【栄光のメニュー】求む、定番メニュー!
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:うのじ
対応レベル:フリーlv
難易度:易しい
成功報酬:0 G 31 C
参加人数:6人
サポート参加人数:2人
冒険期間:01月05日〜01月08日
リプレイ公開日:2006年01月16日
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●オープニング
グローリーハンド。
ここでは、多くの人々が集い、出ていっては、また集う。
皆が落ち着ける、楽しめる酒場だ。
今日も大勢の人が食事に、休憩に、おしゃべりをするために集い合う。
「久々に気の抜けたエールを飲んだのだ。たまに飲むとこの味も悪くないのだな」
しばらくキャメロットから出ていたのであろう一人の冒険者は、頼んだ『気の抜けたエール』を懐かしそうに口にする。
「いらっしゃい、ご注文は?」
「とりあえず『気の抜けたエール』ひとつ」
この男性は、おそらく、仕事を終わらせて疲れているのだろう。
何も考えずに、ほぼ条件反射のように『気の抜けたエール』を頼んだ。
「‥‥‥うーん」
酒場の女将兼看板娘(娘?)である、エリーゼが、眉を寄せて唸っていると、常連の客、一人が声をかけた。
「どうした、エリーゼ? 悩み事か?」
「ん? いやね。‥‥‥‥例えばさ、長旅から帰ってきたとして、うちの店に来て、コレを飲むと、食べると、帰ってきた、って実感できるのって、あるかね?」
「どうしたんだ、きゅうに。‥‥‥そうだな、『気の抜けたエール』かな?」
「‥‥やっぱり」
もちろん、その他のメニューを注文する人だって大勢いる。
しかし、ほっとする味、定番の味が『気の抜けたエール』だ、という事態を打破しようと、エリーゼ・サルーンは、立ち上がった!
目指すは冒険者ギルド!
グローリーハンドの定番メニューについて、冒険者の知恵を借りるために!
お客さんが求めている、『これを飲むと(食べると)帰ってきた』と思えるメニューを求めて。
●リプレイ本文
●楽しいお料理タイム
ある晴れた日、グローリーハンドから依頼を受けた冒険者たちは、それぞれのメニューを完成させるべく、忙しく動いていた。
「エリーゼさん、酒場にある材料は使ってもいいのかな?」
リィーナ・ソラ(eb3955)が尋ねると、酒場の店員であり、この依頼の依頼主でもあるエリーゼが答えた。
「ん? 何が欲しいんだい? 言ってごらん、たいていのものならここにあるから」
「ええ、朝食とかに軽く食べれるようなパンを‥‥」
リィーナがそう言いかけたとき、パンという単語を聞いて、黒ずくめの一人の男が反応した。
「パンなら任せておけ!」
びくっとするリィーナを気にせずに、そう言うと、任せておけというサインをビッと前につきだしたのは黒いパン屋さん、デュノン・ヴォルフガリオ(ea5352)。
「あ、デュノンさん。実は、俺も、パンを作ろうと思ってるんだ。イギリス風のせんべいを」
パン万歳のデュノンに、声をかけたのは新羅誠輔(eb1002)だった。
「センベー?」
「ああ、こっちでなじみ深いパンで、おやつにもつかわれていて‥‥‥」
誠輔の言い出した単語に、首を傾げるデュノンだったが、パンと言われては、捨て置けない。
必死に誠輔の説明に耳を傾ける。
「‥‥‥なるほど。二度焼きのパンか。保存食や子供のおやつにつかわれている、あれだ。ビスケットだな」
「うん、それそれ」
大きく首を縦に振る誠輔。
「それに、籤とかをいれれたらおもしろそうじゃない? あと、保存食よりも、ハーブを練り込んでやや甘めにして、形にもこだわりたいんだ」
相手に言いたいことが伝わり、安心した誠輔は、さらに熱を込めて料理を説明していく。
一方で、バンバンと音を立てているのは、ローラン・グリム(ea0602)だ。
手に入れた牛の肉を叩いて柔らかくしていた。
本当なら、馬と鞍の間にいれて輸送するという手を使いたかったのだが、時間が無かったのだ。
ローランは、叩いた肉を、気の抜けたエールに漬け込んでいった。
同じくサリュ・エーシア(ea3542)もエールをつかった料理のようだった。
サリュのほうは、肉を軽く炙り、そしてその他の材料とともに鍋に入れていく。
そして、気の抜けたエールをその中に入れていった。
「‥‥味付けって、俺、よくわからないな。おーい、デュノン、パンじゃないんだけど、教えてもらえないだろうか?」
ローランが少し離れた場所で、誠輔の話を聞いていたデュノンに話しかけた。
「パンだけじゃない、他の料理も作ってやんぜ! 達人の別格のおおか、ゲフンゲフン、包丁捌きを見せてやるぜぇ!!」
意気込むデュノンに、申し訳なさそうに、サリュが答えた。
「‥‥ごめんなさい。もう、あとは味付けと煮るだけなの」
「‥‥そ、そうか。‥‥大丈夫だ。俺は煮るのも達人だ」
一瞬凹んだデュノンはすぐに立ち直った。
「そういえば、デュノンさんは、何を作るんですか?」
横で観ていたノリコ・レッドヒート(ea1435)が、手伝いばかりで何もしてないように思えるデュノンに尋ねた。
「‥‥‥すっかり忘れてたぜ! サリュ、煮るのは、お前に任せた!」
「はい、わかりました」
颯爽と自らの調理スペースに戻っていくデュノンに、サリュが笑顔で答えた。
ノリコの方はというと、リィーナとその友人に取ってきてもらったハーブとにらめっこをしていた。
時期的な問題だったのか、それとも、植物についての知識が問題だったのか、ともかく、ハーブは少量しか手に入らなかったのだ。
「これじゃあ、量が少ないよね。安くて、しかもお好みで味を調整できるようにするのがしたかったんだけど‥‥」
悩んでいるノリコにリィーナも加わり、二人で悩みつづける。
そこにやってきたサリュ。
「ねぇ、暖かいミルクを入れて、ミルクティーっていうのはどうかな? 優しい香りと味が気持ちを癒してくれると思うわ」
サリュの言葉に納得するノリコ。
「そうね。蜂蜜とかで甘さの好みを調整するよりも、その手があったわね。サリュ、ありがとう」
●もっと楽しい試食タイム
和気藹々と料理をしていたためか、楽しい雰囲気で進んだ調理の時間。
それもおわり、それぞれの料理が完成した。
そして、残るは、もっと楽しい雰囲気が予想される試食タイムだ。
テーブルの上に並んだ料理の数々。
それぞれが説明をしていく。
まず、お披露目されたのが、リング状に焼かれた菓子パン。
リィーナの作品だった。
「‥‥どう、かな? 弾力性のある歯ごたえが出れば良いんだけど」
おそるおそる皆の反応をみるリィーナ。
「おいしくできてるよ。見た目も、二種類のジャムが、色鮮やかでいいね」
一口食べたエリーゼが、リィーナを安心させるように微笑む。
「うん。お菓子系かもしれないけど朝食にも悪くないと思うしお茶とも合うと思うんだ」
それに安心したリィーナは、説明を付け加え、つられて微笑んだ。
次に登場したのは、ビスケット、二度焼きのパンだ。
並んだ異形のビスケットを前に、一同は、あっけにとられる。
「‥‥えっと、これは星を形取ったんだね。こっちは?」
「こっちは、犬。それで、こっちは猫だよ。あと、こっちは花」
得意げに言う誠輔の説明で、やっと納得する一同。
「なるほどね。ビスケットを可愛い形にしたのか。子供のおやつとかに喜ばれるかもしれないね」
「うん、中に籤を入れるのは止められちゃったけど、甘めにつくってあるから、保存食とは比べ者にならないくらい美味しいよ」
可愛い形に出来ていたのかは別として、エリーゼも納得したようだ。
さらに次にでてきたのは、これまた、異形のパンだった。
「これは?」
尋ねられたのは、当然、デュノンだ。
「エリーゼだ!」
「え?」
「つまりだ。誕生日限定のオーダー注文の、本人の顔を描いたパンは、どうだろう? ってことだ」
「あたしってこんな顔だっけ?」
笑顔の中に恐怖を感じるような、そんな笑顔で尋ねるエリーゼ。
緊迫した空気が一帯を支配する。
「‥‥ふぅ。さっきのビスケットといい、このパンといい、こういうのを作るとすると、あたしも美術の練習をしなくちゃいけないね」
一瞬とも永劫とも感じられる時間が過ぎた後、苦笑するエリーゼに一行は救われたように息をつく。
「‥ま、まぁ、これからだ。他にも色々作ってみたんだ」
フォローするように、別の料理を出していくデュノン。
出されたのは、ボルシチのパイ生地包みスープと、アップルパイをパンで包んだアップルパンだった。
「あんな短時間で、よくまぁ、手際よく‥‥。味のほうもいいし」
エリーゼに感心されると、軽くポーズを取り答えるデュノン。
「フ、伊達に一人暮らしで家事ってねぇぜ!」
「‥‥いいひと、早く見つかるといいね」
誰かがよけいな一言を言った。
再び緊迫した空気が一帯を支配した。
次に出されたのは、二つのスープだった。
ローランとサリュ、それぞれのエールを使った煮込みだ。
「気の抜けたエールをこういう風につかったんだね」
言いながらもエリーゼは味を確かめる。
「味もわるくないね。ローランのはちゃんとお肉もある程度柔らかくなってるし、サリュのほうは、素朴な味がでてるね」
「もっと柔らかくする方法を、考えてあったんですけどね」
「煮込んであるから、お酒が苦手な人でも子供でも食べてもらえると思うわ。それにあったかいお料理って身も心もホッとするって思わない?」
二人の言葉に頷くと、エリーゼは、また、もう一口、口にする。
「たしかに、寒い時期にこういうのがあるとホッとするね」
最後に出されたのは、ハーブティー。
横には、ミルクが小さな入れ物に入って添えられていた。
そして、ノリコが説明をはじめる。
「やっぱり飲み物だと思うんだよね。ハーブティーのハーブは、道ばたでは簡単には手に入らないかも知れないけど、修道院とかなら育ててるって言うし」
「ミルクを入れる量によって、味が変わるもんだね。 確かにハーブティーもほっとするよ」
エリーゼも頷きながら、ハーブティーを飲み、目を閉じ軽く息をついた。
「‥‥さて、今日はみんな、ありがとう。いろいろ参考になったよ。残すのはよくないし、あとは、みんなで、テーブルの上の料理、片づけようか」
味見はおわった。
後は気楽な試食タイムだ。
美味しい料理に舌鼓を打ちながら、それぞれの料理に感想を言い合う。
グローリーハンド、それは、皆の憩いの場。
なぜなら、全てはお客さんの笑顔のために、という思いで、日々努力しつづけるからだ。
彼らの努力は、今日も続いていく。