【ブラしふ団の挑戦!】いたずら放題への道

■ショートシナリオ&プロモート


担当:うのじ

対応レベル:フリーlv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 39 C

参加人数:8人

サポート参加人数:3人

冒険期間:10月29日〜11月01日

リプレイ公開日:2005年11月07日

●オープニング

 それは、ハロウィンも近いある日、学生食堂で突如産声を上げた。
「我々は、一年間待ったのだ!」
「いまこそ、我らシフールの力を、奴らに思い知らせてやるのダ!」
 何人かのシフールが集まって、そんな声を上げている。皆、腕に黒い腕章を付けていて、それには『BS』の文字が躍っている。
「とりあえず、どうすれば困ると思うのだ?」
「もうすぐハロゥインだから、衣装がなくなったら困ると思う」
「よし、それでいこう」
 なにやら、悪巧みの相談をしているようだ。と、そこへギルドの受付嬢が、お昼を食べに来る。
「あのー、ここ座って良いですか?」
「うん、いいよー」
「どうぞどうぞ」
 悪巧みをしている割には、ずいぶんフレンドリィである。にこやかにそう答えて、席を譲るシフール達。
「では、決行は数日後に!」
「おー!!」
 盛り上がった彼らが、拳を突き上げたその時だった。
「わうっ」
「わぁぁぁ。お前はいいんだってば! きゃあああ」
 一緒にご飯を食べていた、ペットのコリー犬が、『僕も仲間に入れてー☆』とばかりに吠え、辺りは大混乱。
 こうして、なんだかとっても微笑ましい悪の秘密グループが発足するのだった。


 ドン、とテーブルの上に置かれたのは、大きな袋。
 必死でもってきたシフールは、へへん、と胸を張った。
「どうしたんだよ、これ」
 一人が尋ねると、彼は中を観るように促す。
 袋を開けてみると、中には一杯のお菓子、お菓子、お菓子。
「おおーー、お菓子だー」
 なぜか歓声が上がった。
「でも、なんで? こんなにあると、ちょっと食べきれないよ」
 さっそくお菓子を摘みながらの質問に、持ってきたシフールは、もう一度、胸を張る。
「ハロウィンが終わるまで、街中からお菓子を無くすんだ!」
 衝撃的な宣言に、一瞬静まり返った後
「えーーー?」
「なんでー?」
「お菓子美味しいのにー」
 不満の声があがった。
「俺は考えたんだ。‥‥いいか? ハロウィンで、お菓子か、いたずらか、選んでもらうだろ?」
「うんうん」
「そうそう」
「もし、その時、お菓子を選ばれると‥‥俺達はいたずらが出来ない!」
「はっ! そうか!」
「たしかに!」
「だろ?」
 彼はさらにもう一度、胸を張った。
「だから! お菓子を買い占め、ハロウィンが終わるまで、街中からお菓子を無くすんだよ!」
 先ほど、不満の声があがった宣言だったが、今度は歓声が上がった。
「おおー! 賢い!」
「偉い! すごい知能犯だ」
「よーし、みんな! この世のお菓子をすべて手に入れるぞ! そして、ハロウィンはいたずらし放題だー!」
「おーーーーー!」

 こうして、犬にまたがったシフールたちによる、お菓子の買い占めがはじまったのだ。

●今回の参加者

 ea0110 フローラ・エリクセン(17歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea0448 レイジュ・カザミ(29歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea0637 皇 蒼竜(32歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1115 ラスター・トゥーゲント(23歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea2538 ヴァラス・ロフキシモ(31歳・♂・ファイター・エルフ・ロシア王国)
 ea3777 シーン・オーサカ(29歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea4675 ミカエル・クライム(28歳・♀・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
 eb0660 鷹杜 紗綾(28歳・♀・志士・人間・ジャパン)

●サポート参加者

ミリランシェル・ガブリエル(ea1782)/ ミィナ・コヅツミ(ea9128)/ 紗夢 紅蘭(eb3467

●リプレイ本文

●失敗しないお菓子作り
「ふぅ、運ぶだけで一苦労やわー」
 そういいながら、シーン・オーサカ(ea3777)は大きな袋をテーブルの上に、ドンと置いた。
「本当だね。マーケットからここまでくるだけで疲れちゃった」
 鷹杜紗綾(eb0660)も答えながら、同じように袋をテーブルに置いた。
 共に、袋の中身はお菓子の材料だ。
「おつかれさま。後は僕に任せて、休んでてもいいよ」
 二人に優しい言葉を掛けたのはレイジュ・カザミ(ea0448)。
 レイジュは、マーケットで買ってきたハーブティを二人にいれたあと、早速お菓子作りに取りかかった。
 テキパキと、手際よく、そして、大量に作られていくお菓子たち。

「ねえ、あたしもお手伝いするよー」
 休んでいるのが悪いと思ったのか紗綾が立ち上がった。
「じゃあ、材料を混ぜて置いて貰えるかな?」
「はーい! わぁ、お砂糖が、こんなにたくさん‥すごい」
 高価な砂糖の入り袋を持つ手が震える紗綾。
 ‥‥どしゃー。
「あ」
 三人の声が重なる。
「ど、どうしよう。お砂糖、こんなにいれちゃったよ」
 半泣きの紗綾に、レイジュが答える。
「ま、まぁ、大丈夫。ブラしふ団に渡すやつだし。安心していいよ。それに、それ、砂糖じゃなくて塩なんだ」
「え? そ、そうなの? それじゃあ、だいじょうぶ?」
「うん、大丈夫だよ」
 塩も安くはないのだが、それをおくびにも出さない笑顔のレイジュ。
 それに救われたのか、気を取り直した紗綾は、再び材料を混ぜ始めた。

 しばらくして完成した数々のお菓子は、おばけの顔の形に焼いたお菓子など、子供が喜ぶような物ばかり。
「じゃあ、これを小分けにして、配りやすいようにしないとね。手伝って貰えるかな?」
 手伝いを頼まれた二人。
 紗綾はお菓子を分けていき、シーンがそれを袋に詰める。
「これなら失敗のしようがないから、安心だよね」
「そうやな。せやけど、お菓子、割ったりしたらあかんで?」
「う‥‥気をつけます」


●和やかな広場にて
 お菓子が作られているそのころ。
 広場では、皇蒼竜(ea0637)とラスター・トゥーゲント(ea1115)が情報を集めていた。
 何人かに尋ねたあと一息ついていると、同じく休憩なのだろう、どっしりとしたおばさんが横に腰を下ろした。
 タイミングを見て蒼竜が声をかける。
「気持ちがいい天気だな」
「そうだねぇ。こういう日はのんびりしていていいね」
「ふむ。たしかに」
 しばらく訪れる沈黙。
「‥‥そういえば、最近、犬に乗ったシフールの集団をよく見かけるのだが」
「ああ、元気なシフールたちだね。どうかしたのかい?」
「いや、元気すぎて騒ぎを起こさねばよいのだが、と思ってな」
「そうだね。あの子たちも、ハロウィンに向けてがんばるとか、言っていたねぇ」
「そうか。ハロウィン、西洋の中元節はにぎやかなのだな」
「なんだい? あんた、ハロウィンは始めてかい? ほら、見てごらん、子供達がああいう格好をしてね」
 おばさんが指を指したほうをみると、子供達が様々な格好でわいわいと盛り上がっていた。
 その中にはフローラ・エリクセン(ea0110)がいるはずだ。
 子供達の方を見ると、フローラはまるごとヤギさんに獣耳ヘアバンドという耳を四つももっている仮装だったので、すぐに見つけることが出来た。
 どうやら彼女の方もうまく行っているらしいようだと、蒼竜とラスターが安心していると、続けざまにハロウィンについて説明をはじめるおばさん。
 おばさんの説明に丁寧に頷きながら聞いている蒼竜。と、そこにラスターが横から質問をした。
「ねぇ、犬のシフールたちは、今、どこに居るんだろう? ハロウィンの準備なのかな?」
「ああ、きっとそうだよ」
「シフールの仮装ってちょっと楽しみだよね。どこで準備してるのかな、ちょっと見てみたいなぁ」
「どうだろうねぇ、普段いる学生食堂で仮装の準備はしないだろうしねぇ。まぁ、夕方になればわかるんだから。で、あんたは何の仮装をするんだい?」
「え? えーと‥」
 逆に尋ねられてしまい、口ごもるラスター。
「まぁ、それも夕方までの秘密か?」
 蒼竜の軽く笑いながらの台詞に、ラスターは、うん、と頷いた。
「そろそろ、あの子たちも遊びに来る時間だよ。言えば仲間に入れて貰えるんじゃないかい? ただし、一緒になって悪さするんじゃないよ? とくに、異国から来たあんた。もう子供じゃないんだから」
「ああ、分かっている」
 おばさんに言われ、今度は苦笑した蒼竜は、小さく呟いた。
「‥そろそろ来るのか」

 広場でわいわいと盛り上がっていた子供達。
 フローラは、その中のリーダーと思われる子供に話しをつけていた。
「うん‥そうなの。お菓子を沢山集めてるシフールさん達が、いるらしいです。‥よかったら、みんなでお菓子貰いに‥行きませんか‥?」
「え? いいの? うん、わかった。大きな袋をもって準備しておけばいいかな?」
「はい‥お願い‥しますっ」


●騒々しい広場にて
 出来立てのお菓子をもって、広場にむかった一行。
 ミカエル・クライム(ea4675)が場所を確保してくれていたおかげで、スムーズにお店を広げることができた。
 そこへ合流したのは蒼竜とラスター、そしてフローラ。
 近くにはヴァラス・ロフキシモ(ea2538)がこちらの様子をうかがっている。

 子供たちにお菓子を渡しながら、ブラしふ団を待つ一行。
「そういえば、このお菓子、美味しそうですけど、‥味見ってしました?」
「僕はしたよ。悪くない出来だったよ。ちょっと味見してみる?」
 ミカエルの質問に、満足げに答えたレイジュ。だが。
「え? いいですか? じゃあ、ちょっとだけ」
 ぱく。
「美味しいです。‥もう一つ。‥‥後もう一つだけ。うん、三つまでなら大丈夫だから」
 何が大丈夫なのか、三つ目に手を出すミカエル。
「あー、あたし、味見してないよー」
「うちもしてないー」
 不満げの声を上げたシーンと紗綾。
「私も、すこしだけ‥いいですか?」
「じゃあおいらもー」
 それにフローラとラスターも加わり、味見のはずだったお菓子は、かなりのスピードで無くなっていく。
「‥まったく。子供の分なのだろう?」
「だいじょうぶ。ブラしふ団の分は、取り分けてあるよ」
「なら良いが。‥しかし、ほっておくと、新しい袋を開けてしまうぞ?」
「あ。おーい、ちょっとみんなー」

 鳴り響く爆音。
 ブラしふ団の登場だ。
「わおーん、わんわんわん」
「いけいけー。ごーごー。ストーーップ」
「おお! やっぱりお菓子がある!」
「美味しそうだー」
「ねぇ、おじちゃん、これ、ちょうだーい」
 シフールたちは、一行の前に犬を止め、屋台に群がり始めた。
 すかさず、用意してあったお菓子を取り出し、渡す。
「まだあるじゃん。残ってるやつ全部ー」
「そうそう」
 彼らは、容赦なく、お菓子を買い占めようとする。
「だめっ。これは私の分」
「え?」
 とっさに出たミカエルの台詞に動きが止まった一行だったが、シフールたちは大いに納得したようだ。
「そうか、それじゃあしょうがないよね」
「うん、もらい手が決まっているなら、大丈夫だし」
「じゃあ、みんな、次にいこう。」
「おー」
「おじちゃん、おばちゃん、ありがとうねー」
 そういうと、嵐の様に去っていくシフールたち。
 そして、今まで静かにしていたヴァラスはスゥっと気配を消しながらシフールたちのあとをつける。
「お、おじ」
「‥‥おば」
 残った一行は、ミカエルも含めて、固まったままだった。


●アジトへの襲撃
 ヴァラスは、無事にアジトを発見することができた。
 大騒ぎをしながら移動する彼らを追いかけるのはたやすいことだったのだ。
 アジトの詳しい場所を、後から追いかけてきたシーンに伝えた後、ヴァラスは一人、アジトの前に立ち、ドアを蹴り開け、大きな声で宣言した
「ガキンチョ諸君、お菓子をもらいにきた!」
「だれだ、お前は! うわっ、おばけー」
「‥別に仮装なんてしてネェだろうがよぉぉ。あぁ〜ん?」
「仮装してなくても怖ー。あ、そうか。お菓子だ。お菓子を渡すんだ!」
 突然の来訪者に驚き惑うシフールたちだったが、一人のシフールが、はっと気がつきお菓子の一袋を、素早く渡す。
「えらい。えらいねぇ。ガキンチョ諸君、俺が何者で何をしに来たか理解できたようだねぇ」
 袋を受け取ると、ヴァラスは、中のお菓子を一つ口の中にいれ‥動きを止める。
「辛い。‥辛い辛い辛い辛いぃ」
 目がいった状態で袋の中を一気にぼりぼりとほおばるヴァラス。渡されたお菓子は、レイジュがブラしふ団用に特別に作ったお菓子だったのだ。
「おまえらよぉ。これがお菓子かぁ? ガキになめられて、だ、だまっていられるか‥‥大人の面子にかけてブチ泣かしてやるぅー」
「みんな、お菓子を持って逃げるんだ。こいつは危険だー」
 ヴァラスの反応をみたシフールは、慌てて逃走を開始する。
 しかし、ヴァラスは、逃げようとしていたシフールの一人を捕まえた。
「‥‥おい、逃げるって言うのは、だめだ。使ってはいけない言葉なんだ。なぜか? なぜなら、プロはよぉ、逃げると思ったとき、逃走はすでに完了しているからだあぁ。つまり、逃げた。なら使ってもいい。わかるかあぁ?」
「え? なにそれ? うわー、そんなに顔を近づけるな、怖いからー。えーと、わかった。 逃げた! な? これでいいだろ?」
 じたばたもがくシフール。
「えらくない、ぜんぜーんえらくないーッ! 逃げたって言ってるのに、今、俺の目の前にいるお前はいったい何なんだぁ? ああーん? 逃げたっていうのは、お前の仲間のようなことを言うんだ」
「え? みんな? うわぁ、もういないし!」
 ゴゴゴゴゴと顔を近づけるヴァラス。
「お前は、お仕置きしてやるぜ! 泣きべそかきなガキがァ」
「え? うわっ。うわああぁぁー‥」

 外に逃げたシフールたちに聞こえる、アジトからの一つの悲鳴。
「くっ。ニッキー。おまえの犠牲は無駄にしないぜ」
 涙をこらえながら、前を向くと、目の前にはちょうど、子供たちの仮装の集団があった。
「なにぃ! 二段攻撃かっ」
 驚愕のシフールたち。
 子供たちの集団の先頭にいた、ラスターは逃げる準備をしているらしいシフールたちを逃がすまいと声をかけた。
「みんな、トリック・オア・トリートだ」
 号令をうけて、子供達のトリック・オア・トリートの嵐が響きわたる。

 このとき、シフールたちの半数以上が降伏し、ほぼ全てのお菓子を回収することができた。
「みんな、このお菓子を、いったん、街のみんなに渡して、夕方貰いに行くことにしよう」
 ラスターが、街のみんなにわたすように、子供達をうまく誘導する。
 無事に解決とおもわれたが、しかし、僅かに逃げたシフールたちが居ることを、フローラと、こっそり後を付けてきたレイジュは見逃さなかった。


●激突! ハロウィンジャー対ブラしふ団
「もうここまで来れば大丈夫だろう」
 愛犬たちと一緒に逃げることが出来た僅かなシフールたちは、街外れの広場で息をついた。
 そこに、高台から声が響きわたる。
「そこまでよっ! 悪戯に心を奪われたブラしふ団たち!」
 夕日をバックにあらわれたのは、5人。
「ハロウィンレッド」
 真っ赤な火の精霊の衣装を着たミカエル。
「ハロウィングリーン! 冒険者養成学校の英雄にして世界の葉っぱ男! ケンブリッジに帰還!」
「ハロウィンホワイト」
 そして、白い衣装に身を包み、白兎の耳と尻尾もつけた紗綾が続く。
「ハロウィンッブルーや」
 マスカレードでエクセレントな雰囲気を醸し出しながら青で統一された衣装のシーン。そして、最後に桃色の衣装のフローラ。
「ハロウィン‥ピンク、ですっ!」
「5人揃って、イロモノ戦隊ハロウィンジャー!」
「トリック・オア・トイート!! お菓子を貰っても悪戯をやめない悪い子達はここかな?」
 決めポーズを取る5人。
 あっけに取られるシフールたち。
「うわ、変態だ」
「だれが変態ですかっ! イロモノは色々物知りさんの略なんです! こうなったら、ブラしふ団にはお仕置きが必要なようですねっ」
「なんだとー、変態になんて負けないぞー」
 こうして始まったハロウィンジャーとブラしふ団の戦闘は、あっさりと勝敗がついた。
 もちろん、5人は手加減をしていたが、悪ぶっているとはいえ相手は子供である。

「うーん、まいった。もうお菓子はこれだけしかないよぉ」
 残された僅かなお菓子を差し出すシフールたち。
「いいですか‥みなさん。いくらお祭りでも、人を困らせては‥いけませんよ?」
 諭すようにいうフローラにレイジュも続く。
「そうだよ。これに懲りたら、街中のお菓子を盗んだりしちゃ駄目さ!」
 ビシっと厳しく言った後
「そんなにイタズラがしたいのなら、この英雄たるレイジュお兄さんが、トリックの方を選んであげよう」
 と、衣装を脱ぎ捨てるレイジュ。
「うわ、本物の変態だー」
「いたずらし放題だって」
 わらわらとレイジュに引き寄せられるシフール。
 注目がレイジュに行ってる隙に、フローラはシーンの方に振り向くと、
「トリック・オア・トリート‥ですっ‥!」
 と、抱きつき、悪戯っぽく口づけをした。
「あ、あたらしいいたずらだ」
 しかし、それをしっかり見ていたシフールたちは、すぐにそれを真似し始める。
 シフール達の顔がレイジュに迫るのであった。

●再起するブラしふ団
 別のルートで逃げたシフールたちに現れたのは、黒い華国風の衣装に黒い布で口元などを隠した一人の蒼竜だった。
「吾は故郷の華国より遠く、この地で朽ちたる還る宛の無い鬼神也。近くを通り掛かれば、美味そうな羽人の香り。吾は非常に腹がすいておる故、汝らを食ろうても構わぬか?」
「‥なんて言ったんだろう?」
「お腹がすいてるから、俺達を食べるって言ってるんだと思う」
「ええっ? どうしよう、もうお菓子ないよぉ」
 泣き出す一人のシフール。そして一人が泣き出すと、釣られたようにみんなが泣き出した。
 想像以上に泣かれてしまった蒼竜は、しばらく落ち着くのを待つ。
「‥もう、大丈夫か? あまり悪戯が過ぎるからだぞ? ほら、この菓子を食って心を入れ替えるといい」
 お菓子を渡す蒼竜。
「うん‥ぐす‥ありがとう」
 素直に受け取るシフールたち。
「でも、おじちゃんもお腹空いてるんでしょう? いいの?」
「ああ、大丈夫だ。今日はハロウィンだからな。お腹がすいても、お菓子は貰えるのであろう?」
「あ、そうか! お菓子もらえるんだ! みんなを集めなきゃ! お菓子取り返せるよ! おじちゃんの分も余ったら、あげるからね」
「そうか。悪戯はだめだぞ。それに、あまり派手にやりすぎないようにな」
 元気になり、駆け出すシフールたち。
 それを見送る蒼竜。

 今日はハロウィン。
 今年も、最後は、みんなが楽しい一日になった。