羊たちの暴走

■ショートシナリオ


担当:UMA

対応レベル:フリーlv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:3人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月06日〜03月11日

リプレイ公開日:2009年03月13日

●オープニング

 何かと殺伐とした世の中になっているが、そう言った世界情勢とは隔離された、極めてのんきで牧歌的な場所も存在するもので。
 パリから南に50kmほどの場所にある『パストラル』と言う村では、自然と共に生きる人間やエルフ、シフール達がのんびりとした時間を共有している。
 人口の割に土地はとても広大で、家と家の間には数十mもの距離が離れており、それぞれの家の周りでは農業や放牧が盛んに行われている。
 特に、羊は非常に数が多く、服の材料となる羊毛や、羊皮紙に使用される皮、窓に使用される角など、その需要は極めて高い。
 また、羊の乳は非常に栄養価が高く、病人に飲ませる為に診療所などへと送られる事も多い。
 最近は、その乳などを買い取る為、各地域の商人が頻繁に足を運んでいたりもしているようだ。
 自然の恩恵に身を委ね、物欲を望まず、平穏を糧に日々を送る。
 それは、とても優しい時間の流れる村。
 柔らかい風が吹く集落。
 ノルマンの中にあって、知名度は決して高くはないが、この村産の羊の乳や皮は多くの地域で利用され、人々の生活の中で利用されている。
 とても重要な村なのだ。
「その村が今、最大の危機を迎えている」
 パリの冒険者ギルドを訪れた村の使いクロフォードの言葉に、周りの冒険者達は思わず目を向ける。
「羊が‥‥羊が‥‥言う事を聞いてくれなくなったのだ‥‥」
 膝から崩れ落ちるクロフォードに、ギルド従業員のゲロルドが手を差し伸べる。
「取り乱してすまない。だが、このままでは村は、村は‥‥」
 憔悴し切っているのか、クロフォードは何となくかっこ良さげな名前とは裏腹に、鼻水を垂らして嗚咽を漏らしだした。
 
 ――――彼の話によると。
 ある日を境に、突然『パストラル』の羊達が言う事を聞いてくれなくなったのだと言う。
 原因は不明との事。
 村で一番の羊飼いであるクロフォードですら、全くその要因がわからず、乳も大人しく搾らせてくれない羊達に大苦戦しているようだ。
 羊は大人しい動物だが、その突進力は侮れない。
 それが群れを成して襲ってくれば、結構な迫力だ。
 クロフォードは全身に痣を拵えていた。このような事はこれまで全くなかったそうだ。
「餌の中に変なモンでも混じってたんじゃねぇのか?」
 強面のゲロルドの言葉に、クロフォードは頭を振る。
「皆目見当がつかないのだ。村に特別な変化もない。せいぜい村で狼ブームが起こっていて、まるごとオオカミさんを着てる子供達が急増しただけなのだが」
「‥‥それが原因だろ。帰れ帰れ!」
 クロフォードはゴツイ腕で首根っこを捕まれ、ギルドから追い出された。
 ――――完。




「いや、そんな事だけで羊の行動が変わる筈がないのだ! 多分! 依頼を出させてくれたまえ! おい! ねえってば!」
 一応依頼申請の許可は下りたとか。

●今回の参加者

 ea8341 壬護 蒼樹(32歳・♂・僧兵・ジャイアント・ジャパン)
 eb3087 ローガン・カーティス(22歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ec4988 レリアンナ・エトリゾーレ(21歳・♀・クレリック・人間・フランク王国)

●リプレイ本文

 生憎の曇り空がパストラルを包む中、ローガン・カーティス(eb3087)は村長宅を訪れ、事情の説明と聞き込みを行っていた。
「‥‥では、農耕者と放牧者の間に目立った軋轢はなかった、と言う事か」
「そうですな。私の知り得る限りは。羊飼いが不満を訴えた事も特にありませぬ」
 まだ40代と思われる若い村長は、特に慌てた様子もなく、淡々と唱える。
 今のところ、ローガンの目に嘘を吐いているような素振りは映らない。
「では、特に羊の様子がおかしい家に関しては?」
「ふむ‥‥そこまでいくと、私個人の理解する範疇を超えますね。何もないとは言い切れませぬ」
 誠実な回答――――そうローガンは判断した。
 少なくとも、村長の主導で何かが行われていると言う可能性は極めて低いと判断するには十分な問答となった。
「では、最後にもう一つ。この村の地図をお借りできないだろうか」
「わかりました。おいお前、地図を持ってきてくれ!」
 それから暫くして、村長の妻と思しき女性が現れる。
 財政の潤っている村の代表の奥方とあって、かなり贅沢な格好をしていた。
「お初にお目にかかります。どうぞお見知りおきを」
「こちらこそ」
 ローガンが頭を下げると、奥方は上品な所作でその手に持った地図を差し出す。
 その妖艶な一連の動作に、思わず目を奪われる男性もさぞ多かった事だろう。
 だが、ローガンは特に感情を表に出す事もなく、それを受け取った。
 奥方の何処か不満げ――――と言うか不穏な表情をさらりと受け流し、ローガンは静かに会釈して村長宅を後にした。


 一方、依頼人クロフォードの家には、レリアンナ・エトリゾーレ(ec4988)が足を運んでいた。
 村で一番と言う彼の羊飼いとしての能力を見極め、問題がないか確認する為だ。
 羊飼いに何処か不備があれば、羊が不満を抱き、ストレスを溜め、それが暴発してもおかしくはない。
 もしそうなら、それをレリアンナが指導すれば、事件は解決する。
 しかし、クロフォードの羊飼いとしての技量は、決して低くはなかった。
 羊に対して高圧的になる訳でもなく、かと言って下手に出る事もなく、うまく羊に溶け込んでいる。
 誘導もスムーズで、餌やりにも問題はない。
「本当に、この羊達が暴れるのかしら?」
「うむ。四六時中ではないのだが、突然いきり立って‥‥もう何がなんだか」
 クロフォードの頬はこけ、体はやつれ切っている。
 羊使いとして、羊が言う事を聞かない事に対するやるせなさを十分に理解できるレリアンナは、クロフォードをつれて他の羊飼いの元を訪れる事にした。
 ただ単に羊飼いの腕を見るだけが目的ではない。
 それぞれの小屋、餌、羊達を観察する為だ。
「俺はなァ、もう何十年もこの仕事やってんだ。それなのによォ‥‥もうやってらんねェよ」
「お気持ちはお察ししますわ。ですからこそ、この機会に解決するよう御協力頂けません事?」
 一人一人に丁寧に接し、承諾を得る。
 レリアンナは基本、どちらかと言うとお嬢様然とした雰囲気を発している。
 だが、動物と接している際の彼女は、年齢相応の女の子に戻る。
 生活を共にする牧羊犬のレイモンドが羊を追いかける中、レリアンナはその光景を観察――――と言うより、とてもとても楽しそうに眺めていた。


 そして、同時刻。
 そんなレリアンナとほぼ同じような顔で、まるごとオオカミさんを着込んだ子供達が遊ぶ風景を眺めている男が一人。
 ジャイアントの僧兵、壬護蒼樹(ea8341)だ。
 2mを遥かに超えるその巨体はしばしば威圧の対象とされるのだが、彼の持つ雰囲気の為か、遠巻きに彼に気付いた子供達には恐怖の念は感じられない。
 それを確認し、蒼樹は静かに子供達に近付いた。
「こんにちは。ちょっとお話聞かせて貰って良いですか?」
「なにー?」
 そして、子供の目線までしゃがみ、聞き込み開始。
 主に、まるごとオオカミさんの流行時期とその理由について尋ねた。
「いつからだったっけ?」
「んーと、けっこうまえだよ。ゆきがふったから、ミーちゃんのいえにあったのきたんだもん」
「ミーちゃん?」
 蒼樹の問いに、子供全員の視線が一人の女の子に注がれる。
 ミカエラと言う名前の子供で、村長の娘らしい。
 年齢がまちまちな子供達の中では、やや年上と言った風貌だ。
「私の家に偶々このような物がありましたので、暖を取るにはちょうど良いのでは、と」
 話し方は既に大人のそれだった。
「狼が近くにいて、それとお近付きになる為、とかではないんですね?」
「はい」
 蒼樹は一つ頷き、子供達全員に視線を散らす。
「良かったら、協力して貰えませんか? 少し試してみたい事があるんです」
「いいよー」
「私達で宜しければ」
 子供達は穏やかな蒼樹をすんなり受け入れ、話を聞く態勢を作っていた。


 2日後。
 大粒の雨が村中を叩く中、冒険者たちは村の宿で集めた情報の整理を行う事にした。
 まず、蒼樹が子供達に協力してもらって実践した事に関して、その結果を報告する事となった。
 それは、まるごとオオカミさんを羊が不快に思っているかどうか、と言う実験。
 まるごとオオカミさんを借り、蒼樹のペットにそれを着せ、羊の群れに近づけてみたのだ。
 結果は――――
「特に興奮した様子はありませんでしたね。まるごとが原因ではないようです」
 と言う事だった。
「つまり、羊はまるごとと実物の区別を付ける事ができる、と言う事か」
「羊は嗅覚が優れているので、匂いで判別できるのだと思いますわ」
 まるごとオオカミさんは狼を模しているものの、狼の毛を使っている訳ではない。
 よって、本物との区別は付き易いのだろう。
 これで、可能性のひとつは消えた事になる。
「となると‥‥やはり実際に羊に聞いてみると言うのが一番良いのか」
 ローガンが思案顔で呟く。
 彼は村人の犯行ではと考え、村人に対しての聞き込みを中心に行っていた。
 都会への羨望から、羊飼いを継ぐ事を嫌悪している若者。
 羊の体が売り物となっている事を嫌がる羊愛好家。
 そして、土地関係の軋轢。
 動機は幾らでも推測できる。
 しかし、ローガンの調査した範囲では、際立った問題を抱える者はいなかった。
 こちらはまだ調査の余地は残されているが、本日の雨により、時間的に厳しくなっている。
 ローガンはテレパシーリングを持っているので、羊と直接会話をする事は可能だ。
 ある程度訓練されている羊なので、饒舌とは行かないまでも、最低限の会話はできるだろう。
「わたくしも、それが良いと思いますわ。嫌いなものを聞いたりもできますし」
 レリアンナは様々な可能性を考慮していた。
 羊飼いの力不足と言う可能性は、見学の結果選択肢から消している。
 後は、羊が嫌がる物が何かあるか、或いは村外からの来訪者に対して何かしらの不快感を覚えているのか、などと言った点を考慮し、調査に当たった。
 動物である以上、やはり一番嫌いなものは捕食者と言う事になる。
 だが、狼などのそういった存在がこの辺りにいるという事はないらしい。
「空前の狼ブームに、拗ねてしまったと言う可能性もあると思いますわ」
「拗ねた羊‥‥それはそれで可愛いですね」
 蒼樹はぽわーっと空想に浸っている。
 一方、ローガンは思案顔そのままに、顎に手を当てて何か考えていた。
「どうかなされましたか? カーティス様」
「レリアンナさんの仰った村外からの来訪者だが‥‥ここに原因がある可能性が高いのかもしれない」
 3人の調査では、村人に怪しいところは見当たらなかった。
 特にローガンは徹底して、羊飼い及び羊自体に良い感情を持っていない者、或いはトラブルに関して調査をしており、また夜間に怪しい行動を取っているものがいないか梟のフィロンに頼んで監視して貰っていた。
 冒険者の意向で、彼らが今回の事件を調査すると言う事実は公表していない。
 あくまで、羊を見学に来た者と言う伝わり方をしている筈だ。
 なので、この3日間何事もなかったと言う事は、村人の仕業である可能性は余り高くない。
「わたくしは商人様に原因があるかもしれないと考えていますわ。ですが、中々お見えにならないので調べる事が‥‥」
「それなのだが、村長のご夫人の話によると、雨が降りそうな天候の時は余り訪れないらしい」
 何故か積極的にローガンに話しかけてくる村長夫人からの情報によると、彼女はこの村を定期的に訪れている商人から良く物を買っているらしい。
 まるごとオオカミさんも、その商人から買ったとの事。
 その為、商人の行動パターンは把握しているのだと言う。
「明日、晴れると良いですね」
 羊の見学を邪魔する雨を恨めしそうに眺めつつ、蒼樹がポツリと呟いた。


 その願いが通じたのか――――
 翌日早朝、すっかり止んだ雨の残り香が薄く鼻腔をくすぐる中、冒険者達はクロフォードの放牧場を訪れていた。
「では、打ち合わせ通りに行こう」
 ローガンが落ち着いた様子で唱えると、蒼樹とレリアンナが同時に頷く。
 手筈としては、まずレリアンナが小屋から羊を誘導し、比較的大人しい羊を選定する。
 そして、テレパシーリングを装備したローガンが、その羊に話し掛け、事情を聞く。
 もしいきり立って突進してきたら、蒼樹がその羊を止める、と言う流れだ。
 まずはレリアンナが羊飼いの杖を手に、小屋に入っていく。
 そして、ものの数分で羊達は小屋から出てくる彼女の後ろから付いて来た。
「流石羊飼いですね」
「大したものだな」
 感心する蒼樹とローガンが見守る中、羊達は心なしか気分良さげに放牧場に散って行く。
 春を迎えつつあるこの時期、牧草は決して多くはないが、それでもある程度生え揃ってはいて、羊達は雨露の付着した草を一心不乱に食べている。
 レリアンナはその中から、やや小さめの羊に近付き、その羊をローガンの元まで誘導してみせた。
「もふもふ‥‥」
 ごく自然に近づいて来た羊に蒼樹が見惚れる中、ローガンは身を屈め、言葉を発する。
『食事中に済まない。少し聞きたい事があるので、話を聞かせて貰えないだろうか』
『いいのねー』
 割と気さくな羊だったので、遠慮なく質問開始。
 いきなり確信となる『羊たちの暴走』の理由を聞いてみる。
『えっとねー、狼の臭いするのねー』
「狼‥‥?」
 ローガンの言葉に、他の2人が顔を見合わせる。
 まるごとオオカミさんには、狼の臭いは付いていない筈なのだが――――
『ん? 向こうから狼の臭いするのねー!』
 突然、羊が言い放つ。
 だが、暴れる事はせず、じっと別の羊に視線を送り始めた。
「羊は群れの中の最初に行動した者に従う性質が強いらしい。一匹動けば一気に暴動が起きる可能性が高いな」
「それなら、お二方は放牧場から出た方が良いですね。向かってきたら僕が受け止めます」
「お願い致しますわ、壬護様」
 圧倒的な体格と体力を持つ蒼樹が壁となり、一度放牧場から出ようと試みる。
 そんな中でも、ローガンは何かを考える素振りを見せていた。
「狼が近くにいる訳でもないのに、狼の臭いがすると言う事は‥‥その臭いが付着した何者か、或いは物がこの地に現れたと言う事だろうか」
「もしかしたら、商人の方が何かを持ってきたのかもしれませんわ」
 レリアンナの指摘に、ローガンは思わずその視線を彼女の方に移した。
「その可能性は極めて高いな。これから村長宅に‥‥」
 ローガンが次の行動を示唆した瞬間。
 一匹の羊が3人のいる方向に突進してきた!
「皆さん、逃げてください!」
 蒼樹が壁となり、ローガンとレリアンナを護る。
 強靭な肉体は、その場から一歩も交代する事無く羊の動きを止めて見せた。
「よーしよし、良いタックルですよ」
 どこか蒼樹は満足げに羊を撫でている。
 が――――
『なんかでっかいのいるぞ!』
『なだれろなだれろー!』
 今度は十数頭の羊が同時に突っ込んでくる!
 幾ら蒼樹でも、この数の羊をすべて受け止めるのは、面積的に無理だ。
「ここはわたくしが」
 そんな集団羊を相手に、レリアンナが羊飼いの杖をかざす。
「無茶です!」
「幾ら羊飼いとは言え、この数を裁くのは‥‥」
 蒼樹とローガンが叫ぶ中、レリアンナは――――
「レイモンド、お願いしますわ!」
 羊達の突進してくる方向とは全く別の方に、レイモンドを走らせた!
『お、いぬがいるぞ!』
『きょうはおれがおうばんだ!』
 すると、先頭を走っていた羊がレイモンドに向かってその軌道を変えたではないか。
 それを追うように、他の羊も一斉にレイモンドを追う。
「牧羊犬は羊に追い付かれるような醜態は晒しませんわ。もう大丈夫ですわ」
「助かった。例を言う」
「ふう〜」
 ローガンと蒼樹が冷や汗を拭う中、レリアンナは誇らしげに微笑んでいた。


 結局――――事の真相は、予想通り商人が原因だった。
 冬場の寒さを耐える為、狼の毛皮を着込んで訪れていたらしい。
 その臭いを羊達は察し、その結果、警戒心が強くなり、暴動に至ったようだ。
「よく真相を究明してくれました。これでパストラルは再び平和になるでしょう」
 村長が深々と頭を下げる中、蒼樹は密かに想いを馳せていた子羊の購入を依頼した。
 しかし、冒険者に対しての羊の売買はこの地方では禁止しているとの事。
 羊は臭いが結構キツイ。連れて歩くのは好ましくないと言う意見が出た為、そういう地域限定の条例が設けられたらしい。
「そうですか‥‥残念です」
「代わりといっては何ですが、土産にこれを。この地で採れた羊毛で作った物です」
 村長が合図を送ると、夫人が幾つかの羊毛グッズの入った皮袋をそれぞれに手渡ししていた。
「また、何時でもいらして」
「‥‥ああ。機会があれば」
 特にローガンには熱い(?)視線を送っていたとか。
「いや、助かった。これでようやく元の生活に戻れる」
 クロフォードがお気楽にそう宜う中、ローガンは彼に向けて視線を送る。
「まだ安心するのは早い。動物と言うのは、そう簡単に軌道修正できないものだ。狼はいないと、貴方がたがわからせる必要がある」
「え? 俺らが?」
 ローガンは一計を案じ、その方法を伝えた。
 それは、自分達が狼に変装し、それを村人達に退治して貰うと言うものだ。
「変装は、僕が狼の毛皮を借り、ミミクリーを使って行います」
「彼を退治した後、このテレパシーリングで『もう大丈夫だ』と伝えるといい」
 蒼樹が一つ頷く中、ローガンから指輪を受け取ったクロフォードは、少し不安げだ。
「心配は不要だ。貴方は羊使いとして凛然としていれば良い。あのように、な」
 その言葉を言い終えると同時に、ローガンは視線をレリアンナに移す。
 そこには、善き羊飼いの見本となる姿があった。

 その後――――パストラルの羊達が無形の恐怖から無事解放されたのは、言うまでもない。