看板娘と香水をプロデュース!

■ショートシナリオ


担当:UMA

対応レベル:フリーlv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月02日〜06月07日

リプレイ公開日:2009年06月09日

●オープニング

 パリ冒険者ギルドの周りには、冒険者のための宿泊施設が多数存在している。
 その中のひとつ、宿屋『ヴィオレ』が今、史上最大の危機を迎えていた。
 冬場は冬季限定『究極の鍋』シリーズによってお客を伸ばしたのだが、春になってそのメニューが終了すると同時に、客足は遠のいてしまった。
 だが、それはまだ想定内。
 問題は――――長らく居候していたシフールのルディによって進められていた施療院の建設が、佳境を迎えている点だ。
 と言うのも。
 ルディとの話し合いの為に、定期的に冒険者やシフール飛脚や翻訳、鍛冶師などと言った面々が泊まりに来てくれていたのだ。
 しかし、施療院が完成してしまえば、そういった客も遠のいてしまう。
「はあ‥‥」
 宿屋の『ヴィオレ』の看板娘、カタリーナ・メルカは、沈んだ面持ちで瞑目していた。
 気分が滅入って溜息など吐くのには理由がある
 勿論、宿屋の現状を憂い‥‥と言うのもその1つだ。
 しかし、一番の原因は――――
『カタリーナさんには沢山苛められましたけど、お世話にもなりましたぁ。ありがとうございましたぁ』
 友達であり、冒険者ギルドの従業員であったフィーネ・プラティンスが、冒険者ギルドをクビになったのだ。
 一応来月まではギルドで働くようだが、その後は故郷に帰るらしく、パリからはかなり離れる事になるとの事。
 数少ない友人との、思いもよらない別れ。
 それが、1番の理由だ。
 そして同時に、明日は我が身だと嘆かずにはいられない。
 看板娘だ何だとチヤホヤされていたのはもう1年も前の事。
 今ではすっかり人気もなくなり、宿屋と共にその首はどんどん傾いている。
「はあ‥‥せめて、何か餞別でも贈らなきゃ」
 それでも、斜陽の朝は訪れる訳で。
 迫り来る別れに向けて、カタリーナは何を贈ろうか悩んでいた。
 宿屋のカウンターから眺めるパリの景色は、僅かに切り取られたその中でだけでも、美しく彩られている。
 同じ場所にいても、まるで違う世界。
 その差は何なのだろうと、カタリーナは考える。
 勿論、何もかもが違うのだが――――
「華やかさ、かな」
 カタリーナは何となくそう呟き、壁に貼られた一枚の広告に視線を送った。
『パリ中のフェロモンがこの瓶の中に凝縮! 1番人気の香水調合師ドーラ・ティエルの新作「淑女の頬杖」のお求めはこちらで』
 近所の香水店の広告だった。
 華やかさの象徴とも言える香水。
 パリの貴婦人の多くは、それを1つのステータスとして、競うように振り掛けていると言う。
「‥‥香水かー。どうせなら、それくらいの物を贈ってやりたいな」
 カタリーナとフィーネの付き合いは結構長い。
 それだけに、最高の餞別をと言う思いは強かった。
 カタリーナは決心する。
 その餞別を『自作のオリジナル香水』にして、例え離れても華やかなパリを思い出せるようにしてあげようと。
 だが、彼女は香水精製の経験はないし、香水を作る人に知り合いはいない。
 と言うわけで、冒険者の手を借りる事となった。

 そして。
 この決心が、後に彼女の宿屋『ヴィオレ』に大きな転機をもたらす事を――――彼女はまだ知らなかった。

●今回の参加者

 ea1671 ガブリエル・プリメーラ(27歳・♀・バード・エルフ・ロシア王国)
 ea6215 レティシア・シャンテヒルト(24歳・♀・陰陽師・人間・神聖ローマ帝国)
 eb3087 ローガン・カーティス(22歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb6702 アーシャ・イクティノス(24歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb8302 ジャン・シュヴァリエ(19歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 ec4988 レリアンナ・エトリゾーレ(21歳・♀・クレリック・人間・フランク王国)

●リプレイ本文

 パリの街を歩く1人の女性の小さな足音が、宿屋『ヴィオレ』の前で止まる。
 彼女にとっては、もう何度も訪れた場所。
 住所はここで間違いない。
 フィーネ・プラティンスは、その手に掴んだ招待状を眺め、宿の玄関口に立った。
 すると――――その背後から声が掛けられる。
 フィーネが驚きつつ振り向くと、そこには幼さの残る顔立ちの女性が立っていた。


「うわー、久し振り!」
 唐突だが――――1日前に遡る。
 宿屋『ヴィオレ』の玄関を潜ったレティシア・シャンテヒルト(ea6215)に、カタリーナは感慨深い声を上げる。
「私の事、覚えていてくれた?」
「勿論! 職業柄、一度見た顔は忘れられないから」
 そんな遣り取りの中、カタリーナはレティシアにハグを試みる――――も、スッとかわされた。
「うう、相変わらずクールなのね」
「そう言う訳じゃないけど、独り者のオーラが移りそうで」
「酷っ!」
 とは言え、カタリーナに傷付いた様子は無い。照れているのか、レティシアの頬が微かに赤らんでいたからだ。
 今の時間は殆ど客は来ないので、暫くはカタリーナの両親だけで十分対応可能。
 と言う訳で、暫し思い出話に花を咲かせる事になった。
 この2人が初めて出会ったのは、1年前の事。
 妙な事件がこのパリで発生し、その際に接点が生まれた。
 そして、やはりその時に知り合った少女の事も、レティシアは気になっていた。
「無口な子だから、あんまり感情は見えないけど、元気にはしてるみたい」
「ん、結構。健康第一」
 或いは、少し自分を重ね合わせていたのかもしれない。嬉しそうにレティシアは頷いていた。
 その話題が一段落すると、今度は今回の依頼に関しての話題に移行。
 つまり、フィーネに贈る香水についてだ。
「と言う訳で、教えて」
「え、いきなり何? って言うか、何を?」
 首を捻るカタリーナに、レティシアが指を立てて答える。
「香水作りはイメージが大切って聞いた事あるの。だから――――」


「‥‥カタリーナさんとの出会い、ですかぁ?」
 再び現在。
 間延びするフィーネの声に、冒険者一同は一様に頷き、肯定の意を示していた。
 ここは、宿屋『ヴィオレ』1階の食事部屋。
 今回の依頼の為に集った5人の冒険者と、カタリーナ、居候シフールのルディ、そしてフィーネの9名が、テーブルを囲んでお茶会に興じている。
 目的は、フィーネの人柄や、カタリーナとの関係を知る事にあった。
 彼女に贈る香水を作る上で、必須の情報だったからだ。
 特に、フィーネと初対面となる冒険者達は、熱心に彼女の人となりを観察していた。
 無論、その意図は本人には内緒である為、それとなくではあるが。
「そうですねぇ‥‥あれは、ちょうど今くらいの季節でした」
 フィーナは、切々と語り出す。
 カタリーナと彼女の出会いは、やけに牧歌的なものだった。
 そしてその途中、それまでじっとその話を聞いていた少女が、その表情を変える――――


 またもや唐突だが――――今度は1日後。
 パストラルと言う田舎の村に足を運んだレリアンナ・エトリゾーレ(ec4988)は、村で栽培しているハーブを分けて貰うよう、交渉を行っていた。
 昨日のお茶会で決定した事。
 それは、各々がフィーネに対して抱いた印象をそのまま香水の材料に反映させ、それを入手して再集結しよう、と言うものだった。
 いきなり決定するより、様々な材料を持ち寄って、色々作ってみて、その中で最良の物を提供しようと言う事になったのだ。
 レリアンナのフィーネに対する印象は、『爽やか』『清涼』と言ったものだった。
 そのイメージを重視し、レモンバームを中心とした柑橘系の匂いがするハーブを数点と、シトロンの花びらなどを購入する事にした。
「ありがとうございますわ」
 交渉は円滑に成立。所望した物はほぼ入手する事が出来た。
 レリアンナは現在、この村の薬草園と深い関わりを持っている。
 そこでハーブを栽培して貰っているのだ。
 尤も、まだ苗や種を植えたばかりなので、葉が付くのはもう少し先の事。
 その為、その薬草園の管理人にハーブの販売をお願いしたのだ。
「いやいや、こっちこそ良いお得意先を紹介して貰って、ありがたい限りだよ」
「今後とも良いお付き合いをさせて頂けると、ありがたいですわ」
 レリアンナが深々とお辞儀をする。
 すると、その足元の雑草の中に、一際目立った草があった。
 それは――――


「四葉のクローバーなんて、中々見つかるもんじゃないからねー」
 カタリーナがしみじみとそう語る今は、そう。現在である。
 思い出話が終わると同時に、フィーネは静かに破顔していた。
 2人の出会いは、実はパリのとある野原だった。
 フィーネは、妹にせがまれて四葉のクローバーを探しに。
 カタリーナは、病気で寝込んだ母の為に、やはり四葉のクローバーを探しに。
 今から3年ほど前の事である。
 結局、その日四葉のクローバーは1つだけしか見つからなかった。
 見つけたのはフィーネ。しかし、彼女はカタリーナにそれをあげた。
 それが、今日までの縁に繋がっていったのだ。
「縁って、大事ですよね」
 冒険者の1人が、そうしみじみと語る。
 実際、それはその通りだった――――


 再び、1日ほど前に遡る。
 その日、アーシャ・イクティノス(eb6702)は巨大な屋敷の前にその身を佇ませていた。
 えも言われぬ威圧感。だが、それは建築物だけが要員ではない。
 現在パリで最も有名な人気香水調合師、ドーラ・ティエルと言う人物が居住していると言う事実こそが大きい。
「ふぅ〜、あの人に会うのは緊張しますよ」
 アーシャ・イクティノス(eb6702)は、その屋敷に背を向けつつ、心中でそう独りごちながら、辺津鏡と宝手拭で身だしなみを整えていた。
 そこまでして、この屋敷に入る目的は1つ。香水の作り方を伝授して貰う為だ。
 作業自体は簡単でも、実際の抽出法などは、専門家の知識がないと上手くは出来ない。
 香水調合師にツテのあるアーシャがいたのは、カタリーナにとって幸いだった。
「‥‥よしっ、行きます!」
 気合と共に、アーシャは自身の頬を軽く叩き、その仰々しい門を潜った。
 問題は、1度の接点でツテと呼べるかどうかだったが――――
「あの時の貴族の娘だな。勿論覚えている。あれは、有意義な時間だった」
 アーシャはドーラにとって印象深い人物と認識されていたらしく、話は円滑に進んだ。
 香水作成に使用する器具、材料、業者の紹介。
 更には、女性向けの香りについて、詳しく聞く。
 結果――――必要な知識は、ほぼアーシャに伝達された。
「ありがとうございます。この御恩はいつか、必ず」
 貴族モードのアーシャは、普段の朗らかさを消し、礼節に徹した面持ちで深々と頭を下げた――――


「うう‥‥すいません。ここの所ずっと調子が悪くて」
 現在。
 普段の朗らかさとは打って変わった表情のジャン・シュヴァリエ(eb8302)が、ゆっくりと階段を下りてくる。
 依頼を受けてからこの2日間、ジャンは主にルディと組んでハーブの調達を行っていた。
 だが、無理が祟ったのか、体調を崩してしまったようだ。
「ジャン君、無理はダメだってば。後でハーブティー持ってってあげるから」
 それでも顔を出したかったのか、ジャンは弱々しい笑顔をカタリーナに向け、そのままテーブルに着く。
 これで全員が揃い、歓談に花が咲く。
 女性が多い事もあり、話題は自然と恋愛方面に移った。
「え!? アーシャさん恋人いるのーっ!? この裏切り者!」
「そうなのですー、裏切り者なのですよー。うふふ」
 とても幸せそうなアーシャに、カタリーナはレティシアが用意した恋花の郷産のパンをバカ食いしながら、何度もかぶりを振っていた。
「で、他の皆はどうなの? 良い人いるの?」
 カタリーナのその振りに対し――――
「さ、どうかしら?」
 ガブリエル・プリメーラ(ea1671)は余裕の表情で。
「わ、わたくしはクレリックですので。そ、その、決して縁がなかった等では!」
 レリアンナは珍しく狼狽気味に。
「‥‥仕事が恋人とか、そう言う風合」
 レティシアは超遠い目で、それぞれ答えていた。
 そんな中――――話は恋話から、女性の身だしなみ、そして香水へとシフトしていく。
 無論、プレゼントの事には触れず、あくまで話題の1つとして。
「へえぇ、香水って作れるんですねぇ」
 アーシャの解説にフィーネが感心する中、1人の冒険者は彼女を複雑な心境で眺めていた――――


 香水と言うものは、実は非常に簡単に作れたりする。
 余りその製作技術を語られる事は無いが、要は材料を混ぜて瓶に詰めて暫く置いておけば良いだけなのだ。
 ただし、単にその工程をこなしただけで、良い香水は生まれない。
 ただ匂いのする液体、と言う、香水の定義をかろうじて含有した物にしかならないのだ。
 重要なのは、材料の選定。そして、調合の過程で配合比率をしっかり吟味する事にある。
「毎度ありー!」
 1日前――――パリ市街。
 香水の材料候補として、ローガン・カーティス(eb3087)は幾つかのハーブや果物を購入し、愛驢馬エヴァンズの荷袋にそれを入れていた。
 所望していた物は大方安価で入手でき、満足行く買い物となった。
 ただ、心は晴れない。
 フィーネの身の上を憂いでの事だ。
 今から1年前、ローガンはとある依頼を受けた際、彼女と初めて出会った。
 以降、それほど多くの機会ではないものの、フィーネと接する機会はあった。
 その接点の中で、彼女の人となりや仕事を見てきたローガンは、彼女が冒険者ギルドを解雇された事に一片の疑問を持っていたのだ。
 それが気になったのと、今回の依頼をフィーネに悟られないようにする為、朝一番で冒険者ギルドに赴き、フィーネに依頼書を見せないよう頼むと共に、その解雇理由について聞いていた。
 対応したのは、強面のトラブル処理係ゲロルド・シュトックハウゼンだ。
 彼曰く――――理由は口外しないようにしている、との事だった。
「‥‥彼女の復帰は望めないのだろうか?」
 そんなローガンの言葉にも、ゲロルドは首を横に振るのみ。
 或いは、何か隠しているのでは――――そう感じたローガンだったが、それ以上語る事はせず、一礼してギルドを後にした。


 そして――――現在。
 月の隠れた夜、冒険者達はお茶会で得たフィーネの印象を加味し、それぞれのアイディアを持ち寄る事にした。
 香水の作り方や材料の集め方は、アーシャがドーラから得た知識と、ローガンが身を粉にして事前に調査した内容によって、既に全員が理解している。
 問題は、どう言った材料にするかと言う点だ。それによって使用する器具や配合も決まってくる。
「では、フィーネさんの印象をまとめよう」
 ローガンが中心となって、話し合いは粛々と行われた。
 各々、フィーネに対しての印象を話し、それを記録して行く。
 思い出話などのエピソードは、レティシアがファンタズムによって映像化し、より材料と関連させやすいよう努めた。
 四葉のクローバーのエピソードの際は、一面に緑の絨毯が広がる野原の風景を具現化。
 そよ風舞う草原の青い匂いも、そのままフィーネのイメージと連結される。
 基本的には、冒険者ごとの印象差はそれほど大きくなく、イメージは直ぐにまとまった。
 ただ、話し合いはそこでは終わらない。
 ここからが、冒険者の腕の見せ所だ。
「折角香水を作るんだから、1種類だけってのも、ね。彼女も驚かせてあげましょう」
 ガブリエルが唇に指を当て、悪戯っぽく告げる。
 すると、下の階から誰かのクシャミが聞こえてきた。


 それからの2日間、冒険者達は一旦個別に行動し、共有したイメージにそれぞれの感性を加え、材料を揃える事にした。
 そして、最終日となる5日目に再集結。いよいよ香水の製造を開始する事になった。
 香水を作るのに仰々しい道具は必要ないようで、混和用の容器と棒、しっかり蓋が閉まる瓶だけあれば十分との事。
 それに加え、それぞれが持ち寄った材料で、香水を作る事になる。
「では、各自用意した物を並べてみよう」
 ローガンの言葉に従い、冒険者達はそれぞれ用意した材料を『ヴィオレ』の一室のテーブルに並べた。
 ちなみに、カタリーナには席を外して貰っている。そうする必要があったからだ。
「わたくしは、ハーブを中心に用意しましたわ」
 まず、レリアンナがレモンバームやシトロンの花びらなどを並べる。
 フィーネの持つ爽やかな一面を表現する為の物だ。
「僕はあんまり活動できなくて、こんな物しか‥‥」
 次に、ジャンが数種類のハーブを申し訳なさそうにテーブルに置く。
「私は幸せいっぱいの材料を揃えて来ました〜」
 アーシャは、敢えてフィーネではなくカタリーナをイメージした『カモミール』を中心に集めていた。
 彼女との思い出をフィーネが忘れないように、と言う事で、香水の中にカタリーナの匂いを含めたいと言う思いからだ。
 カモミールは、柑橘系の甘味を微かに漂わせるハーブ。また、花言葉は『親交』『苦難の中での力』となっており、今の状況とコンセプトにはぴったりだ。
「あら、少し被ったみたい」
 そのカモミールを視界に納めたガブリエルは、苦笑しつつ自身の集めた材料を並べ始めた。
 その中には、カモミールも含まれていたが、彼女はそれ以外にも様々なハーブを持ってきている。
 レモングラスやバラの花、ネロリ、オレンジの皮から作った香油などだ。
「考える事は大体同じなのだな」
 ローガンも、カタリーナのイメージとしてカモミールを用意していた。
 更に、ローズマリー、ラベンダー、フランキンセンスなどのハーブ、レモンやバラで精製した香油、樹脂など、非常に多彩な材料を揃えている。
 そんな中――――最後に、レティシアが1つの瓶をテーブルに静かに置いた。
 それは、「プランタン」と言うワインだ。
 実はこのワイン、別れに纏わる思い出の品として、レティシアがずっと大事に取っておいた物だった。
「でも、良いの? そんな大事な物を‥‥」
「ここで使わないと、逆に勿体無い気もするの。巡り合いだから」
 躊躇無くそう答えたレティシアに、ジャンは一冒険者として関心せずにはいられなかった。


 それぞれが持ち込んだ材料は、そのコンセプトの元、容器の中で混成され、複数の瓶に詰められた。
 案は複数出ており、実際精製してみないとどう言う香りになるかもわからないので、色々と試してみる事にしたのだ。
 熟成まで1ヶ月。その時に完成品をカタリーナに審査して貰い、ベストの香水を選んで貰う予定だ。
 そして、実はもう1つ、全く別のコンセプトの香水も作られていたりする。
 その香水が誰に対しての物なのか。
 どのような香水が贈り物に選ばれるのか。

 全ては1ヶ月後、判明する――――