アツイ、アツイ、アイツ、アツイ
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■ショートシナリオ
担当:UMA
対応レベル:11〜lv
難易度:やや難
成功報酬:8 G 76 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月23日〜08月28日
リプレイ公開日:2009年08月30日
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●オープニング
夏と言う季節がもたらすもの。
色々諸説はあろうが、一番一般的な回答は、やはり暑さだろう。
『アツイ』
この言葉が一体、ひと夏の間にどれだけ放たれるのだろうか。
そして毎年、今年は特に暑いと言う言葉が出てくる。
何年生きていても、夏が終わって冬を越せば、その暑さは忘却の彼方へと追いやられるのだ。
尤も、その忘却があるからこそ、何十年、或いは百何十年と言う人生を送る事が出来るのかもしれない。
だが、忘れてはいけない事まで忘れると言うのは、余り良い事ではない。
「――――と言う訳で、早速お仕事宜しく」
先日、『まるごとオールスターズ武闘大会』で盛り上がった『ルッテ』と言う街にひっそりと佇む、依頼請負事務所『PLF』。
木製の板にカラフルなストライプで彩った看板は、どこかいかがわしさすら感じるが、一応は『冒険者ギルドで依頼できない依頼も承ります』と言う貪欲な精神を持った個人事務所だ。
しかし、依頼人の訪れる頻度は月に1度くらいのペース。
それでも、その一度が結構な報酬を貰える大きな仕事である事が多いので、人件費の少なさも手伝い、どうにかやって来れている。
「イヤです! 絶対にイヤです! もう男装はイヤです!」
だが、実質的に唯一の稼動員である女性冒険者フィロメーラ・シリックは、極度の男性恐怖症と言う困った性質を持っており、こうして駄々をこねる事も多い。
「駄々じゃないです! 私契約の時言いましたよね!? 男性と接しなくていいお仕事を回して下さいって!」
「そうだっけ? でも、仕方ないじゃない。君以外、もう動ける職員いないんだから」
「所長が引き受ければ良いじゃないですか!」
そんな色々問題の多い事務所だが、所長デュオニース・バレイラは、本日も不敵な笑みを浮かべつつ、フィロメーラの話を聞いている。
「ダメだよ。依頼主は強い男を所望している。僕じゃどうしようもない。頭脳労働担当なんでね」
つい先日、『PLF』に届いた依頼。
それは――――自身の飼っていたサラマンダーが、引き篭もりになってしまい、屋敷の近くにあった洞窟に閉じ篭ってしまったので、連れ戻して欲しい――――と言う内容だった。
依頼を届けたのは、口髭を蓄えた初老の使用人。
とんでもない金持ちである事は想像に難くない。
その屋敷は、パリから半日ほど歩いた先にある、とある街の中にある。シュヴァルツェンベック家と言う、結構由緒正しい貴族の家だった。
デュオニースは複数の貴族に伝を持っているので、その関係でこの事務所を知ったのだろう。
「幾ら貴族の依頼と言っても、あからさまに胡散臭い依頼じゃないですか。サラマンダーが引き篭もりって」
「それは偏見だよ。サラマンダーにはサラマンダーなりに、色々悩みとかあるんだろう」
「悩みなら、私の方が絶対多いのに‥‥はぁ」
フィロメーラは嘆息しつつ、依頼書を乱暴に手に取った。
何でも、そのサラマンダーが引き篭もっている洞窟には、彼の影響か他の炎系モンスターも入り浸るようになり、『狂焔灼熱の洞窟』と呼ばれるようになっているとか。
「この暑い季節に‥‥」
「だからこそ、俺達に御鉢が回ってきたって訳。これ、ジャパン的には凄く上手い事言ってるんだけど、わかるかな? わかんないよね」
「はいはい。わかりました。やります、やりますよ」
事務所内も暑い。その為、フィロメーラもこれ以上不毛なやり取りをする事は億劫になった。
「オッケ。じゃ、今回も6人まで雇っていいよ。頑張ってね」
他人事のように言い放つデュオニースに、フィロメーラは全力でアッカンベーをして、所長室を出た。
●リプレイ本文
初日。
シュヴァルツェンベック家へと赴いた冒険者一同は、使用人の案内で客室へと通されていた。
たった今、依頼主の貴族夫人グレーティア・シュヴァルツェンベックとの面会を終えたところだ。
強い男性を所望していた彼女は当初難色を示していたが、男装やフィロメーラのプレゼン、アーシャ・イクティノス(eb6702)の腕相撲デモンストレーションなどにより、何とか依頼を承る事と相成ったのだ。
「良く頑張ったね、フィロメーラ。偉いよ」
一仕事終えたフィロメーラの肩を、エレェナ・ヴルーベリ(ec4924)がそっと抱き寄せる。
「あはは‥‥どうもです」
「そんな引きつった顔をしなくてもいいじゃない。傷つくなぁ」
そんなやり取りに、事情を知らないアーシャとミカエル・テルセーロ(ea1674)は若干驚いた様子でエラテリス・エトリゾーレ(ec4441)に視線を送る。
「え、え、えっと、あれはシリックさんの治療、なのかな?」
概ね正しかったが、端的だった為に余計混乱を生んだ。
そんなこんなありつつ――――冒険者一同は一息吐いた所で早速、件の洞窟へと足を運ぶ。
まずは、中がどの程度の暑さかを確認する必要があった。
「それじゃ、行ってくるよ☆」
「チクク、何か見つけたら直ぐ報告ですよ」
「ですよ〜♪」
と言う訳で、偵察隊としてまず体力のあるエラテリスとアーシャ、そして火の妖精チククが入って行った。
――――30分後。
「はう〜、気持ちいい〜」
「死ぬかと思ったよ〜」
第一偵察隊2名は、エレェナが連れて来たスノーマンのルカーに左右から抱き付いていた。
その傍らで、ミカエルとエレェナは思案顔で洞窟の入り口を見つめている。
マッピングしながら進んでいった2人の言によると、最初の曲がり角を曲がった途端、急激に温度が上がるとの事。
アーシャとエラテリスの尋常でない量の汗が、その過酷さを物語っていた。
「それでは、次は僕達が行きましょう」
「実際に体験してみないと、どの程度のものかわからないからね」
と言う訳で、今度はミカエルとエレェナが進入する事になった。
――――30分後。
「ロシア育ちには結構堪えるな‥‥」
「対策を練らないと、先に進めそうにありませんね」
ルカーにくっ付く冒険者が4名に増加していた。
四方から抱き疲れているルカーは流石にかなりシンドイらしく、普段は(・v・)な顔のスノーマンが(・_・;)な顔になっている。
「と、取り敢えず、一旦屋敷に戻りましょうか‥‥溶けちゃわない内に」
と言うフィロメーラの意見によって、この日の探索は終わった。
2日目。
再び洞窟と対峙する冒険者の装いは、昨日とかなり異なっていた。
ミカエルはサマーローブなどの軽装に加え、商人の扇子を所持。
アーシャはウィッチネッカーで首を飾り、紐を通した赤勾玉をその上から下げ、氷の剣を右手に持ち、魔法の冷や水を鞄に所持していた。
エラテリスもサマーシャツとサマーローブを着て暑さ対策。富士の名水や雪大福は補給係に預け、氷晶の小盾で氷っぽさを再現した。
エレェナは火傷防止の為、長袖のシャドウクロークを羽織っている。
全員、依頼人対策の男装のまま臨んだ前日とは、全くの別人だ。
勿論、水は大量に用意している。
用意は万全だ。
「それじゃ、念の為レジストサンズヒート☆」
念の為に耐日射をかけたエラテリスが先陣を切る。
続いてアーシャ、ミカエル、エレェナの順で洞窟へと向かった。
「‥‥私、また地味ポジだね。はは」
救護係のフィロメーラを残して。
恙無く最初の曲がり角までは到達。
厄介なのはここからだ。
「‥‥ここから先が暑いんですよね」
アーシャが汗を流しつつ、筒の水を頭から被る。
前日は皆、曲がって数分で耐えられなくなった。
しかし今日は、覚悟と準備が整っている。冒険者の腕の見せ所だ。
「火系のモンスターは、僕が引き受けますね」
「こう言う時、焔のウィザードは最高に心強いな」
エレェナの言葉にミカエルが朗らかな笑みを寄せ、いよいよ未知の領域へ。
徐々に壁がオレンジ色に染まっていく中――――
「わわわっ! な、何かな?!」
エラテリスの頭上から、赤いゼリー状の何かが落ちてくる!
ラヴァジェルと言う、通常は火山などに生息する不定形生物だ。
このメンツの力からすれば雑魚なのだが、厄介なのはダメージを与えると――――高温粘液が噴出される点である。
「へ?」
アーシャが氷の剣を突き刺した瞬間、その粘膜は周囲にくまなく噴出された。
「はう〜、気持ちいい〜、癒される〜」
再度外へと戻った冒険者達は、本日の成果をフィロメーラへ報告しがてら、やはりスノーマンのルカーにくっついていた。
特にアーシャは、至近距離で高温粘液を受けたので、スノーマンの冷気が身に染みる様子。
「火傷しなくて良かったよ〜」
エラテリスは氷晶の小盾で防いだ為に無傷だったが、それでも内部の熱さで大分参っていた。
「大分奥まで侵入しましたけど、まだ居ませんね‥‥さらりん」
「思った以上に心の傷が深いのかもしれないね」
ミカエルとエレェナが、ルカーの作った氷で体を冷やす中――――フィロメーラは1人、真面目な顔で洞窟の入り口の前に立っていた。
「フィロメーラ。どうしたんだい?」
「皆さんばかりに負担は掛けさせられません。私も行きます」
依頼主から支給されたイフリーテヘッドと火霊の指輪を装備し、フィロメーラは地図片手に洞窟へと向かう。
「いけない、フィロメーラ。君のようなか弱い女性が行く場所じゃない。火傷でもしたら‥‥」
「皆さんだって女性です!」
その言葉には重大な間違いがあったが、ミカエルが特に言及しなかったので、誰も何も言わなかった。
「では参ります! 待ってなさい、さらりん!」
フィロメーラは意気揚々と入って行った。
エレェナがそれを心配そうに見つめる中、その傍らでは、アーシャがルカーに抱きついたまま、その顔をはむはむしている。
「‥‥出来れば、食べないでやってね」
「はむはむ〜」
ルカーの顔が(×_×;)な感じになってる中――――
「だーーーっ! あっつーーーーーーい!」
洞窟の方から、怒号とも悲鳴ともつかない叫びがこだました。
翌日。
目や口や腕が大分下の方にズレて来ているルカーとフィロメーラに見送られ、冒険者達は再度『狂焔灼熱の洞窟』へと挑戦していた。
その名前に偽りはなく、奥に向かうにつれて幅は狭くなる一方、熱気は更に増し、冒険者達の体力と気力を容赦なく奪っていく。
更に、火のエレメントにとって住み心地がいい洞窟と化した事で、炎の形をしたモンスターが徐々に増えてきた。
「戦闘は問題ありませんが‥‥ふう、暑いですねぇ」
敵の吐く炎をファイアーコントロールやプットアウトで次々に無力化して行く中、その熱気を間近で浴び続けるミカエルの身体は、徐々に蝕まれていく。
それでも、火のウィザードとしての矜持が、ミカエルをこの場から退く事を許さない。
この熱との戦いは、ミカエルにとって自身の内部との戦いでもあった。
そして、かなり進んだ所で休憩の為に帰還。
「お疲れ様です。魔法の冷や水で涼んで下さい」
「ありがとうございます‥‥ふう」
太陽が照りつける中、アーシャがミカエルに頭から水を掛け、労っていた。
フィロメーラもルカーが作った氷を小さく砕き、水に浸し、その冷水をエラテリスの用意した布に浸して、冒険者達に配っている。
「きっと、もう直ぐだよ☆ 頑張ろうよ〜」
そして、エラテリスも富士の名水をミカエルに渡しつつ、太陽の扇子で扇いでいた。
「エラテリスちゃん、イメージ的に太陽はちょっと‥‥せめて流れ星の扇子にしとかない?」
「そそ、そうかな?!」
「大丈夫。涼しいですよ」
朗らかに笑うミカエルの傍ら、エレェナは大分出来てきた地図を眺めつつ――――小さく呟いた。
「次に潜る時に会えそうだね。火中の君と」
実際、エレェナの言葉は現実となる。
その根拠は、洞窟の幅にあった。
既に、サラマンダーが通れる幅としてはギリギリくらいになっていたのだ。
そして――――翌日。
入り口から歩いて2時間程の所、洞窟の最深部に、さらりんはいた。
「この子がさらりんさんで、間違いないです」
依頼主から聞いていた特徴を確認し、アーシャが断言する。
通常のサラマンダーよりやや小さく、尻尾の先に白い斑点がある。それがさらりんの特徴だった。
ちなみに、行き止まりの壁に頭を向け、冒険者側に尻尾を向けて座っているので、顔は見えない。
「可哀想に、こんなに怯えて‥‥怖くないよ、その顔を拝ませておくれ」
そんなさらりんに対し、まずエレェナがテレパシーを試みようと前に出た――――が、直ぐに引き返す。
「おっと危ない。いきなり話し掛けてはダメだったね」
「はい。取り敢えず、武装解除を。もし敵が襲ってきたら、魔法で対処しましょう」
ミカエルの言葉に他の冒険者達も同意し、武器は全て仕舞う。
そして丸腰のまま、改めて微動だにしないさらりんの前に立った。
引き篭もりのサラマンダー、さらりん。
彼が引き篭もってしまった理由と思しき出来事は、既に依頼主から聞いている。
それは――――
『今年の夏は暑かったでしょう? ワタクシ、思わず「熱いから近付かないで下さる?」なんて言ってしまったの』
と言う事だった。
この程度の事で、などとは言えない。自分の存在を否定されたようなものなのだ。
それを踏まえ、冒険者達は事前にさらりんの心を開く為の呼びかけ方を話し合っていた。
後は、その説得を実行するのみだ。
問題は、誰が最初に挑むかだが――――そこは火のウィザードであるミカエルに任せる事となった。
『さらりん、だね?』
ミカエルは何も持たない両手を広げながら、ゆっくりと近付いた。
同時刻。
木陰で待機中のフィロメーラは、となりのルカーと寄り添うようにして寝転んでいた。
「今回の依頼、成否がどうあれ一番の功労者はあなたよねー‥‥」
「♪」
ルカーはとても嬉しそうにしていた。
「おなか空かない? いいもの持って来ましたよ〜」
アーシャが差し出したさらりんの好物、鳥の丸焼きを差し出したものの――――全く振り向こうともしない。
後ろでは、その餌に釣られてやって来たモンスターを、エレェナがムーンアローでビシバし打ち落としていた。
「ダメです。ちっとも振り向いてくれません」
「困ったね」
戻ってきたアーシャに、エレェナが水を手渡す。
これで全員が一通り説得を試みたが、さらりんは全く動こうとしなかった。
そして、最初に挑んだミカエルはまだ少し落ち込んでいる。
「同じ火の眷属を説得できないなんて‥‥情けないです」
「し、仕方ないよ☆ さらりんさん、恥ずかしがり屋さんなんだよ☆」
エラテリスのフォローに、ミカエルは弱々しく微笑んでいた。
ミカエルは、出来るだけ怖がらせないように優しく語りかけたのは良かったが、心配を口にしたのが良くなかったようだ。
引き篭もりは、心配される事を忌み嫌う習性がある。
その他、懸案事項を聞き出そうとしたり、餌で釣ったりしたものの、それも効果なし。
結局この日は、粘りに粘ったものの、さらりんが心を開く事はなかった。
翌日。
冒険者達は更なる話し合いの元、再び洞窟内、最奥へと足を運んだ。
ちなみに今日はフィロメーラもつれて来ている。
「あの、本当にやるんですか‥‥?」
そのフィロメーラは、依頼主の屋敷にあった桶胴太鼓を手に持っている。
アーシャはフルートを、エレェナはリュートをそれぞれ手にしていた。
チククも、アーシャの頭上で小さな鈴を持っている。
そして、エラテリスは入念に足をストレッチしていた。
「では皆さん、宜しくお願いします」
ミカエルが指揮棒代わりのかんざしを掲げると――――そこから始まる、楽しい音楽と踊りの和。
うだるような熱気の中、演奏会が始まった。
唐突だが、ジャパンにはこんな神話があると言う。
洞窟に引き篭もった神様を出す為、その岩戸の前で様々な儀式を行い、興味を引いた結果、神様は出て来たと言う話だ。
古来より、引き篭もりへの対処法の一環として、成果を挙げている手法である。
『‥‥?』
演奏が始まって数分。
さらりんの尻尾がプラプラ動き、少しずつ体が動き出した。
「良いですよ! その調子です!」
ミカエルがそれを確認しつつ、指揮を振るう。
更に数分後、ついにさらりんがその顔を冒険者側に向けた。
「あ、アツイ‥‥もうダメ〜」
「頑張って、フィロメーラ」
弱音を吐くフィロメーラを、エレェナが励ます中――――
「げ、限界だよ〜」
エラテリスがぱったりと倒れてしまった!
「はう〜、大丈夫ですか〜」
慌てて駆け寄るアーシャですら、限界に近い。
この灼熱地獄の中、数分間踊り続けるというのは、過酷を通り越して無謀だった。
「兎に角、一刻も早く外へ‥‥くっ、こんな時に」
振り返ったエレェナが思わず顔をしかめる。
そこには、数多の炎系モンスターがうようよ湧いていた。
絶体絶命――――そう誰もが思ったその時。
『みんな、どいて』
突如、さらりんが立ち上がり、一歩、二歩と出口へ向けて歩き出す。
テレパシーでその声を聞いた冒険者達は、言われた通りに左右の壁に張り付いた。
その間隙を縫い、さらりんは出口へ向けて突進を始めた!
その体当たりに、待ち構えていた炎系モンスター達は皆、吸収されるかのように消えていく。
「おぉ‥‥」
ミカエルが感動しながら見つめる中、さらりんはモンスター達をなぎ倒し、洞窟の外へと駆け出して行った。
エラテリスを一刻も早く外へと導く為に――――
「‥‥へえ。意外と男気のあるサラマンダーだったんだね」
その翌日。
無事依頼を果たした冒険者達は、依頼請負事務所『PLF』へと赴き、デュオニースに最終報告を行っていた。
外界へと出て行ったさらりんを、グレーティアが感涙しながら迎え、一件落着。
エラテリスも軽い脱水症状で済み、水分補給とルカーの氷で直ぐに回復した。
めでたしめでたし。
「心配かけてゴメンね☆」
「無事でよかったです。それにしても、ルカーさんは大活躍でしたね」
「お役に立てて、本人も喜んでいたよ」
エラテリスとアーシャ、そしてエレェナが和気藹々と語り合う中、ミカエルはフィロメーラと談笑していた。
「珍しいサラマンダーの一面が見られて‥‥とても有意義でした」
「私もです」
そんな和やかな2人に、デュオニースがポツリと呟く。
「でも、ちょっと妬けるね。フィロメーラが俺以外の男と仲良くしていると」
「また所長は‥‥え、男?」
凍りつくフィロメーラに、ミカエルは穏やかに微笑む。
その微笑みが、フィロメーラを溶かす事は――――なかったとか。
『備考:パラの女性っぽい男性、アウト!』