する。
「ご声援ありがとうございますわ♪」
ミシェルはくるっと一回りして、観客に何度も投げキッスを贈っていた。
この日はセクメト(アハメス)は不戦勝。
よって、全員が二回戦へと駒を進めた。
二回戦――――第一試合。
圧倒的な機動力を持つそらとぶわんこさんだったが、攻撃手段が少ない事が仇となった。
魔法に対する抵抗力が高い相手に水攻めで勝機を見出すと言う手段は、既に一回戦で見せている。
その為、対戦相手のおおがらすさんに見切られてしまい、指でぱちんと弾かれてしまった。
「あああ‥‥」
スローモーションで吹き飛ぶわんこさん。
涙の雫がキラリと輝く中、ぽてんと場外に落ちた。
「貴女の分も頑張りますよ」
聞き覚えのあるおおがらすさんのその声に、ミシェルは悔しげに手で顔を覆う。
一回戦で優勝候補を破ったシフールを讃える拍手を全身で浴びながら。
第二試合。
すふぃんくすさん(セクメト) vs どらごんさん
「おーっ、何だあれは!」
観客がざわめく中、宙を舞う絨毯が会場に降臨する。
スフィンクスを模したふかふかの身体に、煌びやかな首飾りと金の蛇で飾られた冠。
異国情緒溢れるその姿に、会場中の大人がアラビア風の音楽を脳内で奏でていた。
そんなセクメトにとっての初戦となる相手は、一回戦を圧倒的な強さで勝ち進んだどらごんさん。
化物養成機関『龍の穴』で特訓を積み、急激なLVアップを果たしている。
「はじめっ!」
審判の言葉と同時に、そのどらごんさんは一気に襲撃を仕掛けて来た!
「‥‥はっ!」
回避能力に乏しいすふぃんくすさんは、元より避ける気などない。
カウンターでそれを迎え撃つ。
「ぬうっ!」
すふぃんくすさんの曲剣の峰は、どらごんさんの肩口を正確に捉える。
が、それを意にも介さず、どらごんさんは右手を振りかざし、すふぃんくすさんの頭に打撃を打ち下ろす。
「‥‥っ!」
強烈な痛覚。
しかし怯む事なく、すふぃんくすさんは次の攻撃の態勢をとった。
彼女の最大の長所は、技の多彩さにある。
そしてセクメト自身、大会を盛り上げる為、それを余す事なく披露するつもりだ。
先程の攻撃から、どらごんさんは猪突猛進型と推測できる。
よって、フェイントアタックやブラインドアタックは余り高い効果を生まない。
確実に当てるより、より手数を多く、より強力な一撃が求められる。
どらごんさんが攻撃を仕掛ける瞬間を狙い、その初速を殺しつつ、自身の攻撃を的確に、そして次々に右上半身に集めていく。
「ぐおおっ!」
しかし、どらごんさんもそう簡単には引かない。
まるで尻尾を振りかざすかのような回し蹴りで、すふぃんくすさんの右腹部を痛打!
「ぐはっ!」
すふぃんくすさんの呼吸が止まり、その直ぐ後に視界に火花が散る。
既に二撃目が彼女の顎を捉えていた。
意識が飛び掛ける中、すふぃんくすさんの目はどらごんさんの攻撃体勢を辛うじて認識した。
「かああーーーっ!」
どらごんさんの気合と共に放たれた右の拳撃が、すふぃんくすさんの身体を捉える!
「!?」
だが、それは彼の意図した箇所ではなかった。
狙ったのは顎。しかし、ヒットしたのは肩。
その肩からは鈍い音がしたが、致命傷にはなりえない。
同時に――――曲剣の峰がどらごんさんのこめかみに直撃!
「あがああっ!?」
デッドorライブとカウンターの複合技の炸裂に、会場が一気に盛り上がる。
そして――――次の瞬間、閃光のようなセクメトの太刀筋がどらごんさんの顎の先端を正確に捉えた。
しばしの沈黙の後、どらごんさんが崩れ落ちる。
「降伏を」
すふぃんくすさんのその言葉は、どらごんさんには聞こえていなかった。
勝負あり。
回避なき壮絶な打撃戦は、会場中を大いに沸かせた。
二回戦――――第三試合。
らいおんさんが腕を組んで待つ中、会場が急に暗くなり、その上部に朧月が浮かぶ。
会場中が息を呑む中、翼を広げた天馬と、それにまたがる兎の影が現れ、一気に歓声が上がった。
そのまま天馬ミューゼルと共に、うさぎさんは所定の位置に舞い降りる。
ちなみに、うさぎさん本人はフェアリーダストでの落下を希望していたが、場外負けを防止するアイテム(大会規約第24条12項)に該当する為、持ち運び禁止となった。
「そんな規定、事前に言ってなかったのに‥‥」
不満そうなうさぎさんだったが、代わりに許可を得た天馬での入場に子供達は大喜びだ。
「ま、鬱憤はこっちで晴らす事にしましょう」
手に持つお玉をくいっくいっと自分の方に引き、挑発ポーズ。
「できるかな? 俺だって優勝狙ってるから、本気で行くよ」
らいおんさんが、それを見て不敵に笑った。
らいおんさん(レオ) vs つきのうさぎさん(レティシア)
「はじめっ!」
合図と同時に、らいおんさんが両足を瞬間的に跳ね上げ、直進する。
対峙するうさぎさんは動じず、リリースポイントが殆ど判別できない縄ひょうの投擲に対し、ほぼ直感でムーンフィールドを構築。
高速詠唱によって瞬時に現れた結界が、ギリギリの所で刃を弾く。
しかしその瞬間にも、らいおんさんは別の場所に移動していた。
うさぎさんは瞬時に速度差を把握し、同時に防御への意識を強める。
それを感じ取ったらいおんさんは、更に攻撃への意識を強めた。
高速移動からの投擲と、高速詠唱による結界。
そのスリリングな攻防に、子供達は全く付いて行けず、欠伸をする者も現れた。
「あちゃー‥‥」
それを認識し、らいおんさんが足を止める。
観客を沸かせる為の高速波状攻撃が、まさか飽きさせる要因になるとは――――
「こんな展開で貴方の機動力を止められる事になるなんてね。降参する?」
「まさか!」
うさぎさんの『挑発』に、らいおんさんは乗った。
先程の様な速度を重視した動きから、アクロバットで、よりダイナミックな動きでうさぎさんを幻惑する。
これには子供も大喜びだ!
「すげーっ! らいおんさんすげーっ!」
その躍動感に会場中が喝采の嵐。
しかし、隙は多い。
うさぎさんは冷静に距離をとり、投擲した縄ひょうをらいおんさんが引く刹那を狙い、メロディを奏でた。
「しまっ‥‥!」
回避不可のその攻撃に、らいおんさんはじっと耐える。
傅きなさい、従いなさい、借りてきた猫になりなさい。
そんな声が、らいおんさんを蝕む。
「う‥‥うわーーーっ!」
そして、堕ちた。
(※なお、ここからの10分間はレオ・シュタイネル氏の名誉を保護する為、記録を割愛します)
「参ったっ」
なんやかんやあって、うさぎさんが準決勝へと進んだ。
しかし、声援は寧ろらいおんさんに向けられた。
主にマスカレードや鞭が似合いそうな女性から。
「勝利とは空しいものね」
食物連鎖の鎖を断ち切ったうさぎさんは、切なげに散る桜の花弁の幻影をまとい、天馬と共に月へと還って行った。
その後も、大会は円滑に進んだ。
準決勝第一試合――――セクメトはおおがらすさんに正攻法で挑むも、惜敗。
『回復は大会終了後まで不可、終了後運営部がポーション配布』と言う大会規約第13条9項の為、先日のダメージが色濃く残っていたのだ。
「オットマールさん、こう言うの事前に告知しとかないと」
「あー、そうだな‥‥色々ありすぎて忘れてたよ」
運営部が揉める中、第二試合も終了。
ここまで勝ち上がっていたてぶくろ(左)さんが、実はてぶくろ(右)さんと組んで交互に試合をして体力を温存していると言う不正が発覚し、うさぎさんが決勝進出となった。
そして、決勝。
おおがらすさん vs つきのうさぎさん(レティシア)
最後の試合を前に、有志によるパフォーマンスの披露が行われた。
らいおんさんが天井に向けて4本の矢を放ち、それが会場の4隅に同時に突き刺さる。
それをわんこさんの献酌で酒を飲みつつ眺めていた観客達は、その流星のような出来事を拍手喝采で讃えていた。
更に、それぞれまるごとを着込んだ子供達による、まるごと聖歌の合唱。
「まるっ♪ まるっ♪ まるごとさん♪ ふわっ♪ ほわっ♪ ぽわぽわぽわっ♪」
その様子を、決勝を控えていたうさぎさんはじっと眺めていた。
じーっと。それはもう、じーっと。
その表情に変化はないが、内部では完全にぽわーっとなっていた。
‥‥それが、敗因だった。
第二回まるごとオールスターズ優勝――――おおがらすさん。
「そうですね、勝因は集中力の差でしょうか。僕は負けるくらいなら友人の形見の工具をぶん投げてでもと言う意気込みで‥‥」
そんな優勝コメントが会場に響く中、冒険者達はそれぞれの結果と成果を胸に、それぞれの戦場へと戻るのだった。