【栄光のメニュー】秋の味覚、リンゴを救え

■ショートシナリオ&プロモート


担当:うのじ

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 71 C

参加人数:5人

サポート参加人数:2人

冒険期間:09月17日〜09月23日

リプレイ公開日:2005年09月28日

●オープニング

「まったく、あの村は呪われてたりするのか?!」
 ここは、キャメロットの酒場、グローリーハンド。
 注文をすますなり悪態をついたのはバリーズ商会のガレス・バリーだった。
「どうしたんだい?」
 声をかけたのは、グローリーハンドの従業員であるエリーゼ・サールンだ。
 注文の品のエールを持ってきたついでの台詞だったが、誰かに愚痴を言いたかったのだろう、流れるようにガレスが口を動かした。
「あ、ああ。聞いてくれよ。リンゴを買いつけるつもりだったのに、そいつが猿に襲われるようになってしまったんだ。まだ被害は少ないが、このままじゃ、収穫できなくなってしまう」
 そう言うと、エールをグイッと飲んだあと、頭を抱えたガレス。
「そういえば、そろそろリンゴの季節だったねえ。うちもそろそろ仕入れなきゃいけない所だよ。あんたの所から買ってもよかったんだけど、収穫できないんじゃしょうがないね」
 エリーゼの慰めの言葉を聞き、頭を抱えるのをやめるガレス。
「そうか、ここが買ってくれるのか。大口の買い手が一つ増えるなら、冒険者を雇っても十分にお釣りがくる」
 数秒前とはがらりと変わって上機嫌になったガレスを呆れたように見ながら、エリーゼが言う。
「相変わらず、ゲンキンだね。まあ、リンゴの出来次第で買ってもいいけどね。しかし、猿を相手に冒険者とは、少し大げさにしすぎじゃないかい?」
 もっとも疑問に、真面目な顔をしてガレスが答える
「いや、見てきた部下の話しでは、白くて長い毛皮の猿で体つきも大きいうえに、棍棒までもってるそうだ。たぶん、サスカッチというモンスターだと思うんだ」
「それじゃ、本当に冒険者の出番じゃないか。さっさとギルドで依頼を出してきなよ。ああ、そうそう、ついでにリンゴの料理で食べたい物を聞いといておくれよ。最近、みんな頑張ってるからね。好きな物を食べてもらいたいじゃないか」
「リンゴの商品か。‥‥アップルパイなんでどうだ?」
「あんたの意見じゃなくて、冒険者の意見が聞きたいんだよ。うちのお得意さまだからね」
「いや、アップルパイは好物なん‥‥」
「ほら、善は急げだ。行った、行った」
 アップルパイと主張し続けるガレスに苦笑しながら、他の客の注文を取りに向うエリーゼ。
 あきらめたガレスは、残ったエールを一気に飲み干し、冒険者ギルドに向かったのだった。

●今回の参加者

 ea5029 ソフィア・フェイスロッド(29歳・♀・クレリック・人間・イギリス王国)
 eb0697 大鷺 那由多(37歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 eb2215 朝瀬 凪(29歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb3512 ケイン・コーシェス(37歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 eb3518 シェラフィータ・ザインベルト(35歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)

●サポート参加者

獅臥 柳明(ea6609)/ 蒼劉 飛翁(ea7364

●リプレイ本文

●サスカッチを退治しよう
「えーと、白い猿は、毎回、こっちの方からやってきますね。棍棒を持って、のしのしと歩いて来るんですよ。それで、こう、ひょいっと枝に手をかけて、スルスルするっと登っていくんです。登られると、上から襲われてしまって、もう、大変で‥‥」
 朝瀬凪(eb2215)の質問をうけて、よけいなことまでしゃべる村人さんを遮り、ソフィア・フェイスロッド(ea5029)が再び質問する。
「ところで、サスカッチの数や時間帯はわかっているのですか?」
「分かってます。数は、2匹です。最初は1匹だけで、それも傷ついてふらふらしていたんですよ。それで、まぁ、1匹だけなら、と思っていたんです。そしたら、今度は別のが出てくるようになって。2匹とも最初にしていた怪我はもうすっかり治ってるらしくて、憎たらしいったらないですよ。だいたい‥‥」
「もうすでに味をしめているのか」
 軽くため息をつく凪。
「それで、時間帯の方は?」
 脱線しつつある話しを、ソフィアが元に戻す。にっこりと上品な笑顔を浮かべているが、なぜか有無を言わせない力があった。
「そ、そうですね。夕方ぐらいに来ます。だいたい、私たちが帰る準備をしだしてからです」
 圧倒されたのか、今度は無駄口を聞かない村人さん。
「ありがとうございます。ところで、罠を仕掛けたいのですが、地面を掘ってもかまわないでしょうか?」
「樹に気をつけてくれれば、まぁ、いいですけど。穴を掘るなら、根っこに気をつけてもらえれば」
 テキパキと話しを進めていくソフィア。
 地面を掘ってもいいと許可がでたところで、んー、と背伸びをしたのは大鷺那由多(eb0697)だ。
「じゃあ、あたしは穴掘りの準備をしてくるよ。道具を貸してくれるとうれしいんだけど?」
 軽くあくびを噛みしめながら尋ねてくる那由多に、ついOKをだしてしまった村人さん。
 そんな村人さんは、道具を取りに行く那由多を何故か目で追ってしまいながらも、ソフィアと凪の質問に答えていく。

 那由多が穴を掘ろうとすると、ケイン・コーシェス(eb3512)も近くにやってきた。
「俺がやるよ。慣れてるし、こういう力仕事の穴掘りも俺の領分だろうからな」
「ありがと。うーん、でも、あたしもやるよ。穴を掘るぐらいしか手伝えないし。みてるだけっていうのは暇だからね。一人より二人のほうが早く準備も整うだろうし」
「ああ、たしかにそうだな。じゃあ、ここを掘っててくれ。俺は近くに別の罠も作っておくから。余分に穴を掘っておきたいしな」
「余分の穴?」
「ああ、気にするな。作業、頑張ろうな!」
 ケインと那由多が、穴を掘り始める。もちろん、リンゴの樹には細心の注意を払ってだ。
 二人が分担で作業をしていると、凪とソフィアが、それぞれスコップをもって合流し、罠作りを手伝い始める。
「ケインさん、罠はこのような感じで宜しいのですか?」
「それでバッチリだ! 樹に傷をつけないように罠を張るとなると、凝った罠はむずかしいからな。これでいいだろう」

 夕刻、農作業の方は早めに中断してもらい、先に帰ってもらっていた。
 残っている4人は、ソフィアと凪、那由多とケインに別れて、罠の手前でこっそり待ちかまえる。
 しばらくして、サスカッチがあらわれた。
 まず、1匹。そして遠くのほうからもう1匹。
 聞いていたとおり2匹だ。

 最初に来たサスカッチが、のしのしと歩いてくる。
「まずいね」
 呟いた凪は、疑問の視線を送るソフィアに答える。
「‥‥このままだと、片方に逃げられるよ」
 そう言うと、ふっと腰を上げ、即座に動ける体勢をとる。
 サスカッチは、無警戒に近づいてきて‥‥穴に落ちた。
「今ですね!」
 すかさずソフィアが、持っていた網を、バサァ、と上から被せる。
 凪は、ギャギャとわめく、穴の中で網を被せられたサスカッチを一別すると、立ち上がって残りの一匹に向かって走り出した。
「あんまりやりたくなかったんだけどね、村の人が迷惑している‥‥すまないね、いくよ」

 もう一匹のサスカッチは、穴に落ちた仲間の姿をみて、一瞬とまどいながらも、逃げようとする。
「まずいね」
 先ほどの凪と同じ台詞を言ったのは、那由多。
 那由多も、すぐに駆け出したが、間に合わないように思えた。
 そこに吹く、鋭いの風刃。
 風の刃は、逃げるサスカッチの目の前を通過し、サスカッチの足を止めた。
 凪が後方から術を放ったのだ。 
 術の援護もあり、サスカッチに追いついた那由多に、サスカッチが棍棒をブンブンと振るう。
 那由多は、棍棒の攻撃をうける事はあるが、うまくいなし、深手をおわないようにしていた。
 ダメージを与えることではなく、挑発をし、相手を引きつける戦いに終始していたのだ。
 ムキになっていたサスカッチが体勢を崩す。落とし穴を踏んでしまい、片足でなんとか落ちないよう踏ん張っている。
 罠にかかった所を見逃さず、今まで控えていたケインが、剣を構え、突撃を仕掛ける。
 ケインの剣が深々と胸を貫いた。
 サスカッチは、さらに、那由多の連撃と、凪の風の刃を喰らい、そのまま穴の中に落ちていった。

 そして一行は後かたづけをはじめる。
 2匹のサスカッチは、止めを刺され、余分に掘っていた穴、リンゴ園から遠くの場所の穴に、丁寧に埋められた。その時、ソフィアが軽く祈りを捧げ、ケインもそれに習った。
 気をつけてはいたものの、多少の傷をつけてしまった樹には、ソフィアが癒やしの魔法をかけた。
 落とし穴も埋め終わり、全てが終わったのを確認して、一行は帰路についた。


●リンゴ料理を退治しよう
 イギリスはキャメロットの酒場。グローリーハンドのエリーゼ・サールンに迎えられた一行。
「おつかれさま。みんながもってきてくれたリンゴ。さっそく、食べてもらうわね。何かリクエストはあるかしら?」
 エリーゼの質問に、それぞれが答える
「アップルパイや、コンポート‥‥出来る限り、色々なリンゴ料理を味わいたいです」
「リンゴを使った料理‥‥料理ねぇ私は特にないんですよね、すみません」
「あたしは、アップルパイの作り方も知ってるよ」
「アップルパイは、すでに出てるから‥‥生絞りのジュースとかはどうだろう? 蜂蜜を加えたりしてさ」
 聞いていたエリーゼは、分かった、作ってくるよ、と席を立ち、続けた。
「作ってきたら、味見もして貰うからね。どれをメニューにのせるか、参考にしたいから」
 そして、ふと気が付いたように、那由多をみる。
「あんた、アップルパイ、作れるんだってね。あたしの作り方と違うかもしれないから、ちょっとおいでよ」
「あたし?」
 少し驚いた那由多の手を取るエリーゼ。
「そうよ。味付けとか、色々な好みがあるだろうから、参考にさせてもらいたいのよ。お礼は、後で秘密のリンゴのお酒、ごちそうしてあげるからさ。ね?」
 秘密のリンゴのお酒という魅惑の誘惑をうけた那由多は、抵抗をせずに厨房に引きずられていった。

 しばらくして、いっぱいのリンゴ料理が並べられるテーブル。
 ひびくエリーゼの台詞。
「さぁ、食べて、感想を聞かせてよ。遠慮しないでいいからね。味付けを変えたやつが、まだまだ来るんだから。一番美味しいのをメニューにしたいからね」
 リンゴ料理退治は、二つだけ、とはいかないようだ。