大いなる野望 −結成、悪滅し隊−
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:うのじ
対応レベル:1〜3lv
難易度:普通
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月10日〜09月15日
リプレイ公開日:2005年09月20日
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●オープニング
薄暗い部屋の中に男が二人。
一人は、やせ形の背の大きな男で、ローブを身にまとっている。
もう一人は、青年で、まっすぐな瞳が特徴的な、金髪碧眼の男。
二人が同じ身長に見えるのは、ローブの男の腰が曲がっているせいだろう。
「機は熟した‥‥」
ローブの男はそう言うと、机の上に置いてあるクルミにむかって、ハンマーを振り下ろした。
ゴン!
ハンマーはクルミにかすりもせず、机に命中した。つまり、はずれた。
「うわ、かっこわる」
ぼそりと呟く青年を無視して、ローブの男は続ける。
「この国を手中に収める時が来たのだ! 聖杯だなんだと騒ぎおって、そのために、治安維持がお留守になっていることに、奴らは気が付いておらん。そんな今こそ、現時点では突発的に起きている犯罪を、組織的に配置することによって、民の不満を増大させ、現体制を滅ぼす好機!」
「いや、でも、それって、俺達が犯罪者にならないか?」
青年の一言を受け、一瞬言葉に詰まるローブの男。
「‥‥‥‥なぁに、心配はいらん。悪を統治するのは我々ではない。外部の組織にやらせるのだ。名前は‥‥思いついた! いや、すでに考えておいたのよ。悪に滅私奉公する部隊! その名も、悪滅私隊! これ以上にふさわしい名前があろうか!」
不安げな青年を一笑するように、迷いなく言いきるローブの男。
「お前の不安も分からなくはない。だが、時は待ってはくれんのだ! 計画はこうよ。まず最初に、悪人どもに、悪滅私隊の存在を知らしめなくてはならん。手始めに、近くの山賊団を強襲する。あいつら、規模は小さいが、リーダーがちょっとかっこいいからって図に乗りすぎ。山賊団を成敗した後、悪滅私隊の存在を告げる、というわけよ! おっと、わしとお前、構成員2人の我が組織では一見不可能に思えるこの所行。‥‥‥‥だが、心配ご無用! 完璧な解決策をわしは思いついた」
大きな石造りの建物の中にあって、適度に光りが入ってくるのは、さすが、という所だろう。
建物の中は、様々な人が行き交い、壁には依頼張り出されている。
ここは、冒険者ギルドなのだ。
「アルベルトさん、依頼内容を確認します。最近出没している山賊団を退治する、と言うことでよろしいですね?」
受付の女性は、身なりの良い青年の依頼とあって、上機嫌で応対していた。
「名称は‥‥悪滅し隊。悪を滅ぼす部隊ですか‥‥」
依頼要点をまとめていく受付嬢に、アルベルトと呼ばれた男は何か言おうとするが、
「ちょっと過激な気もしますが。‥‥私、こういうの好きです。アルベルトさんがおっしゃっている山賊団の話ですが、冒険者ギルドにも来てますね。襲われて積み荷を奪われてしまったために、討伐依頼を出そうかと、ある商人さんが言っていたところです」
続けて発せられた言葉と、向けられた笑顔に、何も言えなくなった。
アルベルトの沈黙を肯定と受け取ったのだろう、受付嬢は次々と質問を続ける。
「えーと‥‥‥退治した後、悪滅し隊のメンバーとして、好き勝手はさせない! と警告をするわけですね。と言うことは捕らえたほうがいいのでしょうか?」
「えっと、それは任せます。無理をして怪我でもしたら大変ですから」
「優しいんですね。でも、その点は大丈夫だと思いますけど。みなさん、冒険者なわけですから。いちおう、任せると、書いておきますね。えーと、アルベルトさんは参加されないんですよね?」
「ごめんなさい。ちょっと、用があって。依頼人も同行したほうがいいですよね」
「いえ、大丈夫ですよ」
受付嬢は、困った顔で謝るアルベルトを励ますように優しい笑顔で答えた。
「では、依頼書は完成しました。後で張り出しておくので、安心してください」
●リプレイ本文
大いなる野望 −結成、悪滅し隊−
●宣言は誰が言う?
「名乗り挙げは自身を表すもの‥‥打ち倒した者へ追打ちに使うのはどうもな‥‥」
目的地へ向かう途中、街道を歩いているので、人通りがまばらにならないかぎり、山賊の襲撃はない。
今は、のんびりしてもいい時だった。
先ほどの台詞は八田光一郎(ea6140)のものだ。ジャパン出身の彼は、名乗りは最初に、と言うのが身体に染みついているのだった。
「宣言は私の性に合わんな、申し訳ないが」
フレイア・エヴィン(eb2621)も同じだった。
フレイアはラテン語を話すため、ケイン・コーシェス(eb3512)が常に通訳をしていた。
「肩書きに頼るのは‥‥でも治安維持に繋がるなら必要と言う事かしら‥‥」
アリスティア・アールマティス(ea2936)も、あまり乗り気ではなかった。肩書きよりも実力を重んじているからだ。
「そうか? あくめっっっっしたい! いいじゃないか!」
反して、ただ一人乗り気なのは、ケインだった。
「俺としては、悪滅隊のほうが語呂がいいと思うんだがな」
「めっっのタメがいいんだよ。それに悪者を退治するんだ。いいじゃないか!」
「それに関しては異存はない。悪を許してはおけないからな」
「悪さをするのだから、罪は償って貰わねばな」
宣言はともかく、山賊退治に関しては、団結しているのだった。
●出会いは突然に
日が沈むのが早くなってきた季節。
夜が長く感じる。
アリスティアを除く3人で交代の番をしながらの野営も終わり、夜が明ける。
そして、また出発する。
遭遇は、出発して、すぐのことだった。
「‥‥見られているな。朝早くからご苦労なことだ」
フレイアが歩きながら呟き、皆に合図を送る。
前方には、道の両端に二人ずつ、山賊が潜んでいた。彼らは、隠れているつもりなのだろうが、気配を隠しきることはできずにいたのだ。
前を通り過ぎた、その時、山賊達が、有無を言わさず襲い掛かってきた。
「集中‥‥収束‥‥ウォーターボム!」
襲撃を十分予想していた一行は、素早く対応する。
まず、アリスティアの命により生まれた水の塊が、右側に潜んでいた山賊達に命中し、そこに光一郎が突撃する。彼は、二本の刀のそれぞれの特性を生かして攻撃をしかける。
「どりゃぁっ!」
左の短刀から突きを繰り出し、相手の体勢が崩れた所へ、右の日本刀の袈裟斬りが命中した。
左側の山賊達は、ケインとフレイアが応戦した。
ケインの突撃を受け、傷を負ったところに、フレイアのクルスソードが繰り出される。
実力差はもとより、奇襲の失敗もあり、優劣はすぐにきまった。
「さて、アジトの場所を教えてもらおうか」
まだ息のある山賊を捕らえ、ケインが尋ねる。
最初は黙りを決めていた山賊だったが、しだいに、質問に答えていく。
アジトの大まかな位置がわかった後、アリスティアが尋ねた。
「商人の積み荷は無事かしら?」
●強襲の山小屋!
一行は、ロバや馬を安全なところに避難させたあと、捕虜にした山賊から聞いた話の通りに進んでいった。
そして、目の前にでてきたのは山小屋。
ほとんど人が来ることがないはずの場所にもかかわらず、なぜか見張りがいる怪しい山小屋。
山賊のアジトに間違いがなかった。
「よし、じゃあいくか」
堂々と進んでいく一行。
「お前達、何者だ!」
質問ではない、恫喝に近い見張りの声に対して、捕虜にした山賊を地面に転がす。
「!! おまえら! 敵だ! 敵襲だ!」
事態を理解した見張りの声に、中から、慌てて飛び出してくる山賊たち。
リーダーとおぼしき者はすぐにわかった。
もとは美しかったであろう長髪の黒髪もくすんでしまってはいるが、顔立ちが他の者と違っていた。そして、身につけている物も。
手斧や、ショートソードと言った得物をもつ部下とは違い、スラリとしたロングソードを手にしている。
「よし」
敵の全員が揃ったのを見計らい、ずずぃと光一郎が前に一歩進み出る。
「我が名は光一郎‥‥爆熱の武人、八田光一郎! 参るッ!」
高らかに宣言したあと、二本の刀を抜き放つ。
光一郎の名乗りに一瞬あっけにとられたものの、戦闘は激しいものとなり、人数において少ない冒険者たちは、気を抜けない戦いになった。
フレイアは攻撃ではなく、ミドルシールドで防御を重視する戦いをしていた。
そして、光一郎も大振りが目立ち始める。
じりじりと下がり、背中を合わせるように構える二人。
「へへへ」
笑みを浮かべながら、二人を取り囲むように近づいてくる山賊たち。
輪が、小さくなってきたところで、フレイアと光一郎は軽く目を合わせ、輪から抜けることのみを優先させ、ダッシュをする二人。
「今まで犯してきた罪、償ってもらうぞ!!」
フレイアの一言と重なるもう一つの声。
「氷原を駆ける凍てつく風‥‥アイスブリザード!」
アリスティアの手から氷の吹雪が放たれた。
扇状に広がっていくそれは、輪を作っていた山賊達を飲み込んでいった。
「っと、俺まで巻き込むな」
僅かに逃げ切れなかった光一郎の苦情もどこ吹く風、涼しげに聞き流すアリスティア。
体勢を崩し、怪我を負った山賊たちに、フレイアは今度は攻勢にでる。
防御は盾の性能にまかせ、クルスソードを使い、攻撃に集中する。
重装備のため、一撃一撃と単発になってしまうが、しっかりと敵に斬りつける。
「てやぁっ!」
光一郎は、巧みに、短刀の突きと、日本刀の薙を使い分け、的確に攻撃を加える。
手下たちをフレイアと光一郎が相手にしている間に、山賊のリーダーに突撃をかけるケイン。
一撃の威力をました渾身の一撃だったが、うまく間合いをとられ、かわされてしまった。
リーダーの構えは、西洋の構えでもあり、東洋の構えでもあった。お互いが混ざり合い精錬されつつある型だった。
ケインの構えは、イギリス伝統の構え。
バランスを重視するケインと、手数で圧倒する山賊のリーダー。
戦いは、間合いが近すぎるため、ケインが得意とする突撃が使えない分、不利にみえた。
しかし、ケインは、勝利を確信した敵の一撃にあわせて、鋭い突きを放つ。
お互いの剣が交錯する。
敵の剣がケインに突き刺さった。が、相手にはそれ以上に深くケインの剣が突き刺さっていた。
●輝け! 勝利の大宣言
「‥‥これが、商人達の積み荷ね」
アリスティアと光一郎は、山小屋の中に入り、奪われた積み荷を探していた。
奪われた積み荷をギルドに渡して、商人たちに返して貰うためだ。
「これで多少は報酬も上がるといいのですが‥‥研究をするにも先立つものが必要ですから」
「そうなるといいな。荷物は、馬に積むからだいじょうぶだろ。貸しな」
そういうと、光一郎は、荷物をまとめて持ち上げた。
「もう、無いみたいね。戻りましょう」
アリスティアと光一郎が外へでると、まだ息のある山賊たちが、ロープで縛り上げられ、まとめられていたところだった。
フレイアの癒やしの魔法により回復したケインが、堂々と登場し、同じくロープで縛られているリーダーを足蹴にし、宣言する。
「いいか、おまえたち! この悪滅し隊がいる限り、お前たち悪者の思うようにはさせん!」
「あく‥‥めっしたい?」
「そうだ! 悪を滅する正義の味方! お前達を成敗するものだ! 覚えておけ!」
‥‥さて、本当に正義の味方なら足蹴にするのはどうだろう、と言った疑問が有るかも知れない。
しかし、そのような些細な問題など、どうでもよいのだ。
真に重要な出来事とはなにか! それは、そう! いま、ここに、悪滅し隊が結成された、ということだ!