クッポーのドキドキワクワク1人舞台!

■ショートシナリオ


担当:UMA

対応レベル:6〜10lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 80 C

参加人数:5人

サポート参加人数:2人

冒険期間:06月14日〜06月19日

リプレイ公開日:2009年06月21日

●オープニング

 アトラトル街観光協会にとって、勝負の日がやって来る。
 これまで行って来た全ての企画は、この時の為の準備・練習に過ぎない。
 アトラトル街の命運は、この日に行われる企画に掛かっていると言っても、決して過言ではないだろう。
 その企画とは――――

 アイドル射撃手inらぶりーうさぎさん・クッポーのドキドキワクワク射撃ショー!!!

 である。
 これまで幾度と無くその名前が挙がってきた本企画であるが、いよいよもって数日後に開幕となる予定だ。
 ちなみに現時点で、その内容については未定となっている。
 未定。即ちまだ決定していないと言う事だ。
 このような重要な局面にあって、何故そんな状況に陥っているのか?
 それは――――


「‥‥クッポーさんが誘拐されて、もう3日になる」
 緊急会議を開いた観光協会の面々は、皆一様に深刻な面持ちで腕組みし、かぶりを振っていた。
 つまり、中心となる演者がいないので、内容を煮詰めようが無い状態だったのだ!
「無論、安否は気になるところだが‥‥我々は観光協会。このアトラトル街の観光を一手に引き受ける存在」
「こうなってしまった以上、クッポーさんがいない状態でのショー開幕を想定せねばなるまい」
「もはや延期も出来ぬしな。困ったものだ‥‥」
 と言う訳で、観光協会の面々はかつてない危機を迎えていた。
 何しろ主役がいないとかそう言う次元の話ではない。
 企画をほぼ丸投げした相手がいなくなったのだから、普通であれば成立させようがないのだ。
 例えるなら、新郎も新婦もいない結婚式のようなもの。
 どうしようもない状況なのは明白だった。
 
 ところで、何故誘拐と言う事が判明しているのか、不思議に思う方もおられるかと思う。
 実は2日前、脅迫状が観光協会に届けられたのだ。
 その文面は、以下の通りとなっている。

『伝説のアイドル射撃手クッポーは我々『ルシアン盗賊団』が預かった。
 とても手強い射撃手だったが、かろうじて人質に取る事が出来た。
 我々は運が良い。あの伝説のアイドルな上にらぶりーうさぎさんでもあるクッポーを捕らえられたのだから。
 この偉業は後世まで語り継がれるだろう。
 それはともかく、返して欲しければ1ヶ月以内に20万G用意し、
 胸にバラの花を刺した受渡人を街の入り口の看板前に寄越せ。
 官憲や自治警に報せたら許さない』

 観光協会の面々は、誰1人として脅迫状である事を疑わなかった。
 官憲への通報は封じられており、かと言って20万Gなどと言う大金を直ぐに用意できる資金力は
 観光協会には無い。
 犯人の見当も付かない上に、クッポーが閉じ込められているであろう場所も特定不可能だ。
 これでは、観光協会には成す術がない。
 つまり――――射撃ショーもクッポーの身の安全も、彼らにはどうしようもなかった。
「最早、我々に出来る事はない‥‥」
「くそっ、あのクッポーさんの天使な小生意気的な笑顔をもう見る事は叶わないと言うのか!」
「アトラトル街はもうおしまいだあっ!」
 迫り来る、アトラトル街最大の危機。
 彼らは希望を1つの施設に託した。
 そう。
 冒険者ギルドと言う施設に。

●今回の参加者

 ea6215 レティシア・シャンテヒルト(24歳・♀・陰陽師・人間・神聖ローマ帝国)
 eb8302 ジャン・シュヴァリエ(19歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 ec4441 エラテリス・エトリゾーレ(24歳・♀・ジプシー・人間・神聖ローマ帝国)
 ec5382 レオ・シュタイネル(25歳・♂・レンジャー・パラ・フランク王国)
 ec5609 ジルベール・ダリエ(34歳・♂・レンジャー・人間・ノルマン王国)

●サポート参加者

ヴィタリー・チャイカ(ec5023)/ ユクセル・デニズ(ec5876

●リプレイ本文

 アトラトル街の入り口には、月とウサギをモチーフとしたデザインの、可愛いアーチ状の看板がドーンと構えられている。
 その真下で、ジャン・シュヴァリエ(eb8302)は静かにその時を待っていた。
 胸には一輪のバラ。その手には宝石を入れた袋を持っている。
 特に緊張感は無いが、待機時間の長さから、軽い疲労を覚えていた。
 ただ、肉体的疲労など、大した問題ではない。
 精神的疲労に比べれば、耐えるのも回復するのも容易い事だ。
 そしてそれは――――本件の核心でもあった。
「用意は出来たか」
 不意に、くぐもった声がジャンに向けられる。
 ジャンは即座に作った声だと判断した。
 そして同時に、心中で苦笑する。
 やはり、皆の推理は正しかったのだと確信して――――


 同時刻、アトラトル街『クッポー誘拐事件緊急対策本部』。
 その会議室の中は、険悪な空気が漂っていた。
「‥‥」
 特に、レオ・シュタイネル(ec5382)はその怒気を隠そうともせず、沈黙のまま腕組みをして壁に寄り掛かっている。
 レティシア・シャンテヒルト(ea6215)もまた、似たような表情だ。
「く、空気が重いよ〜」
「ま、しゃあないわな」
 穏健なエラテリス・エトリゾーレ(ec4441)が狼狽する中、隣に座るジルベール・ダリエ(ec5609)は頬杖を突きつつ嘆息した。
 ここに集う4人の冒険者は、いずれもかつてクッポーと関わった者ばかり。 
 それだけに、誘拐事件となれば、クッポーの安否を気遣うだけの理由がある筈だった。
 しかし、冒険者の中に、そのような気配は微塵も無い。
「あの‥‥一体どう言う‥‥ひいっ!?」
 発言した観光協会の1人を、レティシアがギロリと睨む。
 その様子を、エラテリスは不安げに、ジルベールは苦笑気味に見つめていた。


 脅迫状を読破した5人は、全員同じような見解を示していた。
 自作と自演。
 それが、全員の受けた印象だった。
 勿論、それだけではない可能性もある。
 例えば、レティシアはクッポーではなく、彼のファンが書いたと言う可能性を示唆した。
 ただ、本質的な部分では、どちらも同じだ。
 つまり――――狂言である、と言う事。
 その理由も、容易に推測できた。
「逃げたな、あいつ」
 レオは静かに、そう呟いた。
 誘拐された事にすれば、主役を欠いたイベントは延期、若しくは中止になる。
 最悪決行されたとしても、誘拐されている者を参加させる事は出来ない。
 そして、誘拐と言う強制離脱は、同情は誘っても、非難の対象とはならない。
「腹が痛くなったフリして、練習サボるようなもんやな。困ったもんや」
 ジルベールは顔を手で覆い、嘆息した。


 と言う訳で、冒険者達は自作自演の裏付け調査を行う事になった。
 まず、指定場所でジルベールがサンワードのスクロールで太陽を尋問。
 クッポーの居場所は、その近くと言う事がわかった。
 後はキリキリ聞き込み開始。だが、中々核心は得られない。
 ジルベールの協力者、クレリックのヴィタリー・チャイカが、クッポーの使った貸衣装の匂いを忍犬に嗅がせて、追跡を試みたが、1日目にその成果が現れる事は無かった。
 そこで冒険者が着目したのが、脅迫状の中の『ルシアン盗賊団』。
「ルシアン‥‥そんな名前のお茶やお酒がなかったかな」
 ジャンはその盗賊団名を、何かの名前から取ったものだと推理した。
 クッポーと会った事がない為、その人物の特徴・性質を聞き、そこから行動分析を行ったのだ。
 そして、その手がかりを得る為、つい先日も赴いたパリの郊外にある酒場『シャレード』へと向かった。
 一方、レティシアは『ルシアン』と言う言葉の意味を考えた。
 それは、犬。
 そこから、犬とクッポーに関する出来事が過去に無かったか、他の冒険者に尋ねてみた。
 そして――――結論は出た。


 ショー当日。
 多くの見物客が会場となる劇場『ムーンプラザ』に足を運んでいる。
 だが、肝心の主役は依然として姿を見せていない。
 観光協会の面々は一様に青褪めた顔で、ムーンプラザの舞台裏で待機していた。
 彼らは、冒険者一同から何一つ聞かされていない。
 当然、不安は最高潮に達していた。
 このままでは、ショーの開催は不可能。観光協会の面目は丸潰れだ。
 だが、それも自業自得。
「これも、1人の青年に甘えた我々の責任‥‥か」
 冒険者達が本部を訪れた際に発していた不機嫌オーラの意味を、彼らはようやく理解したのだ。
 自分達はもう冒険者からも天からも見放されたのだと。
 だが――――それは誤りだったと、直ぐに彼らは理解する。
「クックック‥‥揃いも揃って何と言う面構え。笑止なり」
「クッポーさん!?」
 舞台裏に響く、蜂蜜のように甘くトロリとした声。
 それは、紛れも無くクッポーだった。
「射撃とは闘争。そして闘争とは緊迫感。良く聞け愚民ども。ショーを求める者は、皆刺激を欲するもの。例えば、この街で最も有名な射撃主が、誘拐された‥‥とか」
「な、なんと! まさか、誘拐をショーに取り入れるつもりで、わざと体験を!?」
 妙に察しのいい観光協会の面々に対して不敵な笑みを浮かべ、クッポーが舞台に上がる。
 同時に幕が上がり、その姿がライトによって照らし出された
「おおーーーっ!」
 観客席から怒号のような声援が生まれ、場内を蹂躙する。
『え、えーっと☆ アイドル射撃手inらぶりーうさぎさん・クッポーのドキドキワクワク射撃ショーでようこそ、だよ!』
 そんなナレーションが響き渡る中、舞台の上部には美しい弧を描く月が浮かぶ。
 そんな中、レティシアが中心となったチーム月乙女が登場。
 なのに、女性は2名。しかも赤毛の女の子は厳密には女の子ではない。
 会場がざわめく中、生演奏が始まった。


 この数日前――――
「‥‥うわーん!」
 クッポーを捕獲したジャンは、泣き叫ぶ2人の女の子を前に、少々心苦しい面持ちで頬をかいていた。
 この少女2名は、かつて『野犬』に盗られた『犬』のぬいぐるみを冒険者に取り返して貰ったレベッカとアネッテだ。
 彼女らが、クッポーを家に匿っていたのだ。
 無論、この少女達が誘拐犯の訳はない。ジャンの待ち合わせ場所を訪れたのも、クッポー本人。つまり、冒険者の予想通りだったと言う事だ。
 尚、レベッカとアネッテは、その現場を隠れて見ていた所を、同じく潜んでいたレオに見つかったのだ。
「ひん‥‥ごめんなさい‥‥」
 泣いて謝る2人の少女を、ジャンは必死でなだめる。
「気にする事はないんだよ? 君たちは何も悪くないんだから。ね」
 幸い、ジャンは子供への接し方はが上手い。2人は直ぐに泣き止み、ジャンに連れられて家に帰された。
 だが、残りの1人はそうもいかない。
「‥‥前の大会の報告書、読んだ。また恥かくのが怖くなったか?」
 レオは、無言で俯いているクッポーに、普段よりかなり低い声で話しかける。
 ちょうどその場に掛け付けたエラテリス、ジルベール、レティシアも、思わず驚くほど。
「頑張ったのに結果出なかったのは、悔しいよな。でも‥‥」
 そして、レオは更にその眼光を鋭くする。
「嘗めるな。射撃は付け焼刃で上達するもんじゃねぇ」
 その声に、クッポーの身が一瞬震えたのを、冒険者達は確認した。
「ま、ま、その辺で」
 ジルベールがレオを制する。レオはふーっと上空に向けて息を吐き、一つ頷いた。
 弓矢の危険性は熟知しているレオだけに、射撃に対してはとりわけ熱くなる性質がある。
 加えて、これまで幾度となくクッポーを支えて来たと言う積み重ねが、今回の事件に対しての憤りを覚えさせていた。
 このような逃げは、何より本人の為に良くないのだ。
「ショーも、受けたなら出ろ。いいな?」
「‥‥」
 クッポーは弱弱しく、だが確かに頷いた。
「だけど、もう時間がないよ。どうすれば良いのかな?」
「取り敢えず、観光協会への言い訳と、ショーの内容と宣伝。まずはこれを考えましょう」
「そやな。後はどうにでもなるやろ」
 エラテリス、レティシア、ジルベールが話し合いを持つ中、項垂れたままのクッポーの頭に、レオが手を乗せる。
「今度は4本。次は5本。少しずつ、な」
 クッポーはその性格からか、返事を口にはしなかった。
 しかし――――その決意は、直ぐに公のものとなる。


「え、えっと、チーム月乙女に拍手をお願いだよ!」
 レティシアが竪琴を掲げる中、大きな声援がチーム月乙女に贈られる。
 彼らが演奏したのは、『無垢なる月夜』と言うレティシア作詞作曲の幻想的な楽曲。
 その後、このアトラトル街の公式テーマソングとなるのだが――――それはまた別の話。
 そして、大歓声の中、いよいよ本筋のショーが始まる。
「大変だ! ボクたちのクッポーが、悪いやつらに誘拐されちゃった! ど、どうなるのかな?!」
 エラテリスのナレーションが会場に響き渡る中、観客達は次第にその『劇』の内容を理解し始めた。
 そう、劇。
 冒険者一同が考えた『射撃ショー』は、クッポーが主役の演劇だったのだ。
 その内容はと言うと――――『竜巻のジル』と『陰月の魔女レティ』と『兎少女ジャンリデル』によって誘拐され、クッポーが絶体絶命の大ピンチに陥っている場面から始まると言うものだ。
 『竜巻のジル』は、アトラトル街を女性を虜にし、この街を支配する為。
 『陰月の魔女レティ』は、呪いの歌でこの街の住民を洗脳する為。
 そして『兎少女ジャンリデル』は、この街のどこかに眠る最高級紅茶『ルシアンティー・ロイヤル』を手に入れる為。
 それぞれ、全く別の目的ながら利害が一致し、クッポー誘拐を遂行したのだった。 
「全く、呆気ないもんやねえ」
 竜巻と共にジルが現れる。会場からどよめきが起こった。
「さあ、アトラトルのアイドルマスター、クッポー!、この竜巻のジルにその座を渡してもらうでえ!」
「クックック。このアイドル射撃主が、そんな脅しに乗るとでも?」
『はっはっはっはっは!』
 不敵なクッポー言葉に、ジルの笑い声が被さる。
 それも、3重声。
 なんと、ジルの後ろにジルが2人、同じポーズで笑っているではないか!
 この演出にどう言った意味があるのかどうかは兎も角、ジルは高らかに笑い続けた。
「勝手な真似は許さない」
「むっ! その声は、レティ!」
 今度は、突然の暗転。
 再び観客席がどよめく中、漆黒のドレスに身を包んだ魔女が、光に包まれ登場する。
「その子供は私が頂く。唯一私の歌が利かなかった、稀有な標本だから」
「だ、ダメだぴょん! クッポーちゃんはわたしのだぴょん!」
 今度は上空からけったいな語尾の声がする。
 禁断の指輪が怪しく光る指を口に当て、兎の魔術師の少女は空中のフライングブルームから飛び降り、くるんと一回転して着地した。
 ちなみにここは部屋と言う設定だが、気にしてはいけない。
「その子は、伝説のルシアンティーの在り処を知ってるの。わたしが最初にそれを聞き出すんだもん!」
「あかん! まずこの『竜巻のジル』が奴を倒すんや!」
「‥‥協定決裂、ね」
 何という事だ。クッポーを誘拐した3人が仲間割れを始めてしまったではないか!
「こうなったら、もう闘うしかないわ」
「フッ‥‥この陰月の魔女に刃向かうなど、愚かな」
「わたしのお茶収集を邪魔するなんて、許さないんだから!」
 そして、取っ組み合う。
 そこで再び暗転。
 クッポーにのみライトが当てられる。
「クックック‥‥計画通り」
「おーっと☆ なんとクッポーは、自ら囮になって、3人の悪を一網打尽にするよう目論んでいたんだよ!」
 ナレーションがそう叫ぶと同時に、おーっと言う歓声が上がる。
 クッポーが縄を自力で解き、弓を構えたのだ。
 その手は、心なしか、震えていた。


「だーかーらー! 構えて直ぐバランス崩してるから当たらねぇんだ」
 遡る事数日前。
 クッポーはレオによって、スパルタ気味な射撃の特訓を受けていた。
「クッポーさん、頑張って☆ 演劇が上手く行ったらお祭も楽しくなるよ☆」
 その周りでは、エラテリスが不思議な踊りを踊ってクッポーを応援している。
 ちなみに祭と言うのは、とある村で後日行われる祭の事だ。
 今回の射撃ショーが成功したら、参加するとクッポーは言っていた。
 それだけ、このショーに掛けているのだ。
「矢を掴むタイミングが難しいね。よっ、と」
「お、ジャンさん上手いやないの。次、レティシアさん行くでー」
「了解。でもまさか、ここでこんな特訓する事になるなんて‥‥ね」
 尚、他の3人は自分達の役の特訓を行っている。更にその合間、宣伝活動にも勤しんでいた。
 ユクセル・デニズが書いた告知状に開催日を加え、それを配って歩いたり、看板を持ったペンギンを歩かせたり、子供達にビラを配ったり。
 クッポーが挫けそうな時にはお菓子で釣ったり、やる気注入の頭突きをかましたりして、特訓は遂行された。
 後は、本番でそのクッポーが頑張るのみ。
 そして、結果は――――


「くっ‥‥無念っ」
「そ、そんな‥‥がくっ」
 レティとジャンリデルが、順にぱたぱたと倒れていく。
 その胸には、矢が突き刺さっている――――ように見える。
「ふ‥‥負けたで‥‥お前こそ‥‥真のアイドル射撃手」
 最後にジルが、胸に『当たった』矢を掴みながら、フラフラと後ろに倒れて行った。
 ちなみに、その矢の先端はカットされ、布で丸めてある。
 それでも、その先端が胸に触れた瞬簡に矢を掴めば、刺さったように見えるのだ。
 そして、クッポーの放った矢は――――2つが狙い通りに行った。
 ジルに放った矢だけはあさっての方に飛んだのだが、セットの裏に隠れていたレオが瞬時に同じ細工をした矢を放ち、事なきを得ていた。
 その早業に気付いた観客はいない。大成功の様相を呈し、歓声の中幕は下りた。
「やったあ!」
「クッポーたん、すごーい!」
 カーテンコールが行われる中、レベッカとアネッテが客席で手を叩いている。
 それに気付いたレティシアは、クッポーの背後に回り、彼女らに見えるよう、クッポーの頬を両手でむにむにした。
「あんないたいけな子達より、もう少し周りの大人を頼りなさい」
「そやそや。みんな協力するで? アイドルの代わりは誰もできへんねんから」
「そうだぴょ‥‥そうだよ。1人で抱え込まなくて良いんだよ?」
「でも良かったよ☆ これでお祭に行けるね☆」
 レティシアに続き、ジルベール、ジャン、エラテリスがそれぞれの言葉でクッポーを労う。
 そんな中、少し離れた所で腕組みしていたレオは、鋭い視線をクッポーに向けた。
「まだまだだなっ!」
 とは言え、そこに険も棘も角もない。いや、元々なかったのだ。
「でも、ま‥‥ちょっとは頑張ったな」
 ニッ、と笑ってみせるレオに、クッポーはぷい、と顔を背けた。
 余り見せる事のないその照れ隠しの仕草に、冒険者一同は思わず苦笑するのだった。